さらば宇宙戦艦ヤマト2203 ~愛の戦士たち~   作:往復ミサイル

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第七章 無限煉獄
黒き闇、白き闇


 

 

 無限に広がる大宇宙。

 

 

 

 

 

 

 

 

 静寂に満ちた世界。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 生まれ来る星もあれば、死にゆく星もある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうだ、宇宙は生きてるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 生きて、生きて……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だからこそ、蠖シ繧峨r螳?ョ吶↓隗」縺肴叛縺」縺ヲ縺ッ縺ェ繧峨↑縺??縺ァ縺吶?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 星が砕けた。

 

 火星サイズの惑星が、しかし押し寄せる圧倒的重力傾斜の高負荷に抗い切れずに圧壊するや、そこから先はあっという間だった。惑星表面に生じた亀裂は瞬く間に惑星全土へと広がり、コアも崩壊して、白色彗星へと吸い寄せられていく。

 

 かつて惑星だったものの大地が、彗星を取り巻く反物質ガスの層に触れるなり音もなく消失。そこに惑星があったという痕跡すら残らずに、宇宙を切り裂く白き闇に呑まれて消える。

 

 それこそが、白色彗星の本質だった。

 

 かつてアケーリアス文明が遺した、悪しき進化を遂げた種を根こそぎ刈り取るための対文明兵器(・・・・・)。文明の痕跡もろとも消し去るそれは、本来ならばアケーリアス人の手のひらの上にあってしかるべきであり、決して他者にそれを委ねるような事があってはならないのだ。

 

 ―――【滅びの方舟】。

 

 1000年前、惑星ゼムリアの支配権を争いガトランティスとの全面戦争に明け暮れていたゼムリア人たちが、ガトランティスを殲滅するために発掘し―――しかし実戦投入を待たずに滅ぼされた事でガトランティスの手に渡ってしまった、全宇宙最悪の遺産。

 

 発生する高重力はブラックホールの干渉すら許さず、彗星の纏う反物質ガスは触れたあらゆる物質を消滅させてしまう恐るべき特性を持っている。

 

 その侵攻を防ぐ術は、どこにもない。

 

 文明諸共滅ぼされるか、それとも服従するか。

 

 この全宇宙全ての生命体は、栄えあるガトランティスと大帝ズォーダーの寵愛を受けてこそ存在そのものが肯定される。それを受け入れぬならば消え去るがよい―――ガトランティスの手に落ちたアケーリアス文明の遺産は、その目的を大いに捻じ曲げられながらも宇宙を蹂躙、地球へと接近しつつあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 宇宙空間が、何の前触れもなく十字に裂けた。

 

 蒼く輝く十文字。その中心から通常空間へと舳先を突き出してきたのは、明らかに地球の艦艇ではない。鋭利な艦首と前方に突き出た衝角、黒を基調とした船体に紅いアクセントと、黄金の発光部を散りばめたその意匠は地球防衛軍のどの艦艇とも一致しない。

 

 それは地球に訪れるであろう、1000年後の未来の”先触れ”。

 

 改アンドロメダ級宇宙戦艦『アエテルヌス』。

 

 地球へと早くもやってきたデザリアム人の一派が、ハヤカワ・インダストリーとの密約を通じて彼らに建造させた試作型戦艦。波動エネルギーの一切を廃し、彼らが運用する”位相エネルギー”のみを動力源として稼働するオーパーツ。

 

 それはこの2203年の時空間で地球にデザリアム艦を建造、軍備を急速にデザリアム化させるためのノウハウ蓄積のためであり、デザリアム本星のマザー・デザリアムと袂を別ったフィオナ一派がこの時空間で軍備の自給自足を行うための第一歩でもあった。

 

 ”アエテルヌス”とは、ラテン語で『永久に』を意味する。

 

 アンドロメダ級をベースとしたアエテルヌスの後方の空間が、静かに歪む。

 

 音もなく現れたのは、漆黒に染まった巨大な”コケシ”のような構造物だ。一見すると巨大なコケシに見えるが、しかし頭部に相当する部位からはコケシらしからぬ角のようなパーツが生えており、表面はカラフルに発光している事が分かる。

 

 自動惑星ゴルバ―――それが、3基。

 

 発光部が赤い『ゴルバ・エナム』を筆頭に、フィオナの意見に賛同した2基のゴルバを加えた、この時空間におけるフィオナ派デザリアムの最高戦力だ。

 

 その位相エネルギーを用いた位相変換装甲はこの時空間におけるガトランティスのあらゆる攻撃を通さず、またその火力は彼らのあらゆる戦艦を真正面から撃破可能なだけの威力を確保している。

 

 唯一の懸念事項は位相エネルギーの安定供給に不安がある事であろう。

 

 この時空間に建造予定の中間補給基地『ディガブラス』の指揮官”リガルド”をこちら側に引き込む事には失敗している。時空結節点のこちら側に建造された唯一の中間補給基地を確保できなかった以上、大深度亜空間を奔る位相エネルギーの送電網に細工をしてエネルギーの一部を間借りするか、自前の動力源を確保するしかない。

 

 既にそれぞれプランA、プランBとして並行しながら動力源の確保を目指しつつ、引き続きディガブラスをこちら側へ引き込むための工作を継続中ではある。

 

 しかしそれでも、十分におつりがくる戦果を期待できるはずだ。

 

 なぜならば、ガトランティスは記録にあるタイムラインにおいて、いずれも2202年~2204年の間に地球と戦い、絶滅へと追いやられているのだから。

 

 つまるところ、彼らの敗北は既に決定づけられている―――”時の輪”は形成されているのだ。

 

 総ては、もう決まった事。

 

 そして―――これから起こる事だ。

 

 戦艦『アエテルヌス』の艦橋、薄暗い内部で艦長席にゆったりと腰を下ろしたフィオナは、頬杖を突きながら目を瞑っていた。

 

 艦橋に流れるのはゆったりとした雄大なクラシック。

 

 スメタナのモルダウ(プルタヴァ)だ。

 

 祖国を流れるモルダウ(プルタヴァ)川の雄大な流れを讃えたそれは、しかし記録の大半を消失し文化を失った彼女らデザリアムからすれば、その背景にある要素ばかりが綺麗さっぱり洗い流されてしまっている。

 

 単なるBGM―――しかしかつての自分たちが失った文化への憧れが、確かにデザリアム人にも存在するのであろう。

 

 そうでなければ、こうしてかつての故郷に由来する音楽を聴くような事はしない。

 

 ランダムに組み合わされた遺伝子で形成された脳髄の奥底に、故郷への哀愁を感じるようプログラミングされた何かがインストールされているとしか思えないのだ。

 

『前方、白色彗星ワープアウト』

 

 唐突に生じた巨大な重力振。

 

 宇宙戦艦に乗っているというのに、地震かと見まがうほどの揺れだ。まるで想定外の質量を唐突に捻じ込まれ、宇宙全体が痛みに打ち震えているかのような激震。

 

 やがて前方の何も無かった空間に、菱形を幾重にも組み合わせたかのようなワープエフェクトが生じ―――木星に匹敵するサイズの、白いガスを纏った巨大な白色彗星がワープアウトしてくる。

 

《これが白色彗星……》

 

「アズール」

 

 艦長席に座ったまま、フィオナは自らの腹心となったゴルバ・エナム司令のアズールを呼び出す。

 

 胸に装着した独自規格のコムメダルが紅く輝き、その思念を彼のコムメダルへと直接伝えた。

 

「作戦を始めます。全てはタイムライン通りに」

 

《はっ。デザリアム千年の夢の為に》

 

 命令が下るや、ゴルバ・エナムが前に出た。

 

 2基のゴルバを従えてアエテルヌスの前方へと展開するなり、巨大なコケシのようなボディを横倒しにし始める。胴体下部の装甲がスカート状に大きく展開するや、そこから超大型重核子ベータ砲の砲身が出現。展開した装甲も重力傾斜発生用のデバイスとしてアクティブとなる。

 

《全要塞、重力傾斜最大出力!》

 

 自動惑星ゴルバの最も恐ろしい部分は、その火力と位相装甲に由来する防御力もそうだが、最大の武器は”重力制御能力”であろう。周辺の空間に強力な重力傾斜を発生させる事で、任意の物体を「自由落下」させる事も出来るのだ。

 

 それには莫大なエネルギーを使用するが、安定した位相エネルギーの補充ができない場合は惑星を意図的に爆発させ、その消滅時のエネルギーを吸収する事で現地調達する事も可能である。

 

 この1年後、いわゆる『イスカンダル事変』においてメルダースのゴルバがその威力を第65護衛隊を相手に遺憾なく発揮する事がタイムライン上で確認されているが、それはまた別の話である。

 

 その気になればイスカンダルと同等の天体すら牽引、ワープする事が可能な重力傾斜を展開できる自動惑星ゴルバ。

 

 その同型要塞が、ここには3基いる。

 

 それらが全力で重力を放射しているのだ。反発するように前方へと収束して放たれた重力波は、しかし効果があるようには思えない。

 

「白色彗星、速度0.2%減速。進路変わらず」

 

 淡々とした表情でアエテルヌスのオペレーターが報告する。

 

 ゴルバ3基の全力での重力放射で僅か0.2%程度の減速しか見込めない―――あわよくば完全に足を止めるところまでは期待していたフィオナだが、見立てが甘かったようだ。

 

 ならば、とフィオナは命じた。

 

「無限アルファ砲、発射用意」

 

 アエテルヌスの艦首にある装甲が大きく展開、中から波動砲の砲身にも似たユニットが展開してくるが、それはあくまでもエネルギーに指向性を与えるための加速装置だ。

 

 艦首のユニットが展開、左右から出現した電極のようなパーツが紅い稲妻を放つなり、砲身前方に2つの紅いエネルギーの球体を発生させる。

 

 それを合図に、ゴルバたちも一斉にエネルギーの充填を開始した。白色彗星に向けてスカートを広げるような形で展開した装甲の中心部、巨大な砲身が紅いエネルギーの充填を開始したのである。

 

 重力傾斜そのものを砲身として相手に向かって高エネルギーを撃ち出す、超大型重核子ベータ砲。

 

 重力傾斜で足を止められないのならば、重核子ベータ砲と無限アルファ砲の一斉射撃を以て白色彗星を粉砕せしめるほかに道はない。

 

「―――無限アルファ砲、発射!」

 

 彼女の号令と共に、限界まで膨れ上がったエネルギーが一気に加速した。2基の砲身型加速器によって後方から蹴飛ばされるように加速したエネルギー流が、弾道上にある星間物質をことごとく消失させながら直進していく。

 

 それに一拍遅れ、ゴルバたちの砲身からも超大型重核子ベータ砲が発射された。

 

 合計4発の位相エネルギーの塊が、白色彗星の中心部―――”渦の中心核”へと向かって伸びていく。

 

 超大型重核子ベータ砲はともかく、無限アルファ砲の威力はフィオナも申し分ないものだと承知している。

 

 位相エネルギーにより着弾地点に限定的な空間裂傷を発生させ、そこから吹き出すエネルギーの奔流で攻撃対象を粉砕、消滅せしめる戦略兵器。

 

 超大型重核子ベータ砲と融合した無限アルファ砲は、期待通りの白色彗星の前方で炸裂した。限定的とはいえ発生した空間裂傷から紅いエネルギー流が吹き出して、白色彗星目掛けて拡散していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 が、しかし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あり得ません。下等生物が、このような」

 

 目の前で繰り広げられた光景に、フィオナは目を見開いた。

 

 拡散した空間裂傷とエネルギー流が―――まるで排水溝へと吸い込まれていく水のように渦を巻くや、白色彗星へと吸い込まれていってしまったのである。

 

 当然、白色彗星は無傷だ。

 

「警告。間もなく重力傾斜危険域」

 

 オペレーターの抑揚のない声が告げて間もなく、ぎぎぎ、と竜骨(キール)の軋むイオンがアエテルヌス艦内に響き渡った。

 

 強烈な重力傾斜がデザリアム艦隊を包み込み、彗星へと吸い寄せているのだ。

 

 ゴルバたちもそれに抗うように移動を開始するが、しかしそうはいかなかった。白色彗星から伸びてきた反物質ガス―――触手のようなそれがゴルバの1基を直撃したのである。

 

 一瞬の出来事だった。

 

 ただの一撃で、あろう事かゴルバの位相変換装甲がダウン。丸裸にされたゴルバがガスの触手に絡め取られるや装甲表面を融解させられ、そのまま重力傾斜の中で崩壊、吸い込まれ消滅していった。

 

 もう片方のゴルバも逃走を図ったが、しかし圧倒的重力傾斜の前では位相装甲も意味を成さない。ぎぎ、と装甲を軋ませて間もなく巨体が圧壊を始め、全高10㎞にも及ぶゴルバの船体が瞬く間に圧縮。べきべきと装甲の割れる音を響かせながら艦載機程度のサイズまで”圧縮”され、ガスの嵐の中へと消えていく。

 

 そしてその毒牙は、アズールの乗るゴルバ・エナムにも迫りつつあった。

 

《ば、馬鹿な……下等生物がこんな、有り得ない!》

 

 彼は最期まで、その異質さに気付く事はなかった。

 

 ワープしようとしたゴルバ・エナム。しかし装甲表面を透明化させたゴルバ・エナムに反物質ガスがぶち当たって位相装甲がダウン。そのまま重力傾斜を受け、さながら亜空間から引きずり出される格好となったゴルバ・エナムもまた、白色彗星へと呑み込まれ、崩壊していった。

 

 ゴルバですらその有様である。

 

 推力でも防御力でも劣るアエテルヌスが、もはや逃げ切れるはずもない。

 

 艦の制御は意味を成さず、重力乱流の中で装甲を剥離させられながら吸い寄せられていくアエテルヌス。

 

 崩壊していく艦内で最期まで、フィオナはその記録を地球へと送信し続けた。

 

 どうせこの艦も再生産は出来るし、ここにいるフィオナもスペアボディだ。本体はあくまでも地球に存在しているため、失っても痛くはない。

 

 やがてアエテルヌスの船体にも反物質ガスが直撃し―――黒い船体が真っ二つに、折れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 デザリアムの力を以てしても、この世界線の白色彗星は止められなかったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

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