後始末屋の特異点   作:緋寺

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用済み

 カテゴリーYの子供達は、阿手の側近達の傲慢で身勝手な発言を聞いたことで、ついにこれまでの自分達の行いがおかしかったことを自覚。そんな大人達を捨てて、テミス王の下へと自ら下った。

 これにより、側近達を擁護する者は、この場にいなくなる。子供以外のカテゴリーYはここにいないため、そちらにはまだこの意思が浸透していないため、まだ仲間はいるかもしれないが、少なくとも工廠では孤立無援となった。

 

「……やはり子供には理解出来ん……」

「テメェらのアホさ加減はよーくわかったみたいだぞ。ガキでもそんだけ醜態曝しゃ、誰でも理解出来るだろうよ」

 

 未だ反省の片鱗すら見せない重巡新棲姫に呆れながらも、ハッキリと言い放つ昼目提督。鼻で笑いながら、胸ぐらを掴む。

 

「自分のことを高次だの言っているゴミカスが。本当の高みってのはな、ああいうモンを言うんだ。その節穴の目をかっぽじってよく見てみろ。テメェらが一生かけても手に入らないようなモンを、生まれて数日で持ってんだ」

 

 首を無理矢理向けさせて、今のテミスをしっかりと見せつける。

 

 そこにいるのは、真なる王。民との共存を第一とし、自分を上に見せることはなく、同じ位置で歩もうとする姿勢。民の命を重んじて、どんな者であろうとも、共に同じ道を行くのならば必ず守ると誓っている聖人君子。

 

「貴様ラニモ集落ノ棲家ヲ与エル。イヤ、元ハ貴様ラガ暮ラシテイタンダッタカ」

「そうかもしれないけど、これからはみんなで使っていきたいと思います。僕達は、多分1人じゃ何も出来ないですから」

「その代わり、人数いりゃ大概のことは出来るだろ。バカな俺にだって、掃除くらいは出来らぁ」

「生きていくために必要なこと、教えてください、王様」

「ハッハッハ! 任セヨ! 我ガ軍門ニ下ッタノダ、不自由ナド、シタクテモ出来ナイト思ウガイイ!」

 

 先程までの怒りを見せていた表情は何処かに行ってしまったかのように朗らか。新たに仲間となった子供達を快く受け入れていた。

 もう、側近達の姿が見えていないかのようだった。この場には不要だと目に入れていないようにも感じる。

 

 だが、テミスは更なる王の資質を見せつける。

 

「皆ガココマデ理解出来テイルノダ。貴様ラ、我々ノ思想ヲ理解シテミヨウトハ思ワンカ」

 

 ここまで平行線上を辿ってきた側近達に、まだ手を伸ばす。周囲の変化が心を変えるきっかけになる可能性を信じて。

 自分が正しいと言い続けている者でも、ここまで徹底的に間違いを叩きつけられているのなら、少しでも心が揺らいでいるかもしれない。テミスは、そこに少しばかりの希望を抱いた。

 

 だが、やはり。

 

「世界の真理を大多数が知らないだけだ。多数派が必ず正しいと思うな」

 

 コレである。テミスの伸ばした手をわざわざ払い、それでも自分達が正しいと宣い続ける。ここまで来ると、哀れを通り越して滑稽だった。何をそこまで意固地になるのか、テミスにはわからなかった。

 

「こういう奴らはな、自分らが少数派だと少数派の意見を尊重しろっつって、自分らが多数派だと少数派をバカにすんだよ。結局自分が一番だからな。しかも恫喝で自分の意見を押し通そうとする。自分が正しくないと気に入らない、ガキ以上のガキだ。長く生きてるだけのガキ。王様の方がよっぽど大人だぜ」

 

 昼目提督ももう呆れている。こいつらはもう無理だ。バカにつける薬はない。もしあったとしても、こいつらはガブ飲みするようなバカだと、既に見捨てている。

 マイノリティだろうがマジョリティだろうが、自分達が絶対なのだから、それに反する者は全て愚かだと言い張り続ける。逆の立場なら嘲笑しながら叩き潰そうとするのにである。

 

「それに比べて、ガキ共はよく自分達で気付けたな。まぁ、こんなクソを間近で見りゃ、コイツらと同じでいたいとは思わねぇわな。そうだ、テメェらはついさっきまで、この駄々を捏ね続けるデカいだけのガキと同じだったんだよ。嫌だろコレ、同類だと思われたくねぇだろ」

 

 満場一致で子供達は頷いた。醜態を晒し続ける指導者の何と情けないことか、嫌という程見せつけられたのだ。子供だからこそ、あんなのと一緒にされたくないという気持ちは非常に大きい。

 

「でも、ここで手を出さねぇだけ、テメェらは充分大人だ。特にテメェ、口は悪いが、ちゃんと気付けてるな。ここでぶん殴りに来なかったのは偉いぞ。そんなことでテメェの拳が痛くなるのは嫌だろ。下らねぇ」

 

 名指しされた軽巡棲姫は、小さく笑って頷いた。腹が立ったからぶん殴るというのも考えただろう。だが止めた。そんなつまらないことで、殴った手が痛くなるのが気に入らない。というよりは、あんな哀れな大人には触れたくもない。悪いモノが移りそうだと。

 

「だから、テメェらのやりたいことは、オレがちゃんとやっておいてやる。コイツらは言うだけ言って責任も取れないクソだ。オモチャで遊んだ後、片付けを親にやらせるようなガキだ。テメェらは、もう関わらない方がいい。おう王様、そいつらのこと、導いてやってくれや」

 

 昼目提督に言われ、テミスは高笑い。

 

「当然ダ。島ノ者トイウコトハ、全テ我ガ民。守リ、導キ、共ニ平和ヘノ道ヲ邁進スルト約束シヨウ。臣民ヲ蔑ロニスルヨウナ王ナド不要ダ」

「流石だぜ。王様はマジでやれると思うからすげぇよ」

 

 自信満々に、しかし無謀とは思えないのがテミスだ。ならば任せられる。

 

「テメェらはもう、誰からも擁護されねぇ。自分の間違いが間違いと気付けないようなクズは、もう見向きもされねぇんだよ。まぁ、この島の情報……そうだな、死体を遺棄した場所を洗いざらい話すなら、多少は融通を利かせてやらんことは……」

「その必要もないにゃあ」

 

 突如聞こえてくる声。これまでずっと話してきた中で、初めてここに現れた艦娘の声。

 

「おう、多摩艦娘提督じゃねぇか。どうしたよ」

 

 うみねこ代表、艦娘兼提督の多摩が、手をヒラヒラさせながらおおわしの工廠に入ってきた。秘書艦すら連れていない、完全な単独行動。猫のような気まぐれさだろうか。

 しかし、気になることはそれだけではない。提督という名目を持ちながらも、後始末作業に率先して参加する艦娘でもある多摩は、今どう見ても土だらけ泥だらけの、あまり綺麗とは言えない姿をしていた。特に足は、ボロボロと言ってもいいくらいに汚れている。

 

「死体遺棄の場所、別に聞く必要ないにゃ。多摩達が、()()()()()()からにゃ」

 

 うみねこがこれまでやってきた仕事は、それである。大雨の後にいろいろと発見された後、うみどりは必死に生まれた深海棲艦の保護に尽力し、みずなぎは深雪達が気付いた獣道にもなっていない森の残骸集めを続けていたが、うみねこは土の中から見つかった遺骨などから、遺棄場所を突き止めるために動き続けていたのだ。

 その結果、埋められていた亡骸、その骨をいくつも発見。ここが奴らの『ゴミ捨て場』なのだろうという場所に見当をつけ、探せる限りの亡骸を全て回収している最中である。

 

「ある意味ローラーかけたけど、まぁうちの戦力の実力があれば何とかなるモンにゃ。そいつらから聞き出さないといけない情報、もう何も無いにゃあ」

「おう、サンキュな。そいつはいいことを聞いた」

「にゃ。だから、()()()、にゃん」

 

 多摩のその言葉は、死刑宣告に等しい。これまでは島の情報を持っているから尋問をしていた。研究成果に関しては全て回収して片っ端から確認しているが、島の維持などに使っていたモノ、そしてコレまでの犠牲者についての話を聞き出すために。

 特に犠牲者のことを知りたかったのだが、側近達は黙秘権とでも言わんばかりに何も言わない。それどころか、自分達が正義だと言い続けて、おおわしのことも侮辱し続けてきた。それでも情報のために生かしてきた。

 

 しかし、これで拾いたい情報は、もう何も無い。調べれば出てくる。そして、それだけの人材が揃っている。

 つまり、この側近達は、用済みとなったのだ。

 

「司令官、別室のカテゴリーY、大人達に、ここで起きたことを伝えました。そうしたら……はい、見事に屈しましたよ」

「まぁそうだろうよ。ガキに見捨てられる奴に付き従うほど、バカじゃあねぇわな」

「はい。そもそも大人達はこの島の住人ですが、そちらの方々は外部の者。島の住人でもありませんから」

 

 そして今度は鳥海からの報告。子供達は作業のため、側近達のことを見せつけるために集めていたが、ここでの側近達の言動、そして子供達が纏めて離叛したことを伝えると、ついに心が折れて、知っていることを話し始めたという。少しでも減刑を狙っているのか、ただこの側近のやり方についていけなくなったのかはわからない。しかし、これまでから態度を大きく変えたのは間違いなかった。

 

 これにより、本当にこの2人の側近を擁護する者は、真に誰一人としていなくなった。

 

「ム、此奴ラハ、島ノ者デモ無イノカ。ナラバ、外ノ者ガ我々ニ意見ヲシ続ケ、アマツサエ利権ヲ掠メ取ロウトシテイタトイウノカ」

 

 テミスが改めて難色を示した。島民でも無いくせに、島民の事情に首を突っ込み、自分達の思い通りにしようとしていたと聞いたら、それは余計に気分が悪い。

 

「貴様ラニ、我ガ島ノ居場所ハ無イ。ダガ、我々ノ思想ト共ニ歩モウト思エルノナラバ、余ハ貴様ラヲ受ケ入レル。ドウダ、コレヲ機ニ、変ワッテミナイカ」

 

 それでも、テミスは手を差し伸べた。王としての資質、ありとあらゆる命に対して、慈悲を与える。あれだけ平行線上の舌戦を繰り広げ、ここまで嫌な思いをさせられた相手でも、最後まで見捨てない。自分の力への絶対的な自信と、平和に向かうための思い。命ある者ならば見捨てない。

 

 だが、ダメなモノはダメというのも知ることになる。

 

「我々を見下しているのか?」

「そんな手、取れるわけがないだろう。裏切り者共め」

 

 最後の手も、振り払われた。自己中心的も、ここまで来ると滑稽を通り越して感情が湧かなくなる。

 

 

 

 

「ソウカ、残念ダ。ナラバ、惨メニソノ生涯ヲ終エルガイイ。二度ト余ノ、島ノ前ニ現レルナヨ下郎」

 

 そして、ついにはテミスも見捨てた。これがどれ程までに重いことかを、理解出来るわけが無かった。

 




カリスマ性が特異点以上にあって、敵であっても手を差し伸べて、一緒に平和やろうぜ!って常々言ってるテミスが見捨てるって相当なことだよ。こいつらは平和にいらんって宣告したようなモノだから。
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