「何とか年末には帰って来れたな……」
年もそろそろ暮れようとしている西暦2204年12月20日、将和の第十三艦隊はガルマン・ガミラス星からの第七次移民船団を護衛して第十一番惑星へと入港していた。この後は各艦隊が引き継いで移民船団を護衛していくのである。
護衛の任を解かれた第十三艦隊はそのまま地球に戻り年末年始は地球で過ごす事になったのだ。
「今年の年始は家で餅が喰えそうだ」
「私の家族もご同伴しようかな」
「ハハハ、オカンにもそう言っておくよ」
スカリエッティの言葉に将和は苦笑しながらそう言う。将和の実家もスカリエッティ一家や薫に玲達が多く出入りする事が多くなってきたので改築していたりする。
「ハハハ、孫の顔が早く見れそうじゃの」
家の改築を聞いた正信がニヤニヤしながら笑っていたが将和は気にしない事にした。
「しかし……相変わらずシャルバート教信者は多いな」
「地球で例えたらキリスト教みたいなモノですからね」
今回の第七次移民船団には多くのシャルバート教信者が乗船していた。というのもガルマン・ガミラスは元よりボラー連邦、ゼニー合衆国もシャルバート教信者を迫害していたのだ。だからこそシャルバート教信者も安寧を求めて火星の移住を希望したのだ。
無論、地球連邦も対策はした上である。
「信者を増やして地球連邦への武力行使をしないのであれば火星への移住を認める」
正信はシャルバート教信者の中でも長老格と会談をした上で長老格も武力行使の放棄を認めての移住承諾だったのだ。
「まぁそれでも警戒はすべきじゃろうのぅ」
「ですな」
正信も過去に宗教がどのような事をしていたのかは知っているので正信も基地艦隊は元より火星軌道を周回する二段式40.6サンチ三連装陽電子衝撃衛星砲を4基も設置しているのである。
(早くシャルバート星見つけて引き取ってもらった方がはえぇな……)
そう思う将和であった。そして第十三艦隊は31日に地球の呉宇宙港へ帰還したのである。
「さて、帰るかな」
「そうですな。今年は妻に怒られなくて済みそうです」
将和の言葉にチェン参謀長もそう呟くのである。その後、実家に帰ると台所には母親の友美にプレシア、そして戦闘機人となったサーダが夕食を作っており更には年越し蕎麦の準備もしていた。
「お帰り将和。もうちょいで出来るよ」
「あいよ。着替えてくるわ」
友美にそう言われ将和も二階に上がって服を着替えて降りてくるのである。降りてきたら年越しに呼ばれた薫と玲、メルダ、リンディ、ウーノにトーレとスカリエッティらも来ていた。なお、トチローとクアットロ、セッテは3人でデートしているらしい。(血涙を流すスカリエッティからの報告)
「お、来た来た」
「ちょ、薫。初っぱなから缶ビール開けるんじゃねぇよ」
「固い事はいいっこ無しよ」
「そういう事じゃねぇっての……」
最近、薫の酒癖が悪くなってきているのに頭を抱える将和であった。その後、全員で夕食のすき焼きをつつき合うのである。
「タマゴタマゴ……」
「はいタマゴよ将和君」
「あ、ありがとうプレシアさん」
「……何か彼処の空間だけ初々しいぽくないかしら?」
「ならお酒を控えるべきじゃないですか?」
「絡み酒の貴女に言われたくはないね玲」
「笑い上戸が何か言いましたか?」
「貴女達ね……」
「ハッハッハ、すき焼き食べないなら私が食べるぞ」
「ハムッ…ハムッ……この美味しさに私は今、感動しているッ」
「賑やかだねぇ」
「そうですねジェイルさん」
皆が思い思いにすき焼きを堪能するのであった。その後、皆が年越し蕎麦を食べつつ除夜の鐘を聞いてから西暦2205年が幕を開けた。
そして酒飲み組が撃沈する中で正信、将和、スカリエッティ、サーダの4人が細やかながらの飲みをしていた。
「改めて結婚おめでとうスカリエッティ君、サーダ嬢」
「ありがとうございます三好元帥」
「はい、それに敵に与していた私に此処までの恩情……感謝しきれません」
「良いんじゃよサーダ嬢。確かに去年は敵同士ではあったが今は味方で手を取り合っているんじゃ。変えられるのは未来だけという事じゃな」
頭を下げるサーダに正信はフォッフォッフォッと笑いながらコップに注がれた日本酒を飲む。
「幸いにも新居は隣にしておいたからの。何かあった時はワシの妻に頼るが良い」
「ありがとうございます」
「それで……話とは何だ親父?」
「フム……実はサーダ嬢に聞きたい事があったのじゃ」
「聞きたい事……ですか?」
「かつて、貴女が暗黒星団帝国に身を寄せていた時、銀河系の勢力範囲とかを知っておられたかの?」
「勢力範囲ですか? 確かあの段階では新興国のガルマン・ガミラス、ボラー連邦、そしてゼニー合衆国が一番の勢力範囲ですが……」
「……まさか親父……」
「……バレル大使からの情報でな、ガルマン・ガミラスとボラー連邦が本格的な戦争を開始したようじゃ」
『ッ』
正信の言葉に将和らは息を飲む。
「これまでは局地的な戦闘じゃったが……今のところはガルマン・ガミラス軍が有利に戦闘をしておるようじゃ……だからこそ暗黒星団帝国におったサーダ嬢が何か情報を知っておるか確認したかったのじゃよ」
「そうだったのですね……確かに暗黒星団帝国も銀河系に進出して調査をしておりました……我々の身体に合うかどうかです」
「あー……そういう事か」
「はい。それで高確率で一致したのが……地球人でした。なので地球を狙う事になりました」
「成る程のぅ」
「しかし、ガルマン・ガミラスとボラーが戦うならカールセン中将のケンタウルス座方面艦隊が……」
「そこなのじゃ」
将和の言葉に正信は再度コップに日本酒を並々に注いで飲み干す。
「アルファ・ケンタウリのプロキシマ・ケンタウリbは開拓が進められておる。テラフォーミングも順調じゃが、完全に地球化の環境になるにはまだ10年は掛かるのぅ」
「ケンタウルス座方面艦隊の増強をするので?」
「無論な。じゃがあまり増強してはボラーを刺激するやもしれん。ガルマン・ガミラスにはバレル大使を通じて伝えておるわい」
「……新年早々から怪しげな雰囲気ですね」
「せめて5年は平和の時間が欲しいわい。孫の顔も見れないからのぅ」
「あのな……」
「ところで将和。誰にするかは決めたのか?」
「……………………………決められるかよッ」
正信の言葉に将和はそう言ってコップに注がれた日本酒を飲み干して新しくコップに注ぐ。なお、隣ではスカリエッティが機嫌悪くしていた。そりゃ当然だろう。ウーノは将和の毒牙に掛かり、トーレも最近怪しいのだ。気が気でないのだ。
「フォッフォッフォッ。お主、何か勘違いしてないかの?」
「勘違い?」
「ワシが言いたいのは正式に結婚する人じゃよ。闇での事はワシも口を挟まんわい」
「……………………」
「ワシも友美にするまでには多くの事があったからの。お主も穏便にしておくのじゃよ」
「……聞きたくなかった。親父の闇……」
「フォッフォッフォッ」
そう言って笑う正信であった。そして場所は代わりガルマン・ガミラス星となる。
「キーリング、戦況はどうか?」
「はっ、ご説明致します」
ガルマン・ガミラス総統デスラーの問いに参謀総長のネルン・キーリング上級大将が席を立ち上がりメインパネルに切り替えてデスラーに説明をする。
「我が軍は最大限出せる6個空間機甲師団でボラー連邦への侵攻を開始し現在は約31%まで占領地域を拡げております」
「ウム。ゼニー合衆国へは?」
「ヒステンバーガー大将が3個空間機甲師団を率いて作戦中です」
「ウム」
「総統、オリオン腕辺境方面は如何されますか?」
「…………地球の事か…………」
「はっ。銀河系統一となると地球連邦をも含む事に……」
「……地球連邦は対等な同盟国だ。そこは勘違いするなキーリング」
「はっ、失礼しました」
「だが……地球連邦との協議は必要だろう。バレルにもその旨を伝えるのだ」
「分かりました。そのように」
「但しだ……オリオン腕方面はバジウド星系までにしておこう」
「確かバジウド星系のバース星はボラー連邦寄り……」
「そういう事だキーリング」
「分かりました、直ちに。そうであればオリオン腕方面艦隊が必要になります」
「ウム……適任者はいるか?」
「はっ……ガイデル大将は如何でしょうか?」
「ガイデルか……宜しい。キーリングに任せよう」
ガルマン星解放戦時、ガルマン人ながらレジスタンスのリーダーの一人として活躍していたのがヴィルへリム・ガイデルであった。頭に血が昇るのが難点だがこれまでの戦争でデスラーを支えてきた一人でもあったのだ。
斯くしてガイデル大将は就役したばかりの機動要塞『ヴェルダン』を旗艦にして第18空間機甲師団、再編成したフォムト・バーガー大佐の第6空間機甲旅団を中心にした方面艦隊でバジウド星系攻略を念頭に行動が開始されたのであった。
そしてボラー連邦の首都惑星『ラスコー』ではベムラーゼ首相が激怒していた。
「僅か3日でポゥリャンド戦線が突破されたというのか!?」
「はっ。面目次第もありません」
ベムラーゼの激怒をゴルサコフ総参謀長が一身に受けていた。
「それで、被害は?」
「はっ。ポゥリャンド戦線に配備していた第十主力艦隊はほぼ全滅、更に増援に駆けつけた第十一主力艦隊も壊滅状態です」
「………………………」
「また、第十主力艦隊提督のブジュンカリ中将は責任の重さを痛感し自決、第十一主力艦隊提督のラリバルフ中将は戦死しました」
「……敗因は何処と見ている?」
「ブジュンカリ中将の索敵ミスかと。ガルマン・ガミラス軍が増強していたのは確認済みでしたが……」
「ならブジュンカリの責任は重いな。ブジュンカリ一族の資産を没収の上、強制収容惑星へ送るのだ」
「ははっ」
「ゴルサコフ、ポゥリャンド戦線は如何致す配分かね?」
「はっ、ペトロフ中将の第七主力艦隊、マリノフスキー中将の第九主力艦隊の2個艦隊を派遣致します」
「宜しい。それと壊滅した2個艦隊の早急な回復に務めよ」
「ははッ!!」
「それとゴルサコフ……地球連邦をどう見るべきだと思うかね?」
「地球連邦をですか?」
「左様。奴等、シャルバート教信者を受け入れて移民をしているようだ」
「……まさかシャルバート教を保護するため……」
「可能性は否定出来ん」
「首相閣下、地球連邦はもしかしたら惑星『ファンタム』に幽閉したルダ王女の情報を探っているのでは……?」
「何? ルダ王女だと?」
ゴルサコフの言葉にベムラーゼは眼を見開く。数年前にベムラーゼはシャルバート王室の血筋を引くルダ王女を辺境惑星である『ファンタム』に幽閉したのだ。
「う~む……」
「如何されますか?」
「警戒は必要だな。警戒に割ける艦隊はあるかね?」
「今のところは……ただ割けるのであればゼニー合衆国のアリェスカ戦線かと……」
「アリェスカ戦線なら何個割けるのだ?」
「良くてハーキンス中将の第八主力艦隊とザハロフ中将の第十二主力艦隊かと思います」
「宜しい。ゴルサコフ、貴様に任せる。ゼニー合衆国への戦闘も暫くは小康状態にさせよう」
「分かりました。直ちにそのように」
ボラー連邦の方針は決まった。直ちに艦隊の移動が行われ戦力の再編成が開始されたのである。そして銀河系を巡る戦いに地球も巻き込まれるのであった。
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