さらば宇宙戦艦ヤマト2203 ~愛の戦士たち~   作:往復ミサイル

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投稿直前ギリギリまでサブタイトルを「コスモ八つ当たり」にしようか悩みましたが、さらばでふざけてはいかんだろと思い留まりました。
大暴れするアマテラスが書きたかったので作者としては満足です。


アマテラス、吶喊

 

「ぶち殺せ」

 

 アマテラス艦長―――速河力也の軍人とは思えぬ指示を受け、アマテラス船体各所に搭載された三連装40.6cmショックカノン砲塔、合計12基36門にも及ぶそれが一斉に火を吹いた。

 

 何もない空間へと刺し穿つように突き入れられたショックカノンのエネルギーが互いに絡み合い、やがて1つの流星へと姿を変え、通称『ガトランティスぶち殺し艦隊』に対し無防備な艦尾を晒す前期カラクルム級のエンジンノズルをぶち抜いた。

 

 推進部から発せられる光が鬼火のような蒼から爆炎を伴った赤へと変わり、全長555mのカラクルム級の巨体がぐらりと揺らぐ。

 

(堅いな)

 

 AIからの『敵艦健在』という報告と、メインパネルに投影される被弾したカラクルム級の姿を見ながら速河艦長は思う。

 

 未確認の敵艦―――この第十一番惑星防衛戦で初めて観測された敵艦は、全長555mというガトランティス軍最大規模のサイズである事は、ヤマトが回収したゆうなぎからの情報で把握している。

 

 やはり質量が大きいという事はそれだけ防御力を保証されているという事だ。

 

 戦艦は敵艦と殴り合うのが仕事である。一撃で沈むようでは、さすがにヤワが過ぎるというものだ。

 

 アマテラスの砲撃を合図に、ワープアウトからまだそう時間が経っていないアルフェラッツやドレッドノート級たちもショックカノンの砲撃を開始した。他のカラクルム級やラスコー級、ククルカン級に蒼い陽電子ビームの束がスコールさながらに降り注ぐ。

 

 ヤマト級のショックカノンは一撃がとにかく重い。ガミラス艦さえも一撃で破壊できるほどの威力があるが、しかしそれでは威力が過剰に過ぎるという判断から、アンドロメダやドレッドノート以降の艦ではショックカノンの出力と口径が落とされている。

 

 総合的な威力は低下したものの、それでも敵艦を一撃で戦闘不能にするには十分な威力を確保しているし、砲身中間部に搭載されているエネルギー増幅装置の恩恵もあって、ゼルグート級の正面装甲をも貫通できるほどの貫通力は保証されている。

 

 そして何よりもの強みが、その速射性だった。

 

 敵艦を一撃で轟沈させられるほどの威力の主砲が、速射砲さながらに放たれるのである。

 

 それは砲撃というよりも”掃射”という表現が似合うほどのものだった。

 

 第十一番惑星沖が、瞬く間にショックカノンの蒼い光に塗りつぶされる。

 

 被弾したラスコー級が炎上、そのまま反撃する事も叶わず沈んでいく。それよりも小柄なククルカン級の数隻は辛うじて反転に成功、自慢の回転砲塔からビームを機関砲のように射かけてくるが、しかし突然の奇襲に混乱しているのだろう。ただでさえ精度のあまり良くないビーム砲の狙いは滅茶苦茶で、地球艦隊には掠りもしない。

 

「何をやっていやがる」

 

 砲術員からの叩き上げでもある速河艦長は、敵の情けなさを嘆いた。

 

 あんな狙いでは百年経っても命中弾は出ないだろう。命中精度が悪く当たる可能性が低いというのならば、敵艦の艦長ももっと距離を詰める判断をすればいいだろうに、と。

 

 だがしかし、敵が間抜けだというならば好都合だ。

 

「―――全艦、”突撃陣形”に移行。このまま敵艦列の中央突破を敢行する」

 

《突撃陣形了解、全艦に通達》

 

 指示を聞き受けたアマテラスのAIが、その命令を他の艦のAIにも瞬時に共有した。

 

 砲撃を続けるアマテラスの後方へ、アルフェラッツや他のドレッドノート級、護衛艦たちがスラスターを吹かしながら移動を開始。陣形変更中の無防備な友軍を、先頭を進むアマテラスがショックカノンの弾幕で援護する。

 

 単艦でもその猛攻はとにかく凄まじく、敵艦の反撃をほぼ許さないほどだ。船体各所に備え付けられた三連装ショックカノン12基、合計36門の速射は壮観の一言である。

 

 被弾したカラクルム級もやっとの事で回頭、艦橋砲や回転砲塔を総動員してビームを射かけ始めるが、しかし合計6隻の前期カラクルム級の舳先が地球艦隊を睨む頃には、既に旗艦アマテラスを先頭とした”突撃陣形”が完成していた。

 

 それは実に、傍から見れば奇妙極まりない陣形だった。

 

 火力、速力に優れるアマテラス級を先頭に、その後方に防御型アンドロメダ級アルフェラッツを、その後方に護衛艦を配置、その周囲を囲むように上下左右にドレッドノート級が展開するという、正面から見れば錐のようにも見える陣形。

 

 アマテラス艦橋に『陣形変更完了、全艦連動』の報告が上がるや、速河艦長はその眼光を鋭く光らせながら口元に笑みを浮かべた。

 

「―――全艦最大戦速、殺しに行くぞ!」

 

《全艦最大戦速。設定コース、A-1-1》

 

 どう、とメインエンジンが橙色の光を放った。

 

 急加速を始めた旗艦に率いられ、アルフェラッツやドレッドノート級、護衛艦たちも急加速を開始する。

 

「全艦、長距離魚雷発射!」

 

 艦首の魚雷発射管が展開、装填された長距離魚雷が一斉に放たれる。

 

 より長距離での交戦を想定、推進剤を増量した長距離魚雷の一斉射。艦橋の窓の向こうへと突き進んでいく魚雷の群れを見ながら、アマテラスの川端戦術長は息を呑む。

 

 始まった、と。

 

 速河艦長が得意とする、突撃陣形からの敵艦隊中央突破。

 

 演習において再三に渡りガミラス艦隊を分断に追い込んだ、彼の得意とする戦法―――現在、それを唯一止めたのはガミラス地球駐留軍の名将、ローレン・バレル中将のみである。

 

 彼等と交戦経験も無ければ面識もない、そもそも戦術という概念を持っているかすら怪しいガトランティス(蛮族共)が、それを見抜き食い止められる道理もなかった。

 

 発射された長距離魚雷へ、ガトランティス艦隊の火線が集中する。一発、また一発と緑色のビームに撃ち抜かれた魚雷が爆散、宇宙に紅い華を咲かせていくが、しかしそれを突破した数発の魚雷がカラクルム級のうちの1隻の艦橋を直撃、艦長率いる艦橋クルーを瞬く間に戦死させた。

 

 メーザー提督の旗艦『ガノイア』にも魚雷が迫るが、しかし大将を死なせてはならぬと2隻のククルカン級が魚雷と旗艦の間に割って入った。

 

 艦底部に数発の魚雷が突き刺さり、下部構造物を分離させる暇もないまま、旗艦の眼前で2隻の駆逐艦が火球と化す。

 

 接近してくるであろう地球艦隊へ砲撃を命じるメーザー提督ではあったが―――しかし全ては、遅すぎた。

 

 魚雷の一斉射撃に対し迎撃という選択肢を取ってしまった時点で、既に速河艦長の術中に嵌ってしまったのである。

 

 回転砲塔がビームを射かけ始める頃には、既に地球艦隊はガトランティス艦隊に対して最大戦速で肉薄、ショックカノンを近接モードに切り替えたうえでの砲撃を開始していたのだから。

 

 ガトランティス軍の将兵が慌てふためく様子を想像しながら、速河艦長は立て続けに命令を飛ばす。

 

「波動防壁、艦首集中展開。波動衝角システム起動!」

 

 アマテラスの艦首から、蒼い光が漏れた。

 

 波動防壁、艦首集中展開―――通常であれば船体の全体をくまなく覆う波動防壁を、艦首を中心に集中展開する事による突撃戦術は、ガミラス戦役でヤマトが披露した。

 

 これを受け、ハヤカワ・インダストリーの技術陣はこう考えた。

 

 『亜光速で飛行する宇宙戦艦であれば、敵に肉薄しての体当たり攻撃の機会も増えるのではないか』と。

 

 ならばそれも前提とした突撃戦闘システム構築に流れが繋がるのは、当然の摂理と言えよう。

 

 それを受けてアマテラスに搭載されたのが、この波動衝角システムである。

 

 武骨な形状になった艦首衝角、そこに集中展開させた波動防壁を以て敵艦へと突撃し撃沈に追いやるという、ガミラスでも前例のない武装。

 

 それがついに実戦で使用される日が来たのである。

 

 それに倣うように、後続の艦も艦首へ波動防壁を集中展開。アルフェラッツも波動共鳴システムをフル稼働させ、周囲の友軍艦へ絶え間なく波動エネルギーの供給を行い続ける。

 

 飽和状態に達した波動エネルギーの影響なのだろうか、集中展開した波動防壁の輝きが蒼から橙色へと変色していった。

 

 さながらそれは、全長460mの流星にも思えた。

 

「目標、敵旗艦!」

 

 既に敵旗艦がその艦かは、アマテラスのAIが戦闘と並行しつつ敵艦の通信量から特定してくれている。

 

 アマテラスの舳先が睨むのは、カラクルム級の艦列でただ一隻、白と銀色の二色で塗装されている艦だった。

 

「―――ぶつけてでも落とす!」

 

 猛進するアマテラスの前に、ラスコー級が躍り出る。

 

 ここから先へは行かせぬという気概が感じられたが、それがどうした。

 

 射かけられる緑色の陽電子ビームを片っ端から弾きながら、アマテラスは他の艦を引き連れたまま直進を続けた。

 

「進路上に敵艦!」

 

「構わんッ、敵艦ごと粉砕せよ!!」

 

 たった1隻のラスコー級で、この改アンドロメダ級を止められる筈もなかった。

 

 敵艦の艦長の身を挺した決死の迎撃も、しかし橙色に変色した波動衝角に触れた途端に全てが灰燼に帰したのである。

 

 船体が接触し、軋む音が艦橋にまで響いた。

 

 ギギギ、と装甲材が剥がれ、歪み、ひしゃげて砕ける音。圧倒的物量が、相手の質量を押し退け、屈服させる轟音はいつ聴いても心地の良いものだ、と速河艦長は思う。

 

 言うなれば、それは艦の断末魔だった。

 

 アマテラスは、立ち塞がったラスコー級の船体上部へ乗り上げる形で接触した。

 

 艦首上部の衝角と前部甲板に備え付けられた回転砲塔、続けて艦橋が豪快にもぎ取られていく。敵艦の艦橋に居た勇敢な艦長たちは自らの死を悟る暇すらなく圧死していった。

 

 そのまま推進部の上部までもぎ取ったアマテラスが、後方で爆発するラスコー級の爆発を背にメーザー提督の旗艦『ガノイア』へと迫った。

 

 より大口径の回転砲塔が火を吹き、艦橋砲が土砂降りの如き勢いで破砕エネルギーを叩きつけてくる。

 

 が、アマテラス艦首でセントエルモの火さながらに光を放つ波動防壁はその貫通を許さない。アルフェラッツからのエネルギー供給で強化(バフ)を受け、より一層強度を増したそれが、大口径の陽電子ビーム砲をいとも容易く弾き飛ばす。

 

 もう、彼等を食い止める手はなかった。

 

 迎撃は叶わぬと判断したのだろう、カラクルム級戦艦『ガノイア』が船体右舷に無数のスラスターの光を迸らせた。体当たり攻撃を目論むアマテラスを迎撃できないならば、闘牛士の如く紙一重でやり過ごそうというのだ。

 

 直後、両者が接触した。

 

 波動衝角の輝きがカラクルム級の右舷から伸びる艦首安定翼と、船体後部に位置する大型の安定翼を根元からもぎ取った。接触した装甲材がベキベキと音を立てながら引き剥がされ、より大型の艦である筈のカラクルム級が、まるで地球艦隊の殺意に怯える獣のようにぶるぶると激震する。

 

「近接戦闘!」

 

 アマテラスの右舷、バルジ部のハッチが開く。

 

 そこから顔を出した隠匿式パルスレーザー群が掃射を開始、接触し右舷を大きく抉られつつあるカラクルム級に紅い舌を伸ばす。

 

 とはいえさすがに相手は戦艦、パルスレーザー程度の攻撃で容易く轟沈する筈もなく、パルスレーザーの掃射は装甲表面のコーティングで弾かれるか、ぽつぽつと損傷とも言えぬ穴を穿つのみではあったが、しかし敵艦の艤装を破壊するには充分であった。

 

 そして敵への挑発にも。

 

 敵艦の安定翼を大きくもぎ取りながら通過するアマテラス。その艦橋のメインパネルには、右舷の安定翼を奪われ爆発しながらもワープで戦線離脱しようとする敵旗艦の後ろ姿が映っていた。

 

 チッ、と速河艦長は、その後ろ姿を睨みながら舌打ちする。

 

「敵旗艦は逃したか、まあいい……」

 

 既に敵艦隊の陣形は突破したようなものだった。

 

 随伴するドレッドノート級たちも、旗艦に倣い波動防壁を艦首に集中展開。進路を塞ぐククルカン級やラスコー級、挙句の果てには格上である筈のカラクルム級の艦橋へと体当たりをぶちかまし、次々に轟沈、あるいは航行不能へと追い込んでいる。

 

 自分の指揮下にある艦だけならばともかく、合流したばかりのアルフェラッツ艦隊の艦もこうまで勇猛果敢であったことは、速河艦長にとっては嬉しい誤算と言えた。

 

 彼が欲するのは死ぬ覚悟を決め、共に雄叫びを上げながら血の河を渡るような、そんな兵士なのだ。

 

 敵艦隊の中央突破は達成された―――後は混乱する敵を各個に撃破するだけである。

 

 勝利は目前であった。

 

「進め進め! 勝利の女神は、諸君らに下着をちらつかせているぞ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 右舷大破、安定翼脱落、旗艦推力65%に低下―――。

 

 非常灯で紅く照らされるカラクルム級の艦橋の中、聞きたくもない報告ばかりが上がってくる状況に追いやられながら、メーザー提督は震える唇で小さく言葉を紡いだ。

 

 「ありえない」、と。

 

 本当にあれが、数年前まではガミラスの侵略で絶滅の危機に瀕していた種族なのか。その軍隊があんなにも精強で、ガトランティス軍を圧倒するほどのものなのか。

 

 否、そんなはずはない―――そんな事はあってはならない。

 

「提督、反転して迎撃を―――」

 

「―――撤退だ」

 

「提督……!?」

 

 くわっ、と隣に立つ副官を睨みながら、メーザー提督は叫んだ。

 

「こんな状態で戦えるか! 本艦は戦線を離脱する!」

 

「しかしまだ将兵が戦い続けております! 見捨てる事など―――」

 

「副司令に指揮を引き継がせろ! 応急処置完了後、本艦は敵艦隊を追撃する」

 

 急げ、と急かすように命じると、副官は本当にそれでいいのかと言わんばかりの顔で命令を復唱、次元跳躍(ワープ)に入るよう命じた。

 

 事実、メーザーの艦は戦闘力を大きく削がれていた。

 

 辛うじてアマテラスの突撃を回避したとはいえ、右舷の安定翼や武装を根こそぎもぎ取られた上、近距離でのレーザー機銃(パルスレーザーである)の掃射を受けた事により艦橋周りのセンサー類も中破。それ以外にも多大な損傷を抱えており、とてもではないが戦闘を継続できる状態ではなかった。

 

 宙に浮かぶ死体のようなものである。

 

 やがて、メーザーの艦が白いガスのようなものを纏いながら加速に入った。周囲を地球艦隊のショックカノンが掠めていく中、一気に加速したカラクルム級は白いガスの渦の中へと飛び込んでいく。

 

 やがて1隻のカラクルム級の反応が、第十一番惑星沖から消えた。

 

 衛星軌道上での戦闘の勝敗は、これで決したと言ってもいい。

 

 

 

 

 あとはヤマトが、疾風の戦士イスラ・パラカスの駆るメダルーサ級を撃ち果たすのみ―――。

 

 

 




※突撃陣形は3199の無人艦隊がやってたあの陣形をご想像ください。大体あれです。
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