黒騎士は英雄にはなれない   作:影雪

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前回説明しなかった世界のシステムの話と、お友達が出来る話、です


つかの間の休息。そして宿敵との対面

 

 

 

 

 20年と少し前、世界には称号(ギフト)と呼ばれる力がもたらされた。

 

『魔石』と呼ぶ宝石のような形をとったそれは、世界ががその才能を持たせて下界に送り出したとも、努力の果てにそれを世界が認めたともされ発現した当初は酷いものだった

 

 持つ者、持たざる者を明確に切り分けられたようなモノだ。称号(ギフト)持ちは『能力者』を自称し、「我らこそが新人類」などと宣言し、称号(ギフト)を使って世界を支配しようとした……。

 

 しかし、称号(ギフト)を持つ者の犯罪を取り締まる機関。

 

称号(ギフト)犯罪対策委員会』、縮めて『委員会』の設立により、能力者が同じ能力者によって倒され、その後の研究で力にも種類、性能差があることも判明した。

 

役割(ロール)

 

超能力(サイキック)

 

概念(レリジョン)

 

 三つの称号(ギフト)にそれぞれの性能差を5段階に分け、魔石に専用の装飾を施すことによって管理し、登録された者を『能力者』。登録をせず違法に称号(ギフト)を使う者を『異能力者』とした───

 

 

「……ふぅ、歴史の確認はこれくらいでいいかな」

 

 ペンを置き、今まで読んでいた資料を閉じた

 

 僕が僕として現界したのが大体三ヶ月前、その時の記憶は姫から流れ込んだ騎士としての知識のみ。記憶喪失に近い状態だった僕を、彼女がこの図書館に連れてきてくれた日から、大体の日中をここで過ごしている。

 

 知識を吸収したおかげで、違和感なく普通の人間として溶け込めるようになったと思う。姫は僕をただの剣としてでは無く、人間として思ってくれいる……それが何より嬉しかった。

 

 さて、一般常識は大体仕入れた。次は僕らの私刑の対象。『異能力者』について知らなくてはならない。この前斬った『盗賊』の男の時は姫から貰った情報をそのまま言って挑発したが、僕自身ももっと称号(ギフト)のことを知る必要がある。姫ばかりに頼っていては、騎士として情けない話だからね

 

 

 席を立って身体を伸ばす。ぽきぽきと小さく鳴る感覚が心地いい。ストレッチもそこそこに今まで持っていた資料を元あった棚に戻して次の棚へ向かう。

 確か称号(ギフト)関連の図書はこの棚の……あった。

 

『種類別称号(ギフト)大全』……。分厚い図鑑なのに置いてある数が多く、その殆どが貸出中で残っているのがこの一冊なあたり、おすすめなのだろう。

 というかこの棚の本。著者が大体一緒だ

『博士』……。どこの博士だ名前を書きなよ

 

 まあいい、今必要なのは能力の種類についての知識だ。これを持って──

 

「あっ!!」

 

 ──同年代くらいの女の子が、僕の持った本を見て声をあげた。

 

「あ、えと……呼び止めちゃってごめんね……! その本借りるんだよね!」

 

 ショートヘアに片方をリボンで結んだ茶髪に、同じくらいのハニーブラウンの瞳。それより僕の目を引いたのは、白を基調としたブレザータイプの制服、同じく白のショートパンツ。何よりあの腕章と胸に刺繍された紋章は間違いない。

 

「ほんとに大丈夫だから! 気にしないでね! それじゃ──」

 

「待って、僕の用はすぐ終わるから、よかったら一緒に読まない?」

 

「──へ?」

 

 この子、『委員会』のメンバーだ

 

 ●

 

 

 まず原則として、まだまだ称号(ギフト)を持つ者は少ない。

『委員会』をして、所属しているメンバーの殆どは無能力者だ。

 そして、称号(ギフト)を持っているからといって、無能力者に対して無敵になる訳ではない、と明記しておく。

 

役割(ロール)

 現在登録されている能力者の中で最も多く、性能差も大きい。一芸特化型で得意とするものに恩恵をもたらす……また、他の称号(ギフト)に比べて身体能力の強化に上昇傾向があり、段階が上がれば上がるほどできることが増えていく。『盗賊』の男は登録していれば段階3くらいになりそうだな。

 ・魔石の色は青色。

 

 

超能力者(サイキック)

 文字通りの超能力者。「念力」 「瞬間移動(テレポート)」「念話(テレパス)」から、「発火」 「放水」 「凍結」 「硬質化」といった魔法のようなものまで、明らかに人類の限界を超えた力を発現させる能力。

 段階が上がるほど、その力を自由自在に扱うことが出来る。

 ・魔石の色は緑色

 

 

概念(レリジョン)

 この称号(ギフト)は少ない能力者の中でもさらに数が少ない。現在分かっている情報は、現象そのものに作用する力。『治癒』の概念が失った部位すら再生させるように、段階が上がれば事実、法則を無視することも可能であり、それ故に扱いが難しい。

 ・魔石の色は赤色

 

 ●

 

 

「──よし、ごめんね。はいこれ」

 

「あ、ありがとう……。そういえば、自己紹介がまだだったね!」

「私は皆切 緋彩(みなぎりひいろ)! 緋彩でいいよ!」

 

「僕は岸 景光(きし かげみつ)。よろしくね、緋彩ちゃん。その制服、『委員会』なんだ」

 

「うん! と言っても、まだ訓練生だから実際になにかしてるわけじゃないんだ〜」

 

 

 僕から本を受け取ると、緋彩はにこにこと本を開き、読み始めた。

 何となく観察していると、彼女の腰に赤色の魔石がつけてあるのが見えた。

 ……赤色、この子『概念(レリジョン)』の能力者なのか

 

「……鎖?」

 

 彼女の魔石には、能力登録を表す銀の装飾と、上から巻き付けられた鎖が目立ち、その輝きを燻らせていた。

 

「ん? ……あっ、これ? この鎖はね、称号(ギフト)の力を封印する鎖なんだ! 本来は『異能力者』用のものなんだけど、私は権能が危ないから普段は封印してもらってるの」

「『切断』っていう能力なんだけど、段階が5まで進んじゃってて、私が上手く制御出来なんいんだ……斬らないように、傷つけないようにしたいのにすぐ暴走しちゃって……」

 

「……『概念(レリジョン)』の称号(ギフト)なら、僕も持ってるよ」

 

 そう言いながらポケットから魔石を取り出す。登録はどうしたと言われそうだが、研究所を抜け出した後、姫は自分の権能を使って僕が「岸 景光」として生きていける書類を作り出し、僕の称号(ギフト)登録をした。そんな芸当ができる彼女の称号(ギフト)については今は割愛させてもらうが。

 

「うえぇ!? すごいよ!! 『概念(レリジョン)』は──ッ!!」

 

「しー……! 声が大きいよ、落ち着いて」

 

「ご、ごめんね……」

 

 彼女を宥めて座らせる。彼女は小さい声で、しかし興奮冷めやらぬと言った感じで詰め寄ってくる。

 

「で、でも……! これってすごいことなんだよ? 私以外で『概念(レリジョン)』持ちって、医療班の班長くらいなものだもん」

 

「段階は2だし、称号(ギフト)名は『刀剣錬成』。軽い身体強化と、その場に剣を作れるってだけの能力だ。そんなに大したものじゃない」

 

 僕がそう言っても、彼女は俯くばかりだ。

 

「うぅ、それでもちゃんと力を使いこなせてるんだよね。私なんてダメダメだ……」

「力を使うのが怖くて、私が力を制御できなかったらいつかはきっと、この鎖は本物の鎖になる」

「傷つけることしか出来ないこんな力なら、いっその事──」

 

「……僕が称号(ギフト)について言えることは一つだけだ」

 

 彼女と話していてわかったことがある。

 

称号(ギフト)はただの力の塊だ。大事なのはどう使うか」

「僕がもしこの力を使うなら、『大切なものを必ず守る』その為だけに力を使うよ」

 

「君の才能は本物だ、君は何を斬って何を斬らないか選ぶことが出来るはずだ。概念は現象そのものに作用する力。想像力次第で力はどんな形にもできる」

 

「緋彩ちゃんは? 君はその力を、才能を───何のために使いたい?」

 

 この子は優しすぎる。

『委員会』は異能力者を取り締まるが殺しはしない。彼女の大きな才能は、その前提を容易く崩してしまう。

 

 殺せない心に殺せてしまう力。彼女の悩みは概念を揺るがし、暴走する。

 強い概念は揺るがない。力の使い道をしっかりと決めていれば、その力は必ず自分の思った通りになる。

 

概念(レリジョン)』とは信仰でもある。力を信じれば信じるほど、その力は増していく。

 

 僕の言葉を聞いた彼女は、俯いていた顔を上げ、真っ直ぐに僕を見て言う

 

「───私、は」

「私は、誰も傷つけたくないし、傷つけさせない」

「私の称号(ギフト)は、みんなを守るために使う……!!」

 

 強い決意を秘めた目だ。

 才能を、力を、能力を正しく使う正義の目。悪意を断ち切り、善性を叫ぶその心は、まるで、御伽噺のような……。

 

 あぁ、そうか。初めて会った時から感じていた。話をすることでそれが確信に変わった──

 

 答えを得た彼女は席を立ち、言う

 

「ありがとう、岸くん! 私──」

 

この子が、この少女こそが

 

「みんなを守れるような、英雄(ヒーロー)になるね!」

 

僕にとっての、最大の敵(正義の騎士)か!! 

 

 ●

 

 

 都内のとあるマンション、その一角に僕達の家はある。

 

「……ただいま」

 

 玄関のドアを開け、靴を脱ぐ、リビングに入る前、部屋の中から話し声がする。この声は姫だ──

 

「えぇ、えぇ……そうですか。ありがとうございます」

 

 リビングに入ると姫はソファーに腰掛け、称号(ギフト)を起動している時に出る頭の上の欠けた光輪をクルクルと回して、見えない何者かと話していた。いや、姫を含めて誰も見えていないだけで、僕には見えている。

 

 奇妙な生き物が、姫の周りを飛びまわり、耳元に腰かけ囁いている。形状は物語に出てくるような天使だが、羽が大きな耳だったり、顔には口しかなく腹の部分に縦に裂けた一つ目といった、生物として欠落しているかのような姿をしている……。姫は彼らをメルヘンな見た目だと思っているが、正直見えてなくてよかった

 

 あれが彼女の『称号(ギフト)』名を『天使』魔石の色は、元々の超能力者(サイキック)の緑に実験による概念(レリジョン)の赤を混ぜられたどす黒い闇の色。

 

 権能は天使による情報収集、索敵、無線の真似事。現物、データに関わらずの事実の改竄。僕の戸籍を作ったのはこの権能だ。そして精神操作、洗脳、魂の回収、解析……。

 

 話が終わったのだろう。天使と、頭の輪が消える。目を開けた姫は柔らかく微笑んだ。

 

「あぁ、騎士様。おかえりなさい」

 

「ただいま、天使が来たってことは、解析がすんだのかな」

 

「えぇ、次の対象が決まりました。しかし……、『委員会』も動き出しているようです」

 

「だったら『委員会』より先に斬り捨てて、見つかる前に消えればいい」

 

 彼らに獲物を横取りされては、僕らの目的の魂の解析を行えない。

 悪を殺し、その奥にいる元凶を引きずり出し、姫の運命を狂わせた裁きを下す……。それが僕と姫の目標の一つだ。

 

「それより、今日は着いてきたらダメだからね。見るなら天使に監視させなよ」

 

「残念ですが、仕方ありませんね……」

 

「──ところで騎士様、どことなく嬉しそうですけど……何かあったのですか?」

 

「ん、あぁ……」

 

 頬でもゆるんでいたかな……。図書館でのことを考えると、これからが楽しみで仕方がない

 

「成長が楽しみな……いいライバルができたのさ」

 

 ──夜が始まる。悪を滅ぼす黒騎士(死神)の時間だ

 

 

 

 

 




次回は戦闘バトル戦闘な予定にしたい。お楽しみに
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