この時、第三艦隊と移民船団を襲ったのはボラー連邦本国から派遣されてきたボラー連邦宇宙軍第九艦隊と第十艦隊であった。
「全艦砲撃を集中せよ!! ガルマン・ガミラス艦隊が来る前に地球艦隊と移民船団を撃滅するのだ!!」
第九艦隊司令官のイーワン・ペットロフ中将はそう叫ぶ。彼と同期である第十艦隊司令官のパシナンヴェル・ロトミストロフリ中将は肩を竦めながらも第九艦隊を支援する事にした。
「やれやれ、イーワンはまたしても動くか。仕方ない、我々は支援に回ろう」
1個艦隊60隻で編成されているボラー連邦艦隊はその多さを利用して第三艦隊と移民船団を包囲しようとするのである。しかしクブルスリー中将もそれくらいは読んでおり移民船団を後方に下げつつ、移民船団がワープするまでの時間稼ぎを行うのである。
「移民船団を守れ!! 第二三巡洋戦隊は拡散波動砲発射用意!! 残りの艦艇は砲撃しつつ第二三巡洋戦隊と移民船団を援護せよ!!」
『Dakor(ダコール)!!』
第二三巡洋戦隊の生き残りである巡洋艦『アルジェリー』『フォッシュ』は拡散波動砲の準備を急がせる。更に後退した第三二航空戦隊の航宙母艦『ベアルン』『クレマンソー』からコスモタイガー隊と雷撃隊が順次発艦、編隊を組むとそのままボラー連邦の第九艦隊へと突撃を開始するのである。
「野郎、艦隊を喰わしゃしねぇぞ!!」
雷撃隊は両翼に搭載した04式大型空間ミサイルを発射しボラー艦艇の戦艦A型『アルハンゲリンスク』型主力戦艦に叩き込むのである。
「突撃、突撃!!」
航空隊の攻撃でさしものボラー第九艦隊は乱れた。
「イカン、後退だ!!」
ボラー第九艦隊が後退するがその時間は第三艦隊にとっては好機だった。
「移民船団の状況は!?」
「ワープ準備完了しました!! いつでもワープ可能です!!」
「なら順次ワープさせよ!!」
移民船団10隻と護衛の駆逐隊は次々とワープを敢行するのである。そして拡散波動砲の準備をしていた『アルジェリー』『フォッシュ』は拡散波動砲を発射する。
「こ、これは……ッ」
後退していたペットロフ中将は拡散波動砲に貫かれた僚艦に絶句していた。敵は切札たるものを装備していたのだ。
『慌てるなイーワン!!』
「おぉ、パシナンヴェルか……」
第九艦隊を支援していた第十艦隊が第九艦隊の前に出てきたのだ。
『お前は後方に下がれ。その間に態勢を建て直すんだ!!』
「……済まないパシナンヴェル……全艦後退!! 後退しつつ陣形を立て直せ!!」
こうして第九艦隊と第十艦隊が入れ替わりになり第十艦隊が第三艦隊を砲撃してくる。取り分け、拡散波動砲を発射した後に再エネルギーの補充をしていた『アルジェリー』『フォッシュ』は撃破され『フォッシュ』が轟沈するのである。
「司令、このままでは……」
「……移民船団は?」
「護衛の駆逐隊と共に全艦ワープしました!!」
「なら……我々も逃げるとしようッ。全艦、紡錘陣形に移行、奴等の中央突破を図る!!」
「はッ!!」
第三艦隊は砲撃しつつ損傷艦艇を中心に紡錘陣形へと移行、前方への突進を開始した。
「前方への火力を集中せよ!! 側面には構うな!!」
紡錘陣形へ移行した第三艦隊にパシナンヴェルの第十艦隊もその意図には気付いた。
「クッ。奴等め、中央突破を図るぞ!! 火力を敵艦隊中央に集中せよ!!」
パシナンヴェルは砲撃を強化させるが紡錘陣形の先頭にいたのは旗艦『リシュリュー』であり『リシュリュー』の主砲、装甲はボラー連邦のどの艦艇よりも厚かったのだ。
「今だ!! 全艦最大戦速!!」
「むッ!?」
第十艦隊の前衛が一瞬崩れたのをクブルスリー中将は見逃さず、最大戦速で戦場から離脱するのである。
『パシナンヴェル、追うか?』
「いや……我々の任務はバジウド星系を守備する事だ。深追いすればガルマン・ガミラス艦隊も出てくるだろう。帰還しよう……まぁ移民船団の航跡は特定はしたからな」
そうして半壊した2個艦隊はバジウド星系に帰還するのであった。このバジウド星系沖海戦は地球・ボラーとの最初の衝突であった。そして第三艦隊が移民船団のワープアウトした場所に目指すとそこには壊滅した移民船団と護衛艦隊がいたのである。
「こ、これは……」
「司令、駆逐艦『シュルクーフ』より通信です!!」
「繋げろ」
『クブルスリー司令……申し訳ありません……』
「何があったのだ?」
『ボラー艦隊は……待ち伏せをしておりました……あの2個艦隊だけではなかったのです!!』
「な、何だと!?」
ワープアウトした移民船団と護衛艦隊を襲ったのはバジウド星系惑星『バース』で駐屯していたバース星艦隊とボラー連邦第十五艦隊であった。
「……済まないがこれは戦争だ……」
バース艦隊司令官のクリオラス・ラム少将は申し訳なさそうな表情をするも直ぐに表情を切り替えて砲撃を開始した。結局のところ移民船団は2隻を残して壊滅し駆逐隊も『シュルクーフ』以下3隻までなりながらも何とか残りの2隻を守り通したのである。
「……そうか。我々も一先ずは救助活動に当たろう」
結果、移民の民間人は約2000名弱となり残りは宇宙に消えてしまったのである。この悲劇は永く地球連邦宇宙海軍に語り継がれる事になる海戦でもあったのであった。
「……クブルスリーはよくやったものじゃよ」
防衛司令部で報告を受けた正信は長い沈黙の末、そう告げる。
「ですが長官、ボラー連邦が明確に我々と敵対をする……決定事項になりました」
「ウム……奴等、畑から人と軍艦を栽培出来るようじゃな……」
正信は溜め息を吐く。壊滅した第三艦隊は新規艦艇で補充して暫く太陽系内での訓練を行うしかあるまい。
「……もう3個の遠洋型艦隊を創設するしかあるまいの……しかし人をどうするかじゃが……」
「人事局に打診してリストの作成に当たります」
「ん。頼む」
芹沢の言葉に正信は頷くのである。そして届けられたリストを見て正信は3人の将官をリストアップしてよびだしたのである。
「久しぶりじゃな」
「は、お久しぶりになります」
「またミヨシ閣下の下で戦えるのは光栄です」
「閣下、私は出来れば火星に……」
「分かっておる分かっておる」
カイザル髭の将官の言葉に正信は苦笑する。
「マクファティ・ティアンム中将、第四艦隊司令官に就任せよ」
「お任せ下さい」
「御統浩一郎中将、ボロディン少将……中将の第六艦隊司令官に就任せよ」
「ハッ」
「ムンフバト・ウランフ少将、中将に昇進の上、第十艦隊司令官に就任せよ」
「心得ました」
3人はそれぞれ正信に敬礼をする。
「ティアンムとウランフは遠洋型の艦隊じゃ。御統はボロディンのを近海型を受け持つからの」
「そうなりますとボロディン中将は……」
「ウム。遠洋型の艦隊じゃな」
「やはり先日のバジウド星系沖海戦が……」
「あぁ、響いておる。本来なら4個艦隊の創設もあったのじゃがな、クブルスリーの第三艦隊が壊滅しておるからそこに補充するとなると3個艦隊しか出来んわい」
「成る程。我々の任務は重大ですな」
「本当なら福部とワイアットも呼びたかったが……あの二人は宇宙戦士訓練学校と宇宙戦士防衛大学の校長をそれぞれしとるからの。あまり後方が不足になるのは良くないから代わりに暇そうに教官をしていた御主達に白羽の矢が立ってな」
「暇そうとは……これはまた頑張りませんとな」
正信の言葉にティアンム中将は苦笑する。
「暫くは錬成訓練になろう。宙(そら)に上がる日、楽しみにしておるぞ」
正信の言葉に3人は敬礼をするのであった。その頃、将和の第十三艦隊は冥王星沖にいた。第十三艦隊も18回目の移民船団護衛の任務に就いていた。
「バジウド星系か……」
「パトロール艦で長距離偵察を行いますか?」
「……そうなるな……。防衛司令部に問い合わせるか」
チュン参謀長の言葉に将和は頷き、正信の防衛司令部に問い合わせる。防衛司令部も許可をし第十三艦隊にはパトロール艦10隻が追加配備されるのである。
そして移民船12隻を伴い第十三艦隊はガルマン・ガミラス帝国へと向かうのであった。
地球連邦宇宙海軍
第四艦隊
司令官 マクファティ・ティアンム中将
旗艦『タイタン』
第四戦隊
『エイジャックス』『トラファルガー』『ハウ』『ゴライアス』
第十八巡洋戦隊
『エドガー』『テリブル』『アリアドニ』『ユーローパ』
第二六巡洋戦隊
『ラトーナ』『アイシス』『ミナーヴァ』『ペガサス』
第四航空戦隊
『マルタ』『アーガス』
第四宙雷戦隊
『ダイドー』
2個駆逐隊
『フェリト』『コンテスト』『スナッパー』『バンシー』
『グリフォン』『コブラ』『サクセス』『ボニット』
第四一宙雷戦隊
『ブラック・プリンス』
2個駆逐隊
『エディン』『ネス』『ニス』『ストアー』
『ガリィ』『ズールー』『ターター』『アマゾン』
第十艦隊
司令官 ムンフバト・ウランフ中将
旗艦『盤古』
第十戦隊
『トンブリ』『スリ・アユタヤ』『海威』『順天』
第十巡洋戦隊
『タクシン』『ナレスアン』『マハ・チャクリ』『プル・ルワン』
第二十巡洋戦隊
『チャオプラヤー』『バンパコン』『クラブリ』『サイブリ』
第十宙雷戦隊
『メクロン』
2個駆逐隊
『ナレースワン』『タークシン』『定辺』『親仁』
『大同』『利民』『恩民』『恵民』
第二十宙雷戦隊
『江清』
2個駆逐隊
『陽春』『熙春』『海天』『海陽』
『靖海』『海龍』『海鳳』『海王』
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