さらば宇宙戦艦ヤマト2203 ~愛の戦士たち~   作:往復ミサイル

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侵略者、迫る

 

 一瞬、ズォーダーの中に奇妙な感情が混じったのを、パイプオルガンを奏でるサーベラーは鋭敏に感じ取っていた。

 

 いつもは威風堂々としていて、どんな困難でさえもむしろ奮い立って真っ向から打ち砕く武人、ヴロド・ズォーダー。その佇まいこそがガトランティスの王に相応しく、故にズォーダーの一族はこの帝星ガトランティスの頂点に1000年以上に渡り君臨し続けている。

 

 強さゆえに、その座を一度たりとも明け渡していない絶対強者。

 

 しかしながら、サーベラーは彼の中に確かに視た。

 

 ”揺らぎ”を。

 

 ヴロド・ズォーダーともあろう者が抱いた”畏れ”を。

 

 ―――テレサ。

 

 ゴーランドとザバイバルがヤマト(ヤマッテ)との戦いに敗れ去り、テレザートはガトランティス軍の支配から解き放たれたという知らせを聞いた途端に、ズォーダーは確かに恐れを抱いた。

 

 無理もない。あの宇宙の女神である。

 

(それほどまでに我らと相容れぬか、テレサよ)

 

 つまりはそういう事だ。

 

 テレサはあらゆる世界を、あらゆる時空を見通す力を持つ。その気になれば過去を改変し、ガトランティスの存在そのものを”無かった事”にすら出来るのだろう。

 

 ズォーダーは、それが恐ろしい。

 

 初代大帝”ラング・ズォーダー”の世代から1000年、実に10世紀に渡って築き上げてきた一族の栄光を、たかが一人の女神如きに台無しにされてしまうのが恐ろしくてたまらない。

 

 そんな事になれば、ここまで倒れていったガトランティスの祖先たちに、そして勇敢なる武人たちに申し訳が立たない。

 

 ―――だが。

 

 そんな畏れを抱いたのも、一瞬の事だった。

 

 ならばもう一度封印してやればよい。

 

 あるいは、女神をも打ち倒すほどの武力を以てテレサを殺してやってもよい。

 

 いずれにせよ、戦だ。暴力は全てを解決する。

 

 対話だの平和だの、そんなものは弱者の戯言だ。

 

 この無限に広がる大宇宙は、強き者にしか生きる事を許さない。

 

 ならばそれはガトランティスであるべきなのだ。

 

 この大宇宙こそが彼らにとっての故郷なのだから。

 

 玉座の肘宛を握り、大帝は静かに笑いだした。

 

 実に面白くなってきた―――女神テレサとの戦争。宇宙の女神を武力で屈服させたとなれば、ヴロド・ズォーダーの名は……いや、彼に付き従うすべてのガトランティス軍将兵の名は、全宇宙に轟くだろう。遥か後世まで語り継がれる武功ほどの栄光は他にあるまい。

 

 だが、まずは地球(テロン)だ。

 

 あの蒼い星を手中に収める事こそ、今彼らが最優先でするべき事。

 

 それにテレサに過去を改変する力があるとはいえ、迂闊に改変すれば他の惑星のヒューマノイドまで巻き込んでしまうであろう。迂闊にタイムパラドックスを引き起こすほど、彼女も愚かではない筈だ。

 

 となると、代わりに刺客を差し向けてくるに違いない。

 

 テレサの力を与えられし地球(テロン)(フネ)ヤマト(ヤマッテ)

 

 ―――実に面白い。

 

 たった1隻の宇宙戦艦が、このガトランティスを打ち倒す―――そんな事が出来るというのならばやってみるがよい。

 

 逃げも隠れもしない。全力で相手をしよう。

 

「サーベラーよ」

 

「はい、大帝」

 

「此度の戦に出陣する全ての戦士たちに酒を振舞え。勝利を祈念し乾杯しようではないか」

 

「はい、直ちに」

 

 地球(テロン)の艦隊は精強であると聞いている。

 

 強い敵であるほど、闘志もまた燃えるというものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 酒杯を煽り、家臣に空の酒杯を預けた”ヴィム・バルゼー”は、喉の奥へと去っていく焼けつくような熱さの余韻を楽しみながら闘志を滾らせる。

 

 彼が率いる艦隊『バルゼー機動艦隊』は、帝星ガトランティスの中でもゴーランド艦隊と並び最強と言われている。ラング・ズォーダーがゼムリアの艦隊を接収し大宇宙に打って出た当時から、バルゼー艦隊はその剣としての役割を全うしてきた。

 

 そしてガトランティスの無敵艦隊の地位は、この1000年で一度たりとも明け渡してはいない。

 

 彼が奮い立つのは、それだけではない。

 

 今回の戦は、息子の”ヴィリム・バルゼー”の初陣でもある。

 

 後に続く息子に、無様な姿は見せられまい。

 

 

 

 

 

「大帝のご命令が下った」

 

 

 

 

 

 静かに、しかしその内では闘志を滾らせながら、バルゼー提督は命令する。

 

 

 

 

 

 それはさながら、戦に飢える狼の如し。

 

 

 

 

 

「これより我が艦隊は総力を挙げて太陽系へと突入し、地球軍を撃滅する!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ズォーダー大帝の命令は、プロキオン恒星系に待機していたガトランティスプロキオン方面軍にも伝えられ、直ちに出撃。バルゼー艦隊と合流し、圧倒的戦力を以て太陽系へと迫っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 第六章『宇宙の女神は血を欲す』 完

 

 第七章『無限煉獄』へ続く

 

 

 




おまけ

第七章予告(セリフのみ。映像とBGMは脳内補完でお願いします)



エンケラドゥス守備隊「地球司令部へ緊急連絡。土星沖におびただしい数の敵艦見ユ」




山南司令「全艦直ちに出撃!」

バルゼー(父)「焼き払え!!」

アマテラス副長「直撃来ます!」

速河艦長「こちらヒペリオン艦隊旗艦、我が旗艦の―――」

北野艦長「これ以上無駄に死なせるな!」

バルゼー(父)「”煉獄直撃砲”用意」

フィオナ「あり得ません。下等生物が、このような」

アズール「これが白色彗星……」

安田艦長「山南司令、行ってください!」

アンドロメダ副長「アルデバラン大破! アキレス、アンタレス、沈みます!!」

山南司令「全艦、マルチ隊形!」





山南司令「収束波動砲の集中砲火を以て、ガトランティスの白色彗星を撃滅する!!」










さらば宇宙戦艦ヤマト2203 ~愛の戦士たち~
   第七章『無限煉獄』


近日更新予定 
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