扉を開けると、次の部屋は真っ暗で何も見えなかった。でも、足を踏み入れると、急に光が部屋中に溢れ、なんとも奇妙な光景が目の前に広がった。
「部屋いっぱいの……チェスボード?」
私達の目の前には白と黒の大きなチェスボードと、そばに大きな黒い駒四つ、向こう側扉の近くにはこっちを向く白い駒四つが立っていた。
「これは……チェスをしろってこと?」
「だろうね。きっと向こうに行く為にはチェスをして勝つしかなさそうだ」
ロンが応えると石の駒が首を縦に振った。ホグワーツに入学して間もない頃だったら驚いたと思うけど、今では動じずに受け入れることができてしまう。結構魔法界に毒されてるな…私。
「どうやって試合するのかしら?」
「うーん……魔法で駒を動かす、とか?」
試しに聞いてみたけど、石の駒は首を縦に振らず横に振った。
「……もしかして、僕達が駒になって動かすのかな?」
ロンの問いに石の駒は今度は首を縦に振った。どうやら正解みたい。
「多分、この試練は僕達四人が一つずつ黒い駒の代わりをしなくちゃいけないんだよ。」
「よし、じゃあロン。君が指示をしてくれ」
「え、僕かい?」
「ロンが私達の中で一番チェスが強かったでしょ。ロン以外には任せられないよ」
ロンのチェスの腕前は折り紙付きだと思う。少なくとも、私は今のところ一度も勝てたことがない。私達がチャスがあまり強くないのもあるけど。
「ちょっと考えさせて……じゃあ、ハリーはそこのビショップに、ハーマイオニーはその隣のルークに、グレイはそのまた隣のクイーンに、僕はナイトになるよ」
チェスの駒はロンの言葉を聞いていたのか、黒のナイト、ビショップ、クイーンとルークは白い駒に背を向けてチェス盤を降り、私達に持ち場を譲ってくれた。
「チェスは白駒が先手なんだ。見てみなよ」
私はチェスは初心者に毛が生えたくらいの実力しかないけど、ルールは一通り頭に入ってる。チェスは先行が有利なゲームだ。普通ならゲームを始める前にプレイヤー同士が決めるのだけど、今回は異例だった。相手も初めての対戦相手でチェスの実力が曖昧だから、ロンも苦戦してしまうかもと心配したけどその必要はなかった。
「ハリー、斜め右に四つ進んで」
ロンはゲームを着々とこちらに有利な状況に進ませていった。彼にこの場を任せて良かったとつくづく思う。私でもこんなに上手くは進めれる自信はない。
「……あ」
チャスの成り行きを見守っていると、こちらの駒の一つが取られた、それと同時に思った。私達がとられると、私達はどうなってしまうのだろうか?と。その考えが過ると、私の頭は急に不安でいっぱいになった。そして…
「こうするしかない、このチェスで勝つにはこうするしかなかったんだ」
気づいた時には、もうなにもかも遅かった。
「ロン…貴方……」
「これは仕方のないことなんだよ、僕が取られるしかもう手は無いのさ」
「「だめ!!」」
「まだ他に手はある筈でしょ!私でも思いつかないような手がまだロンにはあるよ!」
「これがチャスなんだよグレイ、もうそんな手は残ってないんだ!犠牲を払わなくちゃいけない!僕が一駒前進する。そうするとクイーンが僕を取る。ハリー、それで君は動けるようになるから、キングにチェックメイトをかけるんだ!」
「でも……」
「ああもう焦れったい!スネイプを食い止めたいんだろう!違うのかい!」
「ロン……」
「君達にこんなところで立ち止まっている時間はない!…それじゃあ…あとは頼んだよ…」
ロンがそう言って前に出ると、白のクイーンがロンに飛びかかった。白のクイーンはロンの頭を石の腕で殴り付け、ロンは地面に倒れた。
「………………………………………あ」
頭を、石で、殴れ………………………………………死ぬ?
「ロン!「グレイ待って!」ッ!?」
ロンに駆け寄ろうとしたけど、それはハリーに止められた。ハーマイオニーは倒れたロンを見て悲鳴を上げていたけど、持ち場に踏みとどまっていた。
「ハリー!なんで止めるの!?もしかしたらロンが…」
「ロンをよく見て、呼吸をしてる、気絶しているだけだよ。生きてる駒が持ち場を離れちゃ駄目だ。落ち着いて」
「ッ…………」
一瞬振りほどこうとしたけど、震えるハリーを見て少しだけ落ち着いた。ロンを凝視すると、頭から血は出ておらず、遠目だけど重傷でなさそうだった。
「……良かっ……たぁ…」
危なかった。もしあのままロンに駆け寄っていたら、私も同じように取られるところだった。
「ごめん、ちょっと取り乱した」
「……いや、いいさ。仕方ないよ」
「……ロン……」
「……二人共切り替えよう、ロンが作ってくれた勝ち筋を、ここで逃しちゃ駄目だ」
「……うん」
ーー
その後、ロンの犠牲によって勝ち筋を掴んだ私達は無事勝利し、扉を開けて奥へと進んだ。また一つ試練を突破できたことを喜びたかったけど、そんな気分には到底なれなかった。それも仕方ない、ロンを、友達を犠牲にしてしまったのだから。
「……」
「……」
「…………次は、何の試練だと思う?」
漂う空気に少しだけ息が詰まりそうだったのと、単純な興味で私は沈黙を破った。
「ごめん、僕には予想がつかない。ハーマイオニーはどう思う?」
「……多分だけど、悪魔の罠はスプラウト先生、羽根つき鍵はフィリットウィック先生、トロールはクィレル先生、そしてさっきのチェスはマクゴナガル先生。だとすると…消去法で残りはスネイプが仕掛けた試練ね」
「……嫌な予感しかしないね」
だけど、あらかじめに次の試練がスネイプの試練だと知れてよかったと思う。いきなり目の前に彼の試練が出てくるのは心臓に悪いと思うから。
「あ、あったよ。多分最後の試練の扉だ」
私達は恐る恐る扉の取ってを掴み、慎重に開けた。一体どんな得体の知れない物が出てくるか不安だった。でも、特に恐ろしい物は出てこなかった。ただ、テーブルがあって、その上に形が異なる七つの瓶が一列に並んで置いてあるだけの部屋だった。
「これが、試練?」
「一体何をすれば良いんだろう?」
「正直スネイプの思惑なんて出来れば知りたくもないね」
「それは……あ」
机に近づく為に扉の敷居をまたぐと、ついさっきまで通ってきたばかりの入口に突如として炎が燃え上がった。それも普通の炎じゃない、紫の炎が。
「……出口が…」
紫の炎が燃え上がったと思ったら、今度は前方の扉が黒い炎で塞がれてしまった。これは……
「完全に閉じ込められちゃったちゃったみたい」
『まったく、妙な気分だ。熱さはあんまり感じねぇのに、空気は渇いていやがる。早くここから出るのをお勧めするぜ、グレイ』
「そんなことは言われなくても分かってる」
とりあえず私達は、テーブルの瓶以外に部屋に何かないか探すことにした。まずこの試練がどんな趣旨なのかを掴めないと、先に進むことなんて出来はしないのだから。
「ん?…これは…グレイ!ハーマイオニー!ちょっと来て!」
しばらく辺りに何かないか探していると、ハリーが巻物を見つけた。内容を見てみたけど、これがまたサッパリ分からなかった。
内容はこうだった。
ーー
前には危険 後ろは安全
君が見つけさえすれば ふたつが君を救うだろう
七つのうちのひとつだけ 君を前進させるだろう
別のひとつで退却の 道が開ける その人に
ふたつの瓶は イラクサ酒
残る三つは殺人者 列に紛れて隠れてる
長々居たくないならば どれかを選んでみるがいい
君が選ぶのに役に立つ 四つのヒントを差し上げよう
まず第一のヒントだが どんなにずるく隠れても
毒入り瓶のある場所は いつもイラクサ酒の左
第二のヒントは両端の 二つの瓶は種類が違う
君が前進したいなら 二つのどちらも友ではない
第三のヒントは見たとおり 七つの瓶は大きさが違う
小人も巨人もどちらにも 死の毒薬は入ってない
第四のヒントは双子の薬 ちょっと見た目は違っても
左端から二番目と 右端から二番目の 瓶の中身は同じ味
ーー
「……ハリー、分かった?」
「いや、全然」
本当に意味が分からなかった。私にとってこういう謎解きは苦手な部類に入るので、完全にお手上げ状態になってしまった。
「そうかしら?そこまで難しい問題じゃないと思うわよ?」
「「えっ?」」
ハーマイオニーの言葉に絶句してしまう。私とハリーは思わず顔を見合わせた。
「そんなに驚くことかしら?これは魔法じゃなくて論理よ、パズルだわ。大魔法使いと言われるような人って、論理の欠片もないような人が沢山いるの。そういう人は、ここで永久に行き止まりだわ」
「僕達だってそうなってしまうんだろう?違うかい?」
「勿論、私がここにいる限りそんなことにはならないわ!」
ハーマイオニーは自信満々な様子だった。簡単だとは思えないんだけどなぁ、この試練。
「それじゃあ、この中の瓶の内どれ飲めば良いのか分かる?」
「ええ、分かるわ。ちょっと……十秒くらい待って」
ハーマイオニーはそう言うと、紙を何度も読み直して、それから独り言を呟いたり、瓶を指したりして、最後にパチンと手を打った。色々していたけど、宣言通りわずか十秒で答えを導きだしたみたいだった。
「分かったわ。一番小さな瓶が、黒い火を通り抜けて『石』の方へ行かせてくれるのよ!そして、一番右端の瓶が戻れるようにする薬だわ!間違いない!」
ハーマイオニーは自信満々に二つの瓶を当ててみせた。本当なら全員で議論したりするところなんだろうけど、この場でこの問題を解けたのは彼女だけだったので、私達はハーマイオニーの言葉に従って二つの瓶を手に取った。
「…………君達は帰る為の瓶の中身を飲んでくれ」
「「……え?」」
今、なんて言った?
「冗談はやめてよ。正気なの?そんなこと出来るわけないでしょ!」
「そうよ!死にに行くようなものじゃない!もしスネイプと例のあの人が一緒にいたらどうするつもりよ!?殺される決まってるじゃない!?」
「本当に気が知れないよ。もしかしてカッコつけてる?」
「そんなわけないだろ!?僕だって一人で行くのは凄く怖いよ!でもしょうがないじゃないか!これを見てみなよ!」
ハリーはそう言って、石の方へ行く為の瓶を私達に見せた。そしてその中身は殆ど無く、ぎりぎり一人分の量しか入っていなかった。
「きっとスネイプの奴が殆ど飲み干したんだ。僕を一人でこ来させてる為に。あいつの主人を倒した僕を確実に殺す為にね」
「……本当にそれだけしかないの?」
「さあね。もしかしたら探せば他にも方法はあるのかもしれない。でもそれじゃあ時間が掛かりすぎるのは二人にも分かるでしょ?その間にもヴォルデモートが復活したらもう終わりだよ」
「……私達をただ帰らせるのが考えじゃないでしょ?」
「ああ、当たり前だろ?」
考え無しに突っ込んだってスネイプにハリーが敵うとは私には思えない。きっとハリーは自分を犠牲に、私達にダンブルドア先生や他の教授の助けを呼びに行かせるつもりなんだ。
「なんとか頑張ってみるけど、どこまでやれるかは僕にもわからない。こうなったら僕自身の幸運に賭けてみるよ」
ハリーは額の傷を私達に見せた。かつてヴォルデモートにつけられたその傷はきっと、今のハリーにとっては御守りみたいなものなんだろう。不吉な気もするけど。
「ハリー!」
「わっ」
いきなりハーマイオニーがハリーに勢いよく抱きついた。ハリーが突然の女子からの包容に耳を赤らめているように見えたのは多分気のせいではないだろう。
「絶対に生きて帰って来てね!ハリーもロンもグレイも、私にとってはとっても大事な友達よ!一人でも欠けるなんて絶対に嫌よ!本当に…気をつけて!」
「うん、ありがとうハーマイオニー」
私はハリーにどんな言葉を掛けてあげれば良いのかが分からなかった。今まで、死地に赴く人に言葉を欠ける機会なんて一度も無かったから。
『思ってることをそのまま言えば良いんじゃねぇか?こういうのはな、気持ちが伝わってりゃ十分なんだよ』
「……」
……今私が思っていること……
「……ハリー」
「ん?」
今の私がハリーに言えることなんて、もう、これだけしかない。
「死なないで」
ーー
ハリーが最後の部屋に向かった後、私達は帰る為の瓶を飲むと急いで今まで通って来たみちを逆走していた。
「急いでハーマイオニー!一刻も早くダンブルドア先生に今までのことを伝えないと!」
「マクゴナガル先生や他の先生にも伝えましょう!きっと助けてくれる筈だわ!」
必死だった。早くしないとハリーがスネイプに殺されてしまう。私達が間に合わなければハリーとは永遠にお別れだ。そんなの絶対に嫌だ。そんな気持ちが、私の足を動かせた。
「グレイ!ハーマイオニー!無事なのかい!?」
トロールがいる廊下の手前まで来ると、そこにはチェスの試練で気絶させられたロンがいた。
「ロン!良かった!無事だったのね!」
「どこか怪我はしてない!?大丈夫なの!?」
「心配いらないよ、本当に気絶させられただけさ」
ロンは体に異常がないことを証明する為にその場で跳び跳ねたり足踏みをしてみせた。本当に無事だったようだ。
「あれ?ハリーは?君達、ハリーはどうしたんだい!?」
「それは道すがらに話すから今は「ほう…?出来れば今、話して頂きたいものですな。ベアボーン」……え?」
「「……え?」」
………………は?
「なん、で?……ここに?」
「何で?とは何かね。私がここにいることがそんなにおかしいのかね?私からしてみれば、諸君がここにいることのほうがよっぽどおかしいと思うのだがね?」
私の目と耳はおかしくなったのだろうか?どうしてコイツがここに?何かの魔法で幻でも見せられてるんじゃ
『びっくらポンだぜ……んでここに陰気野郎がいやがんだ!?』
……サファイアにも見えてるのなら違うのだろう。私の目と耳はちゃんとしてる。ということは、目の前にいるのは本当に…
「とりあえず、グリフィンドールはもう百点減点にしたほうがよろしいかな?」
間違いななく、スネイプだった。
「まあ、今は点数はどうでも良い。ポッターはどうしたのかね?一緒だったのだろう?今どこにいる?」
「え?……いやその…どうしてスネイプ先生はここに?」
「質問を質問で返すとは、魔法の勉強よりも語学の勉強をしたほうが良いのでは?……まあ良い。我輩の試練は、突破されると我輩自身がそれを感知できるように細工してあるのだ。試練が突破されたことを感知して来てみれば、三頭犬は寝ている、悪魔の罠は燃えている、扉は開いている。起きたトロールと戦っていたらまた試練が突破された時の感知が来る。これは一体どういうことなのかね?」
それはこっちの台詞だ、私達よりも先に試練を突破したのはスネイプだと思ってたのに本人は私達よりも後ろにいた。じゃあ一体誰が…
「スネイプ先生、あなたはトロールの扱い方についてはご存じですか?」
私が考え込んでいると、ハーマイオニーがスネイプに質問した。
「何?我輩はトロールなど扱えぬぞ。我輩は魔法薬学専門だ」
「…………まさか……」
ハーマイオニーはスネイプの答えを聞くと、みるみる顔を青くさせていった。
「ハーマイオニー?」
「……グレイ!ロン!私達、とんでもない間違いをしてたわ!」
「え?」
「クィレルよ!石を狙っているのはきっとクィレルだわ!」
「…ハーマイオニー?君は一体何を言ってるんだ?」
クィレル?何でクィレル先生がここで出てくの?
「おい、我輩の話を「ハロウィンの時、クィレルは何をしていたか覚えてる!?」……」
ハロウィンの時?
「大広間に来てトロールが現れたことを私達に伝えに来て」
「それがまずおかしいのよ!トロールを試練に配置できるのに、何であの時わざわざ私達に伝えにきたの!?彼一人でいくらでも対処できた筈なのに!」
………………あ。
「あの時、四階に向かったのは!スネイプ…先生だけじゃなかったのよ!!」
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」
「じゃあ、もしかして今ハリーと一緒にいるのは……クィレル!?」
「そんな……ハリーが危ない!!」
「待て、待ちたまえ。ポッターがなんだと?」
「二人とも、私戻るよ!ハリーだけ行かせるべきじゃなかった!」
「ええ!?」
「グレイ!?君、一体なにを!?」
「どこに行くつもりだベアボーン!」
「決まってます!ハリーの所へ!」
ーー
敵の本当の正体は分かったけど、それだけじゃなんの解決にもなりはしない。そんなことは分かってる。でも、だからといってじっとしていられる理由にはならない。例え、何の解決方も見いだせなかったとしても。
『しかしなぁ、勢いに任せて戻って来ちまったけどよぉ、ここからどうするつもりだ?最後の部屋に入る方法は無ぇんだぞ?』
「ピピピィ?」
「それは…でも、あそこにいたとしても…」
『……あ?おいグレイ。お前、なんか光ってるぞ?』
「へ?」
サファイアに言われて下を向くと、確かに私の体は光っていた。正確には制服の一部が、だけど。
「これって…」
光っている箇所に手を当てて見ると、私の手に一冊の本が収まった。これは確か…
「フィールドガイドだ」
それは、私がホグワーツに入学した頃にダンブルドア先生から貸してもらったホグワーツのガイドブックだった。初めの頃はとてもお世話になっていたけど、最近は殆ど道に迷わなくなって使わなくなり、存在をすっかり忘れていた。
フィールドガイドを開くと、ページが一枚勝手に破れて光の塵となり、その塵は一本の線となって部屋の壁を指した。
「こっちに何かあるの?」
光の塵が指した箇所に振れると、大きめのブロックが一個、また一個と消えていき、最終的には人一人通れるくらいの大きさの穴になった。
というか
「あの人、秘密の通路や部屋には案内出来ないとか言ってなかったっけ?」
頭の中で愉快に笑う校長の姿がなんとなく想像できた。ちょっとだけ腹が立ったことは、誰にも言わないでおこう。
「それにしてもこれ、もしかして本当に向こうの部屋に行けちゃったりするのかな?」
『そうなんじゃねぇか?じゃなきゃこんなところに隠し通路なんざ作らねぇよ」
「……そうよね」
中に入って左右を確認すると、石がある筈の部屋の方向に通路が延びていた。これで最後の部屋には繋がっていませんでした、なんてオチは勘弁して欲しい。
『なあグレイ』
「ん?どうかした?」
『出口ねぇぞ』
「……え?」
『だから、出口ねぇぞ。こりゃ閉じ込めらちまったみてぇだな』
「…みたいだね」
出口なんてどうでもいい。帰るときはちゃんとした出口をハリーと一緒に通れば良いだけだ。
通路を少し進むと、壁側に今までの試練で見てきた扉があった。きっとこれだ。
「……よし」
きっとこの扉の向こうには、ハリーとクィレル、もしかしたらヴォルデモートもいるかもしれない。正直凄く怖い。本当は入りたくない。でも、友達を見捨てるくらいなら…
「死んだほうが…マシだ!!」
意を決して中に入るとそこには
縛られて苦しそうにしているハリーと
頭の後ろにおぞましい顔をつけてハリーに迫るクィレルがいた。
「ハリー!?」
「え?グレイ!?」
「何!?」
状況は良く分からないけどまずは、
「ハリーから離れて!エクスぺリアームス!」
「この小娘、一体どこから!?」
武装解除魔法を放つと、クィレルはハリーから距離をおいた。
「助けに来たよハリー!今縄を解くから!」
「本当にグレイなの?どうやってここに!?」
「その話は後!あっちの方が重要でしょ!何あれ!?頭に顔ついてるの!?」
禁じられた森で見たヤツがいると思っていたら、その想像の五倍気持ち悪いのが出てきた。というか、あのターバンの中ってああなってたの!?
《ほう?なかなか面白いことになっているではないかクィレルよ》
「…え?」
今、喋った?
「ご、ご主人様!?申し訳ございません!すぐにあの小娘も始末しますのでッ!」
《いや、良い。あの娘には確かめたいことがあったのだ。クィレル、貴様は決して手を出すな》
「は、ははぁ!!」
《いや、待てよ?いい加減この状態でいるのも飽きたな。いちいちコイツに後ろを向かせるのもいい加減面倒だ……殺すか》
「は?……今、なんと?」
《お前の体を貰い受けるということだ》
「ご、ご主人さ、jfぉえふおkdgjhdじょtい!?!?」
「「!?」」
「ぐがごっ⁉︎…あ、あ、あ、あ、あ、あああああああああああああああああああああああああああああああァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ‼︎⁉︎⁇」
クィレルが奇声を発したかと思うと、彼の顔はブクブク膨れ上がり、収まったかと思ったら、いつの間にかさっきまで頭についていた筈の顔がちゃんと顔についていた。
「……急拵えだが、さっきよりかは幾分かマシだな」
「ッ!サファイアお願い!」
『応!』
サファイアの魔法を解いてそのまま突っ込ませる。ホーンド・サーペントの突貫、これだけで人間ならまず死ぬだろう。そうじゃなかったとしても無事ではすまない筈だ。
「俺様に従え」
『ガッ……ッ!?』
「え?」
サファイアが止められた?何の魔法?
「ふむ、完全に支配は出来ないか。この体では動きを制限することが限界か……次期に崩れるな。やはり一刻も早く命の水を取り込まねば」
命の水、賢者の石が狙い?もしかして……
「気をつけてグレイ!そいつがヴォルデモートだ!」
……そう、あれが
「……ヴォルデモート……」
「いかにも」
ヴォルデモートは人の笑みとは思えないほどの恐ろしい顔を私に向けてきた。まるで、悪魔のような顔だ。
「きちんと顔を合わせるのは初めてだなグレイ・ベアボーン。俺様と同じ血を引くものよ」
「生憎、あなたみたいな化け物は私の親戚にはいませんよ」
「残念だったな、俺様とお前は親戚だよ。遠縁だがな」
「そうですか、それは嫌なこと聞きました。エクスぺリアームス!」
「プロテゴ」
不意打ちを狙ったけど、無理だった。無言呪文じゃなきゃ駄目か…出来たことないけど。
「エクスぺリアームス」
「プロテゴ……ッ!?」
ちゃんと防御魔法を使った筈だった。でも奴の攻撃は私の防御を突き破り、私はいとも簡単に武装解除させられた。
「ステューピファイ、インカーセラス」
「グッ…しまっ……ッ!?」
「グレイ!?」
「貴様もだポッター、インカーセラス」
認めたくないけど、私の魔法が破られたのは熟練度や魔法力がヴォルデモートと私では桁違いだからだろう。
自惚れていた、ハリーの助けになれると思って飛び込んで来たけど、結果は何も変わらなかった。
「そう睨むな小娘。俺様はお前に一つ提案がしたいだけだ」
「提…案?」
「俺様の配下となれ。貴様のパーセルタング、それは俺様と同じ高貴なるスリザリンの血を引く証。貴様は俺様の配下となるに相応しい存在なのだ」
「そんなの…断るに決まってるでしょ!!」
意味が分からない。血を引いてるからとかそんな理由で、友達を殺そうとする悪魔に味方するなんて、そんな馬鹿げた話があるか!
「…良い話だと思ったのだがな…断れてしまっては仕方がない。貴様も殺しておくとするか。」
「ッ!?」
「グレイ!?」
ヴォルデモートは杖を私に向けてきた。これはまずい、本当にまずい!私を殺す気だ。どうにかしなきゃいけない、でもどうすればいい?杖は取り上げられ、吹き飛ばされ、縛れ、もう成す術がない。何か良い方法がないか考えてもなにも浮かばない。頭が痛い、さっき吹き飛ばされた時に頭を打ったからか?
「アバダケタブラ!」
緑の光が見えた。きっと死の呪文だ。終わった、そう思った。
「……何?」
だけど、光が私に当たることはなかった。炎が、私とハリーの周囲を包んで光を遮ったからだ。
その炎は、私の服のポケットから、ビートルから発せられていた。
「……ビー…トル?」
ビートルは炎に包まれ、火の玉となり段々と膨張していった。
「ーーーーーーーー!!」
声が聞こえた。鳥の鳴き声だ。でもビートルの鳴き声じゃない。この声は確か…以前に禁じられた森から聞こえた声だ。
「……まさか…これは転生の炎…ということはあれは…」
やがて炎の膨張が収まると、中からは鳥の中でもとても大きな部類に入るような、赤く美しい鳥が現れた。この鳥は前に図鑑で見たことがある。これは
「……不死鳥……」
「ーーーーーーーー!!」
不死鳥はその炎を纏った美しい翼を羽ばたかせると、私達を縛っていた縄を燃やして解いてくれた。
「…ビートル、なんだよね?」
「……ーーー」
「いや、もうなんて言うか…驚き過ぎてちょっとなんて言ったら良いのか分からないや」
「ーーー♪」
私の言葉を聞くと、ビートルは何故か嬉しそうに鳴いた。うん、この軽薄な反応、間違いなくビートルだ。
「……何故…不死鳥がこんな所に?」
「ッ!」
ヴォルデモートの声でハッとした。ビートルが不死鳥だった事実が大きすぎて自分が今死地に立っていることを一瞬忘れていた。
「まずいな…今俺様は不死鳥の炎とは途轍もなく相性が悪い。飼い主を殺してしまえば報復は免れんか………ここは…」
目の前からヴォルデモートが消えた。
「小僧を殺して石を奪うとしよう!!」
「…あ………ハリー!?」
ヴォルデモートはハリーの目の前に移動すると、杖を使わずに拳でハリーを殴った。
「ガッ……!?」
「……………………へ!?」
殴られたハリーはその場で倒れたが、ヴォルデモートはそんなハリーに追撃をしなかった。ハリーを殴った拳が失くなっていたのだから。
「何ィ!?」
「ーーーーーーーーーーーー!!!!」
ヴォルデモートが狼狽えていると、ビートルは翼を広げて全方位に炎を放った。
「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ""あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!?」
炎に当てられたヴォルデモートは、発狂しながら体を崩していった。私もああなるのでは!?と思って身構えたけどそんなことはなく、むしろ頭の痛みが引いていった。
「ーーー」
炎が心地良い……何だろう…?なんだか凄く……眠く…………なって……………きた………。
次はいつ投稿できるかな……?
章の名前を変えるべきかどうか
-
変える
-
変えない
-
どうでもいいからはよ投稿しろ