ハリー・ポッターと最後の不死鳥   作:TARAKON X

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凄い長くなっちゃたし、文もところどころおかしいところもあるかもしれませんが許して下さい……これが精一杯です……。




第15話 暗闇の森の中で

 ハリー達がマクゴナガル先生に見つかり、グリフィンドールが百五十点減点された日から数日。予想は出来ていたけどそれはもう酷い日々だった。

 

『ハリー・ポッターが、あの有名なハリー・ポッターが、クィディッチの試合で二回も続けてヒーローになったハリーが、寮の点を百五十点も減らしてしまったらしい。何人かの馬鹿な一年生と一緒に』

 

 こんな噂がホグワーツのあちこちに広がっていた。学校で最も人気があり、称賛の的だったハリー。一夜にして突然、学校一番の嫌われ者に成り下がっていた。

 レイブンクローやハッフルパフさえも敵に回っていた。皆スリザリンから寮杯が奪われるのを楽しみにしていたからだ。どこへ行っても、誰もがハリーを指差し、声を低めることもせず、おおっぴらにハリーに罵倒の言葉を浴びせた。

 一方グリフィンドールが陥落したことによって今年の寮杯も確実となったスリザリンの生徒達は、ハリーが目の前を通る度に拍手をし、口笛を吹いた。

 

「ポッター、ありがとうよ。借りが出来たぜ!返す気はないけどな!!」  

 

 囃し立てるのも忘れずにやってきた。他人を貶すのが他の寮よりも上手だったので逆に感心してしまった。

 

「何週間か経てば、皆自然と忘れるさ。フレッドやジョージなんか、ここに入寮してからずうっと点を引かれっぱなんだから。それでも皆から好かれてるよ」

「二人はノーバートをチャーリーに預けてハグリッドを救ったじゃない。もしあのままノーバートがホグワーツに留まっていたら、ハグリッドは今頃クビになってたと思うよ」

 

 あの夜作戦に参加出来なかった私とロンは全力で二人を慰めて、少しでも二人の気が楽になるよう努めた。

 

「だけど、一回で百五十点も引かれたりはしなかっただろう?さすがのあの二人でも」

「うん……まあ、それは…そうだけどね?」

「……もうおしまいだわ……私……もう二度と胸を張って廊下を歩けない……」

「駄目だグレイ。二人共完全に意気消沈しちゃってるよ」

「だから何?二人が元気になるまで慰め続けるしかないでしょ」

 

 ハリーとハーマイオニーもそうだけど、ネビルも毎日鬱々とした日々を送っていた。いつも点を減点させて足を引っ張っているのに加えて今回の一件、ロンとハリーはここ最近ネビルの嗚咽ばかり聞いて寝ていると言っていた。

 

「…よし、切り替えよう皆。いつまでも下を向いていられないよ。もうそろそろ試験なんだから勉強しないと」

 

 例えずっと落ち込んでいても、時間は進む。時間は無情だ。私達の気持ちなんて一切考慮しない。試験の日は刻一刻と迫っている。いつまでもメソメソしてはいられない。

 ハリー達は試験勉強に没頭することで、少しは気が楽になっていったみたいだった。ハリーもハーマイオニーも、今まで以上に集中して勉強に取り組んでいた。

 だけど試験を一週間後に控えたある日、私とハリーが図書室からの帰りに廊下を歩いていると、近くの教室から誰かのめそめそ声が耳に入ってきた。

 

「駄目です……駄目……もうどうぞお許しを……」

 

 めそめそ声の主はクィレル先生だった。壁越しで中の様子は確認出来なかったけど、誰かに脅されているようだった。

 

「わかりました……わかりましたよう……」

 

 段々と声が小さくなり、クィレル先生は教室から出ていった。クィレル先生が教室を出た後に教室を覗いてみると誰もいなかった。だけど、クィレル先生が出ていった扉の反対側の扉が少し開いたままになっていた。

 

「ねぇ…これって……」

「うん……かなりまずい状況だ……」

 

 私達は大急ぎで図書室に戻った。ハーマイオニーはロンに天文学のテストをしていた。私とハリーは、さっき知った情報を整理して導き出した仮説を二人に話した。スネイプがとうとう『闇の魔術に対する防衛術』を破るかを知ったかもしれないことを。

 

「それは…一大事だ!」

「落ち着いてロン。まだあの部屋にはフラッフィーがいるわ」

「でももしかしたら、スネイプはハグリッドに聞かなくてもフラッフィーを突破する方法を見つけたかもしれないな」

 

 図書室の何万冊という本を見回しながら、ロンは言った。

 

「これだけの本や文献があれば、どれかには三頭犬を突破する方法だって書いてあるよ。ハリー、どうする?」

 

 私はロンがまるでわくわくしているかのように見えた。不安だけど、冒険心がそれを飲み込んでいるようで少し危うさを感じる。今は推測だけで動くべきじゃない。落ち着いて今私達に出来ることを探すべきだ。

 

「ダンブルドア先生に全部話そう。ずっと前から…いいえ、最初から私達はそうしなくちゃいけなかった。また闇雲に動いたら、今度こそ私達は危ない」

「だけど、証拠がないわ!」

「……ハーマイオニー……」

「ごめんなさいグレイ…でも…私達はスネイプが犯行を起こしたっていう証拠を押さえれてないわ」

「ハーマイオニーの言う通りだ。僕達には圧倒的に物的証拠が足りない。クィレルは怖気づいて、僕たちを助けてはくれない。スネイプはハロウィーンの時にトロールがどうやって入ってきたのか知らないって言い張るだろうし、あの時四階になんて行かなかったって言えば、それまでだ。今の僕たちを誰も信じてはくれないよ。それにグレイ、忘れてないかい?先生達からしてみれば、僕達は四階に行ったことがない筈なんだ」

「……そうだった……そもそも私達…石やフラッフィーのことは知らないことになってるんだった……」

 

 指摘されるまで気付けなかった。どうやら私自身も、今の状況の整理が出来ていなかったみたい。

 

「……ちょっとだけ探りを入れてみたらどうかな……」

「駄目だよ、ロン。僕たち、もう十分に探りを入れすぎているんだから……残念だけど……手詰まりだよ……」

 

 ーー

 

 勉強の気分転換に外を散歩しても鬱々とした感情が私の中で渦巻いているのが感じられた。こんな気持ちになったのは生まれて初めてな気がする。私達じゃどうしようもないこの状況。一体どうすれば…。

 

「ピピィ!」

「…ビートル…」

『そう落ち込むなよ。チャンスは必ずある。状況を打開する何かが、きっとどこかにある筈だ。それを見つけるまで諦めるな』

「サファイア…慰めてくれるの?」

『俺達の主が暗かったら、俺達にも暗い気持ち移っちまうよ。見てられないからな』

「ピィ!」

「…ありがとう…」

 

 ビートルとサファイアに励まされるのは不思議な感じだけど、少しだけ気持ちが楽になった気がした。動物故の愛嬌もあるかもしれない。

 

「本気なのかハグリッド!一年生を連れていくって!!」

「ん?」

 

 近くから、誰かがハグリッドを責めるような声が聞こえた。方向は、ハグリッドの小屋の方向からだった。

 

『グレイ?』

「ピピィ?」

「……行ってみよう」

 

 ハグリッドの小屋の近くまで行くと、小屋の外でハグリッドともう一人、見知らぬ誰かがいた。ハッフルパフ生で、きっと私よりも三つか四つは歳上の男子生徒だった。

 

「一年生を連れていくなんて信じられない!ハグリッドだってあの森が危険なことは熟知してる筈だろ!?」

「わかってるさロルフ。でも仕方がないんだ。罰則だから俺が決めたわけじゃねぇ。あいつらがこんなことになったのも、殆どが俺のせいだ。だけど俺は、教授達には逆らえねぇ…」

「だとしても罰則の内容が重いのは君だってわかるだろ!?単調すぎるよ、先生達は」

「…それは…ん?グレイか?」

「こんにちはハグリッド」

 

 ハグリッドはつい最近の様子とは変わって落ち着いていた。ノーバートと別れてから数日、ハグリッドはいつも通りの彼に戻ったみたいだ。

 

「ハグリッド、この子は?」

「ん?おお、ロルフは初めて会うな」

「はじめまして、グレイ・ベアボーンです」

「ああ、うん、はじめまして。僕はロルフ・スキャマンダー」

 

 …………スキャマンダー?スキャマンダーってもしかしてあのスキャマンダー?

 

「あの…もしかして『幻の動物とその生息地』の…」

「ああ、ニュート・スキャマンダーは僕の祖父さ」

 

 ニュート・スキャマンダーのお孫さん!?ホグワーツの生徒だったんだ……。

 

「スキャマンダーさんはハグリッドとは仲が良いんですか?」

「ロルフで良いよ。まあそうだね。僕は祖父の影響で魔法動物が好きでね、同じ動物好きのハグリッドとは魔法動物のことで話が盛り上がることが多いんだ」

「この歳で魔法動物に詳しい奴は滅多にいねぇ、ロルフを見てるとチャーリーを思い出すよ」

「……話は戻るけどハグリッド、本当に罰則の内容は変更できないのかい?」

「…心苦しいがこの件に関してはおれにはどうすることも出来ねぇ」

「そんな……」

 

 一体何の話だろう?ロルフさんもハグリッドも、私に自己紹介したときよりも心苦しそうに見える。

 

「なにかあったんですか?」

「……話しても良いかなハグリッド。彼女はグリフィンドール生で、おまけに一年生だ。まったくの無関係ではないよ」

「……まあそうだな…話しても良いぞ」

 

 ロルフは頷くと私に丁寧に事情をポツポツと話し始めた。

 

「最近、グリフィンドールとスリザリンの一年生が真夜中に校内を歩き回って、バレてグリフィンドールは百五十点、スリザリンは五十点減点されたことは知っているね?」

「勿論知っています。当の本人達とは友達ですから」

「それでね、先生達は彼らに得点の減点だけじゃなく、罰則を与えるつもりなんだ。でもそこまでは普通さ。肖像画を掃除するとか反省文を書くとか、色々あるからね。でも先生達は彼らにとても危険な罰則を与えるつもりなんだ」

 

 危険な罰則?罰則に危険なんてあるの?罰則は教育も兼ねて行うものでしょ?危険なんてあって良いの?

 

「その罰則って、何ですか?」

 

 どくん、どくんと、自分の心臓の音が聞こえた。落ち着いて。知っておかないと、ハリーとハーマイオニーをもしもの時に助けられない。取り乱さず落ち着いて聞かなきゃ。

 

「……明日の夜、禁じられた森の調査に同行させるつもりらしい……」

「…………………………………………………………………………え?」

 

 あまりの言葉に、思考が少し止まってしまった。

 なんて言った?禁じられた森に入る?誰が?罰則を受けた生徒達……ハリー達が!?あの森に!?危険な動物もいるあの森に!?

 

「……冗談……ですよね……?」

「そう思いたかったさ、でもどうやら先生達は本気らしい」

 

 例え罰則でも危険すぎるでしょ!下手したら最悪死んじゃうかもしれないよ禁じられた森を歩くなんて!?

 

「止めさせれないのハグリッド!?いくらなんでもそれはッ!?」

「何度も言うが無理なもんは無理だ!おれには先生達の決定に口出しすることは出来ねぇ!」

「でも、このままじゃ……!」

「ハリー達の安全なら任せてくれ、おれとファングがハリー達の近くにいるかぎり、あそこの動物達がハリー達には手を出さない筈だ。最低限の安全はある」

「言わせてもらうけど信用出来ると思う!?あなたつい最近自分が何したかわかってるの!?」

 

 その言葉を放った後、思わずはっとしてしまった。ハグリッドは私の追及の言葉に対して苦しそうに顔を歪めていた。

 

「……ごめん…言い過ぎた……」

「良いんだグレイ、本当のことだ」

「……もしかしてノーバートのことかい?」

 

 ロルフはノーバートを知っていたみたいだった。考えてみれば当然のことかもしれない。ハグリッドとよく話しているなら、知っていたとしても不思議じゃない。

 

「知っていたんですね」

「まあね、たまに様子を見にきてたんだ。突然いなくなったから不思議に思ってたけど、君の友達がノーバートをホグワーツから出したのか。その後にフィルチに捕まってしまったと」

「そういうことです」

「成る程ね、君の友達がグリフィンドールの如く勇敢なのは理解出来たよ」

 

 ロルフはハリー達がしたことに理解を示してくれた。それだけども私の心は少しだけ救われたような気持ちになった。

 

 ーー

 

 昨日、ロルフとハグリッドと少しだけ話した後、私は談話室に戻ったけど罰則の内容をハリー達に伝えることは出来なかった。心苦しいけど、禁じられた森に入るなんて前日に知らされたら夜も眠れなくなってしまうだろう。それではただの生殺しと一緒だ。

 

「……来たみたいね」

 

 朝、大広間で朝食をとっているとテーブルに、ハリー、ハーマイオニー、ネビル宛の三通の手紙が届いた。恐らく今日の夜の十一時に罰則を行うというお知らせだった。

 ハリー達は朝から夜までどんよりとした空気を漂わせていた。いつも二人を気に掛けているロンもなんて声を掛けたら分からないようだった。私とロンが話を振ってもハリーとハーマイオニーは「…うん…」とか、「…そうね…」といった寂しい返事しかしてこなかった。

 今までないくらいに楽しくない一日も、気付けば夜の十一時、罰則の時間になっていた。

 

「じゃあ、行ってくるよ」

「また明日ね」

「うん、二人とも気をつけてね」

  

 ハリー達は私とロンに別れを告げ、ネビルと一緒に談話室を出ていった。

 

「グレイ、ハリー達の罰則ってなんだろうね?」

「…先生達の正気を疑うくらいに危険な内容かもね」

「……冗談だろ?」

「さあ?私もう寝るから、夜更かししないように気をつけてねロン」

「ああ、うん。おやすみグレイ」

「おやすみロン」

 

 私は部屋に戻ると既に眠っているビートルを寝床にそっと置き、他のルームメイトが寝ているのを確認して着替えを始めた。

 パジャマではなく、トランクから黒い大きめのロングシャツ、黒いスカートに黒タイツなど、全体的に黒色の配色が多めの服を組み合わせて着ると、その上から真っ黒なローブを着て顔が見えなくなるくらいフードを深めに被った。

 

『何してるんだグレイ?寝ないのか?』

「ええ、ハリー達の後を尾けようと思って」

『……本気か?』

 

 サファイアが言いたいことも分かる。危険すぎると言いたいのだろう。でも私だって危険なことは十分承知してる。

 

『あのボウズ達にはあの大男が傍にいる筈だろ?少し心配性が過ぎるんじゃねぇか?』

「……でも…だからってもう待ってはいられないよ。本当は罪悪感もあるし嫌だけど、ノーバートの時みたいに二人が危険に晒されている時に安全な場所で待っているなんて、そっちの方がもっと嫌!」

『後悔する程の目に遭うかもしれねぇんだぞ?』

「……後悔するにしても、私はなにもしないで後悔するより、何かをしてから後悔したい」

 

 サファイアを助け出したあの日、私は目の前で人が人を殺すのを見た。正直、凄く怖かった。人殺しの狂気も、人があっさり死んでいく瞬間も、一生見ることはないと思っていたから。……でも後悔はしていない。悪いことばかりじゃ無かったから。サファイアに、新しい友達に出会うことが出来たから。あの時の行動を私は後悔していない。だから今回もそうする。結果はどうなるか分からない、だったらまず、私は過程を大切にしたい。それだけだ。

 

『……全く、しょうがないお姫様だぜ。グレイは』

「エスコート、お願い出来る?」

『柄にもねぇことしてんじゃねぇよ』

  

 思わず笑ってしまう。今から率先して校則を破ろうとしているから、気分が高揚しているのかもしれない。

 サファイアを首に巻き付けて、ロンがいる談話室を気付かれないように経由して廊下に出ると、見回りの先生に見つからないように息を殺しながら闇に紛れて外に出て禁じられた森に向かった。ハグリッドの小屋には誰もいなかった。

 

『とっくに森に入ったみてぇだな、どうする?』

「あなたの大きさを元に戻すわ」

『本気か?』

「エスコートしてくれないの?」

『……わかったよ』

「ありがとうサファイア。それじゃあ、フィニート」

 

 サファイアにかけられた魔法を解くと、サファイアはみる大きくなった。太さは樫の木の幹ほどとなり、体長は十五メートルにまで長くなった。その姿と貫禄は、まさに伝承通りの怪物だった。

 

『乗れよグレイ、足音を立てずに行くなら一番最適だ』

「ありがとう」

 

 スカートだったのもあって、私は跨がずに横向きでサファイアの首らへんに座り、首を前に向けてふるい落とされないように角を掴んだ。

 

『準備良いか?』

「いつでも良いよ」

『ふるい落とされんなよ』

 

 サファイアは私が走るスピードの何倍もの速さで森の中を進んでいった。障害物となった木々も何のその。体をくねらせて自由自在に躱していった。

 

「すごい!すごい!すごい!すごい!本当にすごいよサファイア!!」

『へっ!そう言ってくれて何よりだ』

 

 思わず本来の目的も忘れて楽しげに声を上げてしまった。でもしょうがないじゃないか。今まで生きてきて、大蛇に乗って森を進むことになるなんて思いもよらなかったのだから。

 

『それで?あの大男はなんでこの森の調査を行っているんだ?』

「あれ?言って無かったけ?」

『ああ、聞いてねぇぞ』

「そう…なんでも、ロルフとハグリッド曰く、この森に住んでるユニコーンが一頭襲われたんだって」

『何?あのユニコーンがか?』

「ええ、あのユニコーンが。ハグリッドが水曜日に死骸を見つけたらしいよ。一頭だけしか襲われていないとも思えないから、今回は他のユニコーンの死骸を見つけるのが目的みたい」

『……そりゃあ、只事じゃねぇな。用心を怠るなよグレイ』

「言われなくても分かってるよ」

 

 私達は周囲に目を配らせながら森の中を進んでいった。

 そんな調子で暫く森を探索していると、遠くに明かりがあるのに気付いた。暗闇で見にくかったけどなんとか誰かわかった。ハグリッドとハリーとハーマイオニーだった。

 

『どうするグレイ?様子を伺うか?それとも接触するか?』

「ハグリッドが傍にいても、ハリー達は周囲を強く警戒している筈よ。下手に怯えさせるのは無し。だから気付かれない距離で見守ろうと思う」

『わかったぜ』

「ギャァァァァ!」

「『!?』」

 

 方針を決めたのも束の間、少し距離を置いててもはっきりと聞こえてくるほどの、死人も目を覚ますような悲鳴がハリー達とは別の方向から聞こえてきた。十中八九、ネビルの悲鳴だった。そして次の瞬間、

 

「え、光?」

 

 頭上には明るく、赤い光りが撃ち上がっていた。よく見てみると、それは赤い花火だった。

 

「何?今の何の光!?」

『分からん。だが今の光であの大男は光が打ち上がったところに行っちまったぞ』

「じゃあそっちにネビルとマルフォイがいる」

 

 きっとあれは何かあった時に遠くにいる人間に自分が危険に晒されていることを伝える為の信号弾だろう。

 

「マルフォイはともかく、ネビルは無事でいてくれると良いんだけど…」

 

 暫く待っていると、ハグリッドがネビルとマルフォイとファングを連れてハリー達の元に戻ってきた。遠くからでも分かるくらいにカンカンの怒った顔をして。

 

「?どうしたんだろう?」

『さあな、ここからじゃ話の内容は聞き取れねぇぞ。近づくか?』

「……いいえ、これ以上近づいたらバレちゃうかもしれないんでしょ?このままで」

「ええ、その方が賢明でしょうね。近づけば彼らを怯えさせてしまうことになりかねない」

「でしょ?だから距離を取って…………え?」

『は?』

 

 突然、後ろから声が聞こえた。この森の中で誰かに話し掛けられると思ってもみなかったので、思わず思考が停まってしまった。

 

「やあ、初めましてグレイ・ベアボーン。私の名はエイナル。惑星が君がこの森に来ると私に教えてくれた」

 

 人の言葉を喋っているけど、実際に喋っていたのは人間じゃなかった。黒髪で、上半身は裸で筋肉質、下半身は馬の胴体そのもの。魔法界はおろかマグル界でも広く伝承が残されている魔法動物、ケンタウロスだった。

 

「……なんで、私がここに来るって……」

「さっきも言ったが、私は惑星を読んで君に会いに来たのさ、それ以外に理由は無いよ」

 

 惑星を読む…星占いのことを言っているのかな?

 

「ホーンド・サーペントを連れているのは驚いたよ。君はかの創設者の血を色濃く受け継いでいるようだ」

 

 私がスリザリンの子孫ってことを知ってる?星占いはそこまで精度は高くないってハーマイオニーは言っていたけど……実際は違うのかな?

 

「はあ、どうも」

「だけど今のこの森は君が思ってる以上に危険だ。例えホーンド・サーペントが傍にいたとしても、それは変わらない。こんな無茶は止めて、今すぐホグワーツに戻るんだ」

「…………心配してくれてるのはありがたいですけど、ハリー達が安全にホグワーツに帰る為に、私一人で戻るわけにはいきません」

「無茶は良くない。ユニコーンが殺されているんだ。罪なき動物を殺すなんて、まともな思考を出来ているかも疑わしい。命は大事にs「――ぎゃぁぁぁァァァ!」ッ!?」

 

 悲鳴が森の奥から聞こえてきた。誰の悲鳴かは分からなかったけど、子供の甲高い悲鳴だった。ハグリッドじゃないのは確実!

 

「サファイア!」

『あいよ!しっかり掴まっとけ!!』

「行っては駄目だグレイ!待つんだ待ちなさい!!」

 

 エイナルが私を引き止めようとしたのを振り切って、私達は森の奥へ全速力向かっていった。進んでいくと月の光に照らされて木や地面に付着した赤い血痕が目立つようになってきた。恐らくユニコーンの血だ。数が多くなってきているということは、ユニコーンの死骸もそれを襲った"何か"も近づいているのかもしれない。

 

「……何?……アレ……?」

 

 森の奥、地面にしりもちをついたハリーと頭をフードにすっぽり包んだ得体の知れない黒い影が対峙していた。サファイアはそれを見た途端に、ホーンド・サーペント特有の低音を放ち始めた。ホーンド・サーペントが低音を放つのは危険を察知した時だ。つまりあれは、危険な魔法動物すら危険だと感じる存在だということ。

 

「ッ!?サファイア!お願い!」

『任せろ!』

 

 サファイアは私を乗せたまま間に割って入って黒い影に牙を向けた。ハリーの様子を見ると何故か頭を痛そうに押さえていた。

 

「え!?グレイ!??どうして君が!?!!??」

「心配で後をついてきた!先生達には無断だから内緒で!」

「えぇ!?」

「それよりもコイツ何!?ユニコーンを襲ってた犯人?」

「え?ああ、きっとそうだよ。さっきユニコーンの血を啜ってたんだ!」

「なんですって?」

 

 ユニコーンの血を啜ってた?教科書で読んだことがあるけど、ユニコーンの血を飲むなんて馬鹿な行為、普通の人間はやらないしやろうともしない。不死になると同時に魂が呪われるからだ。

 

「…あなたは誰?こんなことして、一体何が目的?」

『グレイ、こんな奴に話し掛けてもまともに答えてくれるわけねぇだろ』

「もしかしたら答えてくれるかもしれないじゃない」

「…………パーセルタング…………だと?…………小娘貴様…………一体…………何者…………だ?」

「ッ!?」

 

 物凄くどす黒い声……人の言葉を話した?こっちの言葉が理解出来るの!?だとしたら考えられるのは二つ、人間か、人間の言葉を理解出来る人外。

 

「あなたこそ何者?ユニコーンを襲ったうえに血を啜るなんて普通じゃないでしょ」

「…………さぁな……貴様に……答える……口は……無い……」

 

 黒い影が蠢いた。私達に襲いかかると思ったけど、違った。私達と黒い影の間にケンタウロスが割り込んできて、黒い影を追い払った。彼はエイナルとは別の明るい金髪に胴はプラチナブロンド、淡い金茶色のパロミノのケンタウルスだった。

 

「怪我はないかい?二人共」

 

 ケンタウロスは黒い影がいなくなったのを確認すると、地面に座り込んでいるハリーを立ち上がらせた。

 

「は、はい、ありがとう。でも、あれは何だったの?」

「……」

 

 ケンタウロスはハリーの質問に答えなかった。彼は私とハリーを交互に見て観察しているようだ。気まずい空気が漂い始めた。私はその隙にフードを被り直して自分の身なりに異常が無いかを確かめた。

 

「ポッター家の子だね?それから君はグレイ・ベアボーンだ。エイナルから君がどうしてここにいるかを教えてもらったよ」

「エイナルが?」

「そうだ。ああ、言い忘れていた。私の名はフィレンツェ」

「ありがとうフィレンツェ。助かったよ」

「何を言うんだ。ハリーを助けたのは君だグレイ。もし君がハリーを助けなかったら、ハリーはどうなっていたか……」

「結局あれはなんだったの?」

 

 ハリーは再び同じような質問をした。だけどフィレンツェはその質問に答える気は無いようだった。

 

「二人共、早くこの森から出ていった方が良い。この森は安全ではありません。特にハリー・ポッター、あなたは早くこの森から離れるべきです。私の背に乗ってください。その方がずっと早いでしょうから」

「グレイはどうするんですか?」

「彼女はホーンド・サーペントによって常に守られている。今のあなたよりかはよっぽど安全ですよ」

 

 フィレンツェは前脚を曲げて態勢を低くし、ハリーが乗りやすいようにしてくれた。しかし、ハリーがフィレンツェの背中に跨ったその瞬間、フィレンツェとは別のケンタウルスが二頭現れた。この二頭もエイナルとは別のケンタウロスだった。

 

「誰?」

「ロナンとベインだよ。ハグリッドの知り合い。ハーマイオニーと一緒の時に会ったんだ」

「フィレンツェ!」

「何ということをしているのだ! 人間を背中に乗せるなど、恥ずかしくはないのか? それとも、君は誇り高き森の賢者ではなく、ただのロバに成り果てたとでもいうのか!?」

「ロナン!ベイン!二人共止めるんだ!」

 

 二人はフィレンツェを責めたけど、後からやってきたエイナルがそれを止めた。

 

「エイナル何故止める!?フィレンツェの行為は我々ケンタウロスの誇りを汚す行為だ!」

「ベイン、この子が誰だか分かっているのでしょう? ポッター家の子です。それにこちらはベアボーン家の子、スリザリンの血族だ。二人は一刻も早く、この森を離れたほうがいいのです」

「…………え!?」

「あ」

「ん?知らなかったのですか?ハリー・ポッター」

 

 フィレンツェがハリーに、私がスリザリンの子孫だってばらしてしまった。

 

「本当なの……?」

「……うん…黙っててごめんねハリー」

「いや……うん…別に良いんだけど…」

 

 何か言われると思っていたけど、ハリーは私がスリザリンの子孫だったことを軽く受け止めたようだ。

 

「なんとも…思わないの?」

「グレイはグレイだろ?誰がご先祖だって関係ないさ。それに君はスリザリン生じゃなくてグリフィンドール生じゃないか。嫌うも何も無いさ」

「……ありがとう、ハリー」

 

 正直、スリザリン嫌いのハリーには嫌われると思っていたけど、私の思い込みだったみたい。

 

「フィレンツェ、君は一体この子達に何を話した? 忘れてはいけない、我々は天に逆らわないと誓ったのだ。惑星の動きから、何が起こるかを読み取ったはずだろう」

 

 一方、ケンタウロス達の方は未だに口論が続いていた。誇りがどうとか、惑星がどうとか、同じようなことばかり言ってる。

 

「二人共、フィレンツェを責めるな。フィレンツェは最善なことをいているのです!」

「最善!それが我々と何の関わりがある?ケンタウルスは予言されたことにだけ関心を持てばそれでよい!森の中で彷徨う人間を追い掛け、ロバのように駆け回るのが我々の役目だとでも言うつもりか!」

 

 エイナルがフィレンツェを庇うが、ベインとロナンの二人はそれでも引き下がらなかった。

 フィレンツェはハリーを乗せたまま向きを変えた。

 

「あのユニコーンを見なかったのですか? 何故殺されたのか、あなたには分からないのですか? それとも惑星がその秘密をあなたには教えていないのですか? ベイン、私はこの森に忍び寄る者に立ち向かいます。そして、必要とあらば人間と手を組むことも厭わないでしょう!」

「フィレンツェ!!」

「グレイ・ベアボーン。私はハリーをハグリッドの元へ送り届けます。あなたも気をつけてホグワーツに戻りなさい」

「うん、色々とありがとう、フィレンツェ」

「また後でね、グレイ」

「ハリーも気をつけて」

 

 フィレンツェはハリー乗せたまま森の闇に消えていった。

 

「……グレイ、もう済んだかい?」

「うん、わがまま言ってごめんなさい、エイナル。行こうサファイア」

『なんだ帰るのか?』

「もう用事は済んだわ。ホグワーツに戻りましょう」

『わかったよ。この森に美味そうな食い物は無かったなぁ』

 

 私達はハリーとは別の道で寮に戻ることにした。でも正直、先生達に見つからずに寮に戻れるか不安だ。

 

「どうしよっかなぁ、正直思い切り過ぎたかも…」

『あ?今さら後悔してんのか?』

「…………」

『はぁ…まあ良い、要するに寮に忍び込めれば良いんだろ?それなら簡単だ、飛べば良いんだから』

「……飛ぶ?」

『しっかり捕まっとけ』

「ねぇちょっと待って飛ぶって言った?今飛ぶってええええええええええええええぇぇぇぇえええええ!?!!??」

 

 サファイアは私を乗せたまま空に舞い上がった。翼も持って無いのにまるでドラゴンのように。

 

「うそでしょおおおおおおおおぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおお!?!!??」

 

 思わず叫び声を上げてしまった。それもホグワーツはおろか、ここら一帯に轟くくらいの。願わくば、先生達が私に気付かずに寮に戻れることを祈った。

 




ロルフ・スキャマンダー君は完全に妄想で書きました。多分ハリー達より年上のハッフルパフ生だろ!って感じに設定してみました。今後また出すかは検討中です。

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