後始末屋の特異点   作:緋寺

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解体の時

 ついに始まる地下施設の水爆処理。瀬石元帥から派遣されたあきつ丸、神州丸、まるゆの3人を、熊野丸と山汐丸に加え、大本営チームとして地下施設に向かう。

 案内役は神風。地下施設の最深部まで降りている経験と、単騎でも充分なスペックを持っていること、そして砲撃不能で戦うことが出来るという点での採用。

 

「ここから地下に降りられるわ」

「こんな場所に出入り口が……哨戒機では見えなかったであります」

 

 山肌に隠されていた出入り口に、哨戒機を飛ばしていた山汐丸は驚いていた。山道はあれど、ここまでの道は森の木々で巧妙に隠されており、実際にこの道を歩いた者でなければ、ここに辿り着くのは難しい。

 ただでさえ今回はドローンを始めとした水爆解体用の道具をいくつも持ってきているのだ。こういうわかりやすい出入り口から入らなければ、そもそも地下施設に行くことすら厳しい。そういう意味では、この出入り口が発見されたのは僥倖だった。

 

「艤装を装備した艦娘が3人ずつくらいしかいけないから、まず私と誰かが先に降りるわ。先行して安全を確認する。その後、これを上に上げるから、順々に降りてきてちょうだい」

「了解であります。熊野丸、よろしく頼む」

「ああ、任せろ。武闘派が先行した方がいいだろうからな」

 

 先陣を切るのは神風と熊野丸。そこから徐々に降りてくる流れ。一気に行くのはスペース的に無理であるため、そこは上手いこと順番を決めて。

 既に地下施設には何もないことは調査済み。穢れが溜まっているのはそうかもしれないが、生まれているのならば既に調査隊が発見していることだろう。

 

 そこから考えられるのは、この地下施設に関しては、常に深海棲艦発生抑制装置が動いているということ。そのため、それに気付いた調査隊は、何処かに隠されている妖精さんを探しているところである。最悪の場合は、壁に埋め込まれているなんてことも考えれるのだが。

 

「よし、これで全員ね」

 

 何度か往復することで、全ての艦娘と道具を地下まで下ろすことが出来た。出来ればもう少し上の階層で降りたかったところではあるのだが、道具が階段を使って持ち運びすることが難しいということもあり、ドローンを地下最下層から飛ばしてもらうことになってしまう。

 とはいえ、最下層はかなり広いため、何をするにしてもやりやすいところはあった。狭苦しい場所で黙々と作業をするくらいなら、広々とした空間で真上に飛ばしていく方がマシと判断。

 

 ただ、少しだけ環境がよろしくない部分がある。それが、ここの後始末がまだ終わっていないということ。嫌な残骸に関してはさっさと終わらせているのだが、残った血溜まりなどはどうしても後始末が行き届いていない。

 むしろ、あの戦いの後にここまで降りてきているのは、調査隊の面々くらいなのだ。あちらは優先順位が調査の方が高いため、ある程度の後始末しかしない。それに、穢れを完全に取り払う設備などは後始末屋にしか存在しないのだから、調査隊にそれをやってもらうのも難しい話である。

 

「血の匂いがするのであります」

 

 神州丸が少し眉を顰める。ここで戦闘があったのは1週間前だが、その時の匂いがまだ残っていると感じるらしい。

 そう言うのも仕方ないことだ。ここでの戦いではなるべく死者を出さないようにしていたが、数少ない死者──軽巡新棲姫がここで元秘書艦達に肉塊にされているのだから。

 それ自体は撤去されていても、ここに残る黒い血は、まだ全て失われたわけではない。それがどうしても匂いとして残ってしまっている様子。

 

「余程激戦だったのでしょうな」

「まぁ、酷い戦いではあったわね。見るに堪えないことも沢山あったわ」

「そうでしたか……」

 

 参加していない戦いの評論をしようだなんて思っていない神州丸は、そこで一度口を噤む。そして、上を向いた。

 

「アレですか」

「これはまた……厄介なところにありますな。このドローンを持ってきて正解でありました」

「すぐに準備しますね」

 

 この地下空間の真上に設置された水爆。ぱっと見で10基。それをこれから全て確認せねばならない。

 

 補佐役のまるゆが、持ってきた機材をテキパキと準備していく。何やらドローンには、鮮明な映像を映すカメラと、細やかに動くアームが搭載されているようで、コレを遠隔操作で操縦する。

 流石にドローンのコントロールをしながらアームまで動かすことは出来ないということで、あきつ丸がドローンのコントロールを、神州丸がアームを操作、その2人の補佐として計測などをまるゆが行う。

 

「さて、行くでありますか」

「うむ、やるぞ」

 

 あきつ丸の操縦により、ドローンがふわりと浮かび始める。当然だが、暴走させるわけもなく、ゆっくりと上空まで舞い上がって行き、少ししたらもう水爆の近くまで。

 まずはその形状から、手を入れられそうなところを探していく。あきつ丸の細やかな操縦で1つの水爆を舐め回すように観察し、その造りを解析する。

 

 サイズはそこまで大きくないが、天井にしっかり縫い付けられるように設置されているため、重厚なイメージがかなり強い。大体人間1人分くらいのサイズと考えられる。

 ドローンも今回は少し大きめのサイズのモノが用意されているため、大体この水爆と同じくらいのモノと言える。となると、次の厄介なところは、それをバラし始めたあと。

 

「ふむ……これはなかなか……造り自体は簡素ではありますな。単純明快、何処に何があるかはぱっと見でわかるのであります」

「だが、天井にあるというのが厄介だ。ガワを外すにしても、この高さから落ちてくることになる。ドローンで受け止められるか……?」

「重さがわからないことには何とも。神州丸、少しノックしてほしい」

 

 アームを操り、水爆の表面を軽くノック。小気味いい音が聞こえてきたことで分析。

 

「軽いですな。これならドローンでも多少は支えられると思うのであります」

「うむ、とはいえ、無理は出来ん。まずは慎重にガワだけを確実に剥がしていくであります」

「外したガワは、すぐ近くの載せられそうな場所に置いておけばいいでしょう。なるべくパワーの強いドローンを持ってきていますからな。やれないことはないであります」

 

 すぐに作業開始。水爆のガワがビス止めされていることを確認すると、あきつ丸が完璧な位置でドローンを固定、神州丸が繊細なタッチでそのビスを1つずつ外していく。

 1つ、また1つとビスが抜かれていき、半分ほどが取り除かれた時、ガワの部分が小さく傾いた。ガワは外れずとも、これで内部構造が少しは見えるようになる。ドローンから灯りが照らされ、その内部をカメラに映すと、その画面を見ていたまるゆはあっと声を漏らした。

 

「プライマリ、見えましたぁ」

「了解した。ならばセカンダリはこの奥か」

「見にくいですけど、おそらく。あ、プライマリは天井側に縫い付けてありますよ」

「ならば、ガワは単純にガワということでありますな。少々雑でも、取り除くことは出来そうであります」

 

 少し構造が見えてきたならば、作業も少しだけ加速する。まずは全てのガワを外す方向に舵を切り、内部構造が丸見えになったところですぐに作業せず他のガワも取り外していくことに。

 天井に設置された水爆は、結局のところ計10個。そのどれもが同じ構造、かつ基本的な設計になっている。凝った造りになっていたら困っていたが、そんなこともなく、解体はスムーズに進んでいった。

 

 とはいえ、ガワを外すだけなら誰でも出来る。問題は全て、その後に集約されている。

 

「シンプルな構造ではあるが、故に確実、ではありますな」

「困った話であります」

 

 1つ目のガワを外し終え、それは近くにある階層の床に置くことが出来た。ドローンでも耐えられる重さであったことに安堵しつつ、曝け出された内部構造をよく観察。ガワを外した時点で起爆なんていうシステムにもなっておらず、これまでの嫌がらせばかりだったシステムと比べると非常にシンプル。ここは余計なことはしないようにしていたというようにも見える。

 水爆という自分も巻き込みかねない危険な代物に対しては、いくら阿手であっても慎重だったのだろう。とはいえ、心音センサーなども取り付けてあるので、その辺りは用意周到ではあるのだが。

 

 全てのガワを取り除いていったところ、その全てが同じ構造。全く同じモノがズラリと並ぶ。設置のされ方まで同じとなれば、1つの解体が出来れば、同じことを10個分繰り返すだけ。

 だが、ダミーなどもなく、本当に全てが水爆だったことには戦慄を覚える。1つでも爆発していたら、連鎖的に全てが爆発して、この島は全て吹き飛び、さらには放射能汚染などで死の海域に変わり果てていた。

 

「さて、ガワは全て無くなったでありますな」

「ここまではいいが……むしろここからであります」

「まず1つでいろいろ試していくしかありませんな」

「うむ……なかなか緊張感のある作業だ。1つのミスで、全員が吹き飛ぶかもしれぬ」

 

 神州丸は小さく息を吐いた。心を落ち着けて、ゆっくりと確実に進められるように。

 

「ここからが本番であります。さぁ、帯を締めていくでありますよ」

 

 

 

 

 水爆解体が本格的に始まる。全員の命がかかった、最大の後始末だ。

 




水爆の構造は割と適当なところがあるのでご容赦ください。一応wikiとか見ながら書いた。
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