「速度第二戦ソォーク」
「速度第二戦ソォーク、ヨォーソロォー!!」
第十三艦隊が冥王星基地を出撃し太陽系外縁部のエッジワース・カイパーベルトに進入したのは翌日だった。
「タキオンレーダーに反応は無いか?」
「未だありません」
将和の問いにレーダー手はそう返し将和は制帽を深く被る。
(取り敢えずは遭遇はしてないが……今はカイパーベルトで監視するしかないか)
そして将和は艦内マイクを取り出す。
「コスモタイガー隊、発艦準備に掛かれ」
将和はコスモタイガー隊での捜索を決断する。なお、『伊勢』のコスモタイガーは5機しかなかったが冥王星基地が撤退する前にパイロットごと20機分(折り畳んだりしている)を搭載させているのである。
コスモタイガー12機は『伊勢』から発艦し四方に散る。無論、偵察のためである。
「それにしても……遅滞作戦ならもう少し艦艇を寄越せっての」
将和はそうぼやく。第十三艦隊は現在、戦艦1、巡洋艦6、駆逐艦12、護衛艦8、パトロール艦5までに増強されていたがそれでも将和としてはもう少し欲しかったのである。
「保護したスカさん達に波動エンジンを見せたのがスコット中将には気に食わなかったのよ」
「へぇへい。どうせ帰れんっての(ボソッ」
新見の言葉に将和はポツリと呟く。先日、将和の独断と偏見(どうせスカリエッティ達も帰れないと思いこんで)で波動エンジンを見せたのが防衛軍艦隊司令部的にはNOだったのだろう。
「それでスカさんは?」
「ドクターならトチローさんとクアットロと共に武器の開発をしています」
将和の問いに答えたのはウーノだった。本来は作戦中に艦橋の立ち入りは制限されるがトチローらの連絡係兼新見の補佐をしているのでさもありなんであった。
(というより僅か数時間で防衛軍のPC等の関連機器を使える事にハンパねぇわ……)
今は厄介になっているスカリエッティ達一行だが将和としては敵にはなってほしくないモノであった。なお、ウーノはウーノで将和の監視任務があったので艦橋での作業は願ったり叶ったりである。ちなみにスカリエッティらはというと……。
「トチロー、いっそのことミサイルに波動エネルギーを注入してみてはどうだ?」
「おぉそれは良いかもしれんなスカさん!!」
「それなら三式弾にも波動エネルギーを入れてみるのも手かもしれませんわね」
マッド達の愉快な会話が工作室で繰り広げられたりしていた。それはさておき、コスモタイガー隊が発艦してから48分後、6番機がガトランティス艦隊と遭遇したのである。
「敵艦隊の数は!?」
「超大型戦艦1、戦艦150、巡洋艦駆逐艦多数との事よ」
「……どう思う参謀長?」
「そうですなぁ……此処はやり過ごして後ろから攻撃を仕掛けるのも手ですな。幸いにもまだ我々は敵に見つかっておりませんので味方の犠牲を少なくするのであれば……」
「だろうな」
チュン参謀長の具申は的確であり将和もそう思っていた。
「よし、艦隊はこのまま小惑星帯で身を隠す。新見」
「えぇ、アステロイドシップね」
新見が笑みを浮かべて作業に取り掛かる。作業時間は30分程で終了し全艦艇にARGOシステムの岩盤が吸着され身を隠すのである。なお、ガトランティス艦隊ーーバルゼー大将の第六遠征機動艦隊が第十三艦隊の付近を通過するも特に気にする事なく通過していったのである。
「ガトランティス艦隊通過しました」
「ん。更に15分待て。通信長、15分後に司令部にガトランティス艦隊の詳細を報告せよ」
「了解しました」
「……やりますか?」
「無論だな。全艦に通達、内容はーーー」
そして第十三艦隊は動き出すのである。
「バルゼー長官、後方で通信が飛び交っています」
「何?」
第六遠征機動艦隊司令長官のバルゼー大将は部下からの報告に首を傾げる。
「地球艦か? それとも『ヤマト』か?」
「いえ、そこまでは分かりませんが……少なくともガトランティスで使用されている通信ではありません」
「……ならば地球か。恐らくは偵察だろう、全艦艇に通達。敵偵察艦を発見したら即座に沈めろ」
「はッ!!」
第六遠征機動艦隊は直ちに半臨戦態勢に移行したがそれは少しばかり遅かった。
「後方から重力震、極めて至近です!!」
「何!?」
そして第六遠征機動艦隊の後方から現れたのはワープしてきた第十三艦隊だった。
「第四戦ソォーク」
「第四戦ソォーク!!」
「砲雷撃戦、用意!!」
「用意宜し!!」
「撃ちぃ方始めェッ!!」
ワープアウトしたと同時に『伊勢』の前部1、2番主砲が左右斜めに旋回し照準し将和の号令と共に砲撃を開始する。更に前部魚雷発射管から魚雷が発射される。それは他艦も同様だった。巡洋戦隊も次々と主砲とミサイルを連続斉射して『ラスコー』級、『ククルカン』級を沈めていく。
『伊勢』のショックカノンは『カラクルム』級戦艦を1隻ずつ砲撃してこれを撃沈していく。
「おのれェ!! 全艦態勢を建て直せ!!」
「敵艦隊、そのまま離脱。ワープしました!!」
「追撃だ、追撃の艦隊を組織しろ!!」
「えぇ!? し、しかしこのまま進みませんと大帝の命により我々は此処まで来ておりますし……」
「ぬぐぅ……やむを得ん。艦隊はこのまま地球に向かう」
バルゼーは幕僚らの具申を取り入れ第十三艦隊を追わずに地球へ向かうのである。そして第十三艦隊はというと……。
「ワープ終了。現在地、シリウスまで2.3光年よ」
「ふぅ……何とかなったな」
「えぇ。けど、太陽系に逃げるんじゃなくて逢えてのシリウス方面にワープするなんて早々思い付かないわね」
「かもな。それと何隻やった?」
「現時点では戦艦3、巡洋艦8、駆逐艦19、空母5隻を撃沈させたわ」
「ん。通信長、司令部にも報告してくれ。『我、ゲリラ戦にて遅滞作戦を敢行す』ってな」
「分かりました」
なお、第十三艦隊の通信は大分ラグがあったものの司令部には通報されているのである。
「次いでだ、このままシリウスに侵入してガトランティスの補給基地を叩くか」
「それは良いですね。なら偵察機を出しますか?」
「ん。頼みます」
第十三艦隊はそのままシリウス星系に向かうのである。第十三艦隊はシリウス星系に侵入すると『伊勢』からコスモタイガー6機を発艦させ偵察に向かわせた。
(あまり長居は出来んが果たして……)
将和は内心そう思う。この時、シリウス星系にはガトランティス軍の1個機動部隊がシリウス星系防衛のために展開していた。
「何? 地球軍の艦載機だと?」
「はい。恐らくは第六機動艦隊を攻撃しようとしていたのではないかと……」
ガトランティス軍シリウス方面軍第三機動部隊司令官エルガー・ナグモー少将は直ちに艦隊の出撃を発令させた。
第三機動部隊は『ナスカ』級打撃型航宙母艦4隻、『ラスコー』級突撃型巡洋艦8隻、『ククルカン』級襲撃型駆逐艦18隻で編成されており第十三艦隊よりかは強力であった。
「ナグモー司令、偵察機より敵艦隊を発見したとの事です」
「よし、先手を取ったぞ!! 直ちに攻撃隊を発艦せよ!!」
この時、ナグモー少将は勝利を確信していた。ちなみに『ナスカ』級の搭載機数は僅か24機であり四空母合わせても96機しかなかった。それでもナグモーにしてみればそれだけあれば十分だったのだ。
そして攻撃隊を発艦の最中に第十三艦隊から偵察に出ていたコスモタイガーに発見されたのである。
「三好君、直ぐに攻撃隊を出すべきだわ」
「いや、20機しかいないんだ。そう簡単に出したらやられちまうぞ」
新見とトチローはそう意見を出し合う。新見からしてみたらイスカンダルへの戦訓もあっただろう。対してトチローはガミラス戦役時に行われた航空戦の戦訓を出していた。両者とも平行線だったが将和にしてみたら既に答えは決まっていた。
「敵機動部隊の位置は捕捉しているんだろ?」
「え、えぇ。シリウス星系沖方位2-6-3の地点を航行しているわ」
「おけ。ならば……忍者の如く、ドロンと現れようか」
「忍者?」
笑みを浮かべる将和にたまたま艦橋に来ていたウーノが首を傾げる。
「そう、忍者だ」
「敵地球艦隊を確認した!! 右下方!!」
デズバテーター隊を率いる隊長は右下方を航行する地球艦隊を発見した。80機の攻撃隊は直ちに急降下をして攻撃を開始する。しかしーー。
「なッーー!?」
急降下中に艦隊はワープしたのだ。その為デズバテーター隊は攻撃のチャンスを逃してしまうのである。
「何!? 敵艦隊がワープしただと!?」
「は、はい。攻撃隊はその為攻撃出来なかったと……」
「逃げた……か……」
ナグモーはそう思うがどうも嫌な予感しかしなかった。
(わざわざ奴等が此処まで来たのに逃げたというのか? そんな事………まさかッ!?)
「重力震?」
「どうした?」
「さ、左舷に重力震反応が……」
「しまった!?」
ナグモーが叫んだ時、第十三艦隊は第三機動部隊左舷(機動部隊から見て十時方向)にワープアウトをしそのまま第三機動部隊に対し『伊勢』を先頭にした単縦陣で突撃を開始する。
「食い破れェ!!」
「主砲撃ちぃ方始めェ!!」
『伊勢』の前部48サンチ陽電子衝撃砲2基が砲撃を開始する。エネルギー弾はナグモーの旗艦ではない『ナスカ』級の装甲を貫通し、一瞬の間を於いて爆発する。
「敵空母1隻撃沈!!」
「撃ち続けろ!!」
更に『伊勢』は第三機動部隊の中に入る前に『ラスコー』級を1隻、『ククルカン』級3隻を撃沈した。第十三艦隊は第三機動部隊の輪に入り砲雷撃をしつつ降下して離脱する。
「ヌゥッ!? 被害知らせ!!」
「空母2隻、巡洋艦5隻、駆逐艦5隻撃沈されました!! 他に巡洋艦2隻、駆逐艦3隻被弾炎上中!!」
「提督、このままでは……」
「分かっている!! 全艦、直ちに反撃だ!!」
ナグモーはそう叫び、残存艦艇は直ちに第十三艦隊に砲撃を行うも波動防壁があったので被害は無かった。そして第十三艦隊はそのままワープするのである。
「地球艦隊、ワープしました!!」
「……深追いはするな。我々の任務はシリウス星系の防衛だ」
ナグモーはそう言うが、彼の右手は怒りで震えていた。
「この借り……必ず返すッ!!」
そう叫ぶナグモーであった。
「ハッハッハ。幸先は良いかもしれんな」
「ですが今は一刻も早く防衛艦隊と合流させませんと……」
「ん、それは分かっている。第十三艦隊にはなるべくの合流をと伝えろ」
「分かりました」
正信はそう指示を出す。そして太陽系の宇宙地図を見つめる。
「決戦は……十中八九の土星宙域になるかな……」
「スコット中将も同様との事です」
「ん……さて、どうなるか」
正信は宇宙地図を見ながらそう呟くのであった。そして2日後、地球防衛艦隊とガトランティス艦隊ーー第六遠征機動艦隊は土星宙域で衝突したのである。
「敵ガトランティス艦隊接近!! 距離12万宇宙キロ!!」
「スコット長官、敵は航空機を出しています。我が方も出しますか?」
「構う事はない。全艦対空戦闘用意、射程距離に入り次第砲撃開始せよ」
地球防衛艦隊旗艦『アンドロメダ』の艦橋では防衛艦隊司令長官のスコット中将はそう指示を出す。地球防衛艦隊は接近してくるガトランティス軍の航空機ーー艦上攻撃機『デスバテーター』ーーに対し対空射撃を実施しその苛烈な対空射撃はガトランティス軍の航空機を消耗させていく。
『地球艦隊が第二次戦闘空域に入りました!!』
「フフフ、思う壺だ」
バルゼーはニヤリと笑う。それを証明するかのように地球防衛艦隊では何処からともなく現れる魚雷攻撃を受けていた。
「長官、敵魚雷は何処からともなく現れます!!」
「落ち着け。潜空艦だ、照明弾を上げよ」
各艦から照明弾が打ち上げられ光の先には黒色に塗られている潜空艦を発見した。
『敵潜空艦多数発見!!』
「ファイヤー!!」
『アンドロメダ』の51サンチ陽電子衝撃砲が唸りを上げて砲撃を開始しそれに続けて主力戦艦の40.6サンチ陽電子衝撃砲、巡洋艦の20サンチ陽電子衝撃砲が次々と砲撃をして潜空艦を撃沈する。無論、潜空艦もただやられるばかりではなく沈む間際に魚雷を発射して巡洋艦を沈めたりしている。
『敵艦隊に第二空域を突破されました!!』
「慌てるな。敵艦隊は乱れている、包囲して一気に捻り潰せ!!」
バルゼーはそう言うがスコット中将の決断が早かった。
「先に仕掛ける。拡散波動砲発射用意!!」
「拡散波動砲発射用意!!」
新型の『アンドロメダ』は波動エンジンも新型であり『ヤマト』に比べたら波動砲のチャージする時間も短かった。そのため『アンドロメダ』は素早く拡散波動砲を整える事が出来た。
「拡散波動砲発射ァ!!」
『アンドロメダ』から連装の拡散波動砲が発射される。波動エネルギーは第六遠征機動艦隊の直前で無数に分かれて第六遠征機動艦隊に襲い掛かったのである。
「あ……ぁ……」
バルゼーは第六遠征機動艦隊の状況に唖然とした。バルゼーが誇る第六遠征機動艦隊は瞬く間に壊滅したのである。その時、バルゼーは通信が開いたのを感じた。
『バルゼー!!』
「た、大帝……」
『バルゼー、無様だぞ。もう良い、退けェ!!』
「は、はいッ!!」
残存の第六遠征機動艦隊は敗走し代わりに白色彗星が前面に展開した。地球防衛艦隊も白色彗星が現れた事で直ちに波動砲への展開をした。
「全艦マルチ隊形に展開せよ!!」
「スコット長官、後方にワープアウト反応有り。第十三艦隊です」
「やっと来たかミヨシの小僧め。早く戦列に加わるよう伝えろ」
この時、将和の第十三艦隊は漸くワープアウトを終えたばかりだった。
「スコット長官が早く戦列に加われと……」
「連続のワープアウトしてきたばかりに波動砲が撃てるか馬鹿野郎。左後方側面に移動して待機だ」
流石の将和もスコット中将の対応に呆れながら防衛艦隊の左後方側面に展開する。
「チッ仕方あるまい……」
「全艦拡散波動砲発射用意完了!!」
そこへ拡散波動砲の準備が完了した。スコット中将は直ちに発射させる事にしたのだ。
「全艦拡散波動砲発射ァ!!」
生き残っていた地球防衛艦隊は一斉に拡散波動砲を白色彗星に向けて発射するのであった。
しかし、白色彗星は拡散波動砲を受けても健在だったのである。
「反転180度!! 全艦離脱!!」
速度が止まらない彗星に堪らずスコット中将は全艦艇に退避命令を出す。しかし、将和は違う命令を全艦に出していた。
「司令、退避を!!」
「全艦に通信!! 最大出力で良いから入れろ!!」
「司令?」
「出力全開!! 速度一杯!! 左120度反転!! 全速離脱!! 急げェ!!」
それが地球防衛艦隊の命運を分けたのであった。
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