さらば宇宙戦艦ヤマト2203 ~愛の戦士たち~   作:往復ミサイル

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カラクルム級が出ましたが、2202のカラクルム級とはだいぶ設定が違います。
今後は登場したオリメカをあとがきで解説したりする予定ですので、もしよければお付き合いくださいませ。


大戦艦

 

 今回の任務は何とも不快な出だしとなった。

 

 何もかもが面白くない―――豪快な人物の多いガトランティス内にあっては珍しく知的で、その細面から策略家といった趣の雰囲気を発するメーザーは、今日に限っては珍しく険しい表情を浮かべていた。

 

 惑星レピメア(※ガトランティス側での第十一番惑星の呼称である)を攻め落とし、地球(テロン)攻略の橋頭保とする。侵略の第一手、重要な役割を大帝から直々に任されたのはこれ以上ないほどの誉れと言っていいだろう。ここで武勲を打ち立てれば彼らメーザー一族の名も上がり、その名は後世において武勇と共に語られる事になる。

 

 本当であれば、彼が先陣を切って最初の砲撃を撃ち込む手筈であった。此度の侵略に合わせ、大帝より与えられた新型艦―――【前期カラクルム級撃滅型重戦艦】の火力を存分に発揮し、彗星帝国ガトランティスの前に立ち塞がる地球軍を粉砕する一世一代の晴れ舞台。しかしそれは、作戦開始の直前になって大帝が新たに組み込み、作戦司令に任命した男によって文字通り泥を塗られる事となる。

 

 疾風の戦士、イスラ・パラカス。シャンブロウを巡る戦いにおいてダガームの副官として戦い、その結果空母キスカを大破、航行不能に追いやられ漂流するという醜態を晒した落ち武者同然の男。

 

 ヤマッテ(ヤマト)に対する復讐に燃える、それはいい。

 

 しかしガトランティス軍には本来、敗軍の将に席など与えられない。勝利か、さもなくば潔く死するべし。汚名を後世に残すなかれ―――それがガトランティスにとっては当たり前であり、敗北した身でありながら大帝に艦隊を与えられた挙句、艦隊司令にまで任命されたパラカスは1000年以上の歴史を誇る白色彗星帝国(ガトランティス)の中でも類を見ない(下手をすれば初めての事例なのではないだろうか)。

 

 全能なる大帝こそ理想の武人であり崇めるべき存在と考えるメーザーではあるが、しかし彼の気まぐれには参ったものだ。いや、もしかしたら人間の復讐心がどのような結果を生むのか、それを見定めようとしているのかもしれない。ガトランティスの将兵が思い至らぬ事を大帝はお考えになる―――ならばこの怒りも、矛を収めて然るべきであろう。

 

 ―――いや、違う。

 

 燻るこの怒りは、敵に叩きつけてこそだ。

 

「3時方向、敵艦隊」

 

「む」

 

 敵艦隊―――もう地球軍の増援艦隊がやってきたのか、とメーザーは眉をひそめながら視線をメインパネルへと向けた。

 

 メーザーの役目は後詰めだ。第十一番惑星軌道上に布陣し、次元潜航艦隊を率いるナスカと共に地球軍の増援が認められればこれに対処、認められなければ支援砲撃や予備戦力の抽出を行い、惑星降下作戦を敢行するパラカスの本隊を支援するというものだ。

 

 面白味も何もない、退屈な任務である。

 

 だがしかし、この前期カラクルム級撃滅型重戦艦の火力を存分に発揮し切る事が出来るのならば、多少は無聊の慰めにもなろう。

 

 はたしてどんな規模の艦隊かと胸を躍らせながら視線をメインパネルに向けるが、しかしガトランティスの国章を模したメインパネルに投影されたのはたった3隻の駆逐艦、あるいはフリゲートで構成された小規模な艦隊であった。

 

 偵察隊だろうか。それとも、たまたま惑星周辺の警備に出かけていて帰ってきただけか―――いずれにせよ、雑魚に過ぎない。カラクルム級4隻を宛がう必要もない、道端の石ころに過ぎないのだ。

 

 だがしかし、敵である事には変わりはない。

 

 ガトランティスにはこのような諺がある―――『真の武人はいかなる時も手を抜かぬ』。

 

 例え相手が弱小だろうと風前の灯火であろうと、常に全力でこれを潰す。それがガトランティスにとっての当たり前であり、手を抜く事は相手への非礼にあたるのだ。

 

 例えそれがたった3隻の小艦隊であったとしても、である。

 

「第一、第二戦隊、右砲戦用意。その他の戦隊は現宙域に布陣、所定の任務を完遂せよ」

 

「了解、右砲戦用意」

 

「戦じゃあ! 合戦の用意をせいッ!!」

 

 無線機に向かって、髭面のさながら野武士のような出で立ちの砲戦士官が怒鳴りたてる。それを合図に、船体各所に搭載されていた回転砲塔が戦闘準備に入った。微かに旋回して敵艦と角度を合わせ、砲口内に計4基設置されたビーム発振装置やリフレクターの照準が合わせられる。

 

 ガトランティス艦に搭載されているビーム兵器の多くがこのような方式だ。砲口内部に4基のビーム発振器を設置し、それから同時にビームを放つことで威力を増幅させているのである。

 

 それでも威力と命中精度は地球・ガミラス両軍のものには及ばないが、砲塔にかかる負荷は低く速射に向くという利点があるのだ。

 

 カラクルム級に搭載されたそれは、ラスコー級やメダルーサ級のそれよりも一回り大きな新型砲だ。

 

 それだけではない。

 

 塔のように聳え立つ特徴的な艦橋。その中間にある部位までもが一斉に旋回したかと思いきや、ガトランティス軍には珍しい砲身が迫り出したのである。

 

 艦橋砲だ―――前期カラクルム級撃滅型重戦艦は艦橋をも武装を搭載するためのプラットフォームと見做し、ありったけの武装を搭載しているのだ。

 

 他にもミサイル発射管や魚雷発射管といった武装も充実しており、全長555mの船体全体が巨大な武器庫と言ってもいい。攻撃に特化させがちなガトランティスの設計思想が現れた、凶悪な火力を誇る艦と言ってもいいだろう。

 

「照準ヨシ!」

 

放てぇい(ガドラァン)!」

 

 口角を吊り上げ、メーザーは命じた。

 

 砲口が一斉に光を放ち―――宇宙空間が、緑色のビームで埋め尽くされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その威容に、多くの者が息を呑んだ。

 

 大戦艦―――その例えが最も適切かもしれない。

 

 多数の巡洋艦や駆逐艦を引き連れてワープアウトしたそれは、今まで確認されてきたどのガトランティス艦とも異なる形状をしていた。

 

 今までのガトランティス艦は、ククルカン級やラスコー級、ナスカ級に見られるように、上下で別々の船体を繋ぎ合わせたような独特な形状をしたものばかりだった(実際、太陽系外縁部の戦闘ではククルカン級が被弾した船体下部を切り離して延命を図り、砲撃を継続したという目撃情報が多数寄せられている)。

 

 しかしあの”大戦艦”はどうか。

 

 まるでシーラカンスのようなどっしりとした船体は、地球防衛軍の最新鋭戦闘艦にして同軍最大を誇る戦艦アンドロメダをも超える。推定で500m強はあるだろうか。

 

 ビームや魚雷の直撃すら通さないような頑丈な船体には無数の兵器が搭載されており、ガトランティス軍の代名詞とも言える回転砲塔も搭載されていた(しかしそれも既存の艦のものと比較すると大型だ)。

 

「敵艦の兵装、本艦を指向!」

 

「レーダー照射を受けています!」

 

 異様なのは、それだけではなかった。

 

 艦橋だ―――塔のように聳え立つ艦橋、その中腹部にも副砲らしきものを搭載しているようで、艦橋の一部が土方率いる艦隊を睨んでいる。

 

 国連宇宙軍時代のキリシマや、現代のアンドロメダにも艦橋砲は搭載されている。しかし前者のものはあくまでも指揮設備と兵装を一体化し観測をやりやすくするためのもので、後者のそれは進路上の障害物排除のための補助兵装に過ぎない。

 

 しかしあのガトランティス艦はどうか。

 

 甲板の上だけでは足りぬと言わんばかりに、短砲身の砲塔を重箱のように積み上げて艦橋を形成したかのような、従来の建造方式に中指を立てるが如き暴挙を成している。

 

(あれだけの船体だ、ビームの出力も……!)

 

 桁違いに違いない。

 

 その危機感が、土方に命令を発する動力源となった。

 

「回避運動! 各艦散開しろ!!」

 

「敵艦発砲!!」

 

 レーダー手の悲鳴じみた報告が艦橋に響く頃には、最初に放たれた第一撃がゆうなぎとはつづきの間を突き抜け、その船体を緑色に照らしているところだった。

 

 立て続けに、土砂降りのようなビームの嵐が艦隊を呑み込んだ。

 

 しかし敵艦も射程ギリギリでの砲撃であるからなのだろう、ビームはどれも船体を掠め、時折波動防壁と微かに接触して蒼いスパークを迸らせるばかりだ。新型艦となっても、命中精度の悪さは完全には克服できていないらしい。

 

 が、それすらも安堵の材料にはならなかった。

 

 下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる―――当たらないならば当たるまで撃ち続ければいい。策も何もない力業であるが、しかし次第に敵艦の砲撃は正確さを増していく。

 

 撃ち返せ、と藤村艦長が唾を飛ばしながら命じた。ゆうなぎ、はつづき、はるさめのショックカノンが火を噴くが、しかし命中したという報告は上がらない。

 

(無理だ。この艦では奴らには勝てない)

 

 拳を握り締め、土方は撤退を視野に入れ始める。

 

「か、艦長! 波動砲を!!」

 

「馬鹿者、こんな土砂降りみたいなビームの中でエネルギーの充填ができるか!」

 

「しかし、ここで座して死を待つよりは―――」

 

「―――はるさめ、沈みます!!」

 

 艦橋の右舷で閃光が生じた。

 

 護衛艦、そしてパトロール艦として建造されたゆうなぎとはつづきとは違い、随伴艦であるはるさめは駆逐艦だ。機関出力も2隻と比較すると貧弱で、その防御力には不安を抱えている。

 

 そんな駆逐艦が、大戦艦から容赦なく放たれるビームの暴風雨の中で無事でいられる筈がなかった。

 

 果敢にショックカノンで応戦しつつ被弾を波動防壁で弾くものの、すぐに限界を迎えたはるさめの船体から波動防壁の蒼い輝きが失われたのはすぐの事だった。

 

 セントエルモの火による加護を失ったはるさめは、瞬く間にビームを射かけられ、船体を大きく抉り飛ばされた。ごっそりと削られるように左舷をもがれた春雨が爆沈、燃え盛る破片を周囲に撒き散らしてレーダーから反応を消失させる。

 

 脱出ポッドに乗る暇すらなかっただろう。

 

 今のところゆうなぎとはつづきは健在だが―――このまま正面から殴り合いを続けていれば同じ運命を辿るであろう事は想像に難くなかった。

 

「波動防壁出力、40%を切りました!」

 

「司令、はつづきより入電!」

 

 パネルに出します、と通信士が続けると、艦橋のメインパネルにはまだ若い、30代半ばほどの艦長の顔が映し出された。メガネの奥には優しそうな目があり、軍服姿でなければ学校で子供たちに勉強を教える先生のような、そんな雰囲気を放っている。

 

 はつづきの方も余裕がないのだろう―――というよりも、先ほどからゆうなぎを守るように矢面に立って奮戦しているはつづきのほうが被害状況は深刻なようだった。

 

 推力までもを制限し、余剰エネルギーを武装と防御に回しているのだろう。先ほどからゆうなぎの左斜め前に位置するはつづきのエンジンノズルは、不規則的に明滅を繰り返していた。

 

《土方指令、ここは我々に任せて撤退を》

 

「しかし―――しかし如月艦長! それでは君が……!」

 

 歴史とは繰り返すものである。

 

 ガミラス戦役時の冥王星沖海戦時、戦友だった沖田も同じ状況で苦渋の決断を迫られた。撤退のために、古代守が艦長を務めるユキカゼに殿を任せる羽目になったのである。

 

 今の状況は、まさにその再演だった。

 

 冗談ではない、と土方は歯噛みする。

 

 彼をここまで連れてきた艦隊の連中とは付き合いも何もない。第十一番惑星へ土方を置いて行ったら、後は今の基地司令である更科を乗せて地球へ戻るだけの任務であり、彼等ともそれだけの付き合いだった。

 

 しかし―――だからといって、自分よりも若く、まだ未来のある若手を死なせるような事があっていい筈がない。

 

(沖田……お前もそうだったのか)

 

 今は亡き戦友に、心の中で尋ねる。

 

 しかし彼は、沖田は答えてはくれない。心の中、暗闇でこちらに背を向け、押し黙ったままだ。

 

《土方指令、あなたはこんなところで死んでいい人間ではない筈です。どうか生きてください。生きて、生きて……青い地球を、どうかよろしくお願いします》

 

「待て、如月艦長!」

 

 笑みを浮かべ最期の敬礼をする彼の姿が、メインパネルから消えた。

 

 それを合図に、はつづきが最期の力を振り絞って前に出る。もう既に波動防壁の光は疎らで、出力が限界に達しているのは明白だった。

 

 だがそれでも、ここで沈んだとしても、ここから先へ一歩たりとも通してなるものか。鬼気迫る執念のようなものを纏いながら、はつづきは果敢に応戦を続けた。ショックカノンを立て続けに連射、ミサイルや魚雷も大盤振る舞いと言わんばかりに斉射して、敵艦隊の艦列の中に火球をいくつか生み出す。

 

「……艦長、転舵反転。ワープで離脱する」

 

「司令!」

 

「……了解。本艦は地球へ向かいます。進路反転」

 

「進路反転、ヨーソロー!」

 

 スラスターから光を放ち、ゆうなぎの船体が回頭を開始。エンジンノズルをはつづきへと向け、ワープのために加速を始めていく。

 

 はつづきの船体からはもう、波動防壁は失われていた。緑色のビームが装甲を焼き、砲塔を撃ち貫く。小型の船体がたちまち火達磨になったが、それでもなお艦首下部のショックカノン砲塔は左側の砲身を叩き折られた状態でも、右側の砲身で応戦を続ける。

 

 しかしその抵抗も、長くは続かなかった。

 

 敵艦隊から放たれたオレンジ色の光子魚雷が立て続けに命中、前部甲板から艦橋基部にかけての広い範囲を大きく抉り取る。

 

 反転しワープに入ったゆうなぎの姿を認め、安堵したのかどうかは定かではないが―――ただ1隻奮戦したはつづきは運命を受け入れるかのように力尽き、第十一番惑星沖で1つの火球となった。

 

「ワープ!」

 

 藤村艦長の号令で、ゆうなぎが更に加速する。

 

 間もなくワープに入る―――その直前だった。

 

「左舷より魚雷が―――」

 

 さっきの次元潜航艦だ。まだ生き残りが居たらしい。

 

 戦場からの離脱を図るゆうなぎを撃沈するべく放った当てずっぽうの魚雷だろうが、しかし今に限って勝利の女神はガトランティスに微笑んでいるようだった。

 

 ワープ空間に突入する直前―――よりにもよって波動防壁を展開していない状態のゆうなぎの左舷に、1発の魚雷がぶち当たる。

 

 火達磨になりながらも、ゆうなぎはワープ空間へと飛び込んだ。

 

 第十一番惑星沖に、再び静寂が訪れた。

 

 

 

 




前期カラクルム級撃滅型重戦艦
武装
・440mm大型回転砲塔×3
・440mm連装ビーム砲×1(艦橋前)
・300mm3連装艦橋砲×3
・光子魚雷発射管×20(艦首安定翼部)
・ミサイル発射管多数
・その他対空回転砲塔多数
 
 全長555mのガトランティス軍最新鋭戦闘艦。ガトランティスの地球侵攻開始を受け急ピッチで建造された。同軍最大の船体に最大の武装を惜しみなく搭載した、まさに「大戦艦」の名にふさわしい戦闘艦であるが、建造のペースが地球侵攻開始に間に合わない事が判明し武装の一部を簡略化、先行量産という形で就役したのがメーザーの乗る『前期カラクルム級撃滅型重戦艦』である。
 現在、彗星内部の工廠にて本来の武装を搭載した【後期型】なる艦が建造中とされているが……?




2202との相違点
・ガイゼンガン兵器群ではない
・そもそもガイゼンガン兵器群という概念が存在しない
・つまりは生えてこない
・旋回雷撃砲、インフェルノカノーネといった砲撃システムは未搭載
・でっかい船体にでっかいビームをとにかく積み込んだ大型戦闘艦である


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