「宇宙って暗いんだねママ。もしかして宇宙は夜なの?」
「フフッそうじゃないわよアリシア」
二日後、荷物を纏めたプレシアとアリシアの二人は横須賀宇宙軍港に向かい待機していた巡洋艦『妙高』に乗艦して地球を出港してそのまま土星の衛星『タイタン』に向かっていた。その道中、二人は『妙高』艦長から記念にと火星~木星間でのワープを体験する事になる。(なお、『妙高』には新乗組員も大量にいたので表向きは新乗組員へのワープ体験としていた)
「あら、アリシアは飲まないの?」
「うん。大丈夫だよ、酔わないよ」
二人は衛生士の女性士官からワープの酔い止め薬を貰っていた。プレシアはそのまま服用したがアリシアは大丈夫と言って服用しなかった。
そして木星へワープ後、アリシアは酔い止め薬を飲まなかった事を盛大に後悔するのである。
「ブェェェェェェェ………ギモヂワルイィィィィィィィィィ………………」
「もうアリシアったら……」
「若い連中も半分は飲まずに酔ってますよ。まぁ恐れを知らぬからですなぁ」
ベッドに横たわるアリシアを看病するプレシアに軍医は苦笑しながらそう言う。
「まぁ良い体験でしょうな」
「そのようですね」
その後、『妙高』は無事に第一艦隊が駐留する衛星『タイタン』に到着したのである。
「やぁプレシアさん。わざわざ済まないな」
「いえいえ。娘にも良い体験が出来ると思いましたから……」
「あ、お兄ちゃん♪」
「よぅアリシア。また大きくなったな」
「エヘヘヘ」
第一艦隊司令部に出頭したプレシアとアリシアは将和と挨拶をする。そこへ扉が開いて入ってきたのはスカリエッティだった。
「プレシア・テスタロッサ……そうか、要請が通って来たのか」
「……もしかして貴方がジェイル・スカリエッティ?」
「如何にも。私が悪道と名があるジェイル・スカリエッティだ」
二人は互いに握手をする。どうやら同じ技術者同士もあり何か共感するのがあったのだろう。
「『スカリエッティ・レポート』で私とアリシアの経緯は存じています。あの爆発が私をも巻き込んでいたからこそ此処にいて今の私があると思うわ」
「人生……何があるかは分からないというモノかな」
「そういう事ですわね」
スカリエッティの言葉に苦笑するプレシアである。なお、『スカリエッティ・レポート』というのはスカリエッティ達と敵対していた時空管理局や魔法に関する事を詳細に記載されたレポートの事である。末端の兵士達にはまだ知られてはいないが将官達はレポートを見て知っていたのである。
後に防衛軍が時空管理局と接触した時はこのレポートを基に対処したのであった。
「仕事は明日から頼むよ。なに、貴女もいれば開発もスムーズになるさ」
「そう願うわ」
(何で一触即発みたいな雰囲気で話すの君ら……?)
何故か二人の雰囲気が怪しくなりかけるのに内心、ツッコミを入れる将和である。そして遅れて薫も入ってきた。
「遅くなりました。二人の受け入れ部屋を点検していたので」
「ん。プレシアさん、彼女は情報参謀の新見少佐だ」
「新見です。お噂は予々聞いております」
「プレシア・テスタロッサ技術大尉です。プレシアで構いませんわ新見さん」
「此方も薫で構いませんよ」
薫とプレシアが仲良く握手をする中、アリシアがジーッと将和を見つめる。
「どうしたアリシア?」
「……何かお兄ちゃん、似合わないね」
「……本当はそれが一番良いんだけどね」
そう言いながらアリシアの頭を撫でる将和である。そして薫が二人を部屋に連れて行こうとした時、薫が将和に耳打ちをする。
(今夜……空いてるかしら?)
(……空けておくよ)
「??」
将和の言葉に薫はフフッと笑い、聞こえていたが意味が分からなかったアリシアは首を傾げるのである。そして薫が二人を部屋に案内した後、荷物の整理をしていたプレシアにアリシアは質問する。なお、途中でリニスも合流して手伝っていた。
「ねぇママ、今夜空いてるってどういう事?」
「え、どうしたのアリシア?」
「さっきね、薫お姉さんがお兄ちゃんに今夜空いてる?って聞いてたの。お兄ちゃんは空けておくって言ってたかな……?」
「……え~と、それは……」
「お茶をしようって事ですよアリシア」
「そうなのリニス? なら私もお茶飲みたいー」
「アリシアにはまだ早いですよ。にが~い紅茶ですからね」
「ウェッ、あのお茶なのね……なら我慢する」
「うん、アリシアは良い子ですね」
『ありがとうリニス』
『良いのですよプレシア……全く、将和さんと薫さんにも困ったものです』
『そ、そのリニス……二人って……』
『まぁプレシアが想像している通りですよ』
『ッ』
リニスの念話にプレシアはズキッと胸を痛めた。その痛みは何の痛みかはプレシアもまだ理解していなかった。
『薫さんはガミラス戦役で恋人を亡くし、一旦は立ち直ってはいたんですが白色彗星戦役で今度は彼女の師匠的の上官を亡くしたようで……それで自暴自棄になっていたんですが将和が立ち直らせて今は半恋人同士のようですよ』
『……そう……』
リニスの説明にプレシアは何か引っ掛かる思いをしつつもそう言葉を出すだけであった。そしてその日の深夜、プレシアはたまたま寝つけが悪かったのでタイタンの景色を見ようと部屋を出て廊下を歩いていた。
「あら、此処は……」
そして案の定、プレシアは道に迷い廊下を歩いていたがたまたま三好将和と記載されたプレートのドアを見つけてノックをしようとしたが中から声が聞こえていた。それも将和だけではなく薫もいたのである。
(ッ)
プレシアは咄嗟に物陰に隠れると同時にドアがプシュッと開いて薫が先頭で出てきた。
「んー、良い気分転換になったわ」
「へいへい、そりゃよござんでしたね」
(あの二人……)
物陰から出てきた薫と将和にプレシアは眼を見開く。まさかとは思うが、夜戦をしていた後に出会したのかもしれない。そう思っていたら薫が将和に抱きついてそのまま口にキスをしたのである。
(~~~ッ!?)
叫びそうになるのを何とか堪えたプレシア。顔は既に真っ赤である。
「……フフ、またお願いね♪」
「次も腰をいわすぞ」
「抜かさないようにお願いするわ」
将和の言葉に薫は苦笑してプレシアが来た廊下をスキップして歩くのである。
「全く……」
そう言う将和であるがその表情は迷惑そうではなかった。そしてドアを閉めると一瞬の間を置いて物陰からプレシアが出てきたのである。
(あの二人……~~~ッ!?)
先程の光景を思い出したプレシアは顔を再度真っ赤にしつつその場を去るのであった。なお、道にはまた迷って何とか自室にたどり着いたのは一時間後の事であった。
「沢村、どんな感じだ?」
「あ、篠さん……見ての通りだよ」
月面航空隊に所属する旧『ヤマト』乗組員の沢村と篠原、二人は月面の滑走路でその上空を飛行する1機のコスモタイガー2を見ていた。そのコスモタイガー2は上手く飛行はしているがどうもぎこちない飛行であった。
「お嬢……表面上は平気そうにしているけど……」
「そりゃあ……そうか……宇宙に脱出したは良いがいつ救助が来るか分からない状況だったからな……三好隊長が救助したのが奇跡に近いところだな」
篠原と沢村はそう会話をする。上空を飛行するコスモタイガー2に乗って操縦する山本玲は白色彗星戦役の最終決戦時、乗機のコスモタイガー1が被弾して脱出したのは良いが救助されるまでの間は宇宙空間を漂流していた。いつ酸素が切れるか分からない状況であり、山本の精神がよく持ったと言われる程である。
軽傷だった事もあり直ぐに復帰して飛行したのは良いが操縦がどうもぎこちないモノとなり無理に行おうとすれば吐く有り様であった。
「ッ……ォォッ、オォッ」
ところ代わって飛行中の山本、噎せたと思ったらそのまま吐き出した。おかげで昼間に食べたモノがヘルメットの中にぶち撒かれた。それでも山本は吐いた臭いを我慢しつつ操縦桿を握るが再び吐き出す。
結局、着陸は自動操縦に任せて着陸後はヘルメットのままトイレに駆け込むのであった。
「はぁ……はぁ……(どうしたら……私はどうしたら良い……?)」
便器に向かって吐く中、山本はそう自問するのであるが答えは見つかりそうになかったのである。
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