「ラム司令、監視衛星からの報告です。敵数個艦隊がバジウド星系に侵攻してくるようです」
「む……やはり……か……」
副官からの報告にバジウド星系『バース』星守備艦隊副司令官のクリオラス・ラム少将は頷く。
「ボラー艦隊は?」
「駐屯していた2個ボラー艦隊は出撃しましたッ」
「………」
「馬鹿な。各個出撃しては包囲殲滅されるぞッ。ボラーは何を学んできたんだッ」
「やめたまえ副官。それで司令官は何と?」
「ハッ。バース艦隊も準備出来次第出撃せよとの事です」
「ん。準備出来次第出撃せよ」
そしてバース艦隊約70隻は準備出来次第出撃するのである。また、先に出撃した2個ボラー艦隊は接触したリッケ艦隊、バーガー艦隊と交戦していた。
「遠距離砲戦に終始するのよ!! その隙にバーガーが突撃するわ!!」
リッケ艦隊は遠距離砲戦に徹し、ボラー艦隊が前進してきたら後退しボラー艦隊が後退すれば前進しその姿勢は崩さなかった。業を煮やしたボラー艦隊は最大速度で突撃しようとしたが、左右に重力震を探知したのである。
「重力震……まさかッ!?」
そのまさかであった。バーガー艦隊はボラー艦隊の左右にワープしてそのまま突撃してきたのである。
「バイザック(平らげろ)!!」
バーガーは旗艦『ランベア』を先頭に敵ボラー艦隊の上方から下方にかけて降下しつつ砲雷撃を敢行する。バーガー艦隊から放たれた陽電子ビームがボラー艦艇の装甲を貫き爆発四散し隊列が崩れていく。更に下方から上方にかけて上昇するバーガー艦隊の第二部隊も砲雷撃を行い2個ボラー艦隊は完全に指揮系統は寸断されたのである。その混乱状態の2個ボラー艦隊に更なる絶望が待っていた。
ヒステンバーガー率いる主力空間機甲師団の到着であった。
「確実に敵を殲滅せよ!!」
ヒステンバーガーは容赦なく砲雷撃を2個ボラー艦隊に叩き込み2個ボラー艦隊の残存艦艇は敗走するがヒステンバーガーは見逃す事なく1隻、また1隻と追い詰めて撃沈していくのである。
「ヒステンバーガー長官、敵ボラー艦隊は全滅しました!!」
「ウム。幸先は良い……(しかし肝心のバース艦隊はいないではないか……)」
副官からの報告にヒステンバーガーは頷きつつもバース艦隊がいなかった事に内心焦りを感じていた。そして一つの答えを導き出したのである。
「まさか……」
「長官?」
「しまった!? そういう事か、イカン!? 後方の上陸船団が危ない!!」
ヒステンバーガーはバース艦隊はボラー艦隊を見捨て自軍の後方に展開している上陸船団を攻撃する事を踏んだのである。
「ミヨシ中将に緊急連絡だ!!」
ヒステンバーガーは直ちに将和の旗艦『三笠』に通信を入れたのであるが……一足遅かったのである。
「重力震……敵艦隊です!!」
「方向は?」
「左舷10時の方向、凡そ10万宇宙キロ!!」
「確かボラー艦艇が搭載する主砲の射程距離は4万宇宙キロです」
「ならまだ時間はあるな」
「長官、敵の出方が分かりません。此処はガルマン・ガミラス軍の警備艦隊を差し向けては?」
チュン参謀長はそう具申するが将和は首を横に振る。
「いや、彼等は基本的に警備艦隊だ。そこまで実戦経験は無いだろう」
「なら我が第十三艦隊を分割して対処せざるを得ません」
チュンはタブレットを操作して将和に渡す。
第一部隊
旗艦『三笠』
第十三戦隊
『河内』『摂津』
第十四巡洋戦隊
『高雄』『愛宕』『摩耶』『鳥海』
第十三航空戦隊第二小隊
『イントレピッド』
【コスモタイガー54機 雷撃機36機 シーガル2機】
第十三防空戦隊
『アトランタ』『五十鈴』
第十三宙雷戦隊
『矢矧』
第十駆逐隊
『夕雲』『巻雲』『風雲』『秋雲』
第十三駆逐隊
『長波』『巻波』『高波』『大波』
第十七駆逐隊
『谷風』『浦風』『浜風』『磯風』
第六十二駆逐隊
『新月』『若月』『霜月』『冬月』
第二部隊
第二三戦隊
『ネルソン』『ロドニー』『アイオワ』『陸奥』
第二四巡洋戦隊
『妙高』『那智』『羽黒』『足柄』
第三四巡洋戦隊
『八雲』『鈴谷』『プリンツ・オイゲン』
第十三航空戦隊第一小隊
『サラトガ』
【コスモタイガー36機 雷撃機36機 シーガル2機】
第十七駆逐隊
『谷風』『浦風』『浜風』『磯風』
第六十二駆逐隊
『新月』『若月』『霜月』『冬月』
「第二部隊は副司令官のフィッシャー少将にお任せするのが適任かと」
「分かった、それでいこう。……全艦に通達、艦隊を分割し敵艦隊に対処する!!」
第十三艦隊は艦隊を分割しフィッシャー少将に率いられた第二部隊が左舷10時の敵艦隊に向かうのである。
「参謀長……もうイッパイはいるな?」
「……でしょうな」
将和の問いにチュン参謀長は頷くのであった。左舷10時の敵艦隊に急行したフィッシャー少将の第二部隊は敵艦隊ーーバース艦隊と交戦を開始する。
「ファイヤー!!」
フィッシャー少将が乗艦する『ネルソン』が50口径51サンチ三連装陽電子衝撃砲で砲撃を開始するのを皮切りに『ロドニー』『Iowa』『陸奥』等も砲撃を開始した。
「……レーダー手、敵艦隊の数は分かるかね?」
「は、数ですか?」
「そうだ」
「は、お待ち下さい」
レーダー手は敵艦隊の数を数え、それをフィッシャーに報告する。
「敵艦隊は35隻です」
「……少ないな」
「では……」
「ミヨシ中将なら気付いているだろう。チュン参謀長もいるしな。我々はこのまま敵艦隊を攻撃、速やかに殲滅した後に反転し上陸船団護衛に戻る」
「アイサー!!」
第二部隊は前進速度を速め敵艦隊への砲撃を強めるのである。そして旗艦『三笠』では新たな敵艦隊を探知していた。
「右舷2時に重力震、距離は……極めて近い!!」
「何ッ!?」
そしてワープしてきたのはバース艦隊の別動隊であった。
「正面に敵地球艦隊!? 距離近い!!」
「このままぶちこむのだ!!」
そして『三笠』の左舷とラム司令が乗艦する『ラジェンドラ』の右舷が接触したのである。
「主砲、撃ェ!!」
『ラジェンドラ』の四連装陽電子砲が『三笠』の前部二番砲塔を砲撃、これを破壊した。更に連装空間機銃が『三笠』の艦橋を銃撃したが艦橋を破壊する事は無かった。しかし、一部がその衝撃で破壊し第一艦橋天井にあった装甲板が落下し将和に降り注いだのである。
「ッ!?」
将和は咄嗟に身体を捻り艦長席から落ちた。だが、装甲板の破片が将和の右肩を切り裂いたのである。
「グゥッ!?」
「長官!?」
「構うな!! 後部主砲、用意!!」
「用意宜し!!」
「撃ェェェッ!!」
『三笠』は『ラジェンドラ』が後方に躍り出た瞬間、後部主砲を発射、『ラジェンドラ』は後部の陽電子砲が破壊された。
「損害は軽微です!!」
「そのまま船団に突撃せよ!! 奴等の喉元を食い破るのだ!!」
生き残っていたバース艦隊19隻が最大速度で上陸船団に突撃する。しかし、警備艦隊に阻まれた。そして『三笠』では軍医のイネス・フレサンジュ大尉が艦橋に来て将和の手当てをしていた。
「酷い傷ね」
「そんなにかイネス大尉?」
「説明しましょう」
「後で聞く………」
将和は艦橋のメンバーを見るが誰も彼も負傷しており無傷だったのはトーレとその隣にいたリンディくらいだった。
「参謀長、指揮は取れるか?」
「右腕が折れてます。せめて応急措置だけでも……」
「艦長も肋骨折れてますよ」
「後ろの肋骨は痛い」(体験談)
そんなやり取りをするが将和はリンディに視線を向ける。
「ハラオウン提督……一時的に『三笠』と第一部隊の指揮を任せる」
「ちょ、三好長官!?」
「応急措置までの間だ。給料分の仕事はしてもらわないとな」
「………………………分かりました。多少納得しませんが何とかやりましょう」
リンディは葛藤の末にそう決断し艦長席に座る。ちなみに将和はその隣で治療を受けている。
「敵艦隊は?」
「上陸船団を攻撃しようとしていますが警備艦隊に阻まれています」
「……なら我が艦隊は敵艦隊後方に展開しそのまま突撃、乱戦に持ち込みます」
(お、意外と武闘派か?)
リンディの判断に将和はそう思う。そして第一部隊はバース艦隊後方に移動しそのまま突撃を開始する。
「後方から敵地球艦隊が接近して来ます!!」
「乱戦に持ち込み腹か……船団への攻撃は?」
「駄目です、敵ガルマン・ガミラス艦隊の防御に阻まれています!!」
(思ったよりも固い……だがこのままぐずぐずしていては敵の主力も駆けつけてくる……しかし……)
ラムは決断する。
「撤退だ、反転せよ!!」
ラムは再戦を決断した。直ちにバース艦隊は反転するがこの世界での反転は死亡フラグである。バース艦隊後方は『三笠』の第一部隊が突撃してきておりまたしても反航戦での砲撃戦となったのである。
「左舷に敵バース艦隊!! 距離1万4000宇宙キロ!!」
「主砲左砲戦、用意!!」
「主砲用意宜し!! いつでも撃てるぞハラオウン提督!!」
「発射ァ!!」
『三笠』は無傷で残っていた50口径51サンチ三連装陽電子衝撃砲で砲撃する。それに続いて第十三戦隊の『河内』『摂津』、第十四巡洋戦隊の『高雄』『愛宕』『摩耶』『鳥海』もそれぞれ砲撃を開始する。更に『矢矧』以下の第十三宙雷戦隊も突撃し空間魚雷をバース艦隊に叩き込むのである。
バース艦隊は1隻、また1隻と数を減らしていった。
「……味方は後、何隻残っている?」
「は、本艦と護衛艦2隻を残すのみです……」
「……そうか……」
ラム司令はこれ以上の交戦は不可能と判断した。ラムは艦隊の攻撃を停止させ機関も停止させた。そして『三笠』に通信を入れたのである。
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