次回から新しいモノになります。
第四十四話
「もうすぐ火星基地だな」
この時、元『伊勢』戦術長の北野中尉は第十パトロール艇の臨時艇長として火星に向かう途中であった。そして火星宙域まで到着すると火星基地に通信を入れる。
「此方第十パトロール艇、予定通り2030に火星基地に到着予定です」
『此方火星基地。おぅ北野か。お前、未確認飛行物体の情報は掌握していないのか?』
「未確認飛行物体? 何だそれは?」
『知らないのか? 太陽系外から侵入してきている。ガトランティスの残存艦隊かもしれないからパトロール艇は月に避難した方がいいぞ』
「何だって? 了解した。直ちに反転して月基地に向かう」
北野は直ちに反転して月基地に向かうのである。そして時間は数時間、前に戻る。
土星沖ではモートン少将の第一艦隊が集結し未確認飛行物体への迎撃準備を行っていた。
「土星を絶対防衛圏とする!! 総員、力を尽くせ!!」
第一艦隊旗艦『エジンコート』の艦橋でモートン少将はそう指示を出していた。その時、オペレーターが叫ぶ。
「未確認飛行物体との距離、凡そ10万宇宙キロ!!」
「波動砲、発射用意!! 収束モードで発射する!!」
「了解、収束モードで発射します!!」
各艦は波動砲の準備に移行するも未確認飛行物体ーー重核子爆弾ーーの先端が青白く光る。
「何か反応があります!?」
「何……?」
それは一瞬だった。先端から青白く光ると思ったらあっという間に赤色状の光線に変わり第一艦隊を覆い尽くし、尽くし終えると土星を覆い尽くしたのであった。
「な、何……が……」
モートン少将はそれ以上言えなかった。自身の身体はそのまま提督席にもたれ掛かり動けず目を閉じてしまう。そしてモートン少将を筆頭に第一艦隊の乗員は永遠に目覚める事はなかった。
第一艦隊の乗員達と土星基地は重核子爆弾から放たれた『殺戮光線』により脳細胞を破壊されてしまい戦死したのであった。だが、第一艦隊には量産型アナライザーが1隻に3台配備されており量産型アナライザーは乗員達の戦死を掌握すると艦艇の帰還措置を取り艦隊司令部に事態を通達するのである。
「何!? 第一艦隊の乗員が総員戦死じゃと!?」
「は、はい。量産型アナライザーからの報告では確かにと……」
(……マズイのぅ、モートンがやられるとは……)
「長官、直ちに防衛軍の空間騎兵隊及び各国の陸軍に対し戦闘準備を……」
「直ちに展開せよ。それと大統領にも避難してもらえ。奴は邪魔じゃよ」
「ハッ」
「さて……藤堂、君は先に地下都市に行け」
「長官!?」
「ファッファッファッ。心配せんでも良い、ワシはまだ死なんよ」
驚く藤堂を他所に正信はニヤリと笑う。そしてタブレットを操作して藤堂に見せる。
「良いな? 地下都市の彼処じゃよ」
「……分かりました」
正信の言葉に藤堂は頭を下げ、数人の幕僚らを引き連れて地下都市に向かうのである。
「さて虎徹。奴等はこのまま此処に来るじゃろうな」
「ですな。既に空間騎兵隊二個連隊を配備させています」
「ウム……」
正信と虎徹が話すのを他所に未確認飛行物体ーー重核子爆弾ーーは防衛軍の迎撃をものともせずにメトロポリス付近の地表に着陸するのである。
「恐らく敵は我々があの物体を調査しようと近づいたところを上空からの奇襲で攻撃するじゃろ。航空隊は上空警戒をしつつ奇襲に備えよ」
「分かりました。直ちに」
なお、大統領は避難する事を拒みテレビを通じて無闇に騒いだりしない事を市民に通達した。それをプレシア達は正信の実家で観ていた。
「ママ……」
「大丈夫よアリシア」
「そうだね、万が一に備えて地下都市に潜る事はしておいた方が良いかもね」
「地下都市ですか?」
「えぇ。元は内惑星戦争で火星自治宇宙軍が隕石を地球に降らせてきたからその守りとして地下深くに都市を築いたのよ」
「へぇ……そんな事があったんですね」
「ガミラス戦役の時も地上が部分的に放射能で汚染されたものだから地下都市を利用していたわね」
正信の嫁知美はそう言いながら「都市に潜る準備をしましょうかね……」と呟くのであった。プレシアは不意に空を見つめる、綺麗な満月だった。
「……?」
だが満月を見つめていると光がポツポツと出てきていた。不審に思ったプレシアは知美に声をかける。
「知美さん、あれって……」
「……チッ、防衛軍め。裏を掛かれたわね」
「知美さん……?」
満月を見ていた知美は表情を急変させる。そしてプレシアに声を荒げる。
「プレシアちゃん、急いで手荷物を……いや、間に合わない。アリシアちゃんを連れて来るのよ!! 早く!!」
「ッまさか……」
「そのまさかよ。奴等、上空から……地球の軌道上から降下してきたのよ!! 急いで!!」
「は、はい!! アリシア!!」
知美の言葉にプレシアは蹴られたように廊下を走り出す。そう、暗黒星団帝国は重核子爆弾を地表に降ろしてそれを囮に地球の軌道上から武装兵を降下させたのである。元日本宇宙軍大佐まで登り詰めた知美も瞬時に理解して家から地下都市の避難を優先させたのである。
そしてそれは周辺の家々に住む者達も状況を理解して地下都市に我先にと逃げ出したのである。
「武装降下兵じゃと!? しもうた、その手があったか!!」
空間騎兵隊からの報告を受けた正信は舌打ちをする。予想はしていた筈だった。だが、この攻撃は予想していなかったのだ。
「それで状況は?」
「現在は警察が市民に地下都市への避難誘導を。武装機動隊と陸軍、空間騎兵隊が防戦をしていますが……状況は悦ばしくないとの……」
「……此処も直に危ないの。防戦の準備はするのじゃ」
「ハッ!!」
正信は画面からメトロポリスを見る。あちこちから火災が上がっていた。恐らくは暗黒星団帝国の破壊活動だろう。
「ツメが甘かったのぅ……」
「いえ、まだ巻き返しは可能です」
「シリウスとケンタウルスか?」
「はい。それに『三笠』もいます」
「ファッファッファッ。成る程の、じゃが今は……」
正信がそう呟いた時、司令部が揺れた。そこへ伝令が走ってきた。
「報告!! 敵が司令部に向かってきます!! 凡そ一個師団規模!! しかも三脚戦車も二個連隊はいます!!」
「チッ、早い。流石じゃな」
「確かに。ですが時間稼ぎは出来るでしょう」
「じゃろうな」
斯くして司令部も敵武装降下兵と戦闘に移行するのである。そしてプレシア達は避難を続けていた。
「プレシアちゃん、此方よ!!」
「はい!!」
三人は大通りから避難しようとしたが地下都市へ逃げる市民達がごった返していたので裏道を利用して逃げていた。時折、避難民の死体が路上に折り重なっていた。プレシアとアリシアは吐きそうになるもそれを何とか堪えて足を前に出して走る。
「此方だ、早く!!」
そこへ避難誘導していた武装機動隊の隊員が叫んでいた。隊員の後ろには地下都市への入口があった。
「あれが入口よ!!」
「はい!!」
三人は駆け込もうとしたが、隊員が上空から降下してきた降下兵に撃たれた。
「グァッ!?」
「ッ!?」
隊員が撃たれたのを見た瞬間、知美が二人を押し倒す。そこへ銃撃が放たれる。
「知美さん!?」
「大丈夫……かすり傷よ……」
知美は負傷したが大事には至らなかった。だが知美は意識昏倒していた。そこへ一人の降下兵がレーザー小銃を構えて歩み寄る。
「女子供か……」
その時、プレシアの手元の地面には武装機動隊員が持っていた南部14年式拳銃が転がっていた。これを持ち撃てば……でも外れたら……でも向こうが撃ってきたら三人は……。
『プレシア・テスタロッサ、覚悟を示せ』
不意に将和の言葉が脳裏に甦る。迷っていたら時間がない。
〖マスター。私はマスターの最善の道を支持します〗
そこへプレシアの相棒ともいえるデバイスのバルディッシュ(試作品)が念話で話しかけてきた。
〖時間を掛ければかける程不利なるのは明らかです〗
(うん……そうよね、そうねバルディッシュ!!)
そしてプレシアは武装降下兵が一瞬の隙を突いて拳銃を手に取る。安全装置は既に解除されていた。
「覚悟って……覚悟って何なのかどんなのか分かんないわ……でも……でも……!?」
ゆらりと立ち上がり構えるプレシアに降下兵は舌打ちをして小銃をプレシアに向けた。
「ッ!? 貴様ーーッ」
「私はアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!」
そして一発の銃声が響くのであった。
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