さらば宇宙戦艦ヤマト2203 ~愛の戦士たち~ 作:往復ミサイル
空間が、紅く裂けた。
空間裂傷にも似たそれは、まるで宇宙という人体にぱっくり開いた傷口のようにも見えた。しかしそんな禍々しい口が開いていたのも一瞬の事で、脳がその光景を知覚した頃にはモスグリーンとグレーの、どこかスイカを彷彿とさせる迷彩模様のデストリア級やケルカピア級がワープアウトしてくる。
ガミラス製の波動コア特有のワープエフェクトだ。
地球の艦が氷を纏ってワープアウトしたり、ガトランティス艦が白いガスを纏ってワープアウトするのと同じように、ガミラス艦はあのように赤熱化するかの如くワープアウトしてくる。
実際、ガミラス艦はワープ中に凄まじい高熱に晒されるため、設計段階である程度の”耐熱性”も求められるのだ。余談ではあるが装甲表面に塗布されるミゴウェザー・コーティングも、元々はワープ時に生じる熱に耐えるための耐熱コーティングから派生した技術であるとされている。
「あの塗装は、まさか……」
デスラー艦隊旗艦『ゼオ・デウスーラ』の艦橋で、続々とワープアウトしてくるガミラス艦を見ていたタランが目を見開いた。
叔父たるアベルト・デスラーのために手配したガミラス艦隊は全て、ガミラス本星で行動している彼の甥、ランハルト・デスラーが用意したものだ。先の地球との戦争に端を発するデスラー政権崩壊のゴタゴタで所属が不明瞭となった艦隊や戦力、人員を自分の派閥へと組み込んで私兵部隊を結成、その戦力を全て出し惜しみする事なくデスラーの元へと送っているのである。
だからこそ、理屈は通る。
だがしかし、納得は出来なかった。
ランハルト・デスラー……タランも只者ではないと初見の際に見抜いていたが、よもやこれほどまでの戦力を用意するとは。
あの特徴的なガミラス艦の迷彩は、”あの男”の指揮下にある艦隊に他ならない。
しばらくして、ひときわ大きな艦がワープアウトしてきた。
バリカンを思わせる艦首と、分厚い正面装甲。前部甲板にはガミラス軍の通常兵器の中では最大火力を誇る490㎜陽電子ビーム砲(よく見ると砲身が追加されている)がずらりと並んでおり、他にも小中様々なサイズのビーム砲や魚雷発射管が所狭しと並んでいる。
素早い機動力による電撃的な攻撃を良しとするガミラス軍にあって珍しく、重装甲で鈍重な超弩級戦艦であった。
ゼルグート級―――しかも地球との戦争中に運用されていたドメラーズやゼルグート、デウスーラといった艦とは違う。細部に改良を重ねつつ設計を簡略化、コスト低減を図りながらも近代化を果たした『後期型』、あるいは『戦後生産型』の【改ゼルグート級】であった。
禍々しい黒を基調とし、船体各所に紅いアクセントが映える巨体。
あんなものをいったいどこから、と少々驚くデスラーの鼓膜を、騒々しい声が殴りつける。
《総統ッ! デスラー総統ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!》
嗚咽と鼻水を啜る音。何とも汚い効果音と共にメインパネルに映し出されたのは、デスラーもタランも想像した通りの男だった。
やや小柄で、かつてはゼーリックの腰巾着でもあった旧ガミラス帝国軍の将校―――【グレムト・ゲール】その人であった。
《ご、ごっ、ご無事でっ! よくぞご無事でっ! このゲールはっ、総統に再び、ふっ、ふだだびっ! おづがえでぎでじあわぜでござい゛ま゛ずぅ゛っ゛!゛》
「……元気そうで何よりだよ、ゲール君」
なんでコイツを呼んだのだ、と抗議するような視線を向けてくるデスラーに、タランは何とも言えない表情で小さく頭を下げるほかなかった。
一歩引いたところでそのやり取りを見ていたミルに至っては、ゴミを見るような目でメインパネルを見上げ凍り付いてしまっている。どうやらガトランティス人にとって、ゲールは色々と理解を超えた存在であるらしい。
もしやランハルト殿は”実働部隊”という名目で行き場のないガミラス軍人の天下り先を作っているのではないか、とすら真面目に疑うタラン。しかし今のデスラー艦隊にとって、貴重な戦力である事に違いない。
しかもまだ生産数の少ない、貴重な改ゼルグート級である。記録ではガミラス地球駐留軍の最高司令官、ローレン・バレル中将の旗艦として稼働している艦が存在している。
最大の特徴はその強固な正面装甲に加え、改ハイゼラード級(ミケラウス級とも)でテストされたゲシュタムウォール―――いわゆる波動防壁を搭載している事だろう。
これによりその防御力は堅牢極まり、生半可な武装では傷一つつけられない。
デスラーを守る”楯”としてはこれ以上ないほど心強いものであろう。
乗り手はともかくとして、だが。
「ゲール君」
《はい、総統! 何なりとこのゲールめにご命令を!》
「……これから私は、ヤマトを討つ」
決着の時だ―――デスラーの背中が、マント越しにそう告げている。
あの
それを沈めるために―――その復讐心だけで、今のデスラーは成り立っている。
ヤマトという復讐相手がいるからこそ、今のデスラーは
「地獄まで、ついて来たまえ。ここから先は修羅の道だ」
対決の時は―――そして決着の時は、すぐそこまで迫っていた。
第七章『無限煉獄』 完
第八章『臥薪嘗胆』へ続く
おまけ
第八章予告(セリフのみ。映像とBGMは脳内補完でお願いします)
ミケール「これより地球・ガミラス安全保障条約に基づき、火星沖でのガトランティス侵攻阻止作戦を開始します」
バレル中将「この戦、勝つには双方が戦力の出し惜しみをしない事。これが絶対条件です」
ガミラス兵「惑星間弾道弾、彗星への直撃コースに遷移!」
パウエル「惑星破壊ミサイル、発射ァ!!」
フラーケン「フッ、いよいよ総力戦というわけか」
バーガー「まだまだ序の口だ! その調子で楔を打ち込め!!」
北野艦長「共鳴波、最大照射!!」
速河艦長「全弾ぶち込めぇ!!」
バルゼー「道を開けろ、大帝のお通りだ!!」
デスラー「久しぶりだね、ヤマトの諸君」
土方艦長「今のヤマトはテレサの道のエネルギーを満載しているんだ。一発でも被弾してみろ、テレサのエネルギーと反応すれば全てが粉々に吹き飛ぶぞ」
古代「島!」
島「了解、小ワープで接舷する!」
ゲール「やらせはせん、やらせはせん! デスラー総統を……ガミラスの栄光をやらせはせんぞ!」
藤堂艦長「まずはあのデカブツを沈める!」
雪「危ないっ!!」
古代「雪ぃぃぃぃぃっ!!」
さらば宇宙戦艦ヤマト2203 ~愛の戦士たち~
第八章『臥薪嘗胆』
近日更新予定
デスラー「古代―――成功を祈る」