マクゴナガル先生が家に訪れ、なんだかんだで私がホグワーツに通うことになった日の次の日。私はお父さんとお母さんと一緒にロンドンを訪れていた。昨日マクゴナガル先生が言っていた案内人と落ち合うためだ。
「長い髪と髭を伸ばした大男ねぇ、本当にそんな人が来るのか?」
お父さんはまだ来ない案内人が言葉通りの人物なのか疑っているようだ。それも仕方ない、ロンドンでそれなりに見晴らしの良い公園でそれっぽい人物を全員で探しているが見つけることは出来なかったからだ。
「今朝、また手紙が来てたわよ?なんでも迎えに行った男の子一人を探すのに手間取ってちょっと遅れるかもしれないって」
「ふーん、その子も魔法のことってはじめて知るのかな?」
「多分そうなんじゃない?魔法を知らない子だけが引率して貰えるみたいだし」
そうしてまだ来ない大男と男の子に想像を膨らませているとお父さんが何かに気づいた。
「ん?彼らじゃないか?」
お父さんが指を差す方には確かに髭と髪が長い大男と私と同じ11歳くらいの男の子だった。どうやら二人も此方に気づいたようだ。二人が近づいてくると思わず私達は大男の大きさにたじろいだ。
「おぉ!お前さんがグレイ・ベアボーンか?」
「は、はい!私がグレイ・ベアボーンです!」
「そうかそうか!おれはハグリッドってモンだ、ホグワーツで森の番人をやってる、よろしくな!」
そう言ってハグリッドは大きな手を私に差し出してきた。私は彼と握手を交わした。彼の手は途轍もなく大きく、まるで熊と握手してるみたいだ。
「遅くなって悪かったな、ダーズリーの野郎がハリーをあちこちに連れてくもんだから探すのに手間取っちまってな」
「ハリー?」
「あぁ、自己紹介したらどうだハリー?お前さん達はこれから同じ学校に通うし、もしかしたら同じ寮になるかもしれねえからな」
「あ、うん、そうだねハグリッド。僕はハリー・ポッター、よろしくね。ええと……」
「グレイ・ベアボーン、グレイで良いよ、よろしくねハリー」
「う、うん、わかったよグレイ」
「?なんか緊張してる?」
「え?そうかな?はじめてのことが沢山ありすぎて疲れちゃってるのかも」
「ふーん」
実はこの時、ハリーは可愛い女の子と話すのが初めてでドキドキしていたのだが、グレイはおろか、ハリー自身もその事に気付かなかったのはここだけの秘密である。
「お前さんら、そろそろ移動するぞ」
私とハリーがお互いに自己紹介をしている間にハグリッドはお父さんとお母さんに挨拶をしていたらしい。でもなぜかハグリッドは少し疲れた様子だった。
「どうかしたの?」
「いやあ…グレイの父ちゃんにいろいろ聞かれてな、答えるだけで疲れちまった…」
お父さんはいろんな場所や人に取材をして書くタイプの小説家だ。次の小説の参考にいろいろ聞いたのだろう。
「それじゃあグレイ、ハグリッドさんの言うことをきちんと聞くんだぞ?」
「土産話を沢山聞かせてね。楽しみにしてるわ!」
「うん、いってきます!」
私は二人と別れ、ハグリッドとハリーについていった。
ーー
「ここだ」
ハグリッドについていった先にあったのはちっぽけな薄汚れたパブだった。多分ハグリッドに言われなければ気付かなかっただろう。それくらい存在感がなかった。私達以外の人は気付かないようでまるで私達だけ見えてるみたいだ。
「『漏れ鍋』、有名な店だ。まあ入ってみりゃわかる」
そう言ってハグリッドは私とハリーを中へと促した。パブの中は暗くて、みすぼらしかった。三人のおばあさんが固まってシェリー酒を飲んでいたり、シルクハットを被った男がバーテンのおじいさんと話していた。私達が店に入ると低いガヤガヤ声が止まった。手を振ったり、笑いかけたりしてくる。どうやら知り合いらしい。
「大将、いつものやつかい?」
バーテンはハグリッドにそう聞いた。
「今日はダメなんだ、ホグワーツの仕事でな」
そう聞いてバーテンは私達の方を、正確にはハリーの方をこれでもかというくらい見つめていた。
「なんと。こちらが……いやこの方が……やれうれしや!ハリー・ポッター!なんたる光栄!!」
その言葉を聞いて他の人もハリーの周囲に集まっていった。何事?
「ねぇハグリッド、ハリーって有名人なの?」
「その話をするのは良いが今はちょっと待ってくれ!このままじゃハリーが潰れちまう!」
「あ、うん、わかった」
ハグリッドはそう言って人の波に押し潰されそうになっているハリーを急いで助けに行った。ハリーって何者なんだろう?
「なあそこの嬢ちゃん」
「?はい?」
ハリーについて考えているといつの間にか私の横にはとても年老いたお爺さんがいた。
「名前は?」
「え?」
「名前だよ」
「……グレイ・ベアボーンです」
「……」
「……あのぅ」
なんなんだろう?知らないお爺さんに見つめられてもどう反応して良いかわからない。
「おーいグレイ、そろそろ行くぞ」
ふと来た声の主を探すと人波からハリーを連れ出したハグリッドがいた。
「あ、はーい!すみません私はこれで……あれ?」
お爺さんの方に意識を戻した時には彼は私の前からいなくなっていた。
「……なんだったんだろう?」
「どうかしたか?」
「うん、なんか……え?ここって壁じゃなかったっけ?」
ハグリッドの方に向き直るとさっきまで壁だったはずのところにぽっかりと穴が空いていた。
「あぁ、こっからじゃねえとダイアゴン横丁には入れねえからな。それよりもどうかしたか?」
「……ううん、なんでもない」
あのお爺さんのことは少し気になったけど今の私にはどうでも良かった。
「そうか?それじゃ改めて、ダイアゴン横丁にようこそ」
ハグリッドが促す先には、文字通り魔法の世界が広がっていた。
ーー
マグルであり得ないことが魔法族にとっては当たり前のことが殆どだろう。道歩く人達は皆ローブを纏っていたり、三角のとんがり帽子を被っている。
「おい見ろよ!ニンバス2000だ!最新式の箒だよ!」
こっちは数人の少年達が硝子の向こうにある箒に釘付けになっていた。玩具を見ているようにも見えるが、箒を見ているので可笑しくなってしまう。
「すごい……本当に魔法の世界だ…」
「うん…ホントにすごい…」
私とハリーはすぐさま魔法の世界に感動していた。でもハリーはすぐに思い詰めた顔になった。
「ねぇハグリッド、僕お金ないんだ。どうすればいいかな?」
「お前さんの金ならグリンゴッツ魔法銀行にあるぞ。グレイも金は持ってきてるな?そこで換金して貰え」
「魔法界にも銀行があるの?」
「そりゃあるぞ、世界一安全だ。ホグワーツの次にな」
それって世界一とは言わないんじゃ……。
ダイアゴン横丁を歩いているとその銀行が見えてきた。白くて頑丈そうな建物だけど、なぜかくねっている。中に入って見るとなにやら小柄で耳と鼻がとがった人?達がせっせと働いていた。
「小鬼、ゴブリンってんだ。頭は良いが性格はあんま良くない、おれから離れるなよ」
ハグリッドを先頭に奥の受付のゴブリンのところに向かうと、ゴブリンが私達を一瞥した。
「ハリー・ポッターさんの金庫から金を取りに来た、それとこっちの子のマグルの金の換金をして貰いたい」
「かしこまりました。ポッターさん、鍵をお持ちですか?」
「…待ってくれ……ああ!あったあった」
ハグリッドがポケットをあさると小さな鍵を取り出してゴブリンに見せた。どうやら本物かどうか確認しているようだ。
「それともう一つ、ダンブルドア教授から例の件だ」
ハグリッドは懐から大事そうに一枚の手紙を取り出した。どうやら周りに秘密にしたそうだったのであまり気にしないようにした。
「かしこまりました、換金のお嬢さんはこちらへ、お二人は金庫の方へ」
私とハリーは別行動をとることになった。さっそくハグリッドと離れることになってしまったが、そもそも他人の金庫を見るのは失礼だろう。
「お嬢さん、魔法界のお金は初めてですか?」
「はい、そうです」
「ではご説明しましょう。まず、この銅貨が1クヌート、29クヌートでこちらの銀貨、1シックルと等価。17シックルでこちらの金貨、1ガリオンと同じ価値でございます」
「…これって本物なんですか?」
「ええ、すべて純正でございます」
「こっちだと純金とか普通なんだ…」
思わず感嘆してしまう。
「念のため言っておきますが、こちらの硬貨をマグルの世界で使うのはご遠慮ください。アズカバンに投獄されることになりますので」
「アズカバン?」
「わかりやすく言うならば、投獄は死と同等と思って頂ければ十分です」
それって死刑ってことなんじゃ…恐るべし魔法界。
ーー
私とハリーが銀行でお金を受けとってグリンゴッツを出た後、早速私達は買い物に繰り出した。『マダム・マルキンの洋服屋』ではハリーとは別で採寸を行った。ハリーは他の子と話していたがもう友達になったのだろうか?次に『フローリッシュ・アンド・ブロッツ書店』で必要な教材を揃えた。自分で動く本には少し驚いた。いつの間にか必要な物は大体揃っており、残すのは杖だけだった。
「あと買うものは…杖だ」
「杖?杖ならオリバンダーが一番だ」
そう言ってハグリッドは私達を『オリバンダーの店』に案内した。中はちょっと小汚なく、色々なところに箱が重なって置かれていた。カウンターに近づくと白髪の老人が突然現れた。
「いらっしゃいませ。いつ会えるか楽しみにしていましたよハリー・ポッターさん。そちらのお嬢さんもようこそ」
「どうも」
「はじめまして」
老人、オリバンダーさんはすぐさま自分の仕事に取りかかった。
「オリバンダーの杖は芯と木材がすべて異なる。ドラゴンの心臓の琴線、ユニコーンの毛、不死鳥の尾羽根、例え同じ素材でもそれぞれに個性があり、別々の主人を選ぶのじゃ」
オリバンダーさんは説明しながら棚から杖を取り出し、まずハリーに渡した。
「ほれ振ってみなさい」
「…わっ!?」
ハリーが杖を振るうと奥の棚が一斉に吹き出した。
「合わんようじゃのう……もしや……」
オリバンダーさんは奥に消えたと思ったら杖を持ってすぐに戻って来た。
「私の読み通りなら…」
彼は恐る恐るハリーに杖を渡した。杖を持ったハリーの周囲は光りだし、暖かい風が吹いていた。
「なんとまあ、このようなことが起こるとは…運命とは不思議なものじゃ」
彼はハリーの杖に使われている芯がハリーに傷をつけた人物と同じ不死鳥から採れたものだと語った。生憎、私はその人を知らないので良くわからなかった。
「さて、次はそちらのお嬢さんですな。お名前は?」
「グレイ・ベアボーンです」
「ベアボーンさん、まずはこちらを、杉の木にドラゴンの心臓の琴線、25センチ。良く曲がる」
振るうとさっきのハリーと同じように棚から箱が吹き出した。
「ならばこれは?クマシデにユニコーンのたてがみ、29センチ、とてもしなやか」
今度はオリバンダーさんが吹き飛んでしまった。あ、ヤバ……。
「面白い客じゃのう…これならどうじゃ?ギンヨウボダイジュに不死鳥の尾羽根、26センチ、誠実」
ボロボロになったオリバンダーさんに渡された杖を振るうと周囲に風が吹き荒れた。ハリーが浮きそうになったから多分違うだろう。
「ふむ…不死鳥の尾羽根辺りかのう…試してみるか」
今度はカウンターの下にあった箱から取り出した杖を差し出してきた。全体的に黒く、持ち手の両端は銀色、柄は捻れたところから真っ直ぐになっている。
「ナナカマドに不死鳥の尾羽根、34センチ、守りに最適。今この世で最も偉大な魔法使いが昔使っていた杖じゃ」
「偉大な?」
「ああそうじゃ、直に知ることになる。振ってみなさい」
そう言われて振ってみると今までの杖とは何かが違った。周りが輝いて心地よい風が吹いてくる。
「おお!成る程そうくるか!この杖に選ばれたならあなたはなにか偉大なことをするかもしれませんな!」
「偉大なことって?」
「それはわしにはわからんがあなたがなにかを成すか、わしは楽しみにしていますぞグレイ・ベアボーンさん」
……結局、私達オリバンダーさんに言うだけ言われた後お店を後にした。買った杖の前の持ち主のことは少し気になるけど、魔法の杖を手に入れたことによる興奮でそこまで知ろうとは思わなかった。
ーー
「今日はありがとう二人共」
『オリバンダーの店』から出た後、一通りの買い物を済ませていたので『漏れ鍋』に戻ってハグリッドにバタービールをご馳走になった。バタービールを飲みながらゆっくりしているとそろそろ帰らなきゃいけない時間帯になったのでここいらで帰ることにした。
「こちらこそありがとうグレイ。もし、ホグワーツで会えたら仲良くしてね?」
「勿論!ハグリッドも元気で」
「ああ!お前さんの入学を楽しみにしとるぞ!」
「うん!」
別れの挨拶を済ませた後、待ち合わせで使った公園に向かった。今頃お父さんとお母さんが待ってくれているだろう。早く二人のところに行こう。二人には楽しい土産話ができそうな気がするから。
次の投稿大分開けます。
追記:一部修正を加えました。
章の名前を変えるべきかどうか
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変える
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変えない
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どうでもいいからはよ投稿しろ