さらば宇宙戦艦ヤマト2203 ~愛の戦士たち~   作:往復ミサイル

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強襲、ゼオ・デウスーラ

 

《大型ミサイル、01から10まで転移完了。ヤマトの迎撃を受け撃墜された模様》

 

 メインパネルにはミサイルに搭載されたカメラからの映像が映っている。ちょうど無防備なヤマトの左舷に出現した大型ミサイルは、しかし即座に迎撃態勢を整えたヤマトのパルスレーザーに、あるいは側面へと向いた魚雷発射管からの短魚雷攻撃を受け、次々に火球と化していく。

 

 映像を送信していたミサイルもそうだった。パルスレーザーの紅い槍衾が穂先をこちらへと向けるや、メインパネルには不快なノイズだけが残る。

 

 全弾撃墜された模様―――そんな不甲斐ない報告を聴いても、デスラーは眉ひとつ動かさなかった。

 

 むしろガミラス貴族のような優雅な動作で、ガミロイド兵が持ってきてくれたティーカップにジャムを加えてから香りを楽しみ、口へと運ぶ余裕すら見せている。まるでこれはティータイムのちょっとした余興、とでも言うかのように。

 

 そんな彼の後ろ姿を凝視しながら、ミルは少し困惑していた。

 

 デスラー総統―――己の野望のため、あるいは何らかの崇高な使命(・・・・・・・・・)のために命を懸けて戦い、しかしヤマトに敗北したガミラスの王。

 

 であれば、もっと感情を剥き出しにしてもいい筈だ。かつてのイスラ・パラカスがそうであったように、己の内に秘めた怨嗟と闘志を表面に出して、獅子の如く荒々しく戦うものである、とミルは考えていた。

 

 しかしそれを裏切るような、あまりにも静かすぎるデスラーの所作には違和感しか感じない。憎たらしい怨敵がそこに居るというのに、何故ああも優雅でいられるのか。

 

 が、その拳を見てみると決してその怒りが、怨嗟が、復讐心が偽りのものではなかったのだと分かる。

 

 ティーカップも何も持たぬ空いた左手―――そこには確かに力が宿っている。怒りという感情が、怨嗟という復讐心が。

 

「―――ミサイル艦、第二陣前へ。第二波後、デスラー機雷投射用意。転移座標62-33α」」

 

《了解、ミサイル艦ザイゼン、ガルザム、ボルタ前へ》

 

 デスラーの命令を受け、彼の座乗艦”ゼオ・デウスーラ”の周囲に展開していた2隻のゴストーク級ミサイル戦艦が前に出る。

 

 半円状の船体をベースに、ほぼ全体にミサイルを搭載した攻撃的な姿のそれは、通常の深緑色の塗装ではなく、蒼く塗装されていた。ガミラスの王たるデスラーの配下に与える艦なのだから、それに相応しい装いにしなければというズォーダー大帝の粋な計らいなのだろう。

 

 命令を受信するや、3隻のゴストーク級たちが前に出た。ミサイルを使い果たした他のゴストーク級と入れ替わるように艦隊の先鋒へと躍り出るや、全艦で発射タイミングを連動させたミサイル攻撃を始める。

 

 デウスーラを追い抜いたミサイルたちは、しかしデウスーラの艦首に搭載された装備―――瞬間物質移送機からの移送波を受け、瞬く間に姿を消していった。

 

 行き先はヤマト周辺―――攻撃目標、ヤマト。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 砲塔からバラけるように発射されたショックカノンのエネルギー波が、ミサイルの鼻先

で爆ぜた。蒼いエネルギーの爆炎がミサイルの先端部を砕くや、暗黒の宇宙空間に緋色の火球を幾重にも生じさせる。

 

 ヤマト譲りの48cmショックカノン、そのエアバーストモード。砲身中間部にあるエネルギー変換器でエネルギー起爆までの距離を計測・設定し、接近してくるミサイルや敵機の眼前でショックカノンを起爆させることで迎撃する、新機軸の射撃モードだ。

 

《命中、命中》

 

《オ見事、オ見事》

 

 艦橋中心部、3基分のプラットフォームの中ではしゃぐアナライザーたちの声が艦橋内へ響く。

 

 淡々と対空射撃を続けながら、戦闘空母でもあるシナノを預かる藤堂艦長はその攻撃の異常さに違和感を覚えていた。

 

《ミサイル接近、ミサイル接近》

 

「第二波、来ます! コース(フタ)、上げ(ヒト)!」

 

「撃て!」

 

 右舷を向いたショックカノン砲塔が旋回、新たに何もない空間へと転送されてきたミサイルの群れへと照準を合わせる。

 

 シナノのショックカノンと副砲が火を吹いた。暗黒の宇宙空間を切り裂かんばかりの勢いで放たれた蒼い陽電子ビームが流星のように直進、大型ミサイルの鼻先で起爆し巨大な火球へと変えていく。

 

 ミサイルの進路上にショックカノンを”置いておく”かの如き精密な偏差射撃だった。

 

 シナノは航空機の運用を主眼に置いた戦闘空母という性質上、敵航空隊からの攻撃にも細心の注意を払うかのような装備が搭載されている。特に対空戦闘用の火器管制装置(FCS)を始めとする各種装備やセンサーも、敵艦との殴り合いを想定したヤマトやムサシとは異なり対空戦闘に特化したものだ。

 

 南部重工とハヤカワ・インダストリーの合作。開発者の想定通りに動作し、更にシナノ搭乗員たちの高い技量でスペックの120%の性能を引き出していると言ってもいいし、その成果には藤堂艦長も満足している。

 

 が、しかし。

 

(おかしい……ミサイルの進路が先ほどから……?)

 

「次来ます! コース四、下げ一〇(ヒトマル)!」

 

 迎撃を命じる。転移してきたミサイルたちがシナノの前を通過するような軌道で、艦隊中央に布陣するヤマト目掛けて飛んでいった。

 

 副砲から放たれたショックカノンを受け爆散、宇宙に炎の華を咲かせるミサイルを見ながら、藤堂艦長は思う。

 

(やっぱり……このミサイル攻撃、さっきからヤマトだけを狙っている)

 

 違和感の正体はそれだった。

 

 続々と転移してくる正体不明のミサイル攻撃。しかしその矛先のいずれもがヤマトを狙うのみで、随伴するムサシとシナノには目もくれない。

 

「アナライザー、ミサイル転送時の空間航跡から転送元の座標を逆探知できる?」

 

《解析中……今ヤッテマス》

 

「逆探知でき次第、データをヤマトとムサシに転送。それまでシナノは迎撃に徹します。一発も撃ち漏らさないように」

 

「了解!」

 

《第三波、第三波》

 

 くっ、と藤堂艦長は歯を食いしばった。

 

 一方的に殴りつけられるのが、こうも気分の悪いものだとは。

 

 しかしその鬱憤は、黙って胸のうちに仕舞っておくのが一番だろう。

 

 開放するのは、反転攻勢が成ったその時だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 イスカンダルへの旅路。

 

 苦難が待ち受けていたその航海の中で、このミサイル攻撃に似た戦法で苦しめられたのは、ヤマト搭乗員たちにとっては記憶に新しい。

 

 七色星団、ドメル将軍。

 

 迎撃の指揮を執りながら、古代はあの苦難の戦いを思い出していた。イオン乱流が乱れる難所。ガミラスきっての名将は、そこを決戦の地に選んだ。

 

 続々と転送されてくる航空機による波状攻撃は、その戦訓をきっかけに地球艦隊の対空装備を一新させるほどのものとなったのは周知の事実である。

 

 それに似た攻撃に、ヤマト艦隊は―――いや、ヤマトだけが晒されている。

 

「真田さん、この攻撃はやっぱり……!」

 

 操縦桿を握る島が言うと、自分の席で既に当時のデータと今の攻撃のデータの比較を始めていた真田は首を縦に振った。

 

 やはり彼も思うところがあったのだろう。偶然の一致と呼ぶにしては、あまりにもそのまますぎるのだ。

 

「転送装置の生む空間航跡と波紋パターンが、七色星団の時のものと一致している」

 

「まさか、ドメル戦法か!?」

 

「そんな……だってドメル将軍は既に……!」

 

 声を上げる南部に、相原が続く。

 

 そう、これは今では”ドメル戦法”と呼ばれている戦い方だ。

 

 ガミラスの持つ瞬間物質移送機、外付けの装備がない限りワープが出来ない航空機や、そもそもワープ能力を持たないミサイルなどの物体を敵の至近距離へと送り込むことが可能なガミラスの装備。

 

 今では技術供与を受けた地球の空母にも搭載されており、その初期ロットのものはシナノにも装備されていると聞いている。

 

 航空機を運用する母艦には普遍的な装備だが、それをミサイル攻撃に活用するなど前例がない。

 

 確かに、ミサイルであれば基本は片道で使い捨てであるため、航空機のように帰還と再攻撃を考慮しなくてもいいというのは利点であろう。生還させるための配慮を必要とせず、攻撃のみに集中できる―――攻撃的運用、と言えなくもない。

 

 普遍的な装備、と述べたが、しかしそれはあくまでも地球とガミラスでの話だ。今の交戦相手であるガトランティスには普及すらしておらず、つまりこれを使用してくる敵ということは……その所属はある程度絞られてくる。

 

「敵はガミラスだというんですか?」

 

「……ガミラスとて一枚岩ではない、ということだ。あるいは」

 

「―――この手の装備を鹵獲され、解析されたか」

 

 真田の推測を聞いていた土方艦長が、それに続く言葉を述べる。

 

「とにかく、今は敵勢力の所属を明らかにしている場合ではない。古代、今は逃げの一手だ」

 

「反撃しないんですか?」

 

 今、シナノが空間航跡から敵の位置を逆探知で割り出そうとしているところである。

 

 もしそれが成功すれば、ヤマトとムサシにもデータが共有される。そうなればヤマト級3隻で”お礼参り”に行く事も可能、というわけだ。特にシナノは火器管制、航空管制、艦の運航のために3基のアナライザーを搭載しており、その処理能力はヤマト級随一である。

 

 反撃の時まで耐えるものだと考えていた古代は、しかし土方の示した逃げの一手に思わずそう聞き返してしまった。

 

「敵の正体が分からん上、その敵がこちらの射程距離内にいるとも限らん」

 

 ハッとしながら、古代は自分の考えの浅さを恥じた。

 

 それも確かにそうである。敵が射程距離内に居るのであれば反転攻勢も可能であろう。が、もし敵が射程距離外に布陣していたのだとしたら―――それが超遠距離での布陣ともなれば、話は変わってくる。

 

 ヤマトの射程距離よりも遥か遠方であれば、そこから更にまた距離を詰めなければならない。そして相手はその場で黙って待っていてくれるという保証もなく、位置が露見したと知ればすぐに離脱に移るだろう。

 

 この広大な宇宙で、悠長に鬼ごっこをしている時間など今のヤマトには無い。

 

「古代、本来の目的を見失うな。今のヤマト艦隊の目的はテレザートなのだろう?」

 

「……了解しました」

 

 島、と視線を右隣の相棒へと向ける。

 

 操縦桿を握る島は頷き、「最大戦速で現宙域を離脱します!」と宣言。徳川機関長に目配せするや、ヤマトの船足を最大戦速まで引き上げた。

 

 ムサシとシナノもそれに倣うように最大戦速へと速度を上げていく。転送されたばかりのミサイル、その出現座標が後方へとずれ、やがてミサイルたちはヤマトの遥か後方へと置き去りになっていった。

 

「―――正面に転送反応!」

 

「ミサイルか!?」

 

「いえ……これは機雷です!」

 

「機雷!?」

 

 雪の報告に、古代は顔を見上げた。頭上にあるメインパネルには、暗黒の宇宙空間を背景に、緑色のウニを思わせる形状の機雷があった。球体状の本体から、全方位へと触覚じみたセンサーのようなものが伸びている。

 

「前方、機雷より電磁波を検知。ホーミング機雷の一種と思われます」

 

 雪からの追加報告に、背筋に冷たいものが走った。

 

 ホーミング機雷―――つまり電磁波を発しながら目標へと接近、自爆し敵艦を撃沈させる兵器という事だ。間をすり抜けようとすれば包囲され、そのまま機雷の連鎖的な爆発で轟沈に追いやられてしまう。

 

 波動防壁があってもひとたまりもないだろう。

 

 そんな機雷が前方、そして右舷、上下にまで散布されているのである。

 

 かといって反転すればまたミサイル攻撃をお見舞いされる―――逃げ場は、左舷におそらく意図的に作られたと思われる逃げ道しかない。

 

 古代、と彼の背中に土方の冷静な声が投げかけられる。

 

「―――罠かもしれんぞ」

 

「後方、大型ミサイル多数転送を確認!」

 

「!」

 

 ぎょっとした。

 

 メインパネルには、大型のミサイルが複数転送されている。エンジンノズルから荒々しい朱色の炎を芽吹かせ、解き放たれた猟犬が獲物を追い詰めるかのように、ヤマト艦隊へ―――いや、ヤマトだけに向かってきているのだ。

 

 罠かもしれない―――それは分かっている。

 

 だが、このままでは機雷に突っ込むか、それとも後方から迫りくるミサイル攻撃にやられるかのどちらしかない。

 

「左回頭90度! 左だ、左の逃げ道を通って敵の攻撃をやり過ごす!」

 

「了解、取舵一杯!」

 

 どう、とヤマトの右舷艦首のスラスターに炎が燈った。全長333mの巨体が重々しく回頭を始め、その舳先が機雷原から軸線を外していく。

 

 旗艦に倣うようにムサシとシナノも回頭を開始。ムサシの艦尾から発射された波動防壁弾が蒼い波動エネルギーの傘を開いて、接近してくるミサイルを次々に遮蔽していく。

 

 紅蓮の炎を背景に、ヤマト艦隊は逃げ込んでいった―――デスラーの用意した、恐るべき罠の中へ。

 

 

 

 

 




ゴストーク級撃滅型ミサイル戦艦

武装
・基本的に原作準拠のため割愛

 帝星ガトランティスのミサイル戦艦。ラスコー級の拡大・発展型として建造されていたが、実弾火力や遠距離からのミサイル投射能力の不足を嫌った当時のズォーダー大帝からの命令により、実弾攻撃に特化したアーセナルシップとして設計変更された経緯を持つ。
 一部砲塔にはビーム兵器も搭載するなど、完全なミサイル攻撃特化の艦となったわけではないが、それでも複数隻から放たれるミサイルの飽和攻撃は圧巻である。デスラー艦隊の他、ガトランティスの名将ゴーランドの艦隊にも多数が配備されており、侵略戦争において猛威を振るう。

 特に艦首に2基搭載された対惑星大型ミサイル「破滅ミサイル」の破壊力は圧巻で、複数隻での同時斉射による衝撃は惑星のコアにまで伝播、そのまま崩壊に追い込んでしまうほどである。




 ※こちらの2203では旧作をベースとするため、破滅ミサイルは2202のような外付けミサイルではなく、旧作同様艦首の2発の大型ミサイルを破滅ミサイルとして扱います。
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