「……そうか、ガトランティスの奴等はそこまで入ってきたか」
「あぁ。至急、警備態勢を見直さないとな」
横須賀宇宙軍港の近くにあるとある料亭にて将和は報告していた。
「しかしな親父……やはり親父が現役復帰したのは土方長官の左遷が……?」
「まぁ……仕方あるまい。土方は土方で筋を通した。ならワシはワシで筋を通すという事じゃよ」
将和の言葉に父親である三好正信はそう答え日本酒を飲む。正信はガミラス戦役後は退役していたものの、ガトランティスという新たな脅威がある事を地球連邦は確認したので、再び宇宙軍元帥大将として現役復帰をし更には地球連邦軍宇宙艦隊総司令長官に就任したのだ。
「まぁ土方が早く戻ってきたらワシは宇宙軍令部総長になれるかな……そうすりゃ防衛艦隊もある程度は楽になるだろう」
「現場のが良くないか?」
「また過労で倒れるからやめとく。母さんを困らせたくはない」
「成る程」
以前、激務によって倒れた経験を持つ正信は妻である知子に迷惑をかけたくなかったのだ。
「それとお前も暫くしたら異動するからな。今のうちに荷物を整理しておけ」
「異動?」
「あぁ、一個艦隊司令官の予定だ」
「……まさかと思うが昇進も?」
「その予定だ」
まぁ一個艦隊を率いるなら大佐では済まなくなると将和も踏んでいた。
「まぁ二月後くらいの予定だから今のうちに身辺整理はしておけよ。お前さん、直ぐに部屋が汚くなるからな」
「へいへい。人使いが荒いこって……」
「文句を言うな、今の防衛軍は人手がいないんだ」
「まぁ仕方ないって」
将和と正信はそう言いながら酒を飲むのである。なお、翌日は二日酔いになり知子から怒られるのは些細な出来事であろう。
それから数日後、第33護衛隊は月基地に入港していた。たまたま月に物資輸送があったので第33護衛隊が護衛していたのだ。
「……そういやあいつらは今は月基地にいるのか。参謀、済まんが月面航空隊のところに出向く」
「分かりました。お気を付けて……」
将和は何かを思い出したかのように月面航空隊を訪れた。
「おいっすー」
「おっ、三好隊長!?」
「よー加藤」
「三好隊長じゃないですか!?」
「何? 三好さん?」
「え、マジで?」
「あ、隊長だ!?」
月面航空隊隊長の加藤三郎少佐の言葉に篠原大尉や沢村中尉らがガンルームから顔をヒョコヒョコと出す。
「いつ月に?」
「ついさっきだ。たまたま月に支援物資を運んでな。此処に加藤らヒヨッコどもが駐屯してると思い出したからな。序でに顔を出しに来たんだ」
「そりゃひでぇ。俺達は序でですか」
『ハハハハハハッ』
将和が笑みを浮かべると加藤は苦笑する。それに釣られて篠原達も笑う。そこへ一人の女性がガンルームに入ってきた。
「お、玲」
「何ですか隊長?」
「紹介しとく。前にも言っていたろ、俺や明生の教官の人だ」
「三好将和だ」
「……山本玲です」
将和の挨拶に山本は頭を下げる。その反応に加藤はあり?とする。
「おい玲、明生の話でも……」
「いえ、これからまた錬成するので……」
「おい玲ッ」
「まぁまぁまぁ」
山本の言葉に加藤は声を荒げるがそれを将和が制した。
「いやいいさ加藤」
「ですけど隊長」
「山本、これから飛ぶんだろ? 相手になってやる。加藤、飛行服を貸してくれ」
『えッ…………………』
将和の言葉にガンルームにいたパイロット達はざわめきだす。将和の飛行操縦を見れる久々の機会だったのだ。将和の申し出に山本は怪訝な表情をしていたがやがては了承した。
「構いません」
「よし、なら決まりだ。15分後にやろう」
そしてその話はあっという間に航空隊に広がったのである。
「さぁさぁさぁッ!! ガミラス戦役撃墜王の三好将和隊長と『ヤマト』航空隊で活躍した山本玲少尉のドッグファイトが見れるぞ!! さぁどちらに賭ける!?」
「俺、三好隊長!!」
「玲に!!」
「やっぱ隊長だよなぁ」
等々、篠原らが主体となって博打をやっていたりする。
「じゃあ三本勝負な。先に上からしていいぞ」
『……後悔してもしりませんよ』
上がっていた2機のうちコスモゼロに乗る山本はそう言って更に上空に上がりーードッグファイトが開始されたのである。
「ハッハッハ、いやぁ勝った勝った。まぁ腕は落ちてなくて良かった」
「相変わらずですね隊長……」
飛行服を脱いだ将和は朗らかに笑いながら加藤と話していた。ちなみに賭けは加藤にバレて篠原と沢村は拳骨を喰らっている。そして離れたところでは将和に五連敗した山本が意気消沈していた。
三本勝負だったが瞬く間に山本が負け山本の更に二本追加で頼んで五本勝負になったがそれでも全敗したのである。
「まぁ山本の筋も良かったがな。だが明生くらいになるにはまだまだだな」
「……兄はどれくらいだったので?」
「まぁ加藤とどっこいどっこいだな」
「けど、それなら何故兄は……」
山本の言葉に将和は深く息を吐いて山本に視線を向ける。
「パイロットなんてそんなもんだ。どれだけ機体を整備して万全の態勢を整えても一発の弾丸が機体と自身の運命を左右するんだ」
「ッ」
表情を変えた将和の言葉に山本は息を飲む。その顔はおちゃらけた表情ではなく、ガミラス戦役の後半までパイロットとして戦ってきた男の顔であった。
「山本……不思議なもんでな……何千発の機銃弾の真ん中を飛んでも当たらない時は掠りもしない。けどな、当たる時は一発の流れ弾でも当たるんだ」
「………………」
「俺はガミラス戦役の時は言い聞かせながら腕を磨き生き残るため必死の努力をしてきた。ハハハ、他から見れば大いなる矛盾だ。その矛盾を生きるのが俺やお前達パイロットなんだよ」
「……大いなる……矛盾……」
将和の言葉に山本はそう呟く。
「まっ、空戦の腕に悩みがあるなら何時でも相談に乗ってやる」
「…………ッ………」
将和はそう言って山本の頭をポンポンと叩くのであったが頭を撫でられた事に山本はうっすらと頬を染めるのであった。
「じゃあ次の勝負は俺で隊長」
「いや俺だ」
「いーや、俺だ!!」
「めんどいから皆で来いやァ!!」
結局、将和は月面航空隊のパイロット達と空戦勝負をする羽目になるのである。
「バイバイアリシアちゃん!!」
「じゃあねアリシア」
「うん、また明日学校でねすずかちゃん、アリサちゃん!!」
六歳になった事で小学校へ入学したアリシア・テスタロッサは学校帰りであり途中で学友の二人と別れて一人帰路につく。程なくしてアリシアは自宅である三好正信邸の玄関の引戸を開ける。
「ただいまー」
「あらお帰りアリシアちゃん」
「うん、おばちゃんただいま」
アリシアは居間で洗濯物を畳んでいた知子に言うとパタパタと階段を上がってこの4月から自身に宛がわれた部屋に入りランドセルを置いてまた階段を降りる。
「畳むの手伝うねッ」
「あらありがとうアリシアちゃん」
「ニヒヒヒ♪」
「今日はお母さんとリニスちゃんもはや上がりと言ってたし旦那も早くに帰るから五人での夕御飯よ」
「ホント? でもお兄ちゃんは……」
「今は月にいるわ。明日帰ってくるからその時は六人での御飯ね」
「ホント? ワーイッ」
知子の言葉にアリシアは喜ぶのである。
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