さらば宇宙戦艦ヤマト2203 ~愛の戦士たち~   作:往復ミサイル

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今回ちょっと短めです。


バーガー戦闘団、抜錨

 

 惑星ガミラス

 

 首都バレラス

 

 第七十一宇宙港

 

 

 

 

 

 当たり前の話だが、星が違えば文化も違う。

 

 そしてそこに住まう人間の感性もまた、違ってくる。

 

 明るい色合いを基調とする地球様式の宇宙港と比べると、ガミラスのそれは暗く、どこか深海を思わせる。壁面にはまるで菌類のような模様が浮かぶという地球人には理解できない様式だが、しかしガミラス人からすればまさにそれが落ち着く風景、というわけだ。

 

 異なる星で異なる文化を育み世代を重ね、異なる価値観を持つ人間同士が互いを理解し合うというのは、言葉で言う以上に困難なものである。

 

 軍用車の後部座席でお気に入りの紅茶を飲みながら、ミケールはそう思った。

 

 バックミラーに映る後部座席の窓の向こうには、地球からやってきた宇宙戦艦『キイ』の西村艦長らが乗るガミラスの軍用車が続いて走っている様子が見える。運転手はこちらが手配したガミラス人で、助手席に乗るのはミケールが手を回したザルツ出身の護衛官。その後部座席にキイの艦長や副長といった重要な役職に就く乗員が乗り込んでいる。

 

 先ほど、総統府を発つ際に少し会釈したミケールだったが、やはりというべきか、キイの艦長らはあまりガミラス人を快く思っていないようだった。政治上では同盟国、「これまでの事は水に流してこれから明るい未来に向かって仲よくしましょうね」というお題目を垂れ流しているものの、実態は真っ向からの殺し合いが無くなっただけで、互いに互いを睨み合っている不安定なものだ。

 

 紙に鉛筆で書いた文字は簡単に消せる。だが、互いに血を流し合い、殺し合った歴史そのものは絶対に消えない。それは民族の心、その深奥に根深く根付いて未来永劫残り続けるだろう。

 

(だから戦争は嫌なんだ)

 

 ミケールとしては、地球(テロン)との開戦には反対の立場だった。しかしいくら元ガミラス貴族とはいえ、先代当主とザルツ人のメイドの間に生まれてしまった庶子という立場では反論する事も出来ず、唯々諾々と命令に従う事しかできなかった。

 

 望まぬ戦争を戦い、そしてその戦争が遺した負の遺産は、今もミケールの心に傷を刻んでいる。

 

「ご主人様、紅茶のおかわりは」

 

「ああ、もらうよ」

 

 クラリスにティーカップを渡し、窓の外を見た。

 

 バレラスの軍事区画、この橋を渡り切ればその先は宇宙港だ。たった今もガイデロール級に率いられたデストリア級とクリピテラ級が、宇宙港を後にしガミラスの緑の大地を飛び立っていく。

 

 クラリスから貰った紅茶を口へと運んだ。ポルメリア産のジャムにミルクを混ぜた、まろやかな味わい。つい思いつめ精神的疲労を蓄積させてしまいがちなミケールにとって、糖分とは切っても切り離せない隣人のようなものだった。

 

 橋を渡り切り、ゲートを通過して宇宙港へ。

 

 楕円形の大きな台座の上には、既に3隻のガイペロン級宇宙空母が停泊していた。

 

「……?」

 

 よく見ると、ガイペロン級の装備が異なっていることが分かる。

 

 ガイペロン級は合計で4つの甲板を持つ。航空機の発艦の他、船体後部にも着艦用の飛行甲板を持つため、航空隊の素早い出撃と着艦、補給しての再出撃が容易に行える設計になっているのだ。

 

 しかしそれ故に船体の防御力はお世辞にも高いとは言い難く、前線での戦闘にはとことん向かない。七色星団の戦いでも、同級の最新仕様『バルグレイ』が4発の対艦ミサイルで轟沈した事例がある事からも分かる通り、この空母にとって敵との遭遇は死を意味する。

 

 だが、それがどうした事か。

 

 停泊している紫色のガイペロン級―――幸運艦として名高い『ランベア』の第二甲板に、巨大な480mm陽電子カノン砲の砲塔が2基もででんと置かれているのである。

 

 装甲が薄く、武装も非力なガイペロン級になぜそのような改修を、とミケールは訝しんだ。艦のコンセプトに相反する設計は、ミケールにとっては特異なものと映ったに違いない。

 

 話には聞いていた事だ―――ガイペロン級の追加装備『重武装ユニット』。

 

 航空機の運用に特化しすぎるあまり、居住性が劣悪そのものとなったガイペロン級を長期遠征に用いるには、乗員に対する負担があまりにも大きかったというのは軍関係者の間では周知の事実だ。実際、ミケールの知り合いも割り当てられた配属先の艦がガイペロン級だと聞かされた時は大きく肩を落としており、空母は”ハズレ”であるという認識が軍内部には確かにあった(聞いた話では個室があるのは艦長や副長などの上層部のみで、一般の乗員は通路で眠る事も珍しくなかったという)。

 

 それを改善しつつ、艦砲射撃にも対応できるようにしたのがあの重武装ユニットというわけだ。第二甲板を砲戦区画と居住区画に割く事で、航空機搭載量と引き換えに長期の作戦行動能力と高い砲戦能力を付与する、というものである。

 

 噂ではミケールの艦『ミケラウス』などでテストされていた初期ロットのゲシュタムウォールも、ユニットに追加装備する形で搭載されているのだとか。

 

 ランベアのドックの手前で車が停まる。運転席が後部座席を開けてから外に出ると、強烈なオイルの臭いがバレラスの風と共にミケールらを出迎えた。

 

「久しぶりですな、少将閣下(・・・・)

 

 そう言いながらミケールたちを出迎えたのは、3名の部下を従えたガミラス人の男だった。

 

 蒼い肌に顔の古傷、そして鋭い眼光……ドメル艦隊に所属していた頃のやんちゃな雰囲気は鳴りを潜め、今となっては百戦錬磨の艦隊司令といった貫禄を持つ男だ。

 

「これはこれは、バーガー大佐。お元気そうで何よりです」

 

 出迎えてくれたフォムト・バーガー大佐と握手を交わし、ちょっとだけ気まずい空気を互いに感じ合う。

 

「ドメル艦隊以来ですかな」

 

「ええ、本当に懐かしい」

 

 元々、ミケールもドメル艦隊に所属していた。

 

 そこでドメルの戦術を研究しつつ艦隊を指揮していたのだが、その際にバーガーや、当時のドメルの部下だったシュルツとも知り合っている。

 

 ドメル艦隊を離れてから彼の戦術を学び自らの力として昇華させたミケールは、そこから頭角を現し面白いほどに昇進を続け、今となっては先輩だったバーガーの上官にまで上り詰めてしまったのである。

 

 だから2人は、ミケールからすればバーガーは『年上の部下』、バーガーからすれば『年下の上官』であり、しかも面識があるが故に何とも気まずい関係にある。

 

(この人……やっぱり敬語似合わないなぁ)

 

 他の軍関係者もいるからなのであろう、バーガーが相当無理をして敬語で話しているのはミケールにも察しがついた。

 

「まあ、立ち話も何です。どうぞ艦へ。歓迎しますよ少将殿」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バーガー戦闘団―――ミケールがそうであるように、ドメル将軍の元で戦ったバーガーもまた、かの名将から戦い方を学んでいた。

 

 シャンブロウの戦いでガトランティス艦隊相手に奮戦したという話は名高く、今となってはガミラス艦隊の中でも最精鋭部隊であると目される程だ。

 

 七色星団での戦いが転機となったのだろうか。元々メルトリア級を旗艦とし機動力を生かして敵陣に切り込む戦い方を好んでいたバーガーが空母を旗艦としている事に、ミケールは多少の違和感を抱いていた。

 

 バーガー戦闘団を構成する艦は10隻。

 

 旗艦はこのランベア。他に初期型のガイペロン級『バルメス』と、同じく中期型『バイザック』の2隻が艦隊に編入されており、他はケルカピア級3隻、クリピテラ級4隻という機動力に優れた艦で構成されている。

 

 そして今回の航海に限っては、”客人”も一緒だった。

 

(やはり奇妙な艦だ)

 

 そう思いながら艦橋の窓の向こうをじっと凝視するミケール。その視線の先にあるのはガミラスでは珍しいタイプの、真っ黒な宇宙戦艦だった。

 

 かつての水上艦艇を原型としているのだろう、喫水線から下は赤く塗装されていて、艦首には大きな瘤を思わせるバルバス・バウがある。前部甲板には砲塔があり、その後方に艦橋、煙突らしきパーツ、そして後部艦橋の砲塔群が続く。

 

 その姿はガミラスを打ち破った地球の戦艦、ヤマトに酷似していた。

 

 それもその筈である。

 

 こうしてバーガー戦闘団と舳先を並べているのは、地球のヤマト級戦艦の同型艦『キイ』なのだから。

 

 ヤマト級の中でも最後発の艦として建造されたキイが就役したのは、ヤマトがバラン星を突破した時であると開示された資料に記されている。バラン星といえばゼーリック元帥によるデスラー総統暗殺未遂事件に亜空間ゲートの破壊と、余りにも大き過ぎる出来事が連なった星としてミケールは記憶している。

 

 当時ミケールもゼーリックに召集をかけられ、当時の乗艦だったガイデロール級を指揮しバラン星の観艦式に参加、配下の艦隊と共に間一髪のところで爆発するバラン星から離脱したという嫌な思い出がある。

 

 ミケールもその時に見たのだ。

 

 地球(テロン)(フネ)、”ヤマト”を。

 

 技術交流のため、ガミラスへとやってきたヤマト級のキイ。就役がヤマト級の中でも最後発となった彼女はアンドロメダ級のテストヘッドとして様々な最新技術が搭載され、その形状は他の姉妹たちと大きく異なる。

 

 ガミラスへやってきたキイは、しかしガミラス政府の思惑からガトランティスとの戦いにも駆り出されており、その性能を遺憾なく発揮していた。しかし延長に延長を重ねた滞在期限も過ぎ、ついに地球へと帰る日がやってきたのである。

 

 宇宙港のキイの近くには、『さようならキイ。また会う日まで』と地球語とガミラス語の双方で描かれた横断幕が掲げられており、軍楽隊が地球の軍歌を演奏し終えたところだった。

 

「大佐、艦隊司令部より出航許可下りました」

 

「ようし、行くか」

 

 ニッ、と笑みを浮かべ、バーガー戦闘団を率いるバーガーは命じる。

 

「これより我が艦隊は、地球(テロン)を目指し出撃する。抜錨、全艦発進せよ!」

 

 ごう、とランベアのエンジンノズルが炎を発した。

 

 艦底のスラスターも吹かしながら、その巨体に見合わぬ機動性で上昇していくランベア。それに同じく重武装ユニットを搭載したバルメス、バイザック、他の護衛艦群が続く。

 

 はるか向こうの宇宙港には、ミケールの乗艦だった『ミケラウス』の艦影があった。

 

 地球圏にある第三バレラスで建造中の新造戦艦を受領するため、馴染みのあるミケラウスはガミラスへ置いていく事になる。少しばかり寂しい思いをさせてしまう事を考えながらも、ミケールは頭上に広がる星の海へと視線を向ける。

 

 地球とガミラスの渦巻く陰謀。

 

 混迷の最中でも、しかしイスカンダルは蒼く輝いていた。

 

 

 

 





宇宙戦艦『キイ』

武装
・40.6cm三連装陽電子衝撃波砲塔×4
・艦首重力子スプレッド発射機×6
・速射魚雷発射管(船体側面、艦尾それぞれ6門)
・艦橋防護ショックフィールド砲×4
・対艦グレネード発射機×4
・多目的防空ミサイルシステム
・隠匿式拡散パルスレーザー砲×6
・隠匿式パルスレーザー砲×14
・波動爆雷投射システム×2
・試作拡散波動砲

 ヤマト級四番艦として就役したヤマトの同型艦。しかしムサシ、シナノと比べて就役はヤマトがバラン星を突破した時期であり、ムサシとシナノが太陽系から資源回収を行った事により技術や資源供給も安定の兆しを見せていたことから、次世代型戦闘艦に用いる新技術のテストヘッドとしての活躍を期待され、実験艦となった。
 そのため見た目はヤマトと大きくかけ離れており、主砲はアンドロメダ級のものとなっているほか、艦橋もアンドロメダ級のものと似通ったデザインになっており、武装も多くが隠匿式を採用するなどステルス性を意識している。
 最大の特徴は試作拡散波動砲であり、これを原型として現在の拡散波動砲が完成した。

 武装、システム開発の多くをハヤカワ・インダストリーが担当している。




ランベア(重武装ユニット)

武装
・480mm三連装陽電子カノン砲×2
・330mm陽電子ビーム砲×6
・魚雷発射管(多数)
・対空レーザー機銃(多数)
・試作波動防壁システム

 
 幸運艦として知られるランベアに重武装ユニットを搭載したもの。これにより艦載機搭載能力は減少したが、火力及び機動性、防御力の向上と長期間の作戦行動が可能となり、運用の柔軟性が大きく増した。
 バーガー戦闘団の旗艦として、ミケールを乗せ地球へと向かう事となる。艦隊司令はフォムト・バーガー大佐。



バルメス(重武装ユニット)

武装
・ランベアと同じ

 バーガー戦闘団の一翼を担う3隻の空母の1隻。艦名バルメスはガミラス語で『攻撃する』に由来。
 ガイペロン級の中でも初期型に分類される旧式艦だが、重武装ユニットの搭載で最新鋭戦闘艦に匹敵する能力を獲得した。バーガー戦闘団の一員として地球圏へ向かう。




バイザック(重武装ユニット)

武装
・ランベアと同じ

 バーガー戦闘団の一翼を担う3隻の空母の1隻。艦名はガミラス語で『平らげる、食い尽くす』を意味する言葉に由来(※2199のドメル艦隊VSガトランティス艦隊にて実際にバーガーが発言)。
 ガイペロン級の中でも中期型に分類される最も普及したタイプ。バーガー戦闘団編入前はデスラー親衛隊に所属していた。そのためか現在も塗装は蒼い。


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