キンジとネモの共依存 作:はちみつレモン
ネモの足跡を頼りに歩いていると、小さな小屋を見つける。小屋の窓から明かりが漏れており、そこにはネモがお手製の簡易ベッドで横になっていた。他にも家具が置かれている。
「?」
家具をよく見ると、明らかに人工的に出来ている。何か刃物で切り取ったような形跡も見える。何か刃物が落ちていたのだろうか?
そんなことは後回しだ。今はネモを…
頭の中でネモをめちゃくちゃにする。殴って痣をつくるのも良いし、縄で縛って動けないようにするのもありだ…どうしてやろうか
これは俺の能力、ヒステリアモードの1つだ。感情が高ぶっていると俺自身が凶悪になるという諸刃の剣だが、通常のヒステリアモードよりも火力は上がる。もうチャンスが来るか分からないため火力を高くしたいのと、本当にネモをぐちゃぐちゃにしたい欲求が合わさったのだ。
10分以上息を潜めて様子を見るが、ネモは寝たままだ。仕掛けるなら今だろう。
俺が小屋に侵入したその瞬間
「っ!」
足元に何かが出てきた。咄嗟にバックステップして回避する。地面から銀色の釘が飛び出してきた。これには見覚えがある。オスプレイのときにいた奴だ。荷物にくっついてたのかもしれない。そいつは俺に近づいてくると、形を変形させてきた。鋸や剣、槍などと形を変えて俺を攻撃してきたが、そこはヒステリアモードの俺。負けるわけがない。
形態変化する直前に掌に抑え込む。奴は全身を刃に変えて抵抗してきたが、暴力衝動に駆られている俺なら痛くも痒くもない。
「ネモが弱っている。俺はそれを助けに来たんだ」
「?」
あぁすごい。心の中は殺気立っているのに、まるで喫茶店で談笑しているように穏やかな声が流れるように出てくる。
「俺の所に来た時、とても疲れているようでな。ほら、ネモの顔が少し傷ついているだろう? あのままだとネモが死んじまう」
「!?」
「お前が思っている以上に人間の身体は脆く簡単に壊れる。ここは病院が無いから早めに治療しないとあいつは…」
「…」
「だから協力してほしいんだ。俺もここで1人になるのは嫌だからな。ネモを助けるために協力してくれ」
そいつは刃状態を解除してくれた。ピンポン玉のような形になり鎮座している。
なるほど。お前は女か
色々な奴に根暗だの女たらしなどと言われていたからな。俺のいう事をすんなり聞くという事は、お前は雌確定だ。
「いいか。これからネモが確実に生きるためには、必ず俺の言う事を従ってくれ。ネモが何を言っても、それはあいつが自分の弱みを見せたくないからだ。今までもネモが弱みを隠そうとしていたことがあったろ?」
そいつには思い当たる節があるのか、ジャンプして応えてくれた。言葉が通じないようだが、そこはボディランゲージでどうにかするしかない
「お前いつから見ていた? 俺がネモを砂浜に移動させて救助したことは知っているか?」
ぽよんぽよん
「見ていたんだな。さっきも言ったが、ここは一切の治療する手段や施設がない。そのためにも一瞬の油断が命取りだ。いいか、俺の命令は絶対だ」
ぽよんぽよん
さっきよりも強く跳ねている気がする
「治療が出来ない以上、予防を徹底的にするしかない。その予防をするために、これから指示をする。まずはネモの両手足を縛れ」
ぽよんぽよん
そいつはネモの上に乗っかり、餅のように伸びて両手足を拘束した
「治療が苦手な奴は、大きな声や動きで抵抗して来る。ネモがそうか俺は知らないが、もしそうなったとしても、ネモが生きるためだ。絶対に解かないでくれ」
ぽよんぽよん
「ゆっくりと首を締めてくれ」
そいつがリングのような形になりネモの首に巻き付いた。ネモは苦しそうに眉を潜めるが起きる気配はない。もちろん両手足は拘束したままだ。
ギリギリ起きないところまで首を絞めてから
「ゆっくり緩めろ」
俺はネモの耳に口を近づける
「大丈夫だネモ。俺がいるから大丈夫だ」
「ん…ぅう」
「もう一度ゆっくり締めてくれ」
ぽよん
苦しそうにしていた後に、大きく息を吸うネモの耳に、何度も大丈夫だと刷り込ませていく
「繰り返しごらん。ネモはキンジの言う事が絶対」
「ネモは…んぅ」
「ほら。もう一度。ゆっくりでいいんだ。ネモは」
「ネモは…」
「キンジの」
「キンジの…」
「言う事が」
「…いう…ことが…」
「絶対」
「絶対…すぅ…」
笑いを応える
俺はこれを空が明るくなる直前まで繰り返してから、自分の拠点に戻った。