黒騎士は英雄にはなれない 作:影雪
20年と少し前、世界には
『魔石』と呼ぶ宝石のような形をとったそれは、世界ががその才能を持たせて下界に送り出したとも、努力の果てにそれを世界が認めたともされ発現した当初は酷いものだった
持つ者、持たざる者を明確に切り分けられたようなモノだ。
しかし、
『
『
『
『
三つの
「……ふぅ、歴史の確認はこれくらいでいいかな」
ペンを置き、今まで読んでいた資料を閉じた
僕が僕として現界したのが大体三ヶ月前、その時の記憶は姫から流れ込んだ騎士としての知識のみ。記憶喪失に近い状態だった僕を、彼女がこの図書館に連れてきてくれた日から、大体の日中をここで過ごしている。
知識を吸収したおかげで、違和感なく普通の人間として溶け込めるようになったと思う。姫は僕をただの剣としてでは無く、人間として思ってくれいる……それが何より嬉しかった。
さて、一般常識は大体仕入れた。次は僕らの私刑の対象。『異能力者』について知らなくてはならない。この前斬った『盗賊』の男の時は姫から貰った情報をそのまま言って挑発したが、僕自身ももっと
席を立って身体を伸ばす。ぽきぽきと小さく鳴る感覚が心地いい。ストレッチもそこそこに今まで持っていた資料を元あった棚に戻して次の棚へ向かう。
確か
『種類別
というかこの棚の本。著者が大体一緒だ
『博士』……。どこの博士だ名前を書きなよ
まあいい、今必要なのは能力の種類についての知識だ。これを持って──
「あっ!!」
──同年代くらいの女の子が、僕の持った本を見て声をあげた。
「あ、えと……呼び止めちゃってごめんね……! その本借りるんだよね!」
ショートヘアに片方をリボンで結んだ茶髪に、同じくらいのハニーブラウンの瞳。それより僕の目を引いたのは、白を基調としたブレザータイプの制服、同じく白のショートパンツ。何よりあの腕章と胸に刺繍された紋章は間違いない。
「ほんとに大丈夫だから! 気にしないでね! それじゃ──」
「待って、僕の用はすぐ終わるから、よかったら一緒に読まない?」
「──へ?」
この子、『委員会』のメンバーだ
●
まず原則として、まだまだ
『委員会』をして、所属しているメンバーの殆どは無能力者だ。
そして、
『
現在登録されている能力者の中で最も多く、性能差も大きい。一芸特化型で得意とするものに恩恵をもたらす……また、他の
・魔石の色は青色。
『
文字通りの超能力者。「念力」 「
段階が上がるほど、その力を自由自在に扱うことが出来る。
・魔石の色は緑色
『
この
・魔石の色は赤色
●
「──よし、ごめんね。はいこれ」
「あ、ありがとう……。そういえば、自己紹介がまだだったね!」
「私は
「僕は
「うん! と言っても、まだ訓練生だから実際になにかしてるわけじゃないんだ〜」
僕から本を受け取ると、緋彩はにこにこと本を開き、読み始めた。
何となく観察していると、彼女の腰に赤色の魔石がつけてあるのが見えた。
……赤色、この子『
「……鎖?」
彼女の魔石には、能力登録を表す銀の装飾と、上から巻き付けられた鎖が目立ち、その輝きを燻らせていた。
「ん? ……あっ、これ? この鎖はね、
「『切断』っていう能力なんだけど、段階が5まで進んじゃってて、私が上手く制御出来なんいんだ……斬らないように、傷つけないようにしたいのにすぐ暴走しちゃって……」
「……『
そう言いながらポケットから魔石を取り出す。登録はどうしたと言われそうだが、研究所を抜け出した後、姫は自分の権能を使って僕が「岸 景光」として生きていける書類を作り出し、僕の
「うえぇ!? すごいよ!! 『
「しー……! 声が大きいよ、落ち着いて」
「ご、ごめんね……」
彼女を宥めて座らせる。彼女は小さい声で、しかし興奮冷めやらぬと言った感じで詰め寄ってくる。
「で、でも……! これってすごいことなんだよ? 私以外で『
「段階は2だし、
僕がそう言っても、彼女は俯くばかりだ。
「うぅ、それでもちゃんと力を使いこなせてるんだよね。私なんてダメダメだ……」
「力を使うのが怖くて、私が力を制御できなかったらいつかはきっと、この鎖は本物の鎖になる」
「傷つけることしか出来ないこんな力なら、いっその事──」
「……僕が
彼女と話していてわかったことがある。
「
「僕がもしこの力を使うなら、『大切なものを必ず守る』その為だけに力を使うよ」
「君の才能は本物だ、君は何を斬って何を斬らないか選ぶことが出来るはずだ。概念は現象そのものに作用する力。想像力次第で力はどんな形にもできる」
「緋彩ちゃんは? 君はその力を、才能を───何のために使いたい?」
この子は優しすぎる。
『委員会』は異能力者を取り締まるが殺しはしない。彼女の大きな才能は、その前提を容易く崩してしまう。
殺せない心に殺せてしまう力。彼女の悩みは概念を揺るがし、暴走する。
強い概念は揺るがない。力の使い道をしっかりと決めていれば、その力は必ず自分の思った通りになる。
『
僕の言葉を聞いた彼女は、俯いていた顔を上げ、真っ直ぐに僕を見て言う
「───私、は」
「私は、誰も傷つけたくないし、傷つけさせない」
「私の
強い決意を秘めた目だ。
才能を、力を、能力を正しく使う正義の目。悪意を断ち切り、善性を叫ぶその心は、まるで、御伽噺のような……。
あぁ、そうか。初めて会った時から感じていた。話をすることでそれが確信に変わった──
答えを得た彼女は席を立ち、言う
「ありがとう、岸くん! 私──」
この子が、この少女こそが
「みんなを守れるような、
僕にとっての、
●
都内のとあるマンション、その一角に僕達の家はある。
「……ただいま」
玄関のドアを開け、靴を脱ぐ、リビングに入る前、部屋の中から話し声がする。この声は姫だ──
「えぇ、えぇ……そうですか。ありがとうございます」
リビングに入ると姫はソファーに腰掛け、
奇妙な生き物が、姫の周りを飛びまわり、耳元に腰かけ囁いている。形状は物語に出てくるような天使だが、羽が大きな耳だったり、顔には口しかなく腹の部分に縦に裂けた一つ目といった、生物として欠落しているかのような姿をしている……。姫は彼らをメルヘンな見た目だと思っているが、正直見えてなくてよかった
あれが彼女の『
権能は天使による情報収集、索敵、無線の真似事。現物、データに関わらずの事実の改竄。僕の戸籍を作ったのはこの権能だ。そして精神操作、洗脳、魂の回収、解析……。
話が終わったのだろう。天使と、頭の輪が消える。目を開けた姫は柔らかく微笑んだ。
「あぁ、騎士様。おかえりなさい」
「ただいま、天使が来たってことは、解析がすんだのかな」
「えぇ、次の対象が決まりました。しかし……、『委員会』も動き出しているようです」
「だったら『委員会』より先に斬り捨てて、見つかる前に消えればいい」
彼らに獲物を横取りされては、僕らの目的の魂の解析を行えない。
悪を殺し、その奥にいる元凶を引きずり出し、姫の運命を狂わせた裁きを下す……。それが僕と姫の目標の一つだ。
「それより、今日は着いてきたらダメだからね。見るなら天使に監視させなよ」
「残念ですが、仕方ありませんね……」
「──ところで騎士様、どことなく嬉しそうですけど……何かあったのですか?」
「ん、あぁ……」
頬でもゆるんでいたかな……。図書館でのことを考えると、これからが楽しみで仕方がない
「成長が楽しみな……いいライバルができたのさ」
──夜が始まる。悪を滅ぼす
次回は戦闘バトル戦闘な予定にしたい。お楽しみに