ハリー・ポッターと最後の不死鳥   作:TARAKON X

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久しぶりで、文字数が多くなっちゃいました。今後もこういうことはあると思いますが、暖かい目で見守ってくれると嬉しいです。




第17話 試練というより迷宮

 石を全員で取りに行くと決めた後、私達は周りの視線に気を配りながら談話室の隅で他の生徒と離れて座った。今回のことを他の誰かが知ったらそれで一発アウトだ。

 でもそれは杞憂に終わった。ノーバートの件でハリー達が百五十点減点されてからグリフィンドールの寮生は私達とは殆ど口を聞かなくなっていたからだ。最初は寂しく感じたけど、今となっては好都合だ。

 

『さっきから聞いてりゃあグレイ、お前また妙なことに首突っ込む気か?』

「ピピィ?」

 

 サファイアがビートルを乗っけてやってきた。試験中は教室への動物の持ち込みは禁止だったから今日は談話室に置いて来たんだけど……なんともシュールな絵だ、蛇の上に鳥が乗ってるなんて。

 

「うん、そのつもりだよ」

『ったくよぉ…お前さんは行動力の塊だってことを心底思いしらされるぜ。ま、今に始まったことでもねぇか……』

 

 サファイアをフードに入れ、ビートルをポケットに突っ込む、最近はビートル達の体温を感じるのが馴染み深い。こちらの方がしっくりくる。

 

「でも大丈夫かな?四人全員透明マントに入れると思えないんだけど…はみ出ちゃわない?」

 

 他の寮生が徐々に自分達の部屋に戻っていって談話室に私達の他に人気がなくなった後。一度部屋に戻って透明マントと、木の横笛を持って戻ってきたハリーは私達の前でマントを大きく広げた。全員が入れるか確認したいみたいだ。

 

「一度ここでマントを着てみた方が良いな。四人全員隠れるかどうか確めてみよう……もしも足が一本でもはみ出たまま歩き回っているのをフィルチにでも見つかったりしたら……」

「あら、三人入れれば十分だと思うわよ。私は入る必要が無いから」

「ハーマイオニー?」

 

 ハーマイオニーの言葉に困惑を隠せなかった。必要が無いって、一体どういう意味だろう?

 

「私はノーバートの時の反省で、道具にばかり頼っていられないことに気付いたわ。道具で出来ることも、最低限は自分自身の力で出来るようになるべきなのよ!」

「つまり何が言いたいわけ?」

 

 ロンが質問するとハーマイオニーはニコリと微笑み、杖を取り出して自分に魔法を掛けた。すると、ハーマイオニーの体は段々と薄くなって、最終的に透明になった。

 

「目眩まし術が使えるの?」

 

 驚きを隠せなかった。『目眩まし術』は意外と難易度が高い魔法の筈だ。いつの間に使えるようにしたのかな?

 

「罰則を受けた後にね、使えればもしもの時に役に立つと思って」

「君、本当にハーマイオニーかい?普段のハーマイオニーなら考えるようなことじゃないよ!」

「でも、これで透明マントの問題は無くなったよ」

 

 正直、透明マントの人数制限の問題はどうしようか考えつかなかったので、今回はハーマイオニー様々だ。

 

「君達、何してるの?」

「「「「!?!?」」」」

 

 突然の部屋の隅からの声が私の背筋を凍らせた。

 

「…ネビル…どうして…」

 

 部屋の隅に目を向けるとネビルが肘掛椅子の影から現れた。今回は自由を求めて再び逃亡したいと顔で訴えているヒキガエルのトレバーをしっかりと掴んでいる。さっきのマクゴナガル先生といい、今日はとことんタイミングが悪い。

 ハリーは焦りつつも透明マントを背中に隠していた。多分透明マントは見られてない……そう信じたい。

 

「君達、また外に出るつもりだったんだろ?」

「え?僕達が?…まっさか~、どうしてそう思ったんだい?イッテ!?」

 

 お世辞に上手くない、むしろぎこちない演技をするロンを、私は足の脛を蹴って黙らせた。あんなお芝居、逆にそうだと肯定しているようなものだ。

 

「夕食の時から君達の様子がどこか変だったからこそっと君達の会話を聞いたんだ。馬鹿な真似は止めるんだ、これ以上グリフィンドールを減点させるわけにはいかない!」

「誤解よネビル。私達、そんなことをしようだなんて思っていないわ。ネビル、そろそろ寝たら?」

 

 ハーマイオニーがどうにか取り繕うと必死だ。でも最後の言葉はまずい、まるで遠ざけようとしているように聞こえてしまう。

 

「ネビル、私達のしようとしていることが危険なことなのは私達自身が良く分かってる。許されないことかもしれないけど、これはとっても重要なことなの」

 

 私も説得を試みたけど、ネビルは首を横に振っただけだった。頑固として譲る気は無いらしい。

 ネビルはいつになく真剣だった。彼は出入口の肖像画の前に進み、私達の前に立ち塞がった。

 

「絶対に君達を外に行かせるもんか!僕は、君達と戦ってでも止めてみせる!」

 

 今のネビルは何時もとは比べ物にならないくらい勇敢だった。まさにグリフィンドール生を体現しているように見える。でも、今回ばかりは事情が違う。出来ればその勇敢さはもっとマルフォイに向けて欲しかった。

 

『この小僧、良い根性してるが、少々うざってぇな……窒息しない程度に締め上げて黙らせて良いか?』

「それやったら一ヶ月ご飯抜きどころじゃ済まさないからね?」

『言ってみただけだ、真に受けるなよ』

「……今、なんか危ない会話が聞こえたような…聞こえてなかったような…」

 

 危ない考えを主張するサファイアを黙らせる。でも本当にどうしよう?ネビルに手荒なことはしたくないけど、スネイプのこともあって時間が無い。どうすれば……

 

「ネビル、そこを退けよ。そっちこそ馬鹿な真似は止めるんだ!」

「馬鹿呼ばわりするな! もうこれ以上規則を破っては駄目だよ! 恐れずに立ち向かえといったのは君じゃないか!」

 

 ロンとネビルは緊張状態になってしまった。これ以上騒ぎが大きくなるのはいけない。他の寮生が騒ぎを聞きつけて戻った来たり、監督生を連れて来たりなんてしたら一貫の終わり。……実力行使もやむを得ないかな。

 

「ネビル、君は立ち向かう相手を間違えているよ。冷静じゃない、君は自分が今何をしようとしているのか分かってないんだ」

「いいや!僕はすこぶる冷静だ!やるならやってみろ。殴れよ!どこからでもかかってこい!」

 

 息巻いてはいるけど、ヒキガエルのトレバーをポロリと落とした時点で、ネビルが怯えているのが丸分かり。でもこれは逆に言葉で解決するのは難しい。

 

「もう誰でも良いからどうにかしてくれ」

 

 ハリーは音を上げてこっちに目配せしてきた。正直勘弁して欲しい。そんなこと私だってどうすれば良いか知りたい。魔法を使って強行突破する案も考えたけど、友達にそれをやるのは心苦しいし…八方塞がりだ。

 

「……本当は嫌だけど…したくないけど……」

「ハーマイオニー?……ちょお!?」

 

 後ろでハーマイオニーがブツブツ言っているので振り返って見ると、なんとビックリ!その手には杖があった。ハリーもロンも私と同じような反応をしていた。ネビルなんて顔をひきつってる。

 

「ハーマイオニー?一応聞くけど…その杖で一体何を?」

「あらハリー、そんなの決まってるじゃない」

 

 ハーマイオニーは手に持った杖の先をネビルに向けると、「ペトリフィカス、トルタス!」と唱えてネビルに魔法を掛けた。魔法を掛けられた途端、ネビルの両腕が体の脇に張りつき、足は足縛りの呪いをかけられたようにばちっと閉じた。体は固く硬直し、その場にばたんと俯せに倒れてしまった。これは確か……。

 

「グレイ、ハーマイオニーはネビルに何をしたの?」

「『全身金縛りの術』だよ。今日の筆記テストに出てなかった?」

「え、本当に?」

「……答案用紙に書いた覚えはある?」

「……多分」

 

 この件が片付いたら全員で答えの照らし合わせをした方が良いかな?

 

「ああ、ネビル、本当にごめんなさい。あなたは何も悪くないのに……」

 

 ハーマイオニーは固まったネビルに駆け寄り、俯せになっていた体を謝りながら仰向けにひっくり返した。私はネビルが風邪を引かないようにソファに置いてあったブランケットをネビルにかけた。

 ネビルの口元はぐっと結ばれ、これじゃあまともに話すことも出来ない。ただ目を必死に動かして、私達を恐ろしい物を見ているような目で見てきた。

 

「ネビル、こうしなくちゃならなかったんだ。訳を話している暇がないんだよ」

「本当にごめんネビル。後でお菓子を沢山ご馳走するから」

「後で僕達のしたことの意味がきっと分かるよ。ネビル」

「むしろそうでないと困るぜ」

 

 私達はネビルをまたいで寮から抜け出し、ハーマイオニーは自分自身に魔法を。私、ロン、ハリーは透明マントを被った。

 

「酷い罪悪感だわ…私…ネビルともうまともに話せないかも……」

「…こうなったのも、元はと言えばスネイプとヴォルデモートが原因だ。絶対やっつけてやる……」

 

 空気がピリついていた。ネビルのこともあって、私も含めて皆緊張状態になっていた。そのせいで銅像の影を見る度にフィルチかと驚いたり、遠くで鳴る風の音までもがピーブズの襲いかかってくる音に聞こえたりもした。

 途中でミセス・ノリスを見つけると、ロンは日頃の鬱憤を晴らそうと蹴飛ばそうとしたけど。そんなことしてる暇はないと全員で却下したけど。

 

「ウホホホホーーイ!あれれぇ~?そこにいるのはだ~れだ?」

「うわぁ……」

 

 もううんざりしてしまう。この腐れ外道ピエロは、なんで肝心な時に現れて空気を最悪にするんだろう?

 

「見えなくったって、そこにいるのは分かってるんだぞ~。だーれだ?幽霊っ子、亡霊っ子、それとも生徒の悪戯っ子か~?」

 

 ピーブズは空中でくるくる回転しながらも、その目はしっかりと私達を見据えていた。

 

「見えないものが忍び歩きしてる。フィルチを呼ぼう。呼んじゃおう!呼ばなくちゃ!!」

「(どうしよう!?このままじゃまたフィルチに捕まっちゃうよ!)」

「(落ち着いてロン、まだピーブズが私達のことを本当に認識できているかも分からないでしょ?)」

「(いーや、アイツは僕らがいるって分かってるんだ!僕達はもうお仕舞いだ!)」

 

 ロンがパニックに陥りそうになっているのをハーマイオニーが必死に塞き止めていた。私は一緒にマントを被っているハリーの耳に口を近づけた。

 

「(どうするの?遠回りになるけど、別の道から四階を目指す?)」

「(いや、そんな時間が無いのは君も良く分かるだろ?良い案を思い付いたんだ。君って声を変える魔法使える?)」

 

 変声の呪文は変身術の応用だ。難易度は難しい部類だけど、一応私は使える。誰の声に変えたいのか分からないと無理だけど…。

 

「(耳を貸して。ーーー)」

「(……成る程ね…)」

 

 ハリーの作戦を聞いて思わず口がつり上がる。きっとこの作戦が成功すれば、ピーブズに一泡吹かせられると思う。成功するかどうかは五分五分だけど。

 

「(良いよ、思い切りやって)」

 

 ハリーに変声の呪文を掛け、後出来ることは成功するかを祈ることだけだった。

 

『ピーブズ』

「ヒッ…!?」

 

 ハリーが突然低くしわがれた声を出したので、ロンもハーマイオニーも何事かと目を丸くしていた。この声は血みどろ男爵の声だ。以前グリフィンドールの先輩に教えてもらったことがある。ピーブズはダンブルドア先生と血みどろ男爵には言うことを聞くって。なぜなら、ピーブズはあの二人を恐れているらしい。理由は知らないけど。

 

『この儂が、血みどろ男爵が、訳あって身を隠しているのが貴様には分からんのか?』

 

 ピーブズは突然の血みどろ男爵の声にさっきまでの調子を崩して地面に尻餅をついて縮こまっていた。笑ってしまう、あれだけ鬱陶しかったピーブズが今ではお化けに怯える小さな子供のようだ。私達を血みどろ男爵だと思ってへりくだってくる。

 

「も、もも申し訳ありませんッ……血みどろ閣下、男爵様。手前の失態でございます。間違えました……お姿が見えなかったものですから……そうですとも、透明で見えなかったのでございます。老いぼれピーブズめの茶番劇を、どうか…どうかお許しを!」

『儂はここに用がある。ピーブズ、今夜はここに近寄るでない』

「は、はい、閣下。仰せの通りにいたします。首尾良くお仕事が進みますように、男爵様。お邪魔はいたしません」

 

 ピーブズは再び空中に舞い上がると、サッとその場から消えた。

 

「(凄いよハリー!やったね!!)」

 

 ハリーがピーブズを追い払って暫く進むと、ついに四階の廊下に辿り着いた。その扉は既に、少しだけ開いていた。

 

「まずい……スネイプの奴、もうフラッフィーを突破したんだ!」

「フラッフィーは……寝ちゃってるね」

 

 フラッフィーは部屋の中で浅い眠りについているみたいだった。低く唸り声が聞こえる。どうやら、音楽を聞かせても眠らせられるのは短時間のようだ。

 

「君達は戻りなよ、僕一人で行く。ま、マントを持っていってくれて構わないよ。僕にはもう必要ないから」

 

 ハリーがなんか急に格好つけていた。一人で行くとか言っているけど、声が少し震えているのを隠しきれてない。そもそも、私達がそれに従うろ本気で思ってるのかな?

 

「馬鹿言ってないで行くぞ」

「一緒に行くわ」

「一人で行かせるわけ無いでしょ」

「……ありがとう……」

 

 ハリーは少し涙目になっていた。

 扉を開けると、フラッフィーが変わらずグルルルルと唸っていた。三つの鼻が、姿が見えない筈の私達の方向を嗅いでいた。

 

「やっぱり犬だから鼻は敏感みたいね。私達に感付いてるかも」

「重要な情報だけど知りたくもなかったよ」

 

 やれやれと肩をすくめるロン。フラッフィーの方を見ると、足下に大きな楽器が置いてあった。

 

「足下のあれは、何かしら?」

「ハープみたいだ。スネイプが置いていったんじゃないの?」

「スネイプってハープ弾けたの?以外ね、想像すると笑えてくるわ」

「放っておきなよ、大方、魔法でどうにかしたんだろう。兎に角急ごう、多分音楽が止まった途端起きてしまうと思うから」

 

 ハリーは談話室から持ってきた木の横笛を唇に当てて吹き始めた。正直、メロディーとは言い難いものだったけど、最初の音を聞いた瞬間からフラッフィーは目をトロンとし始めたので、問題は無さそうだった。

 

「そのまま吹き続けてくれ、そーっと行こう」

 

 フラッフィーの元にゆっくり近づき、ロンがそのまま仕掛け扉の引手を掴んで引くと、扉が跳ね上がった。中を覗き込んでみたけど、暗闇しか目に入らなかった。正直、ちょっとだけ怖い。

 

「誰が一番に行く?」

「言い出しっぺのグレイが行けば良いんじゃ…イテッ!?」

 

 ヘラヘラと笑いながら言うロンの頭をハーマイオニーが叩いた。

 

「ロン、今のちょっと最低よ」

「怒んないでよハーマイオニー。冗談だって冗談。じゃあハーマイオニーが行く?」

「嫌よ!怖いもの!!」

「僕だって怖いよ!」

「二人共黙って、フラッフィーが起きたらどうする気?」

 

 私がそう言うと、二人はさっきまで開けていた口を閉じた。非常時なのに普段通りの二人を見ていると、なんだか少し和んでしまう。

 

「私が最初行くよ。私が底が安全かどうか確かめる」

「それは駄目だ」

 

 ずっと笛を吹き続けていたハリーが会話に割り込んできた。

 

「石を取りに行こうと言い出したのは僕だ。僕が先に行って安全か確かめるよ。これは僕にとっての義務みたいなものだ、もしも僕が戻らなかったら君達はまっすぐ梟小屋に行ってダンブルドア先生宛にヘドウィグを送ってくれ。良いかい?」

「……ハリー……あなた…」

「…分かったよ、無事を祈ってる」

「後で会おうね」

「うん、出来ればだけどね」

 

 ハリーは笛をハーマイオニーに渡して、勇敢に開いた仕掛け扉の中に足から飛び込んだ。深く落ちたようで一瞬でハリーの姿が見えなくなった。

 

「もうハリーが見えなくなっちゃったよ、凄く深そうだ」

 

 ロンが息を飲んでいるとハリーの声が聞こえてきた。

 

「オッケーだよ!下は柔らかい何かで覆われてるからきっと安全だ!」

「よし、次は…僕だ」

 

 ロンは少し狼狽えながらも、ハリー同様仕掛け扉に飛び込んでいった。数秒後に「無事だよー!」ロンの声が聞こえてきた。

 

「じゃあ次は私が…」

 

 次に私が飛び込もうとすると、ハーマイオニーが目で訴えてきた。どうやら一人になるのが怖いらしい。

 

「一緒に行く?」

「…お願いするわ…ごめんなさい」

「謝らなくても良いよ、行こう。手を出して」

 

 ハーマイオニーと手を繋ぐと、私達は同時に仕掛け扉に飛び込んだ。私は不思議な感覚包まれた。小さい頃に家族で遊園地に行って、ジェットコースターに乗った時の感覚とは少し違う。支えてくれる物が無く、掴まる物も無い。私の体は一直線に下へ下へと落下していった。

 

「キャアアァァァアアアアアア!?!?」

 

 隣からハーマイオニーの甲高い叫び声が聞こえた。地面が迫って来るのを肌で感じとると、私とハーマイオニーは体を丸めて地面との激突に備えた。だけどその必要は無かった。私達は柔らかいクッションのような何かに受け止められたからだ。

 

「……え?」

「…今の…何?」

 

 辺りを見回してみると、ハリーとロンが私達を待っていた。

 

「何これ?凄く柔らかい…ハーマイオニー、これ何か分か……え?」

 

 ハーマイオニーに質問した瞬間、私は自分の体が思うように動かないことに気がついた。下を向くと私の体に黒くて太い植物の蔓のようなものが巻き付いていた。

 

「なっ…………なんなのこれぇ!?」

 

 周りを見てみるとハリーとロンの体にも同じようなものが巻き付いていた。ハーマイオニーは直ぐに着地した場から離れていたので蔓の魔の手から逃れていた。

 

「体に巻き付いていて……動けない!?」

「ハーマイオニー!これが何か分かる!?私、植物にはまだ疎くて!」

「……もしかして……大変よ皆!?これ、『悪魔の罠』だわ!」

 

 悪魔の罠?

 

「なんだよそれ!?このっ!離せよ!!」

「動かないほうが良いわ!多分、無理に動く度にきつくなっている筈よ!」

「ありがたい説明どうも!!」

「確か対処方法は……」

「…………ひゃあ!?」

 

 ハーマイオニーが『悪魔の罠』の対処方法を思い出そうとしていると、足の方から上へ這い上がってくる蔓の感触の悪さに思わず声を上げてしまった。

 

「どうしたのグレイ?急に…声を……」

 

 ハーマイオニーがこちらを見ると、彼女は一瞬目を丸くしたのも束の間、一瞬で目付きが悪くなった。

 

「グレイに……グレイに……何してるのよおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!?!?」

「ピピィ!?」

『マジかよこの嬢ちゃん!?』

 

 ハーマイオニーは急に激昂すると、『インセンディオ』を唱えて『悪魔の罠』を焼き付くした。

 

「えっ?ちょっとぉ!?」

「ハーマイオニー!?」

 

 突然のハーマイオニーの暴挙に、反応するのが少し遅れたハリーとロンの二人はあと少しで火傷を追う所だった。

 

 ーー

 

「結果として助かったよ…助かったんだけどさぁ…」

「うん、もうちょっと慎重にやって欲しかったよ」

「ちょっと?ハーマイオニーにとやかく言うのは違うでしょ?」

「君も服が焦げちゃってるじゃないか。元から服が黒いからあんまり目立って無いけど」

「……その…本当にごめんなさい……私…カッとなっちゃって……」

 

 『悪魔の罠』をなんとか突破した私達は、薄暗い下り坂を歩いていた。

 

「ハーマイオニーはカッとなると危ないってことを早めに知れたことでまあ良しと………ん?」

「どうかしたの?」

「…何か聞こえないか?」

 

 ロンが小声でそう言うと、私達は耳を澄ました。すると、奥の方から柔らかくこすれ合う音やチリンチリンという音が聞こえてきた。

 

「なんだろう…ゴーストかな?」

「分からない……羽の音みたいに聞こえるけど」

「鳥の羽の音じゃないかな?」

「光が見えるわ……何かが動いてる」

 

 通路の出口に出ると、目の前にまばゆく輝く部屋が広がった。天井は高くアーチ形をしている。宝石のようにキラキラとした無数のビートルよりちょっと大きめの小鳥が、部屋いっぱいに飛び回っていた。部屋の向こう側は分厚い木の扉があった。

 

「僕たちが横切ったら、あの鳥が襲い掛かってくると思う?」

「多分ね。そんなに獰猛そうには見えないけど、全部いっぺんにかかってきたら大変そうだな。でも他に手段はない。僕は走るよ」

「別にそんなことしなくても、サファイアを出して驚かせばあの鳥達はどっか行くと思うけど?」

『グレイの言う通りだ、あんな鳥肉どもなんざ屁でもねぇ』

 

 私は特に動じず、鳥達が飛び回る空間に入った。結果として鳥達は襲って来なかった。逃げることもなかったけど。

 鳥が危険ではないと分かった私達は部屋の奥に向かい、扉を開けようとしたけど、案の定、扉は開かなかった。鍵穴があったからどこかに鍵があるかもと思って辺りを探したけど、鍵らしき物は見当たらなかった。アロホモラの呪文を試してもみたけど、扉はびくともしなかった。

 

「どう?開きそうかい?」

「全然駄目。どうする?こんなところで足止めを食らってる場合じゃないのに…」

「……そうだわ…鳥よ!鳥はただ飾りでここにいるわけじゃない筈だわ!」

 

 ハーマイオニーに言われて私達の頭上輝きながら舞い上がっている鳥を眺めて見ると…………ん?

 

「あれ……鳥じゃなくないか?」

 

 そう、私達の頭上を飛び回っていたのは鳥ではなく、羽の生えた鍵だった。なんで鍵に羽が生えているのかはよく分からないけど、ここはホグワーツだからなんでもアリだと思うことで納得した。

 

「ということは…………よし!」

 

 ハリーは部屋の隅に向かうと、分かりにくい位置に置いてあった箒を全員分持ってきた。

 

「ドアを開けるには鍵穴に合う鍵を捕まえなくちゃいけないんだよ。皆で手分けして探そう!」

「え?それ…本気?見た感じだけど百は優に超えてるよ?」

 

 ハリーの発言に少し狼狽えると、横からロンが宥めてきた。

 

「落ち着きなよグレイ、ドアを良く見てごらん。このドアの雰囲気に合う鍵を探せば良いんだよ。このドアの場合は…大きくて昔風の鍵を探すんだ……多分取っ手と同じ銀製だ」

 

 ロンの言葉に若干胸が軽くなった気がした。それならまだやれそうだと思った。

 私達はそれぞれ箒を手に取り、地面を蹴り、空中を浮遊する鍵の群れの真っ只中へと舞い上がった。掴もうとしたり箒で引っ掛けようとしたけど、魔法が掛かった鍵はスイスイと素早く飛び去り、急降下し、とても捕まえることが出来なかった。そもそもハリー以外はクィディッチ選手でもないので、スニッチのように飛ぶ鍵を捕まえるのは私にとっては至難の技だった。

 

「……あぁ!見つけた!きっとあれだ!」

 

 ハリーが指を差す方向に目を凝らしてみると、片方の羽が折れている大きな銀色の鍵を見つけた。あのサイズなら鍵穴に合いそうだ。

 

「全員で追い込もう!絶対に逃がしちゃ駄目だ!!」

 

 私は下から、ハーマイオニーは上から、ロンは右、ハリーは左から鍵を追い込んだ。

 

「今だ!」

 

 私とハーマイオニーが最初に出てロンが後に続いた。逃げ道がハリーの方向しかなかった鍵は、なんとかハリーを横切ろうとしたけど、ハリーが一枚上手だった。ハリーは鍵を体ごと壁に押し付けて鍵を押さえ込んでいた。

 

「ハリー!そのまま持っていって!」

「分かってる!!」

 

 ハリーが扉付近に来ると、全員で鍵を押さえて鍵穴に突き刺した。

 ガチャリ、と音が鳴った。

 

「やった!開いた!」

 

 なんとか上手くいった。扉が開き、鍵は再び飛び去っていった。全員で力いっぱい押さえていたから、鍵は酷く痛めつけられた飛び方をしていた。

 

「皆、良いかい?」

「…ん?ごめん、ちょっと待って」

 

 ハリーが扉を開けようとした直後、私は扉に小さく文字が刻まれているのに気がついた。

 扉には、『フーチの試練』とだけ書かれていた。

 

「マダム・フーチがこの仕掛けを作ったの?」

「さあ?あ、でも本当にこの仕掛けを作ったのがマダム・フーチなら、もしかしたら他の試練もそれぞれ先生達が手掛けたものになるね。授業でやったことを思い出しながら進まないと」

「ハーマイオニーが得意そうね」

「貴方達もちゃんと自分の頭で考えなさい!」

 

 ーー

 

「げぇ!?コイツらは…!?」

 

 扉を開けて出ると、私達にとっては恐ろしい怪物が眠りこけている姿が目に入った。

 

「…………トロール」

 

 トロールは一本道の廊下の壁に体を預けてぐっすりと眠っていた。起こしたら色々と大変だ。ハロウィーンの時は無事に終わったけど、今回は無事で終わるかは分からない。以前とは違って今回はサファイアと一緒でもだ。

 

「皆、絶対に音を立てないでよ。トロールに気づかれないように注意して。私はトロールに追いかけ回されるのなんてもう懲り懲りだからね」

「それは僕も同じさ。二度と御免だねあんな体験」

「そーっとだよ。そーっと足を前に出すんだ」

「いちいち当たり前のことを言わないでくれないかしら?緊張のせいで饒舌になっているわよ」

 

 心臓の音が尋常じゃないくらい聞こえてくる。トロールを起こしたら私達はあの棍棒でミンチにされてしまうに決まってる。それだけは嫌だ、絶対に嫌だ。そんな思いで歩を進めていくと意外と直ぐに私達は次の扉にたどり着いた。今回は扉に鍵は付いておらず、難なく扉を開けることが出来た。

 扉を良く見ると、今回の扉にも先程の扉と同じように名前が書いてあった。

 

「……え?」

「グレイ、どうかしたの?」

「…ここにトロールを置いたの、クィレル先生みたい」

「それがどうかしたの?」

「…分からない…」

 

 クィレル先生の名前を見て、何か違和感を感じた気がしたけど、それが具体的に何なのかは結局分からなかった。少し意外だとは感じたけど。

 

「クィレル先生のことは今はどうだって良いさ。兎に角急ごう。もうスネイプは石のところにいるかもしれないんだから」

「……うん、分かってる。急ごう」

 




今回は区切れるところで区切りました。
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