ハリー・ポッターと最後の不死鳥   作:TARAKON X

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早めに投稿できて良かったです!
まず始めにいっておくと結構展開が早いでう。駆け足です。
まあ短編だしいっか!




第21話 唐突な暗闇

「ロン、ここの問題間違えてるよ」

「え?あ、本当だ」

「そういうハリーもここ間違えてるわよ」

「…相変わらず、ハーマイオニーは優秀だね」

「グレイもね。ここの難しいところ一問しか間違えてない。流石だわ」

 

 夏休みが始まってから一週間以上が経過した。それによって予定通りにロンとハーマイオニーも私の家に泊まりにやって来た。だが今の私はそこまで夏休みが楽しく感じてはいなかった。何故なら夏休み宿題という私達にとっては悪魔のような存在が目の前にあるからだ。

 

「…はあ…もう嫌になるよ。宿題がまだ片付かない。よくハーマイオニーはこの量を一週間以内に終わらせられたね」

「そこまで難しい問題は出されてないじゃない。ペース配分を決めれば一週間で片付くわよ。ロンはそういうの考えずに手当たり次第でやるからそうなるのよ」

「ウグッ!?」

 

 ハーマイオニーの言葉はロンの心に深く突き刺さったようだ。机に突っ伏して動かなくなってしまった。

 

「ま、まあでも今日頑張れば今日中に終わると思うよ。ね?グレイ」

「そ、そうそう、あともう一踏ん張り!」

 

 まあ、ロンを応援する私もまだ宿題は終わってないのだが。

 

「このままじゃグレイのお爺さんとお婆さんの家でも宿題をやることになるわよ。それでも良いのかしら?」

「うーん、それは嫌だな……初めてのアメリカなんだ、伸び伸びと満喫したいよ」

「でしょ?だから早く終わらせてスッキリしましょう!はい次この問題解く‼︎」

 

 それから二時間ほどで、私は残りの宿題を終わらせた。その三十分後にハリーが、そこから一時間程でロンも無事宿題を終わらせた。宿題を終えたおかげか肩が若干軽くなったような気がする。とても清々しい気分だ。

 

「あら?皆宿題は終わったのかしら?」

 

 私達がちゃんと宿題をしているのか確認しにきたのか、お母さんがやって来た。

 

「うん、もう終わったよ。凄く疲れちゃった。甘いものが食べたい気分なんだけど何かないかな?」

「あら、それなら丁度良いことを聞いたわ、イチゴのタルトを作ったから持ってくるわね。皆も食べるかしら?」

「はい!頂きます!」

「あ!私も食べたいです!」

「ご馳走になります!」

 

 お母さんが作ったイチゴのタルトは絶品だった。口にするとイチゴの甘味が口の中に溢れ、生地はとてもサクサクしていた。一口目を食べたらフォークが止まらず、いつの間にか食べ終わってしまっていた。

 

「あ、そうだグレイ。お義父さんとお義母さんから手紙が届いていたわよ」

「え?二人からの手紙?」

 

 手紙なんて出す必要があるのだろうか?この家のリビングの暖炉は既に煙突飛行でアメリカの二人の家に繋がっているから用事があれば直ぐにこっちにこれる筈なのに。

 

「封筒にグレイに開けて欲しいって書いてあったわ。開けてみたら?」

「……もしかしてこれ、僕達はお断り、なんて内容じゃないよね?」

 

 ロンが不安気に聞いてきた。

 

「そんなことは無いと思うけど。内容を見てみないと分からないよ」

 

 ロンは少し心配性なきらいがあるんだなあ。そう思いながら手紙の封を切った。その時だ。

 

 私は、強烈な吐き気と眩暈と体が捩れるような感覚に襲われた。

 

「…………………………………………………………………………………………………………………………………………………ぇ?」

 

 意味が分からなかった。

 

「あ…ああああああああああああああああああああああああああ‼︎⁉︎⁇」

「うわああああああああああああああああああああああああああ‼︎⁉︎⁇」

「きゃああああああああああああああああああああああああああ‼︎⁉︎⁇」

「ええええええええええええええええええええええええええええ‼︎⁉︎⁇」

 

 皆の叫びが聞こえた。私も同じように叫んでいた。私を襲う奇妙な感覚が収まると、鼻を受け入れがたい悪臭が襲った。まるで濁った水、いや、泥の臭いだ。

 

「…え?これ…何?」

「この、臭い何?うぉえっ!酷い臭いだ!気持ち悪いぃ」

「私達…なんでここに?さっきまでグレイの家にいたわよね!?」

 

 周りから皆の声が聞こえた。何の慰めにもならないけど、どうやらこの状況に陥ったのは私だけではないらしい。

 

「ここ…もしかして下水道?」

「グレイどうなってるの!?僕ら、さっきまで確かにグレイの家にいたよね!?」

「私にも分からないよ!?気付いたらここにいたんだから!?」

 

 本当に、どうして私達はここにいるんだろう?今は兎に角その理由が知りたい。でないと不安で心が折れてしまいそうだ。

 

「ん?グレイ。その手紙見せてくれないかい?」

 

 ロンがまだ封を切ったばかりの手紙を指差して言ってきた。

 

「この手紙がどうかしたの?」

「うん。それ、中身入ってたかい?」

「え?」

 

 言われて中身を確認してみると一枚の紙が入っていた。ただその紙には文字が書いておらず、妙な魔法陣が描かれていた。一体何の為の魔法陣かは分からないが、一つだけ分かったことがある。

 

「これ…お爺ちゃん達からの手紙じゃない⁉︎」

「ちょっとよく見せて……やっぱり…この魔法陣見たことがある!これはポートキーだ!」

 

 ポートキー?確かそれは触れた物や人を特定の場所に一瞬で移動させることができる魔法道具のはずだ。それがどうして私のところに?

 

「おい、本当にこの辺りなのか?」

「はい、間違いないかと。この区画のどこかにいる筈です」

「「「「!?」」」」

 

 どこからか反響して声が聞こえてきた。それも二人。どちらも男の声だ。

 

「それにしても、あのキーの性能はどうにかならなかったのか?たとえ相手が年端のいかぬ子供でも探している合間にも隠れられ、逃げられている可能性もあるというのに」

「議会の検問を潜り抜けれるほどに縮小させた代物です。大まかな場所が設定出来るだけマシですよ」

「……今の…聞いた?」

「…ええ…」

「この声のやつらがこのポートキーを送りつけてきたってこと?」

「しっ!いやな予感がする…隠れて!」

 

 ハリーは私達を壁へ押すと、ポケットから全員がギリギリ納まるくらいのキラキラした布を取り出した。透明マントだ。遅れて光がやって来た。さっきの声の二人だ。二人は黒いコートに黒いシルックハットを被った全身黒づくめの装いをしていた。

 

「おいどうなってる?娘がいないじゃないか!本当にこっちに送られて来たんだろうな⁉︎」

「その筈なんですがっ…何故だ?何故どこにも見当たらない!?」

「たとえ局長の実孫とはいえスクールに通い始めたばかりの子供だぞ!くまなく探せ!そして確実に捕えるんだ!」

 

 男達は顔をしかめながら私達の前を通りすぎて行った。流石は透明マント。彼らの目を完璧に欺いてくれた。

 

「……ねえ、今の二人が言ってた子供って…多分グレイのことだよね?」

 

 空気が凍りついたような気がした。

 

「ロン!無闇にそんなこと言わないで!もしかしたら違うかもしれないじゃない!」

「でもあのポートキーはグレイ宛てに送られたんだよ?僕だって間違いであって欲しいよ…でも、可能性としてはグレイが一番高いんじゃないの!?」

「二人共声を抑えて!あいつらが戻って来ちゃうよ!」

「でもロンが言ったことは「良いのハーマイオニー」ッ!?」

 

 私だって認めたくはない。間違いだって信じたいけど、あの男達が言っていたことに所々思い当たることはあった。

 

「私のお爺ちゃん、マクーザ…仕事場の人達からは『局長』って呼ばれてた気がするの。ポートキーのこともあるし、あの人達が言っていたのは多分私のことだと思う」

 

 どうして狙われているのかは全く検討は付かない……いや、付くかもしれない。人質とか身代金とか、理由はいくらでもあるだろう。

 

「…取り敢えず、ここから出ない?いつさっきのやつらが戻って来るか分からないし、ずっとここにいたら鼻が曲がっちゃいそうだもん」

「そうだね。サファイア、ここから…………あ」

 

 いつものようにフードに手を入れて頼れる友人を呼んだが、返事どころかいつものツルツルとした感触も無かった。そして気づいた。

 

「今、ビートルもサファイアもトランクの中だ……」

 

 今頃新しい家を満喫中なのだろう。……最悪だ。

 

 ーー

 

 あの二人組に鉢合わせないように注意を払いながら下水道の壁に沿って歩いていくと、地上へ登る為の梯子を見つけた。マンホールで塞がれていたけど、魔法を使えば簡単に開けれた。匂いは残ってしまうだろうけど、今回に限っては仕方ないだろう。

 

「……やっぱり…か…」

 

 下水道から出るとそこは路地裏だった。大通りに出ると見覚えのある景色が広がっていた。普通は驚くことだろうが、目の前に広がる光景を私はすんなりと受け入れることが出来た。

 

「え、ここって…」

「…ニューヨーク…」

 

 お爺ちゃんの事が持ち上がったのだから予想は出来てたけど、まさか本当にここに飛ばされるとは……でも嬉しい誤算だ。

 

「アメリカなら話は早いや。グレイのお爺さんとお婆さんのところに行って保護してもらおう!」

「そうだね。グレイ、ここからお爺さんの職場までの行き方って知ってる?」

「うーん…うろ覚えだけどなんとかなると思う」

 

 前は車での移動だったけど、ニューヨークは小さい頃からよく来る場所だ。もし分からなくなっても近くのバス停や駅なら案内板もあるだろうし自分の居場所を知る手段なんていくらでもある。なんとでもなる筈だ。

 

「よし!じゃあ早く…ッ⁉︎危ない避けて!!」

 

 ハリーが声を上げた次の瞬間、後ろから光の球が飛んできた。魔法だ。なんとかプロテゴで身を守ろうしたが、発動は遅いし一発当てられただけで砕かれてしまった。

 

「相手は大人だ!敵うわけがない逃げよう!」

「分かってはいるけどもう囲まれちゃってるわよ!」

「ええ⁉︎」

 

 周りを見回すと私達を囲むように黒いコートと黒のシルックハットを身につけた男達が立っていた。こんな街中でどうしてマグルの目を気にせず魔法を連発出来るのか疑問だったが、男達を含めここら一帯は白い透明な膜で覆われていた。マグルはこちらに目を向けることもなく平然と街を歩いている。どうやらマグルが魔法を認識することが出来なくなる魔法らしい。

 

「グレイ・ベアボーン。我々とご同行願おうか」

 

 一人の男が一方的に私に話しかけてきた。主導権はこちらにあるぞ、という態度を醸し出している。到底一緒に行く気にはなれなかった。

 

「いきなり魔法を放ってしまったのは謝ろう。気絶させるつもりだったがまさか防がれるとは思いもしなかった。君はとても聡い子のようだね。流石は現局長、アグニカ・ベアボーンの孫娘だ」

「…あ、あなた達の目的は何⁉︎グレイをどうするつもりなの⁉︎」

「おや?君達は彼女のご友人だね。安心したまえ悪いようにはしない。君達も彼女も丁重にもてなそう。さあ、我々と一緒に来るんだ」

 

 男達がこちらに迫ってくる。逃げなきゃいけないと頭で分かっていても体は言うことを聞いてはくれなかった。捕まった。そう思った。

 

「インセンディオ トリア!」

『!?』

 

 途轍もない強さの炎が男達を襲った。突然の出来事にも対応する者はいたが、出来なかった者は火傷の痛みでのたうち回っていた。

 

「グレイお嬢様!ご無事ですか!?」

「えっ…ルークさん!?」

 

 どうして彼がここにいるのか一瞬分からなかったが、この人はお爺ちゃんの部下の人だ。ここに彼が来てるってことは、お爺ちゃんはどうして私が狙われているのか知っているのだろう。

 

「ルーク・モガモット!貴様か!?」

 

 私に話しかけて来た男が声を上げた。

 

「フランキー!これはヴェルゴの指示か!?お嬢様を狙うとは、とうとう頭がイカれたようだなお前の上司は!」

「成り上がりの駄犬風情が!その薄汚い口を閉じて這いつくばるが良い!!」

 

 どうやら二人は顔見知りらしい。罵り合っているし、平気で魔法を撃ち合っているから犬猿の仲らしいけど。

 

「はあ!!」

「ああ!?クソッ!?このクソ野郎!」

「今ですお嬢様!君達も私と一緒に!」

 

 ルークさんがは男の隙を突いて杖を弾き飛ばしたかと思うと、こちらに近づいて私達に触れた。すると私達はいつの間にかさっきまでいたところより少し離れた場所にいた。

 

「まだ私に掴まっていてください。もう何度か飛びます」

 

 景色が何度も変わった。5回くらい景色が変わるとそこはビルの屋上だった。ようやく手を放しても良いと許可が出た。放した途端、ふらついて尻餅をついてしまった。いわく、連続の姿現しによる平衡感覚のズレらしい。

 

「大丈夫ですかお嬢様。どこかお怪我はなさいませんか?」

「は、はい。大丈夫です」

「そうですか…良かった……暫くはここで身を隠しましょう。ああ、君達も大丈夫ですか?」

「はい、その…助けてくれてありがとうございます。あのままだったら僕達どうなっていたか……」

「うん。本当に助かりましたルークさん」

「いえ。我々そちらにポートキーが送られていたのに気付けなかった身です。感謝の言葉を受けとる資格は我々にはありません」

 

 何でそこまで自分を責めるようなことを言うんだろう?というか、我々?

 

「あの、お爺ちゃんはこのことを知ってるんですか?その…私が狙われていることとその理由を」

「はい、ご存知です。局長も直ぐに駆けつけたがっていましたが立場上そういうわけにもいかなかったので私が駆けつけた次第です」

「あの!グレイが狙われる理由って何ですか?あいつら身代金が目的のようには見えなかったんですけど…」

 

 ハリーが話を切り込んだ。丁度良い。私も自分事だから出来るなら今ここで知っておきたい。

 

「……そうですね。隠すようなことでもありません。正直にお話ししましょう」

 

 ルークさんは杖を振るって丸いテーブルと椅子を出すと、座るように促した。

 

「……結論から申し上げますと、グレイお嬢様は人質として身柄を狙われています」

「……そう、ですか……」

 

 あの男達を見た後だからそういう理由なのは分かっていたけど、改めて言われると結構辛い。

 

「理由を聞いても良いですか?私が狙われている理由は分かっているんですよね?」

「……はい。あなたが狙われているのは、現在のアメリカ合衆国魔法議会の状況によるものです」

「それは何ですか?」

「現在、アメリカではアメリカ合衆国魔法議会議長を決める選挙が行われているのです。現在の候補は二人。一人はヴェルゴ・アロセス。現フロリダ代表議員であり次期議長候補第二位、野心家で議長の席を議員になる前から狙っていた男です。……もう一人は……その……」

「……お爺ちゃん、ですか…」

「……はい…その通りでございます……」

「「「…………ええええ!!??!?」」」

 

 ハリー達は『何で知っているの?』みたいな目を向けてきた。私だってそうだと確信していたわけじゃない。ただなんとなくそうなのかもなあ…と思っていたくらいだ。

 

「もう一人は、現アメリカ合衆国魔法議会闇祓い局局長にして、次期議長候補第一位、アグニカ・ベアボーン。私の直属の上司にして、グレイお嬢様の祖父です」

「……そういうことでしたか……」

「はい」

「じゃあ、僕達を襲ってきたあいつは……」

「ヴェルゴ・アロセスの部下。フランキー・ウィリアムズは奴の腹心です」

 

 これで全部が繋がった。私はお爺ちゃんの枷なんだ。ヴェルゴ・アロセスはお爺ちゃんに議長になって欲しくないから、私を人質にして選挙から降ろさせるつもりなのだろう。

 

「……お爺ちゃんとお婆ちゃんはどこにいますか?安全なところにいますか?」

「お二人とも議会本部にいます。ご安心ください、あそこはこれ以上ないほど安全な場所ですよ。…ヴェルゴもあそこにはいないようですし」

 

 なるほど、じゃあ私達が今やれることはひとつだけだ。

 

「連れていってください。議会本部に」

「……分かりました、では私の手を…ッ!?危ない⁉︎」

「……え?」

 

 ビルの屋上に光の雨が降り注いだ。眩しくて目を開けられないくらいの光が私の視界を埋め尽くした。

 

「な…にが!?」

 

 光が晴れ、周りを見渡すと、私達の周りは防護魔法によって覆われていた。これはルークさんのお陰だろう。彼がいなかったら私達は、どうなっていたか分からない。

 

「どうしてここがバレた?それなりの隠匿魔法を使ったつもりだったが……」

「墓穴を掘ったなルーク・モガモット。正確な場所は割り出せなくても、生じた違和感を感じとれば大まかな位置くらい把握出来るのだよ。子供の世話に夢中になりすぎたか?」

 

 聞いたことのない男の声が聞こえた。さっきの男の声でもなければお爺ちゃんの声でもない。光が収まると一人の男が目に映った。黒く濃い髭を生やし、肩甲骨まで届く髪を結びもせずにそのままにしている厳つい顔をした男だった。

 

「……ヴェルゴ・アロセス……」

「え?この人が?」

 

 議会本部にいないとは聞いていたが、まさか自分から出て来るとは思いもしなかった。

 

「……お前が、グレイ・ベアボーンか……?」

「……ええ…私がグレイ・ベアボーンよ。はじめまして、ヴェルゴ・アロセス」

 

 ヴェルゴはこちらを威圧してきた。こっちの心を折る気だ。怖くても逃げ出すな。自分を偽れ。臆するな。折れそうになる心を無理矢理保て。そう自分に言い聞かせた。相手は何をしてくるのか分からないのだから、せめて心の余裕を保て。

 

「……なるほど……そうか……では……」

 

 

「死ね」

「…………………………は?」

「お嬢様!」

 

 光の線が飛んできた。これは確か……そうだ、人を切り裂く魔法だ。ルークさんが守ってくれたからなんとかなったが、間に合わなかったら私の首は飛んでいただろう。

 

「血迷ったのか!?お嬢様の命を狙うとは!ヴェルゴ・アロセス!殺人未遂の容疑で逮捕、拘束する!」

「犬に用はない。フランキー」

「ここに」

「足止めをしろ。私は小娘を殺す」

「は?……それくらい私がやっておきますが……」

「私がやらなければ意味がないのだ!良いな!!」

「は、はっ!」

 

 ヴェルゴはさっきの男をルークさんに差し向け、私達には杖を向けてきた。

 

「小僧共、私が用があるのはグレイ・ベアボーンだけだ。お前達に用はない。命だけは助けてやる。消えろ」

「そ、そんなこと言われて僕達がグレイを見捨てると思うか!?」

「大体、何でグレイの命を狙うんだ!?あんたの目的がグレイのお爺ちゃんを選挙から降ろすことなら、命まで奪わなくったって良いじゃないか!?」

 

 ロンの言う通りだ。誘拐して脅すならともかく、殺すとなると話が変わってくる。殺人なんて犯したら議員としての権限の剥奪だけじゃなく、闇祓いに追われて最後は牢屋に投獄されて、最悪の場合は死刑にされるかもしれない。デメリットしかないのにどうしてこんなことを?

 

「選挙?そんなものには最早興味がない。私はこいつを、こいつの家族を、一族全員を根絶やしに出来るのであれば全てがどうでも良いんだよ餓鬼ィ‼︎」

「……ヒッ……」

 

 ヴェルゴはまるで悪魔のような形相でこちらを睨みつけてきた。そして杖を振るった。攻撃が来る、避けよう。そう思ったたが体は思うように動かなかった。まるで体が鉛になったかのように重かった。

 

忌々しい化け物の一族(・・・・・・・・・・)父の仇(・・・)!貴様らはこの私が徹底的に殺し尽くす!!」

 

 化け物?父?仇?何をいっているのかが理解出来ない。どうして私達がそこまで言われなきゃいけない?化け物はどっちだ。私よりもお前の方がよっぽど化け物じゃないか!

 

「この!」

 

 杖を前だして力をこめる。今の私にはまともな魔法攻撃の手段がない。でも、魔力を固めて打ち出すことくらい!

 

「ほう、たかが魔力を固めただけの弾だがそれなりの威力はあるようだ。忌々しいがそれなりに優秀らしい。だが……」

 

 ヴェルゴは私に一瞬で近づいて太い腕で私の腕を力強く掴んできた。

 

「いっ……!?」

「当たらなければ意味も無いし、そして当たったところでどうということもないがな」

「やめろォォ!!」

「ん?」

 

 ハリーがヴェルゴに向かって体当たりを仕掛け、ヴェルゴは私への油断からかハリーに意識を向けた。チャンスだ、そう思い杖に魔力を込める。この魔法は成功したことがないし、出たとしても暴発して私もただではすまないだろう。ただヴェルゴよりはまだましだ。

 

「コンフリンゴ!」

「何……!?」

「グレイ!?」

 

 私とヴェルゴの間で爆発が起こった。いくら大人の魔法使いでも、暴発したコンフリンゴをこんなに近くで受けてただですむ筈がない。直撃したわけでもない私が十メートルほど吹き飛んだのだから。

 

「この……小娘がァ!!」

「ガッ……!?」

 

 服と肌が所々黒くなり、口からドロドロした赤い血を吐きながらヴェルゴが私の首を掴んできた。今度は確実に私を殺す気なのが嫌でも分かった。

 

「殺す殺す殺す殺す!お前は!お前達だけはァ!!」

「……カッ………ハッ……!?」

 

 息が出来ない。喉の圧迫感で気持ち悪くなって、意識が遠退いてきた。

 

「グレイを離せええええええええ!!」

「やめてぇ!お願いやめてええええええええ!!」

 

 ロンとハーマイオニーが私からヴェルゴを引き剥がそうとしていたが、子供の力じゃ大人を引き剥がすことなんて出来ない。力いっぱいやっても無駄に終わるだけだった。

 

「死ね死ね死ね死ね死ねえ!!」

 

 本当にまずい。息が出来ない。視界が段々白くなってきた……ああ……これは……本当に……

 

「死ねえ!『死ぬのはテメェだクソ野郎』………………は?」

 

 聞き覚えがある声が聞こえと思ったら、さっきまでの息苦しさが無くなっていた。

 

「わ、わた、私の、私の腕ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァ‼︎⁇⁉︎」

『おいおいおい!俺の主人を好き勝手してくれたくせして腕一本持ってかれたくらいで鳴き喚いてんじゃねえよ!』

「サファ……イア?」

『おうよ!皆が大好きなサファイア様だぜ!』

「サファイア……サファイア!」

 

 私はサファイアに抱きついた。涙が自然と溢れ出てくる。こんなに涙もろかったんだ、私って。

 

「ーーーーー!」

「!ビートル!」

 

 ビートルもやって来た。さっきまで心細かったのに、段々と心が満たされていくような感じがする。一体どういうことなんだろう?ここから私の家まで凄く距離があるのにどうやってこんな短い時間で?

 

『聞いて驚け。なんとこいつ瞬間移動をしやがったんだよ。いやあ俺もビックリしたぜ。まあ、この街結構広いから探し出すのに苦労したがな』

 

 瞬間移動?……ああ、不死鳥の能力か!

 

「ありがとうビートル。お陰で助かった!」

「ーーーーーー!」

 

 今の私は嬉しい気持ちでいっぱいだった。だから見逃してしまった。敵はまだ倒されたわけじゃないことを。

 

「……たとえ強力な魔法生物でも……余所見をしてしまえばただの木偶だ!アバダ!」

「エクスペリアームス」

「何⁉︎」

『何だ?やっと来たのかお前ら。随分と遅いご到着だな』

「なあリサーナ。あやつ儂等になんと言っとるんじゃ?儂ゃ蛇語が分からん翻訳してくれ」

「遅刻だぞ、と言っているのよ」

「なるほど遅刻か、これでも急いだ方なんじゃが……まあ良いわい。孫が危険な目にあっておるのに直ぐに駆けつけれなかった儂等に文句を言う資格はないからのう……」

「…まあ、その通りね」

 

 ……なんでここに?二人とも議会本部から動けないんじゃ……。

 

「な、何故お前がここにいる⁉︎アグニカ・ベアボーン!リサーナ・ベアボーン!」

「あら?孫が危ない目にあっているのに駆けつけない祖父母がどこにいるのかしら?」

「まったくじゃ。お前、人の家の宝に手を出したんじゃ……」

 

 

 

 

 

 

「覚悟出来てんだろうなクソ野郎」




はい、またしても結構盛りました。アグニカが議長候補とかやりすぎじゃね?と自分でも思ったのですが、後の展開考えると悪くはないと思ったのでこうしました!

恥ずかしながら誤字脱字が沢山あると思いますが、遠慮なく報告してくれて構いません。

次で短編は最後になると思います。

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