ハリー・ポッターと最後の不死鳥   作:TARAKON X

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今まで以上に長くなってしまった。


第5話 魔法の授業

「……ねぇグレイ、顔色悪いけど、何かあった?」

 

 朝、今日の私は朝から落ち込み気味だった。

 

「……いつも使ってる音楽プレーヤーが使えなくなっちゃったの」

「え、どうしてマグルの機械なんて持って来たのさ!ホグワーツじゃ使えなくなるのに」

「小さな機械なら大丈夫だと思ったの。この前買って貰ったばかりなのに……」

 

 朝起きてまだ朝食まで時間があったから、音楽を聴きながら読書しようと思っていたら全然音が出なかった。どこを押しても、カセットを変えても動かなかった。

 

「まあそんな落ち込んでもしょうがないさ。このパン食べる?」

 

 ロンが慰めにパンを差し出してきた。

 

「……いただくわ、ありがとう」

 

 今日の朝食はとにかく食べまくった。やけ食いだ。食べないとやってられない気分だった。

 

「グレイ、そんなに食べると太るよ」

 

「…………」

 

 ドスッ!!

 

「うぐぼぉ!?」

 

 ハリーのお腹を強めに殴った。

 

 ーー

 

 大事な物が壊れて、落ち込むのは仕方のないことだと思う。でも、いつまでもそうはしてられなかった。なぜなら今日から魔法の授業を受けるからだ。

最初の授業はマクゴナガル先生の変身術だった。

 

「変身術は、ホグワーツで学ぶ魔法の中で最も危険なものの一つです。いい加減な態度で私の授業を受ける生徒は出ていってもらいますし、二度とクラスには入れません。はじめから警告しておきます」

 

 厳格で聡明そのものの先生は、最初の授業で生徒達が着席するなり説教をはじめた。

 

「おや?Mr.ポッター、どうかしましたか?腹部を痛そうにしていますが」

「あ、その、グレイが殴ったところが地味に痛いんです」

 

 その言葉にドキッとする。強めに殴っちゃったから、ハリーには思ってた以上にダメージが入っていたらしい。

 

「まあそれは…Miss.ベアボーン、何かありました?場合によっては減点することになりますが」

「ポッターが私に太るよって言ったんです」

「成る程、それはあなたが悪いですねMr.ポッター」

「……ええ!?」

 

 ハリーは先生の言葉に呆然としていた。

 

「いいですか?女性にそのようなことは言ってはなりませんよ。太ることを気にする女性はたくさんいます。デリカシーのない発言は控えるように」

「…はい」

 

 マクゴナガル先生にはそう言ったがハリーは納得していない様子だった。

 

「さすがにそれは言っちゃ駄目だよハリー。僕もママに言ったらカンカンに怒っちゃってさ、それは女の子にとって禁句だよ」

「そうなの?僕、まともに女の子と話すの初めてだから全然知らなかった」

「次からは気をつけてね」

「…うん…」

 

 一応反省しているようなので許すことにした。

 

「ですがMiss.ベアボーン。殴るのは少しやりすぎです。グリフィンドール一点減点」

 

私もハリーと同じような顔になった。

 

「では気を取り直して、みなさんにはまずこのマッチ棒を針に変えてもらいます。全員に配るのでやってみましょう」

 

 お手本にまず先生がやってみせた。先生が魔法をかけたマッチ棒は鋭い銀色の針に変わっていた。

 

「あれ?全然変わんないや」

「僕も」

 

 ハリーとロンは変身させるのに苦戦していた。

 

「……」

 

 私はひたすら教科書を読み込んだ、どこか抜けているところがないか確認してからマッチ棒に魔法をかけた。

 

「あ!変わった!」

 

 私のマッチ棒は、先生同様、鋭い銀色の針に変わっていた。

 

「お見事です!見てください、Miss.ベアボーンがマッチ棒を針に変えて見せました。おや、Miss.ハーマイオニーもできたようですね素晴らしい!グリフィンドールに十点!」

 

 結局、マッチ棒を針に変えれたのは、私とハーマイオニーの二人だけだった。私は自分の減点を取り返せたのでご満悦だった。

 

 ーー

 

 ホグワーツを歩くのはとても大変だった。この学校にはまず、百四十二もの階段があった。壮大とも言えるほど広い階段、狭いガタガタの階段、金曜日にはいつもと違うところへ繋がる階段。

 

 扉もいろいろあった。丁寧にお願いしないと開かない扉とか、扉のように見えて実は壁だったりしたものもあった。

 

 たまにピープスに出くわすと、もう最悪。急に壁から驚かしてきたり、ゴミ箱を頭の上でぶちまけたり、足下の絨毯を引っ張ったりして転ばせてきた。殴りたかったけどゴーストだから無理だった。

 

 とにかくたくさんの仕掛けのせいで、次の授業の教室に行くのも一苦労だった。

 

「次は……スネイプ先生の魔法薬学。えっと、あれ?ここどこ?」

 

 学校の見取り図を見てもよくわからない。とにかく複雑すぎる。この学校は古代の魔法で建てたと聞いたけど、ここまで複雑にすること無いと思う。

 

「お困りのようじゃな、Miss.ベアボーン」

「!?」

 

 突然の後ろからの声に、ビックリして振り替えると、そこにはダンブルドア先生が立っていた。

 

「あ、こんにちは先生」

「ああ、こんにちは。そろそろ授業が始まるのにまだここにいるということは、どうやら道に迷ったようじゃな」

「ええ、まあ。この学校、広すぎてどこがどこかわからなくて……」

 

 私の言葉を聞いて、何故か先生は楽しそうに笑っていた。

 

「仕方あるまい。新入生はよくホグワーツで迷子になるからのう。未だに上級生でも迷う者はおる」

「それは大変ですね」

 

 だったら誰でもわかる地図を作った方がいいんじゃ……。

 

「さて、私は校長として困った生徒は救わねばならん。なので君にはこれをやろう」

 

 先生は懐から一冊の分厚い本を取り出した。金具がついており表紙には大文字で『H』と書かれてている。

 

「あの、これは?」

「フィールドガイドじゃよ。自分が今、ホグワーツのどこにいるか確認することができたり、授業でなにを学んだか記録することができる。抜け道や隠し通路はわからんがな。これを一年だけ君に貸そう、慣れるまでの間じゃ」

 

 そう言ってくれるのは嬉しいけど、どうしても疑問に思うことがある。

 

「あの、何でこれを私に?他の生徒には渡さないんですか?」

「深い意味はないよ。この歳になってくるとたまに生徒の世話を焼きたくなるのじゃよ」

 

 先生はそう言っているが、どうも私は違う理由がある気がした。

 

「そろそろ授業が始まるぞ?スネイプ先生は怒らすと怖いからのう、遅れないようにすることじゃ」

 

 ーー

 

 案の定、魔法薬学の授業にはなんとか間に合った。

 

「遅かったねグレイ、心配しちゃったよ」

 

 私が教室に入った時には、ロンもハリーも席に着席していた。どうやら私とは違い、迷わずここに来れたようだ。

 

「うん、なんとかたどり着けたわ。にしても、この学校広すぎ。道がわかっても歩くのに疲れる…」

「仕方ないさ、慣れるしかないよ。あ、そうだグレイ。僕達この授業が終わったらハグリッドのところに行くんだけど、一緒にどう?」

「え?えっとね……」

 

 その提案に少し考える。今日終わらせる課題はなかった。ちょっと後回しにしても問題は無いだろう。

 

「うん。私も行っていいのなら是非」

 

 ハグリッドとのお茶という楽しみがあったのはラッキーだった。なにしろ魔法薬学の授業が、そこまで良くなかったからだ。

 

「全員、席に着け」

 

 マクゴナガル先生とはまた違った威厳のある声が、教室に響いた。魔法薬学の授業が地下牢で行うのもあって不気味さも増していた。

 

「あぁ、さよう。ハリー・ポッター。我らが新しい、スターの登場だね」

 

 わざとらしい猫撫で声だった。合同で授業を受けているスリザリンの方からクスクスと笑い声が聞こえる。

 

「このクラスでは、魔法薬調剤の微妙な科学と、厳密な芸術を学ぶ。杖を振り回すような馬鹿げたことはやらん。そこで、これでも魔法かと思う諸君も多いかもしれん。ふつふつと沸く大釜、ゆらゆらと立ち昇る湯気、人の血管の中を這い巡る液体の繊細な力、心を惑わせ、感覚を狂わせる魔力……諸君がこの見事さを真に理解するとは到底期待しておらん。我輩が教えるのは、名声を瓶詰めにし、栄光を醸造し、死にさえ蓋をする方法である。ただし、我輩がこれまでに教えてきたウスノロ達より諸君がまだましであれば、の話だが」

 

 大演説のあとは教室全体がしんとなった。この人、たぶん性格が悪い人だ。人の失敗を蛇みたいにネチネチと責める人だと、短時間で嫌と思うほどわかった。

 

「ポッター!」

 

 突然、ハリーを読んだ。思わず私もビクッとしてしまった。

 

「アスフォデルの球根の粉末にニカヨモギを煎じたものを加えるとなにになるか?」

 

 なんて?全然言ってることがわからない。ハリーはこっちを見て助けを求めていたが、お手上げだった。逆にハーマイオニーが空中に高々と手を挙げた。

 

「わかりません」

「チッ、チッ、チ。有名なだけではどうにもならんらしい」

 

 スネイプ先生はハリーをせせら笑い、ハーマイオニーを無視した。

 

「ポッター、もう一つ聞こう。ベアゾール石を見つけてこいと言われたら、どこを探すかね?」

 

 またわからない問題だった。私からしてみればベアゾール石自体初耳だった。

 

「わかりません」

「授業に来る前に教科書を開いてみようとは思わなかった、というわけだな、ポッター、え?」

 

 例え嫌いだったとしてもやりすぎだと思った。最早私は、スネイプ先生にドン引きしていた。大人げなさすぎるにも程がある。そしてぷるぷる震えるハーマイオニーを無視した。

 

「ポッター、モンクスフードとウルフスベーンとの違いはなんだね?」

 

 この質問でとうとうハーマイオニーは椅子から立ち上がり、地下牢の天井に届かんばかりに手を伸ばしていた。

 

「わかりません。ハーマイオニーがわかっていると思いますから、彼女に質問してみたらどうでしょう?」

 

 その言葉で、一部のグリフィンドール生から笑みが零れた。私も少し笑ってしまった。しかし、スネイプ先生は不快そうだった。

 

「座りなさい、Miss.グレンジャー。教えてやろう、ポッター。アスフォデルとニガヨモギを合わせると、眠り薬となる。あまりに強力なため、『生ける屍の水薬』と言われている。ベアゾール石は山羊の胃から取り出す石で、たいていの毒に対する解毒剤となる。モンクスフードとウルフスベーンは同じ植物で、別名をアコナイトとも言うが、トリカブトのことだ。どうだ?諸君、なぜ今我輩の言ったことをノートに書き取らんのだ?」

 

 一斉に羽ペンと羊皮紙を取り出す音がした。その音に被せるように、スネイプ先生は言い放った。

 

「ポッター、君の無礼な態度で、グリフィンドールは一点減点」

 

 スネイプ先生は最初から最後までハリーに容赦なかった。

 

 ーー

 

 その後も魔法薬の授業中に、グリフィンドールの状況は良くなることはなかった。

 というか、スリザリンも含め、全体的に良くならなかった。スネイプ先生の今日の授業は、二人一組でおできを治す薬を調合することだった。長い黒マントを翻しながら、スネイプ先生は生徒達が干イラクサを計り、蛇の牙を砕くのを見回っているのだが、スネイプ先生はとても細かかった。

 

「Miss.ベアボーン、干イラクサが3ミリ長い。きっちり計るように」

「あ、すいません」

 

 スリザリン贔屓で有名なスネイプ先生だが、魔法薬学のことになるとそうでもないらしい。グリフィンドールは一点も加点されていないが、それはお気に入りらしいドラコ・マルフォイを除いてスリザリンも同様だった。

 

「あ」

 

 私はハーマイオニーと組んで調合をしていたが、すぐ隣のネビルが大鍋を火から下ろさないうちに、ヤマアラシの針を入れようとしていたのが目に入った。確か教科書に絶対にやってはいけないこととして記載してあったはずだ。

 

「ネビル!?駄目!!!」

「うわぁ!?」

 

 針を入れた瞬間、ネビルのペアの大鍋が割れてしまった。私はネビルを強引に引っ張って鍋の中のものを浴びせないようにしたが、少し遅かった。体全体には浴びなかったけど、下半身に浴びてしまった。

 地下牢いっぱいに強烈な緑色の煙が上がり、シューシューという大きな音が広がった。零れた薬は石の床を伝って広がり、他の生徒達の靴に焼け焦げた穴を空けていた。全員薬に触れないように椅子の上に避難している。

 

「うぅ…足がぁ…僕の足がぁ…」

 

 ネビルの足はおできまみれになっていて痛みで呻き声を上げていた。

 

「バカ者! 大方、大鍋を火から下ろさないうちにヤマアラシの針を入れたのだろう!」

 

 大声で叱責したスネイプ先生は、杖を一振りして零れた薬を取り除くと隣で呆然としているペアのシェーマスに医務室に連れていくように言いつけた。

 

「……Miss.ベアボーン。ロングボトムの失態をよく見抜いた。グリフィンドールに一点加点」

 

 クラス全体がざわめき出した。あのスネイプ先生がグリフィンドールに加点するなんて天地がひっくり返らない限りあり得ないとみんな知っているからだ。実際、スネイプ先生はとても不服そうだった。

 

「ポッター! 針を入れてはいけないとなぜ言わなかった? 彼が間違えれば、自分の方がよく見えると考えたのだろう。グリフィンドールはもう二点減点だ」

 

 ……は?

 

 ーー

 

 私、ロン、ハリーの三人は、特に私とハリーはスネイプへの不満を爆発させながら廊下を歩いていた。

 

「落ち着きなよグレイ、スネイプのあれは今に始まったことじゃない。フレッドとジョージも毎回減点されるんだ」

「だからってあれは酷いよ!人を上げて落とすだなんて信じらんない!」

 

 私はマジギレしていた。あの陰湿根暗ネチネチ教師スネイプを一発ぶん殴ってやりたい気持ちで一杯だった。

 

「スネイプに我慢ならないのは僕も同じだよ!」

 

 ハリーも私と同じ気持ちらしい。

 

「スネイプのあれは今に始まったことじゃないさ。それより早くハグリッドのところに行こう」

「…うん、そうだね、ちょっと落ち着いてハグリッドの小屋に行こう」

 

 スネイプへの怒りと不満を落ち着かせながら、私達はハグリッドのもとへ向かった。ハグリッドは『禁じられた森』の端にある木の小屋に住んでいる。戸口に弩と防寒用長靴が置いてあった。ハリーがノックすると、中からめちゃくちゃに戸を引っ掻く音と、ブーンと唸るような吠え声が数回聞こえてきた。

 

「さがれ、ファング、さがれ」

 

 ハグリッドの大声が響いた。戸が少し開いて、隙間からハグリッドの大きな髭モジャの顔が現れた。

 

「待て、待て、さがれ、ファング。おお!お前さんらやっと来たか。早く中に入れ」

 

 ハグリッドは巨大な黒いボアーハウンド犬の首輪を押さえるのに苦労しながら、私達を招き入れた。

中は一部屋だけ。ハムやきじ鳥が天井からぶら下がり焚き   火にかけられた銅のヤカンには湯が沸いている。部屋の隅には途轍もなく大きなベッドがあり、パッチワークキルトのカバーがかかっていた。

 

「くつろいでくれや」

 

 ハグリッドが首輪を放すと、ファングは一直線に飛びかかり、ロンの耳をなめはじめた。ハグリッドと同じように、ファングも見た目と違ってまったく怖くなかった。

 

「ん?お前さん誰かに似ているような……」

「僕、ロンです。ロナルド・ウィーズリー」

「ウィーズリー家の子かい。え?お前さんの双子の兄貴達を森から追っ払うのに、おれは人生の半分を費やしているようなもんだ」

 

 ハグリッドは大きなティーポットに熱い湯を注ぎ、ロックケーキを皿に乗せながらそう言った。

 

「ねぇハグリッド。このケーキすごく固い。私の歯が折れちゃいそう」

「女の子は力が弱いな、そこの二人なんて美味しそうに食っとるぞ?」

 

 チラッと見たが、二人とも美味しく食べているように見せかけているのは直ぐにわかった。

 

「ねぇハグリッド。スネイプは僕のことを憎んでいるみたいなんだけど、どうしてだと思う?」

「馬鹿な、なぜ憎まなきゃならん?」

「わからないけど、憎んでなきゃあの対応はおかしいよ!」

「スネイプはスリザリン贔屓で有名なんだ。ああいう生き物だと思っとけ」

 

 ハリーはスネイプのことをハグリッドに言ったが一蹴されてしまった。

 

「なあロン、チャーリー兄貴は元気か?おれは奴さんが気に入っとった。動物にかけてはすごかった」

 

 ハグリッドが話を無理矢理話を変えるように、チャーリーのドラゴンの仕事について語り出した。ちょっと退屈になったので、机に置いてあった日刊預言者新聞を見た。するとそこには

 

『グリンゴッツ侵入される!』

 

と書いてあった。

 

「グリンゴッツに侵入した犯人はまだ見つかっていません?入られた金庫は空でしたが何が入っていたのかはお答えできません?私達何か隠してますって言ってるようなものね」

 

 というか、グリンゴッツってホグワーツの次に安全って言われてなかったっけ?大丈夫?それ?

 

「ハグリッド! グリンゴッツへの侵入があったのは僕の誕生日だよ! 僕達が彼処にいる間に起きたのかもしれない!」

 

 ハグリッドはまた目を逸らした。こっちも何か隠しているのはバレバレだったけど、口は割らなそうだったから聞かないことにした。

ハグリッドは誤魔化すようにまたロックケーキを勧めてきた。

 

「もうケーキはいいよハグリッド。今度こそ歯が折れちゃうから」

 

 ーー

 

 ハグリッドとのお茶を楽しんで、小屋から出たあと。私達は夕食のために食堂へ向かっていた。

 

「ーーー!」

「?今何か聞こえなかった?」

「え?何も聞こえなかったけど?」

 

 ハリーはそう言うが私には確かに聞こえた。鳥の鳴き声だった。大きくはないが小さくもない声だった。

 

「ーー!」

「ほらまた!禁じられた森の方から聞こえた!」

「なに言ってるのさ?グレイ、スネイプの授業がそんなに嫌だったのかい?」

 

 ロンが呆れたように聞いてくる。確かにスネイプの授業は嫌だったけど、幻聴が聞こえるまでじゃない。

 

「ーーー」

 

 また聞こえた。段々声が弱くなっている気がする。

 

「私ちょっと行ってくる!」

「え!待ってよ!禁じられた森入ったら叱られるどころじゃないよ!」

 

 ハリーの静止も聞かずに、私は声が聞こえた方向に走り出した。禁じられた森の近くまで行くと、森の暗闇から炎が見えた。

 

「なに!?火事!?」

 

 慌てて駆け寄ると炎は直ぐに消えて、何かが燃えたあとに残る灰がすこしだけ山になっていた。

 

「…なんだったんだろう……あ、ヤバ」

 

 少し茫然としたあと、自分が少しだけ森に入ってしまったことに気がついた。慌てて戻ろうとした時。

 

「ピィ!ピィ!」

 

 鳴き声が聞こえた。鳥の、それも生まれたばかりの雛鳥の鳴き声だった。辺りの木を見回しても、鳥ノ巣らしきものは見つからなかった。

 

「ピィ!」

「え?」

 

 振り返って足下のさっきの灰を見てみると、灰から雛鳥が出てきた。意味がわからなかった。雛鳥は卵から出てくるもののはずなのになぜ灰から?

 

「あなた、何?」

「ピィ!ピピィ!」

 

 動物に話しかけてもわからないことは知っているのに、つい声をかけてしまった。

 

「あなたの親は?」

「ピィ!」

 

 本当に疲れているらしい。二回も声をかけてしまった。というか早く森を出ないと大変なことになるので現実逃避している場合じゃなかった。

 

「じゃあ私帰るから、親鳥に会えると良いわね。じゃあね!」

 

 私は振り返って食堂に向かった。もし森に入ったことがバレたら五十点くらい減点されてもおかしくない。

森から出て、周りに誰もいないことにホッと一息。

 

「ピィ!」

 

 体が固まる。後ろを向くと、さっきの雛鳥がいた。

 

「……」

 

無視して、また歩き出す。

 

「ピィ!」

「……」

 

 まだついて来るので、私は振り切ろうと走り出した。

 

「ピィ!」

 

 それでも雛鳥は後ろにいた。巻いても、隠れても、雛鳥は私を見つけ出してきた。

 

「……もしかして、刷り込みしちゃった?」

 

 図鑑で見たことがある。鳥は生まれて直ぐ見たものを親として認識してしまうというものだ。例え別の生き物でも、刷り込みは成立してしまうらしい。つまりこの子は、私を親鳥と認識してしまっているのではないだろうか?

 

「てことは、私が面倒見なきゃいけないってこと?」

 

 雛鳥は親鳥がいないと生きていけない。餌を自分で取りにいけないからだ。この雛鳥は私を親鳥と認識してしまっているので、本当の親鳥からの餌も受け付けないかもしれない。何も食べなければ餓死して、間接に私が死なせたことになってしまう。私のせいでこの子が死んでしまうのはいくらなんでもダメだ。この子はもう、自然から離れてしまってる。

 

「……バレたらなんて言い訳しよう……」

「ピピィ!」

 

 私は手の平サイズの雛鳥を、先生にバレないように持って、食堂に向かった。

 

「ていうかあなた、なんで立てるの?成長するの早くない?」

 




誰か僕に文才を授けてください……。

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