ハリー・ポッターと最後の不死鳥   作:TARAKON X

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前回の投稿からまた期間を空けたくせに短編的なものを始めた私を許してくれ!

グレイ「別に好きなようにすれば?構想は考えてるよね?」

……まあ…大体は……

グレイ「……はぁ……」

おっと、心は硝子だぞ。


第一.五章 夏休み編
第20話 夏休みの始まり


「サファイア、忘れ物とかないよね?」

『さっきさんざん確認しただろうが。ねぇよんなもん』

「念のためだよ」

 

 学年末パーティのあった次の日の朝。全生徒が親元に帰る日となった。朝起きて普段通りに朝食を食べた後、自分の荷物をまとめて駅に行く時間まで、私は談話室で適当に時間を潰していた。

 

「まったく酷いぜグレイ。ベットに蛇を仕掛けるなんて、危うくチビるところだったじゃないか!なあフレッド!」

「ああまったくだよ!やるな!じゃなくて酷いじゃないかグレイ!」

「お酒を持ち込んだ人達に酷いとか言われたくありません!あの後大変だったんだから!」

 

 酔ったハーマイオニーの介抱を先生達にバレないようにするのがどれだけ大変だったことか。

 

「も、もういいわよグレイ。間違えて飲んじゃった私も悪いと思うし」

「ううん、違う。今回はこの二人が悪い。どう考えてもこの二人が悪いの。ハーマイオニーはこれっぽっちも悪くないから!」

「僕も、今回は二人が悪いと思うよ」

「右に同じだね。お酒は流石に危ないよ」

 

 フレッドとジョージは全員から集中砲火を浴びせられていた。いい加減ここいらで反省してもらいたいものだ。でないとモーリーさんにチクらなきゃいけなくなるから。

 

「全員この場にいますね?列車が来ました。全員駅に向かうように」

 

 しばらくして、マクゴナガル先生が部屋にやってきた。それぞれの生徒が自分の荷物が入ったトランクを持つと、出口に近い人から順に外へ出ていった。

 校舎を出ると既に他の寮の生徒が馬車で駅に向かっているのが見えた。

 

「……夏休みか…」

「?ハリー、どうかしたの?」

 

 殆どの生徒が夏休みに浮かれている中、ハリーだけはその真逆だった。まるで、楽しかった日に時間を巻き戻したいと思う大人のような、そんな雰囲気をかもし出していた。

 

「ああいや、ちょっと…あの家に帰るのがちょっと嫌でね…できれば、夏休みもホグワーツで過ごしたかったんだけど…」

「ハリーのお父さんとお母さんは…あっごめん!」

 

 しまった、つい変なこと聞きそうになってしまった。

 

「いや、良いんだよ。本当のことだから……」

「……ごめん、本当に……」

「…うん………叔父さんとその家族が、魔法使いのこと大嫌いなんだ。魔法使いである僕のこともね。おかげで酷い扱いだよ。暴力を直接振るわれたりはしてないけどね」

「…そう、なんだ…」

 

 電車に乗り込んでもハリーはずっとそんな調子だった。これからの夏休みを楽しみにしている他の生徒達の気を使ってなんとか取り繕うとはしてたけど、抑えきれてはいなかった。正直、とても賢者の石を守り抜いた頼れる男の子には見えなかった。

 

「…ねぇ、夏休み、私の家に来ない?」

 

 気の毒だと思ったのか、助けてあげたいと思ったのかは自分自身でも分からないけど、気づいた時には口から自然とそんな言葉が出ていた。

 

「え?……え⁉︎」

「うちの両親、ハリーのこと知ってるし、使ってない部屋も沢山あるからもし泊まることになっても大丈夫だと思うけど?」

「ほ、本当に良いの⁉︎」

 

 私の家に来ても良いといった途端、ハリーはさっきまでとは打って変わって明るくなった。よっぽどその親戚の家族が嫌だったのだろう。

 

「あ、でもその叔父さんに駄目って言われたらもう無理だとおもうけど…それに途中からアメリカに行くことになっちゃうけどけど…」

「大丈夫に決まってるよ!あそこは僕と出来る限り関わりたくないと思ってる筈だから、むしろ大喜びするんじゃない?」

「え?ハリーあなた、グレイの家に行くの⁉︎狡いわあなただけ!」

「え、ハーマイオニー?」

「私だってまだ行ったことないのに…本当に狡いわ…」

「え、なになに?みんなでグレイの家に遊びに行く話?」

 

 ハーマイオニーとロンが食いついてきた。でも言われてみれば誰かの家で遊んだことは無かった。クリスマスの時は私はアメリカに行っていたし、ハリーとロンはホグワーツに残っていたのだから仕方といえば仕方ないが。

 

「ハリーはともかく、二人も私の家に来たいの?泊まりで?」

「「行きたい!」」

「そ、そう……ベット人数分あるかな……?」

 

 ………ま、いっか、その時はその時に考えれば。

 

 ーー

 

 キングス・クロス駅に着いた後、駅のホームで待っていたお父さんとお母さんに皆が家に泊まりに行きたいと言ってることを話した。直前でいきなりのことすぎて駄目だと言われるかもと思ってしまったけど、あっさりと「いいよ」と言ってくれた。ただ、ロンとハーマイオニーの二人は日を開けてくる事になった。

 

「ご両親に顔を見せて安心させてあげないとね」とのことだった。

 

 ロンもハーマイオニーも家族からの同意は得てきたみたいなので素直に響いていた。

 問題はハリーの叔父さんだった。

 

「何?こいつをそっちで預かりたい、だと?」

「ええ、娘がそう提案したらしいですし、甥っ子さんもそっちの方が良いと言っているので」

 

 ハリーの叔父さんは丸く太っていて気難しそうな人だった。お父さんがハリーが私の家に来たがっていると言っても首を縦には振らず、かと言っても横にも振ろうとはしなかった。

 

「何故こいつを預かりたいんだ?」

「?さっき言った通り娘が提案したからですが?友人同士のお泊まり会なんてよくある話でしょう?俺も子供の頃は友人の家に泊まりに行ったものですよ」

「正気か⁉︎あんなイカれたやつを自分の家に招くなんて……待てよ…そうか、お前の娘も同類か!だったらお前もお前の家族もまともじゃないな!」

「…………………………………………は?」

 

 今なんて言った?イカれてる?誰が?お父さんが?私が?私達が?

 

「……具体的に言ってうちの娘のどこがまともじゃないって言うんですか?」

 

 お父さんは一瞬冷静になっているように見えたけど、よくみて見ると腕が震えていた。

 

「フン、どうせお前の娘もおかしなことをするに決まってるに違いない!おぞましい。本当ならお前とも会話したくもないわい!」

「………………………………………」

「どうした?急に黙って、気味が悪いわい。なんとか喋ったらどうなんだ、え?」

「…………黙れ…………」

「……何?」

「黙れつったんだよこの豚野郎がぁ‼︎」

 

 お父さんの声が辺りに響いた。突然の怒鳴り声に周りの人から注目が集まった。

 

「こっちが下手に出てきたら調子に乗りやがって!うるせえんだよこの豚!さっきからなんだテメェは⁉︎まともじゃないだと?気持ちが悪りぃだと⁉︎テメェの方がよっぽど気色悪りぃしまともじゃねぇよ!あ“ぁ”⁉︎」

「な……なんだとおま「黙れよ誰が口を開いて良いっつった⁉︎」ヒィ⁉︎」

 

 お父さんさんが反論しようとした男の胸倉を掴んで睨み付けた。これはちょっと不味い。

 

「ちょっあなた⁉︎気持ちは分かるけど暴力はダメ!人目もあるからちょっと落ち着いて!」

「お父さんダメ!早まらないで!」

 

 私とお母さんで今にも暴れだしそうになったお父さんの動きを封じた。この人は自分が敵と見なしたものには容赦がない。

 昔聞いた話だが、お父さんは学生のころ突っかかってきた同級生の顔面を思いっ切り殴ったこともあるらしい。それで自分の手の骨を折っちゃったとか。それくらい喧嘩っ早い性格に加えて、私達を馬鹿にされたのも相まってはもう躊躇しない。それはたとえ人目につくところであっても、それは変わらない。

 

「こ、こんな野蛮人とこれ以上会話していられるか!儂はもう帰る!小僧なんぞ知るか好きにすればいいんだ!!」

 

 お父さんを押さえている間にあいつは何か言って何処かへ言ってしまった。おかげでお父さんはなんとか落ち着きを取り戻した。

 

「…一応保護者からは許可を取れたってことで良いのかな?」

「クソっ!あの豚野郎逃げやがったちくしょうが!!」

「あなたはあなたでいい加減落ち着きなさい!」

「アタッ!」

 

 お母さんがお父さんの頭を叩いた。

 

「……すまない、ついカッとなってしまった」

「いい加減キレると暴力を振るいそうになる癖をどうにかしなさい!そのせいでよく厄介事に巻き込まれてたでしょう⁉︎」

「本当にすまない!自分でも分かってるつもりなんだけどな……」

 

 どうやら落ち着いてくれたみたいだ。周りを見回すと、集めていた注目も事が収まったことを察知したのか散り散りになっていた。

 

「あ、どうもお騒がせしてすいませんウィーズリーさん」

「いえいえ、全く気にしてないわ。大変だったわね、まさかあそこまで私達に偏見を持ったマグルがいるなんて私も思っもみなかったわ」

「さっきのがハリーの叔父さんかい?よくあんなのがいる家で過ごせたね、大変だっただろう?」

「…うん、まあなんとかね……あの、グレイのお父さん」

「ん?ああ、俺のことはジャックと呼んでくれ。一カ月は一緒にいることになるんだから」

「はい、ジャックさん。その、ありがとうございました、怒ってくれて」

「え、いや別にお礼を言われる程のことではないと思うよハリー君」

「それでも、お礼を言っておきたいんです。スッキリしましたし」

「ハハハハハは!そうか!スッキリしたか!それは良かった!」

 

 嬉しそうに笑っているけど大丈夫だろうか?もしもアイツがさっきのことを警察にでも言ったらまた面倒なことになりそうだけど……あ、でもそれは無いか。原因を聞かれて『魔法使いのことを馬鹿にしたら殴られそうになった!』と言っても、警察にとっては意味が分からないだろうし。

 

「グレイ、パパとママが呼んでいるから、私もう行くわね」

「え?ああうん。いつこっちに来る予定なの?」

「うーん…一週間後くらいかしら?それくらいにお邪魔させてもらうわね」

「そう、じゃあまた今度ね」

「ええ、さようなら」

 

 そうしてハーマイオニーは去って行った。ウィーズリー家の人達も帰ろうとしていたたけど、フレッドとジョージがモーリーさんの隙を突いて行方を眩ましていた。私が昨日のことをバラすぞと大声言ったら直ぐに出てきたけど。

 

「まったくこの子達は……ベアボーンさん、ウチのロンも来週に行かせるから、その時はよろしく頼むわね。迷惑を掛けないようキッチリさせるから」

「またねグレイ、ハリーも元気で」

「「またな二人共!元気で!」」

 

 ウィーズリー家の人達も去って行った。もう知り合いはこの場にはおらず、私達は家に帰るのみとなった。

 

「それじゃあハリー、行こっか」

「うん!凄く楽しみだよ!今年は途轍もなく楽しい夏休みになりそうだ!」

「それは良かった」

「あ、そういえば気になったんだけど、グレイの家ってどこにあるの?」

「え?言ってなかったけ?」

「うん、言ってない」

 

 言われるまで気づかなかった。

 

「私の家はロンドン北部のハムステッドだよ」

 

 ーー

 

「ハリー君の部屋はそうねぇ……お客さん用の部屋でいいかしら?と言っても殆ど使ったことないけど」

「はい、そこで良いです…それにしてもグレイ、こんなに立派で大きな家に住んでたんだね、ビックリしちゃったよ」

「え、そう?」

 

 多分普通だと思うけど…周りの家も同じくらいのサイズだし、ウチの家が特別大きいなんてことはないと思うけど。

 

「ああ、グレイは知らなかったかもしれないわね。ここら辺は大きな家が集まってるのよ。普通のお家より高いし大きいわよ、ここは」

「え、そうなの?」

 

 初耳だ、これくらいが普通だと思ってた……もしかして私は俗に言う世間知らずなのでは?

 

「グレイの家って…もしかしてお金持ち?」

「………うん…多分そう、なのかな?」

「凄いね!どんな部屋なんだろう?物置きの何倍の広さなのかな?」

「……え?」

 

 物、置き?

 

「ハリーあなた…あの男の家のどこで寝てたの?」

「あの男?……ああ、バーノン叔父さんのこと?そうだね、階段の下の物置きかな。あ、でもホグワーツに来る前にダドリーの部屋に移されたから今は違うかな」

 

 それって最早虐待ではないだろうか?

 

「それ…誰かに言ったことは?相談したことはあるの?」

「…グレイの言いたいことは分かるよ。なんで警察や学校の先生にこのこと相談しなかったのか?でしょ。うん、確かに酷い扱いを受けてはいたけど前にも言った通り暴力までは受けてないよ。ダドリーには…あ、ダドリーは僕の従兄弟ね、そいつには色々やられたけど、あの人達は僕を児童養護施設とかには送らずにここまで育ててくれたんだ。これでも感謝はしてるんだよ。だから誰にも言わないし、言わなかったのさ」

「………」

 

 本当にそれで良いのか?ハリー自身はもう結論をつけているけど、私は自然とそう考えてしまう。そう考えずにはいられない。うん、そうだ言うべきだ。その方が少なくともハリーは幸せになれる筈だ。

 

「…納得出来ない、やっぱり警察に「ハリー君がそうしたいと思ったのなら、そうすれば良いさ」…え?」

 

 私の言葉を遮るようにお父さんが会話に割り込んできた。

 

「ただハリー君、もし辛い、逃げたいと思ったのならその時はここに来てくれて構わない。何時でも歓迎するよ」

「な、なんで⁉︎そんなんじゃ何の解決にもならないよ⁉︎」

「グレイ…ハリー君の考えに口を出してはいけない。これは彼が決めたことなんだ。なら俺達に出きることは彼の考えを尊重することだよ」

「……でもそれじゃあハリーが危なくなったらどうするの?」

 

 たとえハリーの考えを尊重しても、それではハリーが危なくなったとしたら何も出来ないじゃないか。

 

「言ったろ、その時はここに来ればいい」

「……」

「この話はこれで終わりだ。お母さんと一緒にハリー君の部屋の準備をしてきなさい」

「…はい…お父さん…」

 

 私はその場から逃げるように離れた。客室に行くとお母さんが既に準備を始めていた。

 

「…お母さん、何か手伝えることはない?」

「あら?別に大丈夫よ。そこまで大変なことでもないわ」

「今は手を動かしたい気分なの、何か手伝えることない?」

 

 今はとにかく他のことをして気を紛らわせたい。でないと他のもの八つ当たりしてしまうかもしれないから。

 

「んー、そうねぇ…あ、じゃあもう部屋全部準備しちゃおうかしら。私はロン君の部屋をやるからグレイはハーマイオニーちゃんの部屋の準備をしてくれる?」

「…別にハーマイオニーは私の部屋で寝れば良くない?」

「ベット一つしかないじゃない」

「たまに同じベットで寝ることあったから今更だよ」

「そう…でも一応準備はしておきましょうか」

「はーい」

 

 ハーマイオニーの部屋になる予定の部屋は若干埃が舞っていた。殆ど使ってなかったから仕方ないとは思うけど。ひとまず窓を開けて外の空気を取り込み、はたきで積もった埃を落としてベットのシーツを新しいものに取り替えた。

 

「はぁ…魔法が使えればもっと楽に早く終わるのに…」

 

 ホグワーツでは荷物を纏める時も掃除をする時も、杖を一振りすればすぐに片付いた。その感覚が残っているせいで掃除が億劫に感じてしまう。マクゴナガル先生は匂いがどうとか言ってて絶対に魔法は使うなと言ってたけど、この調子じゃうっかり使ってしまいそうだ。

 

『おいグレイ、餓鬼共の寝床以上に大事なもんがある筈だろ!』

「ーーー!」

「え、何?」

 

 いきなり二人が部屋に入ってくるなり訴えかけてきた。

 

「……何か忘れてることあったっけ、私?」

『ああそうさ!グレイ!俺達の寝床はどこだ⁉︎』

「はぁ?…………………………あ」

 

 まずい……すっかり忘れてた!ホグワーツの方は大丈夫だけど家の方は何の準備もしてなかった!!

 

「えっと…ちょっと待ってね……お母さーん!」

 

 ハリーの部屋になる予定の部屋に急いで向かうと、お母さんは作業を終えたのか掃除道具を持って廊下に出てきたところだった。

 

「あらどうしたの?そんなに焦って」

「お母さん、ビートルとサファイアの飼う場所ってどうしよう⁉︎私すっかり忘れてて…!」

「ビートルとサファイア……ああ!そういえばそうね!」

「ここペット用の家ってあったっけ?あ、でも魔法生物だから普通のじゃダメか…!」

「それは心配しなくてもいいわ。昨日ね、お母さんから届いたの」

 

 お婆ちゃんから?

 

「届いた?何が?」

「ビートルとサファイアのお家らしいわ。まだ箱に入れててどんなものかは分からないけど、とても良いもの筈よ。グレイの部屋に置いてあるわ」

「それもっと早く言ってよ!」

 

 贈り物を見るために自分の部屋に入ると机の上に何かが置いてあった。それはごく普通の片手で持てるタイプのトランクケースだった。

 

「え、何これ?これが魔法生物用の家?」

 

 どこからどう見ても普通のトランクにしか見えなかった。魔法生物の飼育に使える何かが入っているのだろうか?

 

「ーーー?」

『お?それが俺らの家か?』

「……そう…なるのかな?…多分…」

『なんで多分なんだよ……まあいいや、取り敢えず開けてみてくれ。中に何が入っているのか知りてぇからよ」

「…まあ、それもそうだね」

 

 サファイアに促されて私はトランクを開けた。中からどんな物が出てくるかは分からないので少し身構えていると肩透かしをくらった。何故なら、トランクの中は何も入っていなかったのだから。強いて特徴を挙げるなら底が黒いくらい。

 

『あ?何だこりゃ⁉︎何も入ってねぇじゃねぇかよ!』

「あ、サファイア」

 

 部屋にやってきたサファイアはとても怒っていた。どんな家かと思って期待したらまさかのトランクケースだったのだから気持ちは分かるけど。

 

『こんなもんに押し込まれるなんて冗談じゃねえ!』

 

 サファイアはトランクケースに向かって飛び込んだ。不便さを体を張って証明しようとしたのか、壊そうとしたのかは分からないけど、落ち着いて欲しいな……そう思った次の瞬間。

 

『ってああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎⁇⁉︎』

 

 サファイアはトランクケースの暗闇に吸い込まれて行った。

 

「………え……………えええええええええええええええええええええええええええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ‼︎⁇⁉︎」

 

 吸い込まれた?え?どうして?どういうこと?意味が分からない⁉︎なんでトランクケースに吸い込まれるなんてことになるの⁉︎

 

「グレイどうしたの⁉︎叫び声が聞こえたんだけど何かあった⁉︎」

「ハ、ハリー⁉︎サファイアがトランクケースに……ビートル?」

「ーーーーー!」

 

 ハリーと一緒にやってきたビートルはトランクケースに自分から入って行った。

 

「ビ、ビートルまで吸い込まれたぁ!?」

「グレイ、これって一体……」

「お婆ちゃんが送ってくれた物らしいけど私にも何なのか分からなくて…魔法のトランクだと思うけど……サファイアもビートルも無事かな?」

「……心配なら入ってみたら?」

「……え」

 

 簡単に言ってくれるけど大丈夫なのだろうか?不安だ。魔法動物しか入れないとかだったらどうしよう……。

 

「…怖いなら僕から行こうか?」

「え、ちょっと待って!中はどうなってるのか分からないから、取り敢えずお婆ちゃんに手紙を送ってー」

「先に行ってるよ。待ってるからね」

「人の話を聞いて!?」

 

 ハリーはトランクを床に置くと足を突っ込んでサファイアやビートルの時と同様に吸い込まれるように落ちて行った。

 

「…………」

 

 思い返せばハリーは目を輝かせていた気がする。グリフィンドールに組分けされるのだから冒険に引かれる性格をしてるのに気付くのが遅れてしまった。今度からは気を付けよう。

 

「グレイ、この中凄いよ!早く入って来なよ!」

「きゃあ!?」

 

 ハリーがトランクから顔を出してきた。端から見ると恐怖を感じる光景だ。鞄から生首が出てきているのだから。……いや、今はそんなことはどうでも良くて。

 

「中はどうなっているの?サファイアとビートルは無事なの?」

「さあ?見てないんだ。とても広いから」

 

 広い?トランクの中が?

 

「兎に角入って来なよ。とてもビックリする筈だよ!」

「……はぁ…」

 

 仕方がない、怖くて不安もあるが覚悟を決めよう。まずは足をそっと入れて、そこから腰の深さまで体をトランクに沈み混ませた。

 

「………ッ!」

 

 一気に頭の先までトランクに入れると、一瞬の浮遊感に襲われた。落ちることは分かっていたので出来る限り衝撃に備えたけど藁が下に敷いてあったので体のどこかを痛めるなんてことはなかった。

 

「…小屋…?」

 

 私が出てきた穴は小さな屋根小屋の天井近くに空いていた。今気付いたが急な階段が付いていたのでもっと足に何か当たらないかと確認していれば良かったと後悔した。

 

「…ここって…草原?」

 

 辺り一面を見回すとそこは草が生い茂った草原だった。その少し奥には湖が見える。その更に奥には森が見えた。

 

「何これ?どこかに繋がっているの?それともトランクの中がこうなってたの?」

『みてえだな。ビックラポンだぜ。まさかこんな場所になってるなんてな』

「あ、サファイア……なんで大きくなってるの?」

 

 後ろから声が聞こえたと思って振り返ってみれば元の大きさに戻ったサファイアが目の前にいた。これは一体どういうことだろう。私はサファイアに掛けられた魔法は解除していないのに。

 

『あ?んなもん俺が知りたいくらいだぜ。気づいたら元に戻ってたんだ』

「そう、じゃあ私にも分からないから保留だね」

『お前のそういう以外とテキトーなところ嫌いじゃないぜ』

「……それはどうも」

 

 それにしても広い。まさかトランクの中がこんなふうになっていたなんて。ここならサファイアもビートルも伸び伸びと暮らしていけそうだ。

 

「というかこれがあるならホグワーツに家作ってもらう必要も無かったんじゃない?」

『あのなグレイ。一応俺達は人間共にとっては危険な動物なんだぜ。万が一俺達が暴れても直ぐに対処するために、出来る限り自分達で監視出来る場所に置いておきたいのさ』

「ああ、成る程ね」

 

 まあ、サファイアもビートルも余程のことが無い限り暴れることなんて無いと思うけど。

 

『それはそうとグレイ。お前いいのか?』

「?…いいって何が?」

『いや、あの坊主を探さなくていいのかってことだよ。一通り見て周ったけどよ、ここ結構広いぜ。今頃迷子になってんじゃねえのか?』

「え⁉︎そうなの⁉︎…どうしよう…ここって危ない所ってあった?」

『そんな場所は無かった気がするが…ああ、でも森を抜けたら結構急な崖があったな。落ちたらひとたまりもないと思うぜ』

 

 それはマズイ。お婆ちゃんが送ってくれた物で友達が怪我を負うなんて胸糞が悪すぎる!

 

「サファイア!私を乗せて一緒にハリーを探して!」

『へえ。あの森を駆けた日のことを思い出すなあ。良いぜ乗ってけよ。直ぐにあの坊主を探り当ててやるからよ!」

「うん!お願いね!」

 

 サファイアは私を乗せて森を駆けた。風を切る音が聞こえる。ハリーが危ない状況なのに私の頭の中はそれに見合わない思いでいっぱいだった。こんな場所がトランクに入ると見れるなんて、魔法とは本当に不思議なものだ。お爺ちゃんとお婆ちゃんに会ったらもっと色んな魔法を教えてもらおう。

 




こうして二次創作を書いていると100話も書いてる方々には尊敬しか出来ませんね!

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