「ーーーー!」
『お?やっと起きたか!心配かけさせやがって!』
「………………え?」
目を開けると、私の目にはサファイアと、とても美しい赤い鳥が写った。
「え、ちょ、あ、何?えぇ?」
頭が混乱してる。どうなってる?何があった?確か、ハリー達と一緒に賢者の石を取りに行って……そうだ、ヴォルデモートに出くわして……あ。
「サファイア、ヴォルデモートは?ハリーは?皆はどうなったの!?」
「安心しなさい、皆無事じゃよ。ハリーはまだ寝とるがな」
「えっ…うわっ!?」
横から聞こえた声にびっくりした。一体何時からいたのか、私のベッドのそばにはホグワーツの校長であるダンブルドア先生がどこからか椅子を持って来て座っていた。
「まだ安静にしていなさい。二日も寝ておったからの、いきなり体を動かすと体調をくずしかねんわい」
「二日……二日!?」
あわてて近くにあったカレンダーを見てみると、本当にあの日から二日も経っていた。そんなに寝てるとは思わなかった。いや、吹き飛ばされたり縛られたりしたから妥当なのだろうか?
「……あの、先生……」
「水を飲むと良い。少しは楽になれる」
水を勧められると、喉に違和感があることに遅れて気付いた。水を受け取り口に流し込むと、確かに楽になれた気がした。
「どうだい?落ち着いたかね?」
「…はい、ありがとうございます。ちょっと楽になりました」
「それは良かった。Miss.ベアボーン。親しみやすくグレイと呼んでも良いかの?」
「え、あ、はい。大丈夫です」
「ありがとうグレイ」
「……あの…先生」
「気になるかね?あの後どうなったか」
どうやら先生には私が気絶した後の事が気になってそわそわしていたのが見抜かれていたみたいだ。
「…先生…石は……賢者の石はどうなったんですか?…ヴォル……『例のあの人』の手に渡ったりしてないですよね!?無事なんですか!?」
「グレイ、ヴォルデモートと呼びなさい。ものには必ず適切な名前を使うように」
「はい、先生」
「心配いらんよ、石はヴォルデモートの手に渡ってはおらん。ちゃんと君達が守り抜いたのじゃ。今は石をどうするかフラメル夫妻と話し合っているところじゃ」
「…良かったぁ…」
心の底から安堵する。もしヴォルデモートが石を手に入れてしまったらと思うと背筋が凍ってしまう。あの恐ろしい悪魔が完全に復活なんてしたら、どれくらいの人が犠牲になるのか検討もつかない。なんとか食い止めれて本当に良かった。
「これで、もうヴォルデモートはもう戻ってこないんですか?」
「……残念じゃが、そういうわけではないのじゃ」
「え?」
そういうわけではない?あれで終わりじゃないの?
「どういうことですか?」
「いなくなったわけではない、どこかに行ってしまっただけじゃ。確かに不死鳥、ビートルの炎はヴォルデモートの、正確にはクィレルの体を焼き付くした。しかし魂までは出来なかったのじゃよ」
「……じゃあ、一時的なことなんですね…」
それじゃあ、その場しのぎじゃヴォルデモートはいつかまた完全に復活してしまう。一度倒しただけじゃ終わらない。それはもう本物の悪魔だ。
「完全に殺しきることは出来ないんですか?」
「フェニックスの炎でも殺しきれなかった相手じゃ。もし方法があったとしても相当骨が折れるやり方じゃろうな」
「…そう、ですか」
「じゃがなグレイ、君が、君達が行った事が無意味だったとは言わないよ。君達の行動に感銘を受けた人間が、今回のように彼の狙いを何度も何度も挫き、遅らせれば、彼はもう力を取り戻すことが出来なくなるかもしれんのじゃ。だから、君が行ったことは無意味ではないのじゃよ」
「…先生」
ダンブルドア先生はニコリと笑うと席を立ち、ハンガーラックにとまっているビートルの頭を手慣れているかのように撫でた。
「やはり美しい生き物じゃ。まさかフォークス以外の不死鳥をこの目で見れるとは、儂は運が良い」
「フォークス?」
「ああ、儂のよきパートナーの不死鳥じゃよ」
その言葉は私を驚かせるのに十分な威力があった。
「飼っているんですか!?不死鳥を」
「飼っておるのではなく、同居していると言った方が正しいじゃろうな…おお、そうじゃったそうじゃった」
「?」
「これはまだ秘密じゃが、ビートルの新しい棲み家じゃがな、マクゴナガル先生の許可をとってグリフィンドールの談話室に置くことになったからのう」
「はい?」
グリフィンドールの談話室に置く?何を?ビートルを飼う場所を?
「え?というかちょっと待って下さい。先生方は私が飼ってた雛鳥が不死鳥だったことを知っているんですか!?」
「先生達以外にも、ホグワーツの生徒の間で既に知られておる事じゃよ」
「はあああああああ!?」
少なくとも気軽に決めて良いことじゃない。というか、秘密なのに何で他の生徒にもビートルのことが知られてるの?
「あの、さっきまだ秘密って言ってませんでしたっけ?」
「ホグワーツでの秘密はみんなが知っていると同義なのじゃよ」
「……なんか、今さらだけどホグワーツがますますよく分からなくなってきた……」
まあ、ありがたい話ではあるけど…大きくなっちゃってポケットには入らないだろうし。
「それとサファイアの棲家も用意出来たのじゃが…流石にホーンド・サーペントは皆が怖がるかもしれないから目立たない場所に作ったが…どうかね?」
『ありがとよじいさん。だが遠慮しとくぜ。なんだかんだでコイツの首に巻き付いてるのが一番落ち着くからな』
「…………ん?」
今、普通に会話してなかった?この人さらっとパーセルタング使わなかった!?
「ダンブルドア先生、パーセルマウスだったんですか!?」
「君とは違って生まれつきではないがの。練習して身に付けたのじゃよ」
初耳だ、パーセルタングが練習すれば習得できるものだっただなんて。てっきり生まれつき使える人だけしか使えない言語だと思ってた。
「なんていうか…この学校に来てから驚いてばかりです」
「……この学校の謎はいかなる時代においても変わらん。むしろ深まるばかりじゃ。生徒はおろか、教師でさえもここの全てを把握しておるものは殆どおらん。校長である儂でもな」
「それは意外です。てっきり全部分かっているものだと……」
「儂も君と同じじゃよ。儂もホグワーツに入ったばかりの頃は驚きの連続じゃった。儂が一年生の時に六つ上の先輩が………いや、この話はよすとしよう」
ダンブルドア先生は不自然なタイミングで話を終わらせると、急に魔法で横の机の上にお菓子の山をおいた。
「あの…これは?」
「君の友人達からのお見舞いの品じゃ。マダム・ポンフリーの診察が終わったら食べると良い。あ、もし百味ビーンズが余ったら儂にくれんかの?久々に食べたい気分なんじゃよ」
「…なるべく残しておきます」
彼は微笑を浮かべると医務室から出て行くために扉に向かった。その時、私の頭の中に一つの疑問が浮かんだ。
「あ、先生。もう一つよろしいですか?」
「ん?何かね?」
「あの…スネイプ…先生は、石を狙うどころか守っていたんですよね?」
「そうじゃが、それが?」
「あの、ならどうして彼はハリーに対して、私や他のグリフィンドール生以上にあんな執拗に嫌がらせをしてたんですか?」
スネイプ先生がスリザリン贔屓でグリフィンドールを目の敵にしてたのは分かってたけど、それでもハリーに対しては人一倍あたりが強かったように感じた。ハリーは自分がスネイプ先生に憎まれてるからだと言ってたけど、それは主人であるヴォルデモートを倒したからだと私もハリーも思っていた。でも実際に石を狙っていたのはクィレルであり、スネイプ先生は石を守る側の人間だった。それなのにハリーを沢山虐めるものだからてっきり敵だと思ってた。それがなければ変な誤解をしなくてもよかったかもしれないのに。
「あぁ……それは儂の口からは言えないのじゃ。何せプライベートな話だからのう。どうしても知りたいのなら本人に聞いてみるといい。素直に話してくれればの話じゃがのう」
ダンブルドア先生はそう言い残すと、医務室から出て行った。
『……なんか胡散臭いジジイだな。俺の家を作ってくれたことには感謝してっけどよう』
「え、そうかな?」
『ああそうだぜ、あのジジイ、腹の内で何考えてっか分かんねえタイプの人間だ。グレイ、油断するなよ」
「……私はあまりそういうの感じなかったけど、サファイアは感じたんだね?」
『ああ。ま、気をつけていれば厄介な事に巻き込まれることはないだろ。ただ、気に留めとけよ』
サファイアはそう言うと、机のお菓子の山に入っていった。多分食べれそうなお菓子を見つけては貪り食っているのだろう。
「お話は終わりました?」
ダンブルドア先生が帰ったのを察して部屋の奥からマダム・ポンフリーがやって来た。
「はい、先生はお帰りになりました」
「そう…まったくあの人は、患者の診察よりも先に話なんて、患者を何だと思っているのやら。すぐに診察を始めます。こちらへ」
マダム・ポンフリーは私の体にどこか異常はないか徹底的に診察した。外傷から呪いまで、何も残っていないか体中調べられた。想像以上に時間がかかって診察を始めたのは朝方の筈だったけど、終わった頃にはもう夕方になっていた。
「……疲れた……」
正直石の試練よりも疲れたかもしれない。緊張感は試練の方があったけど、長い時間拘束されたせいで疲労感が半端じゃない。
「今日はもう寝ることにしなさい。二日も寝たきりだった上にまだ疲労がとれていない状態で診察を受けたのですから、もう少し体を休ませないといけませんよ。最低でも明日の午後まではここにいてもらいます。良いですね?」
「…そうします」
「よろしい。ああそれと、あなたの友人の生徒が明日面会を求めていますよ。どうします?」
「友達…ロンとハーマイオニーですか?」
「ええ、その二人ですよ」
多分二人には凄い心配かけちゃっただろう。何せ二日も寝たきりだったのだから。
「分かりました。明日面会します」
「では、昼頃に来させます。それまでに良く寝て休むように」
マダム・ポンフリーは言うだけ言って医務室から出ていった。彼女が出ていくと、唐突な疲労感が全身に襲いかかった。私は想像以上に疲れてたらしい。
『おうグレイ、診察終わったか。お前も菓子どうだ?結構食ったがグレイが好きそうな菓子もまだ結構残ってるぞ』
「ごめん、今はいらないかな」
お菓子をくれた人には少し申し訳ないけど、今は食べれる気がしない。
「私もう寝るから、私が好きそうなお菓子も食べたかったら食べて良いよ」
『そうか?じゃあ遠慮なく頂くぜ』
私が許可するとサファイアは百味ビーンズをバクバクと食べ始めた。ダンブルドア先生が食べたいって言ってた気がするけど、もう眠たくてそこまで気が回らない。
「ま、いっか」
明日はロンとハーマイオニーが来るのだから、寝ぼけたまま二人には顔を会わせたくない。同じ女子のハーマイオニーはまだいいかも知れないけど、男子のロンにはみっともない姿は見せたくないので、私はベットに横になるとすぐに毛布にくるまった。
ーー
次の日の朝、昨日は早く寝たおかげか起きても疲労感は感じなかった。これなら今日退院しても問題無いだろう。
「……ここは……?」
「!?」
カーテン越しに声が聞こえた。慌ててカーテンを開けると、そこには戸惑った様子で横になるハリーがいた。
「あ、グレイ…ここはどこ?あれから、どれくらい経ったの?」
「ここは医務室だよ。私が目を覚ましたのが昨日だから、ハリーは三日くらい寝てたみたいだね」
「み、三日!?……石は、石はどうなったの」
「それは儂から説明しよう」
これまた私の時のように良いタイミングでダンブルドア先生が医務室に入って来た。どうして毎回私達が起きたのが分かるんだろう?なんだか怖くなってきた。
「先生、石は大丈夫何ですか?」
「落ち着きたまえ、順を追って説明しよう」
ダンブルドア先生は昨日がハリーに今までのことを伝えてたとあっという間に時間が過ぎ、気付けばロンとハーマイオニーが来るお見舞いに来る時間になっていた。
「グレイ!大丈夫……ハリー!起きたのね!」
「二人共元気そうで良かったよ。僕心配しすぎて最近ご飯食べれてなかったんだ。だけどこれで安心して食べられる気がするよ!」
「私も、皆元気で安心したよ。」
「ええ……本当に……皆無事で…良かったわ」
ハーマイオニーはその場で泣き崩れてしまった。なんでも、私とハリーが医務室で寝たきりだったときは私達にもしものことがあったらと思うと喉に何も通らず、ロンよりも落ち込んでいたらしい。昨日私が目を覚ましたと聞いて段々と元の調子に戻っていったみたいだけど、ロン曰く、それでもまだ酷い状態だったみたいだ。
「泣かないでハーマイオニー、最後は皆無事だったんだから。ね?レモンキャンディー舐める?」
「……ううっ…うん……」
初めて会った時のハーマイオニーは勝ち気な女の子の印象が強かったけど、今ではそれががらりと変わって繊細な印象が強い気がする。一年も一緒いたのだからそう感じるのは当たり前かもだけど。
「確かに面会の許可は出しましたが、それは彼女にであって彼にはまだ出してません!診察をしますので出ていって下さい!」
マダム・ポンフリーはハリーを診察するためにハーマイオニー達を追い出そうとしていた。
「十五分だけ、それだけでいいから出来ませんか?」
「いいえ。絶対にいけません」
「ダンブルドア先生は入れてくださったのに……」
「悔しいですが、校長ですから。他はの人とは違います。あなたには休息が必要なんです」
ハリーは頑張ってマダム・ポンフリーを説得しようとしてたけど、マダム・ポンフリーには気持ちがまだ届いてはいなさそうだった。
「僕、ちゃんと横になってます。ほら、横になっているし。ねえ、マダム・ポンフリー、お願いだから」
ハリーは手段を選ばずマダム・ポンフリーに上目遣いで自分は純粋です的なアピールをしていた。
逆効果じゃないだろうかあれ。彼女はそういうのを許さないタイプの人だと思うけど……
「……仕方ないわね。でも、本当に十五分だけですよ」
……許しちゃった……え?良いの?生徒には以外と弱いんですかマダム・ポンフリー?
「ハリー!」
ハーマイオニーはハリーに駆け寄るとそのまま抱き締めそうになっていたが、ハリーの体調を気にして思い止まった。
「学校中が君達のことでもちきりだよ。一体何があったの?」
「ああ、それは儂から話そう、君達にも知る権利があるからのう。それにフラメル夫妻の事もまだ伝えておらんかった」
ダンブルドア先生はあの試練で起こったことをロンとハーマイオニーに話し、それから今日決まった石とフラメル夫妻の事も話してくれた。
「儂がニコラスと共に作った賢者の石じゃがな、壊しておくことにしたのじゃ」
それは私達にとっても衝撃的な話だった。賢者の石を壊すことは自分の不死生を手放すことのはずだ。二日や三日で決めていいことなのだろうか?
「それじゃあニコラス・フラメルは……」
「なに、心配はいらぬよ。整理された心を持つあの二人にとって、死は大いなる次の冒険に向かうようなものじゃ。それに命の水が尽きるまではまだかなりの時間がある、今二人はその準備をしておるだけなのじゃよ」
「……私にはよく分からないです。どうしてそんなふうに考えられるんですか?」
死ぬことを恐れないのはまだ分かる。普通の人間や魔法使いでさえ不老不死ではない。私も私の家族も、ハリー達も最後は死ぬ。それは人として当たり前のことだ、仕方がないことなのはわかってる。
でも、出来るだけ生きていたい気持ちはある。少しでも生きて、美味しい食べ物を沢山食べたり、楽しいことをしたり、生きてやりたいことは山程ある。彼らはその機会がまだ有り余る程あるのに、一度危険に晒されただけであえてそれを捨て去る選択をした。その選択が私には良く分からなかった。石を守ることなんて彼らにしてみれば幾らでもまだやりようがある筈なのに。
「……一つ言えることは、どのように生きるかとは、どのように死ぬかと同義なのじゃよ。彼らは死に方を選べるほど生きたということじゃ」
「……そうですか」
「君にはまだ難しい話かもしれない。じゃが、そこで考えるのを止めてはいけないよグレイ」
ダンブルドア先生はそう言い残して去っていった。
「やっぱりダンブルドアって、なんかズレてる感じがするな」
「……サファイアと似たようなこと言ってる…」
それにしても、そっか……壊しちゃうのか、賢者の石。仕方ないとはいえ、あれだけ苦労して守った物を壊しちゃうのは、少しやるせない気持ちになってしまう。
「あ、そうだ忘れた!」
「ロン、どうかしたの?」
「いや、グレイは今日退院するから良いとして、ハリーは明日の学年末パーティに間に合うのかなって思って」
「ああ、そういえばどうなんだろう?」
学年末パーティはホグワーツの一年の締め括りであり、今年どの寮が一番得点を稼いだかを発表する場でもある。今年はスリザリンなのが気分の良い話ではないけど、沢山の美味しい料理が出てくるので、私としては絶対に出席したいパーティでもあった。
「それについては大丈夫だよ。ダンブルドアがマダム・ポンフリーを説得してくれたみたいだからさ」
「そう、それは良かったよ。じゃあそろそろ授業があるから。元気になって起きなくちゃ。ご馳走がたんまりあるからね。じゃあグレイはまた後で」
「体を労ってゆっくり来ていいからね」
「うん、ありがとう二人共。また後で」
ロンとハーマイオニーの二人も医務室から退室して、残されたのは私とハリーとマダム・ポンフリーの三人だけとなった。ハリーは疲れたのかベッドに横になり、マダム・ポンフリーは診察機の準備の為に部屋の奥に引っ込んでいった。
私は丁度用意された昼食を口に入れた後、すぐ横に掛けてあった制服に腕を通し、サファイアをいつも通りフードに入れ、ビートルを腕に乗せて医務室を後にした。
ーー
次の日の夜、学年末パーティは予定通り行われた。なかなかハリーが来ないものだから心配になったけど、ハリーは元気そうに大広間にやって来た。なんでも、マダム・ポンフリーにしつこく診察されていたらしい。
「……はぁ……」
「グレイどうしたんだい?このごちそうを見てため息なんかついちゃって、まだ体の調子が良くないのかい?」
「え、あ、いや…ちょっと視線が気になっちゃって…」
寮対抗杯を獲得したスリザリンの横断幕が飾られた大広間に入ってからというもの、私達は、特に私とハリーは周囲の生徒からの視線を浴びていた。
なぜこうなったかという原因は分かる。ハリーは再びヴォルデモートを退けたという話を知られているから。そして私は、不死鳥であるビートルを連れているからだろう。物珍しさでいえばダントツだ。
ついさっきまでハグリッドがビートルが不死鳥だったことに興奮して触らせて欲しいと懇願し、それが少し狂気的だったので断っていたところを見られたのも拍車をかけたのだろう。彼には今回の件でもっと反省してもらいたいものだ。
「あまり気にすることじゃないと思うわよ」
「ハーマイオニーの言う通りさ。気にせず堂々としていれば良いんだよ」
「……そうしたいのは山々だけど…」
本当に視線が鬱陶しい。体がウズウズして落ち着つけない。あぁ…叶うのなら、ハリーの透明マントを借りてこの場から姿を消してしまいたいくらいだ。
そう思っていると、急にあたりがシーンと静かになった。ふと前を見ると壇上にはダンブルドア先生が立っていた。
「また一年が過ぎた!」
先生の話につい体を強張らせる。
「一同、ごちそうに齧りつく前に、老いぼれのたわごとをお聞き願おう。なんという一年だったろう。君達の頭も以前に比べて少し何かが詰まっていれば良いのじゃが……新学年を迎える前に君達の頭が綺麗さっぱり空っぽになる夏休みがやってくる。
それではここで寮対抗杯の表彰を行うことになっとる。点数は次のとおりじゃ。
四位グリフィンドール、三一二点。
三位ハッフルパフ、三五二点。
二位レイブンクロー、四二六点。
そして一位スリザリン、五三二点。以上じゃ!」
次の瞬間、スリザリンのテーブルから嵐のような歓声と、足を踏みならす音があがった。覗いてみるとマルフォイがゴブレットをテーブルに叩きつけて興奮していたりと、祝杯ムードだった。対してグリフィンドールはお葬式のような雰囲気だった。
結果が出てしまったのでもう仕方がない。今年の寮対抗杯はスリザリンの優勝だ。それはこの場に来る前から分かっていた。もうさっきまでのことは忘れて目の前のごちそうに有り付こう。取り敢えず紅茶を飲ん喉を潤すとしよう。
「よし、よし、スリザリン。よくやった。しかし、つい最近の出来事も勘定に入れなくてはなるまい」
しかしまだ話は終わっていなかったようで、ダンブルドア先生が機嫌よくそう言うと、大広間全体が水を打ったように静まり返った。ふと気付くとスリザリンの祝杯ムードもいつの間にか霧散していた。
「では、駆け込みの点数をいくつか与えよう。まずは、Mr.ロナルド・ウィーズリー」
名前を呼ばれた途端、ロンの顔が真っ赤になった。まるで酷く日焼けをした赤かぶのようだった。
「この何年間かホグワーツで見ることができなかった、最高のチェスゲームを見せてくれたことを称え、グリフィンドールに五十点を与える」
「ブフッ!!??!?」
聞こえた言葉があまりにも奇想天外すぎてつい紅茶を吹き出してしまった。グリフィンドール生達はとんでもない歓声をあげ、パーシーは隣の監督生に「僕の弟がマクゴナガル先生のチェスを破ったんだ!」と大きめの声で話していた。ロンの顔は今にも赤かぶになりそうなくらい真っ赤だった。
……なんだかこの後の展開は大体分かってきた。
「次にハーマイオニー・グレンジャー、火に囲まれながら冷静な論理を用いて対処したことを称え、グリフィンドールに五十点を与える」
それを聞いた途端、ハーマイオニーは私の腕をしっかり掴んで顔を押し付けて来た。小刻みに震えているから嬉し泣きしているに違いない。
「グレイ・ベアボーン!」
ロン、ハーマイオニーの流れで呼ばれるだろうとは予想は出来ていた。出来てはいたけど、実際に当事者になると体に力が入ってしまう。
「彼女は皆を支え、友が危機に晒された時、自身の命を顧みずに友の為に行動し、救った。そのグリフィンドールに相応しい勇敢な行動に敬意を表し、グリフィンドールに六十点を与える」
目頭が熱くなった。嬉しくて涙が出そうになった瞬間、
「きゃっ⁉︎」
私は興奮したフレッドとジョージにもみくちゃにされた。周りを見てみると、二人だけではなくグリフィンドールは狂喜乱舞の如く盛り上がっていた。
「やったぜグレイ!」
「これであと六十点だ!でかしたぞグレイ!」
「う、うん。分かった、分かったから!ちょっと落ち着いて締まってる息が出来ない‼︎」
「悪い悪い、でもしょうがないだろ?」
「とんでもないことなんだぜこれは!」
確かにとんでもないことだ。この一瞬でスリザリンと絶望的に開いていた点差が一気に縮んだ。こんなことは滅多に見ない出来事だろう。ふと気になってスリザリンの方を向くと、スリザリンはさっきまでのグリフィンドール以上にどんよりとした空気になっており、中には泣いている女の子までいた。
「……」
「気にするなよグレイ」
「スリザリンはここ七年連続で一位だったんだ。今年くらい良いじゃないか自分を誇れ」
「まあ…そうだね」
今の私にしてあげることなんて無いだろうし、してあげたらそれはそれで逆効果になってしまうだろう。二人の言う通り、気にしないのが一番良い。それにまだ、ダンブルドア先生は喋り終わってはいない。
「そして、ハリー・ポッター。その完璧な精神力と並外れた勇気、行動力を称え、グリフィンドールに六十点を与える」
耳をつんざくような大騒音が大広間に響きわたった。これで同点、グリフィンドールはスリザリンと並んで一位となった。
「ダンブルドア先生がハリーにもう一点多く与えてくれたらら良かったんだけど、さすがに駄目か…………ん?」
話が終わったと思ったのでごちそうに手を伸ばしたとき、先生がもう手を挙げているのが見えた。
「勇気にも色々ある。敵に立ち向かっていくのにも勇気がいる。しかし、味方の友人に立ち向かうにも、同じくらい勇気が必要じゃ。そこで、儂はネビル・ロングボトムに十点を与えたい」
次の瞬間、グリフィンドールのテーブルから爆発が起きた。大広間にいる他寮の生徒や先生達はそう感じただろう。それくらいの大歓声だった。私の周りはお祭り騒ぎ、ネビルなんかもみくちゃにされて嬉し泣きをしていた。ネビルは今まで全く得点を貰ったことがなかったからその分も嬉しいのだろう。
ロンが指を指す方向を向くと、マルフォイをショックを受けた顔のまま固まっているのが見えた。マルフォイに関してはちょっと嬉しかった。
「従って、飾り付けを少々変えねばならんのう」
ダンブルドア先生が手を叩くと、グリーンの垂れ幕が深紅に、銀色が金色に変わった。それから巨大な蛇が消えて、グリフィンドールのそびえ立つようなライオンが現れた。スネイプ先生は苦々しげな作り笑いを浮かべて、マクゴナガル先生と握手をしていた。
「やったわねグレイ!一位ひよすごひわぁ!」
「うん!やったねハーマイオニー……なんか顔赤くない?」
抱き着いてきたハーマイオニーは顔が真っ赤かになっていた。それに加えて甘い匂いも漂わせていた。
「……ハーマイオニー…あなた、もしかしてお酒飲んだの?」
「んんん?……にょんだ、かも?」
「もしかして、上級生の方のジュース飲んじゃったの!?たまにお酒があるから下級生とは分けられてるはずだよね!?」
「さあ?なんでかひらめ?」
ダメだ、呂律も頭も回ってない…一体なんでここにお酒が?
「ん?……あ、ヤバいぜフレッド、ハーマイオニーが飲んじまってる」
「なんだって?…ほんとだ、どうするジョージ?バレたら減点食らって台無しだ!」
ハーマイオニーを見つけたフレッドとジョージがこっちに寄ってきた。介抱を手伝ってくれるのかと期待したけど、どうやら違うみたいだ。なぜなら二人とも、両手にお酒を持っていたのだから。どうやら二人が上級生の方から持ってきたお酒をハーマイオニーが誤って飲んだらしい。
「二人が犯人ね!なんでお酒なんて持ってるの二人とも私達と同じ下級生でしょ!?」
「おっと、グレイがハーマイオニーみたいになったぜジョージ」
「見りゃ分かるよ。グレイ、こんなめでたい日ほど酒を飲むにふさわしい日はないと思うのだが?」
「ジュースでも空気には酔えるし流石にお酒はだめでしょ!もし耐性が無かったらハーマイオニーみたいになっちゃうかもしれないのにバレたら減点は免れないからね!」
「安心しろよグレイ、酔わないようにする魔法くらい習得済みさ」
「え、そんな魔法あるの?じゃあ早くハーマイオニーにも」
「酔う前に使わないと効果が薄いんだ。じゃ、介抱は任せたぜグレイ~」
「頼んだぜー」
「ちょっ…このまま放置して行くなああああああああああああああああ!!」
その後、マクゴナガル先生に見るからないように四苦八苦しながら、私はその場でハーマイオニーを介抱した。本当ならがっつり食べるはずだったのにあの二人のせいでちょこっとしか食べれなかった。なんでパーティで疲れなきゃいけないんだろうか?
「……ウィーズリー兄弟……絶対許さない!」
今夜寝てる時にサファイアをベットに忍ばせてやろう。
なんとか八月中に一話は更新できました……次回でこの章は最終回にしたいと思ってます。あと、章の名前を変えよう思うんですけどアンケートとりたいと思います。投票お願いします。
章の名前を変えるべきかどうか
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変える
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変えない
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どうでもいいからはよ投稿しろ