「アレイスター=クロウリー、ウィリアム=ウェストコット、サミュエル=メイザース、サンジェルマン伯爵……」
十二月、ホグワーツはクリスマスの飾りつけでキラキラしていた。外は雪と氷でとんでもなく寒くなり、暖かい日に活動していた動物達は、もうとっくに冬眠している季節。私達は図書館で暖炉の炎で体を暖めながら、ニコラス・フラメルの文献を探していた。
「ダメね、見つからない…グレイ、そっちはどう?」
「こっちもまだ、有名な魔法使いが多すぎる。歴史書の中から一人の魔法使いを見つけるなんて何日かかるかわからないわ」
ハグリッドが口を滑らせたお陰で、誰を探せば良いかはわかった。しかし、名前だけわかったも肝心の情報が無ければ意味がない。
「ああ!ムカつく!!マルフォイ、いつか絶対とっちめてやる!!!」
「いつまでも引きずってもしょうがないわよハリー。マルフォイの嫌がらせは今に始まったことではないでしょ」
…あれ?……私、今のセリフ前にも言ったような……。
「……まあいいか。ロン、まだ読んでない本を持ってきてくれる?」
「…ああ、持ってくるよ」
十一月のクィディッチの試合がグリフィンドールの勝利に終わった後、マルフォイの嫌がらせは以前よりもエスカレートしていった。
「確かに、あんなこと言われたらムカつくのもわかるけどね。あいつが真正面からハリーのこと侮辱するなんて、私思わなかったわ」
私達がハグリッドのクリスマスの準備を少し手伝っていた時のことだった。マルフォイが私達の近くに寄って来て、『ポッターは家族がいないからクリスマスはここで過ごすのか!可哀想に…』と言ってきたのだ。当然、ハリーはおろか私達も激怒して全員が杖を抜いた。でも、スネイプがやって来て魔法の撃ち合いになることは無かった。代わりにグリフィンドールから何点か減点されたが。
「覚えてろ。いつか、やっつけてやる……」
「マルフォイもスネイプも、ふたりとも大嫌いだ」
ハリーとロンは、あの二人に対して未だに怒りが収まらないようだった。
「もうあの二人のことなんてどうでもいいじゃない。いや、スネイプのことはどうでもよくないか…兎に角!明日から私とハーマイオニーはクリスマス休暇でホグワーツにいないんだから、ここで調べれることは調べておかないと」
「それはわかってるけど……」
「わかったのなら、ハリーも本を持ってきて。直ぐに読めそうな本は読んでおくから」
「……わかったよ」
ハリーとロンも落ち着きを取り戻し、私達は本格的にニコラス・フラメルについて調べ始めた。ホグワーツで守っている物はニコラス・フラメルの大事な物。まだそれだけしかわかっていない。正確にどんな物なのかわからないから、スネイプが何を盗もうとしているかを知るには、本を調べる以外に方法がない。ただ厄介なのは、ニコラス・フラメルが本に載るにしてもどの項目に載っているかがわからないので、どこから探していいのか見当もつかないことだった。
「『二十世紀の偉大な魔法使い』、違う。『現代の著名な魔法使い』、違う。『近代魔法界の主要な発見』、これも違う。『魔法界における最近の進歩に関する研究』、これにも載ってない……」
図書室が大きすぎるのも問題だった。何万冊もの蔵書、何千もの書棚、何百もの細い通路。ここの本を全部読もうとした何十年もかかってしまうだろう。全員で役割分担して効率良く調べても時間のロスは避けられなかった。
「君、何を探しているの?」
「えっ、いえ別に」
「それなら、ここから出ていった方がいいわね。さあ、出て行きなさい!」
遠くからそんな会話が聞こえた。ハリーと、おそらくマダム・ピンスだ。どうやらハリーが『禁書の棚』に近づいたせいで図書室から追い出されてしまったらしい。マダム・ピンスに私達が調べていることを話して教えてもらうのも前まではアリだと思っていたけど、もしそれをスネイプに知られたらを知られたら、後々大変なことになるかもしれないので、私達は彼女の目を警戒しながらニコラス・フラメルについて調べていた。
「今日はこの辺が潮時ね」
「ええ、そうね。ロン、昼食に行きましょ」
「うん、わかったよ。腹も減ったし」
私達は図書室の外の廊下にいるハリーと合流して、大広間に向かった。結局、二週間経ってもニコラス・フラメルのことを調べることは出来なかった。
「私達が家に帰っている間も、続けて探すでしょう?見つけたら梟で知らせてね」
「二人は家に帰ったらフラメルのことで何か知ってないか聞いてみて。パパやママなら聞いても安全だろう?」
「ええ、安全のはずよ。二人とも歯医者だし。グレイは?」
「うちも大丈夫。お父さんが小説家だから、もしかしたら詳しいかも」
知らなかったら知らなかったで、自分で調べればいい。ダイアゴン横丁の『フローリシュ・アンド・ブロッツ書店』で探すのも良いかもしれない。
「…ん?あれ誰の梟だ?」
大広間で昼食を取っていると、突然、手紙を咥えた梟が大広間にやって来た。
「ヘドウィグじゃない、君らって梟飼ってたっけ?」
「僕は違うよ、スキャバーズいるし」
「私も違うわ、飼うんだったら猫がいいし」
「私も違うよ。鳥ならビートル飼ってるけどね」
結局、誰の梟かはわからなかった。グリフィンドールのテーブルからも、他の寮のテーブルからも、やって来た梟を知っている人はいなかった。
「あの梟、こっちに来てるよ?」
ロンの言う通り、梟は私達のテーブルに降りて来て手紙を置くと、直ぐに飛び去ってしまった。誰宛の手紙か見てみると、なんと私のお父さんの名前が書いてあった。
「えっ、なんで?」
「君って梟飼ったなかったよね?」
「そもそも、ホグワーツに梟を送る方法も知らないはずだけど……」
取り敢えず、私は手紙の内容を確認することにした。
『グレイへ
まずグレイは、この手紙が送られてきたことに驚いているだろう。俺達も、グレイにこうして手紙を送ることになるなんて思わなかった。これには、アメリカに住むグレイのお爺ちゃんとお婆ちゃん。つまり俺の両親が関係してる。二人ともイギリスに来てるよ。この手紙では伝えきれないことが多いから、詳しいことは二人の口から話してもらうことになった。取り敢えず、二人ともグレイに会いたがっていたし、グレイも会うのは一年ぶりだろうから、明日はちゃんと帰って来なさい。お母さんもクリスマスケーキ作って待ってるからな。
お父さんより』
「お爺ちゃんとお婆ちゃんが?」
「グレイのお爺ちゃんとお婆ちゃんって、アメリカに住んでるんだ」
「うん、お父さんがアメリカ生まれで、お母さんが現地人。お父さんが留学した時にお母さんと会って、結婚した後にお父さんがこっちに移り住んだって聞いた」
「へー、じゃあ君、イギリス人とアメリカ人のハーフなんだ」
「まあね。それよりもなんで梟なんて送れたのかが私は気になるけど」
「手紙にはちゃんと事情を説明するって書いてあるし、明日聞いてみれば?」
「……それもそうね」
ーー
翌日のクリスマス休暇初日。ホグワーツ特急はクリスマス休暇で帰る生徒で溢れていた。私とハーマイオニーは、運良く空いたコンパートメントを見つけるとすかさず荷物を列車の最後尾に預けてコンパートメントに駆け込んだ。コンパートメントが取れなかったら、寒い通路で凍えながら列車が到着するのを待つことになるところだった。
「グレイ、何読んでるの?」
「ん?『幻の魔法生物とその住みか』。最近は仕方なかったけど、殆どが魔法史関係だったでしょ?たまには気分転換に他の分野の本を読んでみようと思ってね」
「成る程ね、確かに気分転換には丁度良い本だわ。今は何の魔法動物のところを読んでるの?」
「ワンプスキャットよ。アメリカの魔法生物、ハーマイオニー猫好きだったでしょ?」
「ええ!でも、ワンプスキャットを飼おうとは思えないわ。そもそも、誰も飼い慣らしたことがないんですもの」
お父さんの故郷のアメリカでは、ワンプスキャットは伝承の生物だ。でも、実際に魔法界にいるし、杖の芯としても使われたことがある。ワンプスキャットは六本足の猫の魔法生物で、二本の後ろ足で歩くことができ、弓矢より素早く駆ける俊敏な機動性を持つ猫種だ。黄色の両目からは催眠術と開心術を放つため、魔法使いでも触れること自体難しい。魔法省分類、M.O.M.分類でも、危険度は最高ランクのXXXXX、魔法使い殺しだ。誰も飼い慣らせたことがない。
「飼い慣らすんだったらニーズルの方が良いわね。分類はXXXだけど、正しい対処の仕方を覚えて魔法省から認可を貰えれば飼えないことも無いし」
「それもそうね!」
私達は暫くの間、魔法生物について語り合った。ニコラス・フラメルのことなんてすっかり忘れて、ただ会話を楽しみ、気づいた頃には、そろそろキングスクロス駅に着く時間になっていた。
「そろそろ駅ね」
「そうだね、続きはまた今度で。えっと…次は不死鳥からか」
「ええ、また今度」
列車が駅に着くと、駅は生徒の家族でごった返していた。ハーマイオニーの家族も、手を振って笑顔でハーマイオニーを読んでいた。
「とても素敵な家族ね」
「ありがとう!今度あなたを紹介するわ!その時は家に遊びに来てね!」
「ええ、その時は是非」
そう言うとハーマイオニーはこれ以上無いくらいの笑顔になった。まるで、初めてクリスマスプレゼントを貰って喜ぶ小さな子供のようだった。
「じゃあグレイ、休暇明けにまた会いましょうね!」
「うん、また」
ハーマイオニーと別れて辺りを見回すと、あちこちに再会を喜ぶ家族の姿が目に入った。お父さんとお母さんもここにいるはずだからさがs
「グレエエエエエエエェェェェイ!!!!」
「ッ!?」
突如、耳の鼓膜を突き破って脳を直接振動させるような大声が駅全体に響いた。声のする方向を見ると、そこには筋骨隆々なたくましい体を持ったお爺さんがこっちに両手を広げて走ってきた。間違い無い。私の祖父、アグニカお爺ちゃんだった。
「お爺ちゃ「おおお!グレイ!我が愛しの孫よ!!元気にしとったか!!!」うん…元気だからちょっと声のボリューム下げて…あとお髭ジョリジョリしないで…痛いから」
そして周囲の目線も痛かった。私達が目立っているということを周囲の人達が言葉を交わさずに教えてくれた。
「おお!すまんすまん。久々に会えたものだからつい大声が出てしまった。すまんの」
「いや、私と会えて嬉しいのはわかったけど。これからは気をつけてね」
「ああ…相変わらず愛くるしいのうグレイは。婆さん譲りの美しさに儂譲りのたくましさ。やはり儂の孫が世界一!」
「人の話聞いてる?」
アグニカお爺ちゃんは会うといつもこんな感じだ。大声で抱きついてきて髭を擦り合わせて来る。私もちゃんとお爺ちゃんのことが大好きだけど、時々鬱陶しくも感じる困った人だった。
「そういえばお父さんとお母さんは?ここにはいないの?」
「ああ、色々聞きたいことはあるだろうが今はちょっと待ってくれな。詳しいことは婆さんとジャックとマリーを交えて説明するからの」
お爺ちゃんは私のトランクを担ぎ上げると、駅の置くに会った緑色の炎がある暖炉に向かった。
「え、何してるの?」
「何って煙突飛行の準備じゃが?グレイも早くこっちへおいで」
「え、あ、うん」
お爺ちゃんの言われるがままに煙突の前に立つと、私と手を繋ぎ緑の粉を緑の炎に吹き掛けて叫んだ。
「アメリカ合衆国魔法議会!」
「ん?今なんー」
その瞬間、私の体は暖炉の中に吸い込まれた。わけがわからない、展開が速すぎて脳がパンクしそうだった。
「いったッ!?」
途端に衝撃がやって来た。勢いで暖炉から放り出されたらしく、体中のあちこちに煤がついている。
「着地に失敗したようじゃな。大丈夫か?」
「うん、平気。…それよりも煙突飛行ってな、に……」
辺りを見回すと、そこはもうキングスクロス駅ではなく、黒と金の装飾で煌びやかに輝く広くて立派なホールだった。そこではグリンゴッツにいた小鬼や、たまにホグワーツで見かける屋敷しもべ妖精。そして魔女や魔法使いがせっせと働いていた。
「……ここって……」
「儂の職場じゃよ」
「へぇそなんだ…………えっ、今なんて言った?」
「儂の職場って言ったな」
「…ここが?」
「そうじゃよ」
「……なんで?」
「儂、魔法使いだから」
「……はああああああぁぁぁぁ!?!?」
魔法使い?でも、なんで?お父さんはそんなこと一言も言ってなかった。
「ジャックは儂らが魔法使いってことは知らんかったぞ。少なくともグレイがホグワーツに入学する前はな」
「……ん?儂ら?」
「ああ、儂の妻、リサーナもちゃんとした魔女じゃよ」
リサーナお婆ちゃんも魔女?
「嘘でしょ?」
「本当じゃよ。まあ、詳しい話は家に着いてから話そう。ルーク!」
お爺ちゃんが名前を呼ぶと、突然、若い見た目の男の人がすごい顔で私達の前に現れた。
「ここにいましたか局長!探しましたよ!急にどっかいなくなるから!!!」
「なんじゃルーク、すごい眉間に皺がよっとるぞ?」
「主にあんたのせいだよチクショウ!!急にいなくなりやがって!!仕事増えんだろうが!!!」
「ルーク貴様!上官に対して口の聞き方がなっとらんぞ!」
「知るかぁ!こっちの仕事増やしてんじゃねぇ!!」
「この若造「なにしてんだいあんたは!!」がッ!?」
今度はお爺ちゃんの後頭部に赤い光の塊が直撃した。威力は低いが基本呪文だ。飛んできた方向を見ると、顔馴染みの人が歩いてきた。
「…リサーナお婆ちゃん……本当に魔女だったんだ…」
「ハァイ、グレイ。久しぶりだねぇ、会えて嬉しいわ!」
「うん、私も会えて嬉しいわ」
「嬉しいこと言ってくれるねぇ、元気だったかい?」
「うん、お婆ちゃんも元気そうで良かった」
「当然よ、私は百五十まで生きると決めてるからね」
リサーナお婆ちゃんは、一言で言うならとっても綺麗な人だった。年齢を感じさせない美貌と、決して衰えない力強さを合わせ持っている。
「悪いねルーク、うちの主人は私が絞めとくから、あんたは自分の仕事に戻りな」
「わかりました奥様。グレイお嬢様」
「…え、私?」
なんでお嬢様?
「いきなり大声を上げて申し訳ありませんでした。ビックリしたことでしょう」
「ああ、いえ、大丈夫です……その、祖父がご迷惑おかけしました」
「いえいえ、こちらこそ。考えてみれば何時ものことでしたので。では自分はこれで失礼します」
…何時も迷惑かけてたんだ……。
「ピィ、ピピィ!」
「お腹空いたの?ごめん、ちょっと待っててね」
ビートルをあやしていると、とっくに餌を与える時間になっていたのに気付いた。
「あらグレイ、小鳥なんて飼ってたの?」
「うん、早く餌をあげないと」
「そうね。あなた」
「いてて…なんじゃリサーナ、いきなり魔法打ち込まなくてもよかろうに」
「だまらっしゃい、ジャックとマリーさんも待たしているんだから、早く行くよ」
「お父さんとお母さんもこっちにいるの?」
「ええそうよ、全員揃ったらちゃんと説明するから。ちょっと待っててね」
「うん、わかった」
私は二人に連れられて歩くと、ここがどこなのか気になった。そもそも、いきなり連れてこられたものだから自分が今どこにいるかもわからない状態だったのを思い出した。
「ここってアメリカの魔法省なの?」
「ええそうよ、アメリカの魔法省。アメリカ合衆国魔法議会、MACUSAの本部よ。ウールワース・ビルの中にあるの。勿論、ノーマジにはわからない仕組みになっているわ」
「ノーマジ?なにそれ?」
「ノーマジは非魔法族のことよ、魔法を使えない人のことをそう呼ぶの。イギリスではマグルって呼ぶんだったかしら」
「国によって呼び方が違うの?」
「それはそうよ、文化の違いもあるんだから呼び方が違うのも不思議じゃないわ」
私はアメリカに来る頻度が少ないので、イギリスとアメリカの違いも正確にはわからないから、文化の違いをされても困ってしまった。
「まあ、そういうのはおいおいね。下に車を停めてるからそれで家に行きましょう」
ビルを降りて停めてあった車にトランクを積んで乗り込むと、日刊預言者新聞の記事があった。以前乗った時は普通の新聞だったのに、今では写真が動いている。記事には『魔法省、巨大密猟組織を一斉摘発』と書いてあった。ここまで来てようやく私は、自分の祖父母が魔法族なんだと認識できた。
「そういえば、なんでお爺ちゃんが駅にいたの?お父さんとお母さんが来ると思ってたけど」
「それは勿論!グレイへの愛が儂を行動に移させたたのじゃ!」
「あんたちょっと黙りな!」
「うぐぼぉ!?」
ちょっと何言ってるのかわかりません。
ーー
お爺ちゃんが運転する車に揺られて暫くすると、ニューヨークの住宅街に着いた、小さい頃に何度か来たことがある祖父母の家だ。
「あ!お父さんお母さん!」
「お帰りグレイ!」
「お帰りなさいグレイ!」
家の前には二人が待っていた。寮制の学校に通うのは初めてだったから、まだたった三ヶ月しか経ってないのに、二人に会うのはとても久しぶりに感じた。
「ただいま!」
私はお父さんとお母さん目一杯抱きついた。二人の包容は何時だって私を温かく包み込んでくれる、安心感あった。
「ホグワーツはどうだった?楽しかった?」
「うん!凄く楽しかった!」
「そうかそうか、それは良かった」
「土産話をたっぷり聞かせてね」
「勿論!話たいことが一杯あるし、友達も結構出来たよ」
「あのー、それも良いがまずは儂らの話を聞いてくれんかの?」
「…あ、忘れてた…」
「……グレイに…忘れられてた…じゃと!?」
なにやら勝手にショックを受けているが、私はお爺ちゃんのノリに慣れているのでそんなに気にすることでもなかった。
「…まあ、俺達も気にならないわけじゃない。なんで今まで黙ってたのかは教えてくれるんだろ?父さん」
「…ああ、事情はちゃんと説明する」
お父さんとお母さんは私よりも先にお爺ちゃんとお婆ちゃんが魔法族なのは知っていたけど、事情はまだ説明して貰って無かったようだ。
「じゃあ、取り敢えず中に入って夕飯でも食べながら話しましょうかね。マリーさん手伝ってくれる?」
「わかりました、お義母さん」
ひとまず私は、車からトランクを取り出して家に入った。以前来た時と違うのは、家具が人の手を使わずに動いていた点だった。箒や花壇のじょうろは勝手に動いてるし、食器類もお婆ちゃんが杖を一振するだけでテーブルに並んでいた。ただ、料理は普通に自分達で作るしかないようだ。
「食べ物は生み出せないのか?」
お父さんが問いを投げ掛けてきた。
「グレイ、ガンプの変容法則に当てはまらないものは何だったかね?」
「食べ物だよ、お婆ちゃん。魔法で物体は0から出すことは出来るけど、食べ物は0から出すことは出来ない」
「その通り!ちゃんとホグワーツで学んできたみたいで良かった」
「食べ物は無理ってことか?」
「他にも無理な物はあるけど、代表例は食べ物だよ。さ、そろそろできるから手を洗っておいで」
「はーい」
テーブルに並べられた料理を全員が食べ始めたところで、私はビートルをポケットから出して餌を与えた。
「あら?グレイ、その子はどうしたの?」
「ビートルのこと?拾ったの、ホグワーツで」
「儂どっかでみたことある気がするな」
「図鑑とかで見たんじゃないの?」
「そうか?…ま、いいか」
そういえばビートルがなんの鳥か未だに知らなかったな、私。
「さて、食事中になるがまあ良い。では早速どうして儂らが魔法使いで、その事をお前達に黙っておったのかを話そう」
その言葉を聞いて私達、特に私とお父さんは思わず体をこわばらせた。
「まあ、そんな複雑な話じゃ無いんじゃがな。一言でいうなら、ジャックはスクイブとして生まれたから、魔法のことを知らなかったということじゃよ」
スクイブという単語を聞いて、ハーマイオニーの言葉がフラッシュバックする。スクイブとは、原因はわからないが魔法族の間に生まれた人の中で稀にいる魔法を使えない人を指す言葉だ。
「はあ、成る程」
お父さんはそこまで重く受け止めてないようだ。
「スクイブとして生まれた子供は、魔法が使えないことにコンプレックスを持つことが多い。ジャックがスクイブなのを物心着く前に知れた儂らは、ジャックを魔法から遠ざけた。儂らがなんの仕事をしているかも知らせず。ノーマジとしてジャックを育てた、というわけじゃ」
「私が生まれたのにそのことを伝えなかったのはその為?」
「いいえ、私達がグレイにこのことを伝えなかったのは、単純にわからなかったからよ」
「わからなかった?」
「ええ。グレイは他の子供と比べて魔法の発現が遅かったのもあるし、イギリスへのコネがなかった私達はホグワーツの名簿にグレイの名前があるか確認出来なかったのもあるの。そしてグレイのホグワーツ入学が決まっても連絡が出来なかったのは、巨大な密猟組織を一斉摘発したことによる多忙のせいで、手紙を書く暇も無かったからよ」
つまり、様々な要因が重なって伝えることが出来なかったということか。
「成る程なぁ。まさか、父さん達が魔法族だと聞いた時は驚いたが、まさかそんな事情があったとはなぁ」
「ジャック…憤りは感じないのか?」
「憤りも何も、俺は魔法なんて知ずに大人になったし、家族も出来た。子供の前で憤るもなにも無いさ」
それがお父さんの本心だった。お父さんがもっと若く、魔法に憧れを抱いていたのなら、もしかしたら二人に怒っていたかもしれない。でも、そうしなかった。私はそんなお父さんを心の中で、誇らしく思った。
「ありがとう、ジャック。そう言って貰えることがどんなに嬉しいことか」
「ええ、ようやく肩の荷が降りたわ」
「大袈裟だよ父さん、母さんも」
「いやすまない、なにやら空気が暗くなってしまったな」
「取り敢えず食べましょう。折角のクリスマス料理も冷めてしまいますし」
お母さんが全員に促した。今日の夕飯はチーズフォンデュだった。白くていい香りのするチーズはまだ冷めておらず、私達の見も心も暖めてくれた。
「あ、そういえば儂グレイがどこの寮に入ったか聞いとらんかったな。どこに入ったんだ?」
お爺ちゃんが突然、話を切り出してきた。
「グリフィンドールに入ったわ」
「何?グリフィンドールだと?」
「ん?」
お爺ちゃんの反応は私が思ってたものと違ってた。何かおかしなところでもあったのだろうか?
「いや、すまない。儂はてっきりスリザリンに組分けされると思っていたからのう」
「はい?」
なんでスリザリン?自分で言うのもあれだが、私はズル賢い性格ではないと思うし、もし組分けされたとしても、あのマルフォイとは絶対に仲良くなりたくなかった。
「あ、リサーナ、儂らまだ言い忘れてたことがあったな」
「そうねあなた。グレイ、私達はね、イルヴァーモーニーの創設者の血を引く一族なの」
「…………へ?」
イルヴァーモーニーの創設者の血を引く一族?
「今度本で読んで見ると良いわ。簡潔に言うとね、創設者のイゾルト・セイアはサラザール・スリザリンの末裔なの。つまりその子孫の私達はサラザール・スリザリンの末裔なのよ」
……サラザール・スリザリンの……末裔?
「はあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁあああああああ!?!?!?!?!?」
今日一番の大きな声が出た。
結構はっちゃけました。
ー追記ー
アメリカ魔法省をアメリカ合衆国魔法議会に改訂しました。
章の名前を変えるべきかどうか
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変える
-
変えない
-
どうでもいいからはよ投稿しろ