ハリー・ポッターと最後の不死鳥   作:TARAKON X

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第16話 試練への覚悟

 夏が近づき春の温かさより夏の鬱陶しい暑さが目立ってきた季節。私はハリーとロン、そしてご機嫌斜め……というよりは少しご立腹気味のハーマイオニーと図書室で明日にある試験に向けて猛勉強していた。色々なことがあって忘れていたけど、ホグワーツは学期末の試験の時期になっていた。

 ハリーは昨日の一件に思うところがあるのか、あまりペンを走らせておらず、逆にロンは試験が近づいてくる危機感に動かされたのか、つい最近よりも勉強に身が入っているようだった。

一方、私はハーマイオニーに何時でも小言を言われても良いように身構えながら勉強していた。

 

「…………………………………………」

「…………………………………………………………」

「……あのー……ハーマイオニー?」

「……何かしらグレイ」

「怒ってる?」

「いいえ、怒ってなんかないわよ」

「あ、そう……じゃあなんで朝からご機嫌斜めなの?」

「さあ?誰かさんが危険なのに森を出歩いてたからじゃないかしら?」

「やっぱり怒ってるよね!?」

 

 ハリー達に黙って禁じられた森に入った日の翌日の今日。私はハーマイオニーの機嫌を取っていた。どうしてこんなことになっているかというと、私が禁じられた森に入ったことがハーマイオニーとロンにもバレてしまったからだ。それももう、意外とあっさりと。森の中での隠密行動は本当にたまたま上手くいったんじゃないかと思えるくらい。

 

「僕もさすがに呆れることしか出来ないよ。秘密にして欲しいって言ってた本人が三十分と経たない内に普通にバレちゃってるんだから」

「何も言い返せません……」

「グレイってあれだね。結構抜けてるところあるんだね」

「自分でも阿保だと思えるほど迂闊だった……」

 

 サファイアが飛んでくれたお陰でホグワーツの廊下をショートカットできたのもつかの間、談話室に入ると、丁度帰ってきたハリー達と、帰りを待っていたロンにばったりと出くわしてしまった。

 当然、私が禁じられた森に入ったと知ったハーマイオニーはカンカンに怒って一時間くらい説教されて、その間にハリーがロンに私がスリザリンの末裔であることを話して、説教が終わった後に三十分くらい問い詰められた。

 ロンもハリーと同様、私がスリザリンの末裔だったことにそれほど嫌悪することは無く、むしろどんなことが出来るのかや、家にお宝は眠っていないかなどを目を輝かせて聞いてきた。

 そしてハーマイオニーは、私が禁じられた森に入ったことについて未だに怒っていた。

 

「グレイ、私がクリスマス休暇明けに言ったこと覚えてる?」

「え?……うん、覚えてるよ」

「そう、じゃあ復唱してみて」

「へ?」

「覚えているんでしょ?じゃあ勿論、ちゃんと復唱出来るわよね?」

「え、えーと……『一人で突っ走らないこと。もしそういう状況になったらハーマイオニーも一緒に行く』……だったよね?」

「ええそうよ。でもグレイは私と一緒に行くことはおろか、一言も言わずに勝手に禁じられた森に入ったでしょ?これについてどう思う?」

「えーと……今回はハーマイオニーは罰則で一緒に行動出来なかったし、仕方なかったんじゃないかなーって……思います……」

「本当に?」

「え」

「本当に、仕方なかったと、本当にそう思ってる?」

「…………一言くらい、言っておけば良かったと思ってます……」

「ええそうね、一言くらいは何か言って欲しかったわ」

 

 日をまたいでもハーマイオニーの機嫌はなかなか直ってはくれなかった。こうなってしまってはもう何をどうすれば分からない私であった。

 

「ハリー、ハーマイオニーがなんか怖いぜ」

「グレイは別にハーマイオニーの物じゃないんだからそんなに責めなくて良いと思うけどなぁ」

「何か?」

「「いいえ何も」」

 

 ハリー達はハーマイオニーにバレないように心情を吐露していたけど、バレて尚且つ威圧されて縮こまってしまった。

 

「でもいい加減怒るのは辞めようぜハーマイオニー。明日はテストだよ。ハーマイオニーもグレイも、直前でこんな調子じゃ解ける問題も解けなくなっちゃうぜ」

「それは…そうだけど」

「グレイも反省してるみたいだしさ、これくらいで良いじゃないか。グレイも次からは気をつければ良いさ」

「ロン…ハリー…」

「……分かったわ、今回は大目に見てあげる。でもグレイ、今度私に何も告げずに危ないことをしたら、一週間くらい背中に抱き付いて動きにくくするから覚悟しておきなさい」

「えぇ……」

 

 何その軽いようで軽くない奇妙なペナルティ……誰得なんだろう?

 

 ーー

 

 溶けてしまうんじゃないかと錯覚させてしまう程の暑さがホグワーツに充満する中でも、筆記試験の会場の大教室は桁違いに暑かった。私は『ぐでー』とだらけたくなる衝動に駆られたけど、教室の前のマクゴナガル先生の存在を感じとると衝動を押さえつけながら試験を受けた。

 魔法がかけられたカンニング防止用の羽ペンを使っているのもあると思うけど、そうでなくても教室の前ではマクゴナガル先生を筆頭に他の先生達が鋭い眼差しで生徒たちを見回しているので、カンニングをしようとする生徒はどこにもいなかった。

 魔法での実技試験も勿論あった。フリットウィック先生の呪文学のテストは対面で、その場でパイナップルを机の端から端まで何故かタップダンスさせる試験日だった。呪文学に関しては復習をちゃんとしていたので難なく成功出来たと思う。

 マクゴナガル先生の試験は、ねずみを嗅ぎたばこ入れに変えることだった。私にとって全教科の中でも一番得意な科目が変身術だ。これは滞りなく成功した。マクゴナガル先生もこれには微笑みながら頷いていた。

 苦戦する教科もあった。スネイプの魔法薬学の試験は何も見ずに聞かずに忘れ薬を作ることだった。私が少し首を捻らせてレシピの内容を思い出そうとすると、スネイプは後ろに立ってじろじろ監視をしてくる陰湿さを全面に押し出してきた。私だけでなく全員の生徒にそれをやるので、皆酷く緊張していつも通り薬を煎じるというわけにはいかなかった。

 

「ああもう!まったく、凄い緊張したよ……」

「スネイプの奴、本当に陰気な奴だよな」

「今に始まったことでもないでしょうに」

「次の試験は…うわ……魔法史ね」

 

 最後の魔法史の試験は一時間の筆記試験のみだった。私は魔法史の授業ではいつも寝てしまうので、図書室で一から勉強しなおしていたけど、はっきり言って自信は無かった。最後の問題をギリギリのところで解くと丁度終了の鐘が校内に鳴り響いた。

 幽霊のビンズ先生が、羽根ペンを置いて答案羊皮紙を巻きなさいと言った時には、周りの生徒が爆発したような歓声を上げていた。ハリーとロンも混じって叫んでいた。内心、私も心の中で喜んでいた。

 でも私達は、というよりハリーは試験が終わった後も直ぐに試験の時以上に暗い雰囲気を漂わせていた。なんでも、頭の傷がズキズキ痛むようだ。あの影を見た時から始まったらしい。

 ハリーはフィレンツェに乗っていた時、あの不気味な影のことを聞いたらしい。あの影はどうしても生きたいという願望に突き動かされてユニコーンの血を飲み、生きながら呪われている。普通の人間はユニコーンの血を飲む必要が無い。裏を返せば、あの影はユニコーンの血を飲まなければ生きていけないくらい弱っているということだ。

 ハリーはあの影を『名前を言ってはいけない例のあの人』こと、ヴォルデモートだと言っていた。ユニコーンの血を飲まなければいけないくらい弱っていて、スネイプを使って『賢者の石』の命の水を取り込んで、完全な力と強さを取り戻そうとしている人物。妥当な考えだ。ハーマイオニーとロンは震え上がっていたけど。

 

「そういった暗くて気分が悪くなりそうな話はもうよそうぜ。もう試験は終わったんだ。暫くは勉強しなくても良い。こんなに嬉しいことはないぜ」

 

 さんさんと太陽の光が射す校庭にわっと繰り出した生徒達の群れに加わり、ロンは背筋をぐっと伸ばしながら言った。試験が終わったこともあって、私も前から頭の隅に寄せていたことを思い出した。

 

「そういえば、前に透明マント失くしたって言ってたけど、あれどうなったの?」

「あれかい?実は戻ってきたんだ。誰が届けてくれたのかは分からないけど」

「…………」

 

 それって拾ってくれた人はハリー達が何をしてたのか知ってたんじゃ…………。

 

「それにしても今回の試験、思ってた以上に簡単だったわ。魔法史の教科書を深く読みすぎる必要は無かったんだわ」

「私はそうは思えなかったけどね。意外と難しかったと思うけど?」

「あらそう?じゃあ答え合わせしてみる?」

「二人共よしてくれよ。試験はもう終わってるんだ。終わったことを蒸し返さないでくれよ絶対に気分が悪くなる」

 

 ハーマイオニーが試験の答え合わせをしたがり、ロンが気だるげにそれを断る。このやり取りは私達の間で最近の恒例行事となっていた。

 

「ロンの試験嫌いは一生改善されないね、確実に」

「誰だってそうだと思う筈さ。ハーマイオニーみたいな人の方が稀だと思うぜ」

「そうかしら?」

「今回ばかりは私もロンの言う通りだと思うよ」

「…今回ばかりは?」

 

 私達は話ながら湖までぶらぶら下りていき、全員が入っても余裕があるくらい大きな木陰に寝転んだ。辺りの植物を優しくなびかせる風が肌に当たって心地良い。

 ウィーズリーのフレッドとジョージとリー・ジョーダンが暖かな浅瀬で、日向ぼっこをしている大イカの足をくすぐっているちょっと奇妙で何故か微笑ましい光景が見える。

 

「ハリー、君ももっと嬉しそうな顔をしろよ。試験でどんなにしくじったって、結果が出るまでまだ一週間もあるんだ。今からあれこれ考えたってしょうがないだろ?」

 

 ロンが草の上に大の字になりながら、少し見当違いな言葉をさっきから頭を、厳密に言えば頭の傷を押さえながら少し苦しんでいるようにも見えるハリーに投げ掛けた。

 

「試験のことは僕だってもうどうでも良いよ……さっきから頭痛がするんだ」

「…前にもあったよな。確か…組分けの後にスネイプの顔を見たときだ」

「え?そんなことあったの?」

 

 そんなことがあったのは初耳だ。その時の私は……目の前の料理にがっついていたな…うん…。

 

「一体これはどういうことなのか分かれば良いのに。ずっと傷が疼くんだ。今までもこういうことはあったけど、こんなに続くのは生まれて初めてだ」

「マダム・ポンフリーのところに行った方がいいわ」

「僕は病気じゃない、きっと警告なんだ。なにか危険が迫ってる証拠なんだ」

 

 ハリーは相当切羽詰まっている状態だった。でも、だからこそ落ち着きを取り戻して欲しい。じゃないと冷静な判断すら出来ない。

 

「ハリー。良いかい? リラックス。リラックスだよ友人。ハーマイオニーの言う通りだ。君は一度マダム・ポンフリーに診て貰った方が良い。それにダンブルドアがいる限り、石は無事だよ。スネイプがフラフィーを突破する方法を見つけたっていう証拠はないし……ていうか、一回足を噛み切られそうになったんだぞ? すぐにまた同じことをやるわけないよ。それに、ハグリッドが口を割ってダンブルドアを裏切るなんてありえない。そんなことが起こるくらいなら、ネビルはとっくにクィディッチ世界選手権のイングランド代表選手になってるよ」

「…ロンの言う通りだと思う。ハリーは一度冷静になった方が良い。その頭の痛みが冷静を欠かせているのなら、マダム・ポンフリーの所に行こう。きっと治してくれる」

「……だけど、僕、何か大変なことを忘れているような気がするんだ。とても重要な何かだよ、それなのに、それがどうしても思い出せないんだ」

 

 それもきっと傷による頭痛の仕業だろう。私はハリーを医務室に連れて行こうと立ち上がると、突然、ハリーがバッと立ち上がった。

 

「どうかしたの?」

 

 横からハリーの顔を見ると、彼の顔は今までに無いくらい真っ青だった。まるで、気付きたくなかったことに気付いてしまったような、そんな顔だった。

 

「今ちょっと気付いたことがあるんだ。すぐハグリッドに会いに行かないと!」

 

 そう言ってハリーは駆け出した。

 

「え?ちょっとハリー!?」

「どうしちゃったの急に?」

 

 ハリーは私達が追い付くと、走りながら説明してきた。

 

「ハグリッドはホグズミードのパブでノーバートの卵を貰ったって、そう言ってたよね?」

「うん、以前ハグリッドが言ってた」

「ハグリッドは昔からドラゴンが欲しくてたまらなかった。でも、いきなり見ず知らずの赤の他人がたまたまドラゴンの卵を持って現れるかい?現れないよ。魔法界の法律で禁じられているのに、ドラゴンの卵をポケットに入れて持ち歩く人がざらにいるわけないだろう?ハグリッドにたまたま出会ったなんて、話がうますぎると思わない?どうして今まで気付けなかったんだろう」

 

 ハリーの言葉に思わずハッとする。確かにそうだ。偶然にしては出来すぎてる。ハグリッドが欲しい物を知ってる人物……。

 

「……ハグリッドにドラゴンの卵を譲ったのは…もしかしてあの影………スネイプ?」

「もしくはヴォルデモートだ」

「結局君達は何が言いたいんだ!?」

 

 ロンはハリーがヴォルデモートと言った途端に震え上がり、推理の結論を聞いたけど、ハリーは無言になり、いつの間にか私達は校庭を横切ってハグリッドの家に着いていた。

 ハグリッドは家の外にいた。肘掛椅子に腰掛けて、ズボンも袖もたくし上げて、大きなボウルを前に置いて豆のさやを剥いていた。

 

「ん?ようお前さん達、試験は終わったかい?お茶でもどうだ?」

「ありがとうハグリッドいただくy「そんな暇無いよロン」…そりゃ無いぜグレイ」

 

 私はロンの言葉を遮った。ハグリッドには少し失礼かもしれないけど、お茶を貰うのはまた次の機会の方が良いと思う。

 

「ねえハグリッド、聞きたいことがあるんだけど。ノーバートの卵を賭けで手に入れた夜のことを覚えているかい?トランプをした相手って、どんな人だった?」

「分からんよ、マントを着ててフードを被っとった。顔はよく見れなかったわい」

 

 ハグリッドの言葉に思わず絶句してしまう。顔も分からない怪しい人間と賭け事をしたの?この男は。

 

「そんなに珍しいこっちゃない。『ホッグズ・ヘッド』なんてとこにゃ……ホグズミードのパブだがな、そこはちょっとおかしな奴がうようよしとる。もしかしたらドラゴン売人だったかもしれんな」

「……本気で言ってるの…それ…」

 

 もう開いた口が塞がらないとはこのことだ。ハリーなんて唖然しすぎて地べたにへたり込んでしまった。気持ちは分かる私もへたり込みたい………。

 

「ハグリッド、その人とはどんな話をしたの?ホグワーツのこと、何か話したの?」

「話したかもしれん」

 

 もう耳を塞いで走り出したい。正直、ハグリッドをこのまま森の番人にしておいて良いのだろうか。

 

「相当酔っ払っていたもんでな。ええと、そうだな、あいつはおれが何をしているのかって聞いたような気がするぞ。そんで、おれはホグワーツで森番をしとると答えた。そうだろうが? ホグワーツの森番といえば、このおれしかおらん。そしたら今度は、どんな動物を飼ってるかっちゅう話になった。そん時に、本当はずっとドラゴンを飼うのが夢だったっちゅう話をしたんだ」

「それで、そのマントの人と本当にトランプをしたの?ドラゴンの卵を賭けて」

「ああそうだ。ちょうどドラゴンの卵を持っているから、トランプで勝ったら譲ってやってもいいって言ったんだ。でも、ちゃんと責任を持って飼うと約束をしなければ駄目だというから、俺は言ってやったさ。フラッフィーに比べりゃ、ドラゴンなんか楽なもんだ大したことないってな」

「そ、それで、その人はフラッフィーに興味があるみたいだった?どうだったのさ?」

 

 ドクン、ドクン、と心臓の鼓動が大きくなっていくのを感じた。これからハグリッドの言う答えが私達にとって気にすることのない答えか、最悪の答えか。私は前者であることを強く願った。

 

「まあ、そりゃそうだろう。三頭犬なんて、例えホグワーツにだって、そんなに何匹もいねえだろうからな。だから俺は言ってやったよ。フラッフィーなんか、宥め方さえ知ってさえいれば、なぁんも怖くねぇ。ちょいと音楽を聞かせればすぐにねんねしちまうって――」

「なんてことしてくれたのよこんのバカアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァ!?!?!?!?!!!!」

 

 私の願いは硝子のように呆気なく砕け散った。ついでにハグリッドの鼓膜をぶち抜くくらい大きな声で罵声を浴びせた。

 

「ええ!?ん?……あ、ああああああ!?!?!?しまったああああああ!?!?!!??」

 

 ハグリッドが気付いたのが、見ず知らずの人物にフラッフィーの宥め方を教えてしまったことなのか、私に話してしまったことなのかは今となってはもうどうでも良い。

 次の瞬間ハリーがが駆け出した。追うようにロン、ハーマイオニー、私という順で走って行く。

 

「頼む待ってくれお前さん達!?今のは忘れてくれえええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇえええええ!?!?!?!!!!!???!?!」

 

 後ろから懇願の声が聞こえたけど無視した。誰もハグリッドの方を振り返らず校舎へ急いだ。

 

「ダンブルドア先生のところにいかなくちゃ。ハグリッドがフラッフィーのことを怪しいやつに言っちゃったって。ダンブルドアが僕たちの言うことを信じてくれれば良いんだけど。誰か校長室ってどこだか知ってる?」

 

 中央ホールに入ると、ハリーが焦りに焦って早口で聞いてきた。

 

「えっと、ちょっと待って」

 

 私は懐から、以前ダンブルドア先生から借して貰ったフィールドガイドを取り出して、校長室の場所を見つけた。

 

「ここから近いよ、急いでダンブルドア先生に「そこの四人、こんなところで一体何をしているのですか?」ッ!?」

 

 校長室の在処を三人に伝えてさっそく行こうとした時、本を大量に抱えたマクゴナガル先生が私達の目の前に現れた。

 

「僕達、ダンブルドア先生のお目にかかりたいんです。出来れば今すぐに」

 

 ハリーがマクゴナガル先生の問いかけに答えた。

 

「ダンブルドア先生にお目にかかりたいですって?」

 

 マクゴナガル先生は、そんなことを望むのはどうも怪しいとでも言うように、オウム返しに聞いてきた。

 

「理由は?」

「あー、それは……ちょっと秘密なんです」

 

 まずい…ハリーがそう答えたあと、マクゴナガル先生の目が私達を怪しんでいるように見えた。 

 

「ダンブルドア先生は十分前にお出掛けになりました」

「え?いないんですか!?」

「ええ、魔法省から緊急の梟便が来て、直ぐにロンドンの本部に飛び発たれました」

「なんてタイミングの悪い!」

 

 どうしよう?本当に困ったことになった。肝心な時に一番頼りになってくれそうなダンブルドア先生がいないなんて予想外過ぎる。

 

「どうしましたMiss.ベアボーン?先程から顔色が優れないように見えますが…もし体調が優れないのなら医務室に行くことをお勧めします」

「あ、いえ、大丈夫です……お気になさらず」

「そうですか。ですがもし体調が優れないのなら直ぐに医務室に向かうことです。ああ、話は変わりますが先程の変身術の試験、とても素晴らしい出来でした。これからも誠心するように」

「あ、ありがとうございます!」

 

 マクゴナガル先生はにっこり微笑むと、「今日は天気が良い日のようですから、皆さん外で日向ぼっこでも如何ですか?」と言い残して図書室の方に向かっていった。

 

「そんなに上手く出来たの?変身術の試験」

 

 マクゴナガル先生が見えなくなると、ハーマイオニーが食い気味に聞いてきた。

 

「自分なりに上手く出来たとは思ってたけど、先生に褒められるとは思ってなかったわ」

「良いなぁ…また今度教えて貰えるかしら?」

「今はそんなことどうでも良いだろハーマイオニー」

「ロンの言う通り、今は石の方が大事だ。きっと今夜だ、スネイプが仕掛け扉を破るのは今夜に違いない。必要なことは全部分かったし、ダンブルドア先生も追い払った。スネイプが手紙を送ったんだ。ダンブルドア先生が魔法省に顔を出したら、きっと魔法省の職員達はきょとんとするに違いない」

「そうかもしれないわね……でも、私達に何が出来るって……」

「ハーマイオニー?…………あ」

 

 突然ハーマイオニーが息を飲んだので、何事かと振り返ってみると、そこにはスネイプが立っていた。

 

「おや、これはこれは。ごきげんよう諸君、こんな日に屋内にいるものではない」

 

 スネイプは取って付けたような歪んだ微笑みを浮かべて私達に向けてきた。感情が読めない、気味が悪いくてしょうがない。

 

「僕達は……」

「もっと慎重に願いたいものですな。こんなふうにうろうろしているところを他人が見たら、何かしら企んでいるようにも見えますぞ。グリフィンドールとしては、これ以上減点されるのは苦しかろう?」

 

 相変わらずスネイプの嫌味は腹立たしい。もし許可が出たら、迷うことなく魔力の塊を顔面にぶつけてやるのに。

 

「すいませんスネイプ先生、僕らもう行きますので」

「待ちたまえ」

 

 私達が逃げるように外に出ようとすると、スネイプが呼び止めてきた。

 

「ポッター、君に警告しておく。これ以上夜中にうろついているのを見かけたら、我輩が君を退学処分にするぞ。さあもう行きたまえ」

 

 スネイプはそう言い残し、大股に職員室の方に歩いていった。

 

「よし、こうしよう。誰か一人がスネイプを見張るんだ……職員室で待ち伏せして、スネイプが出てきたら跡をつける。ハーマイオニー、君がやってくれ」

「なんで私なの?」

「当たり前だろう、フリットウィック先生を待ってるフリをすれば良いじゃないか。"ああ、フリットウィック先生。私、14bの答えを間違えて解答してしまったみたいで、とっても心配なんですけど……"って。うん、ハーマイオニーらしい」

 

 ロンはハーマイオニーの声色を真似てそれらしい口調になった。

 

「あ、ちょっと似てるかも」

「まあ失礼ね!」

「ごめんごめん、結構似てたものだからつい……」

「ハーマイオニーが嫌なら、グレイが行く?」

「私演技下手だと思うから無理」

「別に大丈夫でしょ。グレイがおどおどしててもそれ程違和感無いと思うぜ?誰も気付けないよ、先生達にとってまだグレイは影薄いかもしれないし」

「喧嘩売ってる?買うわよ」

 

 結局、スネイプの尾行はハーマイオニーが行うことになった。

 

「じゃあ、僕達は四階の廊下の外にいよう」

 

 順調に計画が進んでいった。そう感じたけど、それは誤りだった。フラッフィーを隔離している扉の前に着いたところで、マクゴナガル先生と鉢合わせてしまった。

 

「こそこそしている思って疑ってみれば……貴方達は一体何をしているのですか!?」

「せ、先生こそどうしてここに?」

「私が何年グリフィンドールの寮管とホグワーツの副校長を勤めていると思っているのですか。子供が考えそうなことなど大体分かります!」

 

 それはもう凄い剣幕だった。

 

「こんな愚かしいことはもう許しません!もし貴方達がまたこの辺りに近づいたと私の耳に入ったら、グリフィンドールは五十点減点です!ええそうですとも、ウィーズリー、ベアボーン。私、歴代最低の得点数になるとしても自分の寮でも減点します!!」

 

 私達は談話室に戻るよう促されてしまった。そして、暫くしてからハーマイオニーも談話室に戻ってきた。スネイプに上手く出し抜かれてしまったらしい。

 

「こうなったらもう僕が行くしかない。そうだろう?」

「……本気なの?」

「勿論本気さ。僕は今夜、なんとしてでもスネイプより先に石を手に入れる」

 

 ハリーがこう言い出すのは、なんとなく分かっていた。分かっていたからこそ、その考えが無謀だとも思う。そしてハリーは無謀だと分かっていても行動に移す人なのは、ここ一年一緒に過ごしてきて段々と分かってきた。

 

「……分かった。私も行くよ。友達を一人で危険に向かわせるなんて、一生後悔しそうだから」

「……グレイ……」

「二人共気は確かか!?」

「絶対駄目よ!マクゴナガル先生にもスネイプにも言われたでしょ。下手したら退学になっちゃうわ!」

「退学がなんだって言うんだ!分からないのかい?もしスネイプが石を手に入れてアイツに、ヴォルデモートに献上してみろ!アイツは戻ってくるさ。ヴォルデモートが魔法界を蹂躙した時、どんな有り様だったか聞いているだろう? 減点なんてもう問題じゃない。今晩、僕は仕掛け扉を開ける。君たちがなんと言おうと、僕は……僕達は行くよ!いいかい、僕の両親はヴォルデモートに殺されたんだ!」

 

 その言葉に息を飲む。今のハリーを突き動かしているのは、石を手に入れる使命感か、それとも復讐心か、私には計り知れない。

 

「……グレイも行くなら、私も一緒に行くわ」

「…こうなったらヤケクソだな。僕も行くぜ、もしスネイプと出くわしたら、一発かましてやるよ」

「え?ロンも来るの?」

「何か悪いことでも?」

「いえ別に、ちょっと意外だっただけ。ロンは肝心な時に逃げ出しそうな雰囲気あったから」

「喧嘩売ってる?」

「さっきのお返しだよ」

 

 でもまあ、これで全員が石を手に入れることに賛成した。力を合わせて、スネイプよりも速く石を手に入れなければ。

 




ゴールデンウィークの最終日に出すことになってしまいました。読んでくださりありがとうございます。

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