「御初にお目にかかります。地球連邦軍宇宙海軍第十三艦隊司令長官の三好中将です」
「バース国宇宙軍艦隊副司令官のラム少将です」
ラム少将のバース残存艦艇は降伏を申し入れ、応急手当てから復帰した将和も降伏を受け入れた。それに伴い残存艦3隻で負傷していた負傷者も第十三艦隊で受け入れたのである。
「負傷者の受け入れ、誠にありがとうございます」
「いえ、戦闘が終われば多くの血を流す必要はありません」
「仰る通りです。我々バース国は血を流し過ぎた……」
(やっぱ大体は原作通りか)
ラム司令の言葉に将和はそう思い、席に座らせた。
「ラム司令、我々は交戦国でありますので一先ずの捕虜という形になるのはご承知ください」
「無論です……ですが三好中将、部下達やバースの処遇が決まり次第、私を軍法会議にかけてもらいたい」
「それはまた……どうしてです?」
「……以前、私は地球艦隊とこの星系沖で戦い、地球へ移民する船団を攻撃し多くの人命を損なわせました。その責任を取らねばなりません」
「ッ……あの事件にラム司令も関わっていたのですか……」
「はい。バジウド星系の付近を航行するので我々も出撃を……ボラー艦隊からの命令ではありますが命令を発したのは私です。なのでその責を負わねばなりません」
「…………………………」
ラム司令の言葉に将和は出されていたコーヒーを啜る。熱かったコーヒーは今は冷めてしまい冷たいコーヒーになっていた。
「……分かりました。上にはそのように報告致しましょう」
「ありがとうございます三好中将」
そう言ってラム司令は将和に頭を下げるのであった。尚、後にラム司令は地球に移送され軍法会議を受けるが判決は本人にとっては予期していない結末だった。
それはさておき、ヒステンバーガーの主力隊やバーガー艦隊等も騒ぎを聞き付けて上陸船団に合流した。
『申し訳ないミヨシ中将』
「いえ、上陸船団は無事なので問題はありませんよ。なのでそう気落とさなくても大丈夫です」
『そう言って頂けて幸いです』
ヒステンバーガーは汗を拭い、改めて将和に視線を移す。
『攻略日に変更はありません。このままバジウド星系のバース星を一挙に攻略します』
「分かりました。陣形はこのままで?」
『その通りです』
「分かりました」
バジウド星系攻略部隊は陣形を整えてからの翌日、バジウド星系に侵攻を開始した。バジウド星系の各惑星では迎撃態勢に移行されボラー連邦から供与されたレーザー衛星等が稼働しガルマン・ガミラス艦隊ーーバーガー艦隊とリッケ艦隊を攻撃するが出力が弱いレーザーでは太刀打ちは出来なかった。
「えぇい!! 本国からの増援はまだなのか!?」
「駄目です、まだ数週間は掛かるとの事で……」
バジウド星系第四惑星『バース』星ではバジウド星系総督のヴィルキ・ボローズは地団駄を踏む。
「予備艦隊が次元潜航艦にやられてなければ……ッ」
ボローズは2個ボラー艦隊とバース艦隊が壊滅した報告を受けて予備艦隊で脱出しようとしたがバース星の海に密かに進出していたフラーケン少将の次元潜航艦隊の雷撃により宇宙港で大破し朽ち果てた状態となっていた。
「ボローズ総督!? 最終防衛ラインが突破されました!! 『バース』星に敵艦隊到着まで凡そ2ディルス(時間)!!」
「おのれ……おのれおのれェ!!」
「総督!?」
「直ちに地下司令部へ移動!! 奴等を迎え撃つぞ!!」
『ハッ!!』
ボローズら司令部の者達は地下司令部へと移動し迎撃を行うのであった。その後、上陸船団は『バース』星へと降り立ち、当初は激しい戦闘があったもののバーガー艦隊等の航空支援もありガルマン・ガミラス陸軍はサルバーS-Ⅵ型重戦車を多数揚陸させ前線に投入してからは状況は一気にガルマン・ガミラス軍に変わったのである。
「成る程ね……やはり戦車は陸の王者に変わり無しか………」
「なら暫くは空間騎兵隊でも戦車も量産されますね」
観戦武官として空間騎兵隊第20空間連隊の連隊長となっていた古野間大佐は前線司令部で副官の宗像中尉と話していた。
「ま、戦車もだがこの戦闘を詳しく報告せねゃならんがな」
「防衛軍も基本的に防御ですからね。侵攻はほぼありませんし……」
「そういう事だな」
古野間と宗像はそう話しつつ前線からの無線に耳を傾けるのである。
「フム、バジウド星系は無事に攻略したようじゃな」
「はい。陸戦で約2000弱の死傷者は出たようですがバジウド星系はガルマン・ガミラスの占領下に入りました」
地球連邦防衛軍司令部で正信は芹沢からの報告を受けていた。
「ボラー連邦の総督らを捕虜にしたようですが釈放したようです」
「ホッホッホ。来るなという警告も兼ねておるんじゃろ。まぁその総督が本国に戻って死刑にでもされたら状況は変わるがの……」
「バジウド星系を取り返しにですか?」
「それもあろうの。じゃが……」
正信はそう言ってタブレットを操作して机に太陽系の宙域図を出す。
「案外、奴等は此方に来るかもしれんのぅ……」
「長官の勘……ですかな?」
「勘なんてもんじゃない。短絡的な思考を持つ者ならそうするからの」
そう言って笑う正信である。
「しかしそうなると……冥王星は警戒態勢を敷くべきじゃな。三木と……エンケラドゥスのホウメイには伝えておくかの」
「直ちに手配致します」
「身体の方はどうかしら?」
「まぁまぁって事よ」
『三笠』艦長室のベッドで横になっていた将和は薫、ウーノらの面会を受けた。薫達は軽傷だったので直ぐに医務室からの退院はしたが将和は右肩の切り傷に肋骨の骨折もあり一週間程の自室での入院であった。
「第十三艦隊は暫くはバジウド星系に留まりボラー連邦の出方を見る……という事になったわ」
「だろうな……」
ウーノの言葉に将和はベッドの背を挙げてそう答える。
「ま、骨休みというところだな」
「ですが長官の傷は……」
「肋骨の骨折はギプス使えないからな。そう心配すんな玲」
心配そうな表情をする玲に将和は笑みを浮かべる。肋骨の骨折はほんとに痛いのである。(経験談)
「でも……心配したのは本当よ? 無茶はしないでね?」
「……勿論だよ」
「ちょっ、頭をくしゃくしゃにしないでよ!?」
薫の言葉に将和は苦笑しつつ薫の頭をくしゃくしゃにして怒る薫であった。
「後艦長、骨に響くから程々にね。魚定食増やします」
「サーセン」
主計長であるリニスに真顔で謝る将和であった。
バジウド星系での治安維持が進む中での2ヶ月後の西暦2205年の大晦日、第十三艦隊はバジウド星系にて駐屯していた。
「半分交代での新年の祝いは許可する」
将和も士気に関わる事なので許可しており各艦でも大晦日前から酒が飲まれていた。
「参謀長、ギプスは取れたのか?」
「えぇ、何とかです」
将和は一人だったチュン参謀長と酒を酌み交わしていた。二人とも酔いは回っているのか頰は共にうっすらと赤みを浴びていた。
「あれから警戒はしていたが此方には来なかったな」
「ですな。まぁ来ない方が楽で助かります」
「だな」
チュン参謀長の言葉に将和は苦笑する。バジウド星系を占領してからヒステンバーガーや将和はボラー連邦の逆襲に来ると思っていたが予想は外れ、ボラーは再侵攻をしてこなかったのだ。
「だが……「飲んでる将和ぅ?」げっ、酔っ払いが……」
将和が口を開こうとした時、酔っ払った薫が将和にしなだれ掛かってきた。ちなみに薫の周囲には珍しく酔っ払ったリニスとトーレもいたりする。
「まぁ飲め艦長ッ」
「ングッ!? て、これ度数高いな!?」
「ウォッカですから。ショットなんで大丈夫ですよぉ」
「大丈夫だったらそんなへべれけとちゃうよな!?」
「……長官、御相手したあげて下さい」
「ちょ、参謀長……」
「あらぁ、パン屋の二代目も分かってるじゃない。じゃあ将和を借りるわね」
「よーし、負かすぞ艦長!!」
「ちょ、持ち上げるなトーレ!?」
そう言って将和はトーレにお姫様抱っこをされて泥沼化した飲み場に行かされるのである。そして一人残って酒を飲むチュンだがそこへ副艦長の大村がやってきた。
「やぁ大村さん、一杯どうかな?」
「そうしたいのは山々ですが……私はまだ勤務でしてね。ノンアルで御勘弁を」
「それは残念。ならサンドイッチでもどうです?」
「それは有り難いです。頂きます」
そして大村がサンドイッチを口に頬張る中、大村はチュンに質問する。
「先ほど、艦長との会話を耳にしましたが……此処に来ないとなると……」
「えぇ……大村さんもお気付きかと思います」
チュンはそう言って空になったコップに氷とウイスキーを溢れるギリギリまで入れてそれをグイッと飲む。腹にアルコールが入り急激な熱を感じつつも口を開いた。
「……恐らくボラー連邦は太陽系ーー地球に来るでしょう」
「第十一番惑星駐屯の第33護衛隊より緊急電!! 『ボラー連邦艦隊出現、凡ソ300隻余リ』以上です!!」
「……冥王星の全艦は直ちに出撃するぞ!! 第33護衛隊からの続報は?」
「緊急電から7分……続報はありません……」
「………………」
「護衛隊と言っても巡洋艦2隻にパトロール艦4隻の隊……」
「……無駄死にはさせんよ」
冥王星艦隊司令官の三木准将は冥王星艦隊全艦を出動させオールトの雲まで進出するのである。無論、防衛軍司令部も増援を出していた。
「ホウメイの土星艦隊は?」
「既に『エンケラドゥス』を出撃中!! 火星の御統中将の第六艦隊も出撃中です!!」
「更にはティアンム中将の第四艦隊とウランフ中将の第十艦隊はアステロイド・ベルトから出撃しています!!」
「ウム……」
「長官、山南長官の第一艦隊も……」
「あやつは長距離航海練習訓練だったな……連絡は出しているがな。恐らく……」
「ケンタウルス座方面艦隊より緊急電!! ケンタウルス座方面にも敵ボラー連邦艦隊が出現!! ケンタウルス座方面艦隊と第一艦隊及び第一航空艦隊で対処するとの事です!!」
「……ムゥ。最悪の想定で来たかの……」
さしもの正信も冷や汗を覚えるのであった。その頃、三木准将の冥王星艦隊はオールトの雲で敵ボラー連邦艦隊と交戦していた。
「撃ェ!!」
三木准将は旗艦『榛名』の艦橋にて吠える。総勢26隻の冥王星艦隊は戦闘開始から49分で『クロトガ』型戦艦6隻、『アマンガ』型ミサイル戦艦7隻、護衛艦19隻を撃沈していたがボラー艦隊の数はそれを補える程の艦艇数であった。
「敵艦艇が350隻……些か祝杯には量が多すぎたな……」
「『筑紫』にミサイル命中!! 『筑紫』轟沈!!」
「駆逐艦『ラマートン』大破、航行不能!!」
「『鞍馬』『伊吹』に拡散波動砲を撃たせろ!! それ以外の艦は『鞍馬』『伊吹』を援護しろ!!」
指示された『鞍馬』『伊吹』は拡散波動砲の発射態勢に入る。それを見抜いたボラー艦隊も2隻に集中砲火を浴びせるが2隻を守るように冥王星艦隊も盾となりこの砲撃で『津軽』『平戸』『浅間』が撃沈された。
しかし、その分の時間稼ぎには成功したのである。
「拡散波動砲、発射ァ!!」
『鞍馬』『伊吹』は拡散波動砲を発射する。2隻から放たれた拡散波動砲のエネルギー弾はボラー艦隊までの中間点からは放射状に拡散しまるでシャワーのようにエネルギー弾がボラー艦隊に降り注ぐのである。ボラー艦隊は逃げようにもオールトの雲を構成している小惑星群に囲まれており逃げる場所がそう簡単にはなかったのである。
拡散波動砲によりボラー艦隊は瞬く間に150隻は撃沈された。しかし、まだ200隻余りは健在していたのである。
「クッ……」
「ッ。後方からワープアウト反応!!」
「何!? 敵か!?」
「いえ、これは……識別確認ッ、土星艦隊です!!」
「来たかホウメイ!!」
援軍の到着に三木准将は笑みを浮かべるのであった。
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