プレシア・アリシアの場合1
「そう言えばアリシアちゃん、学校はどうするの?」
プレシア達が将和の実家に厄介になる事になっての数日後、夕食中に知子は思い出したかのようにそうプレシアに言う。
「そう……ですね。アリシアももうすぐ六歳になりますから……」
「なら、来年になるわね。近所に小学校があるし一度散歩がてらに見てきたらどうかしら?」
「学校? どんなところかなぁ」
「フフ、友達が出来るところよアリシア」
「友達? すごーいッ」
「あぁ、そこで暇そうにしている息子も連れて行っていいわよ」
「暇そうって……まぁ明日明後日は非番だから良いけど……」
「ありがとうお兄ちゃんッ」
「いいって事よ」
次の日、将和にプレシアとアリシアは散歩を兼ねて近くの小学校の見学に来ていた。
「おぉー。これが学校なんだね」
「これは12歳まで学べる学校だ。それ以降は卒業して中学校ーー15歳まで学べる学校がある。その上は高校、大学とあってそれぞれ高校は18歳まで、大学は22歳まで学べる施設だ」
「へぇー、そんな歳まで勉強するんだねッ」
「ちなみに、これら学生にとって免れない事がある」
「そ、それは……?」
「……宿題という奴だ。この魔物から逃れるためには早くに宿題を終わらせないといけない……」
「ッ。何か強そう……」
(早めに終わらせれば問題無いような……)
将和の言葉にそう思うプレシアであった。そして学校を後にし近くの公園で遊ぼうとしていた時、女の子が泣く声が聞こえてきた。
「返して、カチューシャ返してよぉ」
「フン、返して欲しかったら此処まで来なさいよ」
金髪の女の子がジャングルジムを登って上から女の子が付けていたと思われる白いカチューシャを持って遊んでいた。
(……あの二人、どう見ても原作キャラなんだが……)
カチューシャを持ち、遊んでいる金髪の女の子はどう見てもアリサ・バニングスであり、泣いている女の子はカチューシャを外したverの月村すずかであった。
「………ッ……」
「ア、アリシア……」
「まぁまぁ」
サッと走り出したアリシアをプレシアは呼び止めようとするが将和がそれを制した。
「将和さんッ」
「我々は見守りましょう。それしか出来ません」
走り出したアリシアはそのままジャングルジムに登り、あっという間にアリサ似の女の子からカチューシャを奪い取りあっという間にジャングルジムを降りてすずか似にカチューシャを渡す。
「あッ!?」
「へっへーん。はいッ」
「ふぇっ。あ、ありがとう……」
「ちょっと、何すんのよ!!」
「いたいけな女の子を苛めて楽しい?」
「ッ!?」
表情を変えたアリシアの言葉にアリサ似は言葉に詰まる。
「……アンタに何が……ッ」
「いや、分かるわけないでしょ。悲撃のヒロイン症候群に掛かる暇があるならそんなつまらない事をしてるよりやれる事あるじゃないッ」
アリシアはそう言ってアリサ似に右手を出す。
「………………」
「遊ぶわよ」
「………へ?」
「だから遊ぶのよ。ほら、貴女もよ」
「ふぇ?」
「ホラホラ、取り敢えず缶けりでもするわよ。最初、私から蹴るわね!!」
そう言うや否やアリシアはゴミ箱から缶を取り出して蹴る。
「ほら、捕まえるわよ!!」
「ッ!? 逃げるわよ!!」
「あっ……」
アリサ似はすずか似の手を引いてアリシアから逃げるのである。その様子を将和とプレシア、更にはアリサ似のSPらしき黒服達が見守るのである。
「……アンタ……やるわね……はぁ……はぁ……」
「フッ……そっちも……ね……」
「だ、大丈夫……?」
芝生の上で大の字で寝転がる二人にすずか似が心配そうに言うが二人とも大丈夫そうである。その後ろの草むらではアリサ似のSPらしき黒服達も安堵の息を吐いていたりする。
「……さっきの事、取り消すわ」
アリサ似はそう言って立ち上がり、アリシアに手を差し出す。
「私はアリサ、アリサ・バニングスよ」
「アリシア、私はアリシア・テスタロッサ。つい最近この辺に来たばかりよ」
「あら、それで見かけない顔だったのね。それで貴女は?」
「え?」
「名前よ貴女の名前」
「……つ、月村すずか……」
「すずかね、良い名前じゃないッ」
「ッ……あ、ありがとう……」
笑うアリサ似にすずか似もニヘリと笑みを浮かべる。
「貴女……すずかも悪かったわね、からかったりして」
「い、いいよアリサちゃん」
アリサがすずかに謝るとすずかは慌てながらも許したのである。その光景をアリシアはニヒヒヒと笑みを浮かべる。将和達はその光景を見つつと深い溜め息を吐いたのである。
「何とか……なりましたわね……」
「子は少なからずああやって自立をしていくものですよ。それにアリシアちゃんは良い母親を持ったモノですからね」
「まぁお上手ね」
肩を竦めながら苦笑する将和にプレシアも釣られて苦笑するのであった。その日からアリシア達は三人で遊ぶようになったのである。それはアリシアが二人が通う小学校に転入してからも変化は無いのである。
「それにしても最近の防衛軍の事業は凄いものよ」
いつものように授業が終わった学校帰り、三人は近くの喫茶店でケーキを食べていた。昔からの老舗な店ではあるが値段は一般大衆が出せるカネでケーキやコーヒー等を出すので少なからずの人気はあり常連も多い店である。
「事業って?」
「船の生産よ生産。ウチのパパも喜んではいたけどね」
「まぁ……暗黒星団との戦いで艦艇も被害はあるものね」
ケーキを口に入れながら喋るアリサにすずかはそう言って微笑みながら紅茶を飲む。そしてアリシアは初挑戦のコーヒーをチビチビ飲んでいた。
「むぅ……苦いなぁ……」
「アリシアちゃんにはまだ早かったかもね」
「すずかとアリサは紅茶があるから良いじゃない。ママやお兄ちゃんもよく飲んでるから美味しいと思ったのにぃ~」
「オホホホ、アリシアの口はまだ子どもね」
「ムッ。なら大人のアリサはケーキいらないねッ」
「あ、こらッ!!」
「フフッ」
パクッとアリサが食べていたイチゴのショートケーキを半分も食べたアリシアに怒るアリサを他所にすずかは笑うのであった。
「ふぅ」
防衛軍技術局に入局したプレシアは正信らからお願いされた魔法を利用した技術の転用を研究していた。なお、テレポート技術は後に利用される事になる。
今は研究が一段落したので背筋を伸ばしながらコーヒーをコップに入れている。
(それにしても……不思議な縁ね……)
ズズッとコーヒーを啜りながらプレシアはこれまでの事を思う。
(あの時、将和さんが私達を見つけてなかったら……ゾッとするわね)
人生に何が起きるかは分からない、プレシアはアリシアと共にそれを身を以て経験し身に染みたのである。
(……フフッ、たまにはケーキでも作ってみようかしら……)
プレシアはアリシアと将和の三人で作るケーキを想像し苦笑しつつ再び研究の再開をするのであった。
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