煽るように言ってみる。
「で? 代表候補生って何だ?」
「……こほん。国家代表IS操縦者の、候補生として選出されたエリートの事ですわ。単語から想像すればお分かりでしょうに」
「へー、そうだったのかー」
我ながら見事な棒読み。素晴らしいね。
「そう、エリートなのですわ!」
テンション高いな、この縦ロール。俺が冷めた目で見ていることにも気が付いてなさそうだ。
「本来ならわたくしのような選ばれた人間とは、クラスを同じになることだけでも奇跡……幸運なのですわ。そこのところ、もう少し理解していただけるかしら?」
調子に乗って何かほざいてるが気にしたら負けだろう。気にしたらストレスが貯まるだけだ。こういう手合いには、適度に無視するかおちょくっておくのが精神衛生上、一番だ。
「ほう。それはラッキーだな」
「……わたくしを馬鹿にしていますの?」
勿論だ、と言いたいのを堪え、口は別の言葉を紡ぎ出す。
「おいおい、幸運だと言ったのは他ならぬ君だろう」
「大体貴方、ISに関する基本的な事すら何も知らないくせに、よくこの学園に入れましたわね? 唯一、男でISを操縦出来ると聞いておりましたから、少しくらいは知的さを感じさせるかと思っていましたけど、とんだ期待はずれですわ」
「そいつは勝手な期待ってもんだ。そもそも、この学園に入ったのは政府からの指示に寄るものであって、そこに俺個人の意志は介在しない。理由は、まあ言わなくても分かるよな? “エリート”なんだしな?」
「と、当然ですわ。まあ、でもわたくしは優しい性格ですから、貴方のような人間にも優しくして差し上げますわ。ISの事で分からないことがあれば、まあ……泣いて頼むというのなら、教えて差し上げてもよくってよ。何せわたくし、入試で唯一教官を倒したエリート中のエリートですから」
……色々と言いたいことはあるが、取り敢えず。
「取り敢えずお前さん、“優しい”っていう単語の意味を調べて来ると良い。ああ、何なら俺の辞書を貸してやろうか? 君の国のものとは書いてある内容が違うのかも知れないからな?」
「……なッ…………!?」
突然の俺の暴言に反応できなかったのか、口ごもるオルコットさん。おいおい、止まってる暇は無いぞ?
「あと、入試ってあれかな? ISを動かして戦うってやつ?」
「それ以外にございませんわよ?」
「なんだ。……俺も倒したぜ? 教官を」
「……はい?」
左手のブレスレットに目をやる。残り、15秒。
「……わたくしだけ、とお聞きしましたが?」
「そりゃ『女子の中では』っていうオチじゃないのか?」
それに対してオルコットさんは口を開きかけるが、残念だったな、タイムリミットだ。
キーンコーンカーンコーン、とチャイムが鳴った。
「…………ッ! ……また後で来ますわ! 逃げないことね! 良くって!?」
良くないに決まってるだろうが。二度と来んな。
「しかし、見事に典型的な捨て台詞だ。小物臭がしていて実に良い。おちょくった甲斐があるというものだ。そう思わないかい? 相川さん」
右隣りの席に座っている相川さん(フルネームは相川清香、出席番号一番)に振ってみた。
「え!? あれ、わざとだったの!?」
「当たり前だろ。流石にあの程度の常識は知ってるさ」
「…あははー……。……ていうか、あたしの名前、覚えててくれたんだね。あたしの事は清香でいいよ?」
「オッケー。これからよろしくな? 清香」
「うんっ! こちらこそ!」
相川さん、改め清香は、眩しい笑顔でそう言った。いいね、女の子には笑顔が一番だ。
4時間目。
「それでは、この時間は先程言ったように、先にクラス代表者を決めてから授業に入る」
うーむ、学級委員みたいなものだろうか?
「クラス代表者とはそのままの意味だ。要はクラス長とか学級委員とか、そのようなものだ。一度決まると一年間変更は無いからそのつもりで。対抗戦だけでなく、生徒会の開く会議や委員会への出席を行う」
ざわざわ、と教室がざわめく。面倒そうだな、俺は御免被りたい。
「はいっ! 織斑くんを推薦します!」
しまった。フラグだったか。
「はいはい! 私もそれが良いと思います!」
「ほう。候補者は織斑一夏……他にはいないか? 自薦他薦は問わんぞ」
誰も手を挙げない。…え? このまま決定しちゃう感じですかね?
「え? 俺がやんの?」
「諦めろ。さて、他にはいないか? いないなら無選挙当選だぞ」
んー。まあ、やれって言われたらやるけどさ。そろそろあの縦ロールが動きそうだ。
「待ってください! 納得がいきませんわ!」
ほら来た。バンッと机を叩いて、オルコットさんが立ち上がった。こっそりと携帯端末のスイッチを入れる。
「そのような選出は認められません! 大体、男がクラス代表だなんていい恥さらしですわ! このセシリア・オルコットに、そのような屈辱を一年間味わえとおっしゃるのですか!?」
あっはっはっ、お前の存在自体がクラスの恥さらしになりそうだけどな。
誰も何も言わないことに気を良くしたのか、オルコットさんは続ける。
「実力から行けばわたくしがクラス代表になるのは必然。それを、ただ物珍しいからという理由だけで極東の猿にされては困りますわ! わたくしはこのような島国までIS技術の修練に来ているのであって、サーカスをする気は毛頭ございませんわ!」
……全く。いいのかね? 仮にもイギリスって言う国の看板背負って来ている代表候補生の君が、こんなに堂々と他国を侮辱して。軽率に過ぎるのではないだろうか。
「いいですか!? クラス代表は実力トップがなるべき、そしてそれはわたくしですわ! 大体、文化的に後進的な国で暮らさなくてはいけないこと自体、わたくしにとっては耐え難い苦痛で──」
オルコットさんや。ヒートアップするのは良いが、周りの空気を読んでくれないだろうか。主に日本出身の娘達の発してる空気がすごい険悪なのだが。
ええい仕方がない、誰も何も言わない様だし俺が言ってやろうじゃないか……これ以上は聞くに堪えない。スイッチ、オフ。
「なあ、オルコット」
「──ッ! なんですの!?」
少しだけ殺気を添えて、静かに言う。
「……お前さん、ちょっと黙れよ。……耳障りだ」
周りの女子が、ヒッ、と小さく悲鳴をあげる。ごめんな。怖がらせちゃって。
「そ、そもそも、貴方が──」
尚もオルコットは何かを言おうとするが、
「黙れ、と。俺はそう言った筈だぞ?」
その言葉で完全に沈黙する。
「そもそも、君は仮にも代表候補生なのだろう? つまり、国の看板を背負ってここにいるはずだ。そんな存在である君が、多くの人が聞いているこの場で堂々と他国を侮辱した。これは二国間の外交問題に発展してもおかしくない。おまけに、この国はISを開発した国だ。……さて、この事が何を意味するのか。分からない君じゃないだろう? 勿論、相応の覚悟があっての発言なんだろうね?」
俺の言葉にみるみるオルコットの顔が青くなっていく。ようやく、自分がしでかしたことを自覚したようだ。
さて、どうするかな? 君は。
「…………け、」
「……『け』?」
「決闘ですわ!」
……何故そうなるんだ。
0時に更新する予定だったんだ。借りて来た映画見ながらガンプラ作ってたら深夜の1時を過ぎていたけど。そんなこんなでおはこんにちばんは、斎藤一樹です。ISAT、第四話でございます。
今回の小ネタ。
・よろしい、ならば戦争だ……HELLSINGより。実は私はあまり読んだ事が無い。今度ちゃんと読んでみたいな…。クリーク!クリーク!クリーク!
今更ですが、この作品では色々なものが原作とは変わって来ています。それはキャラクターの性格だったり立ち位置だったり、ISの構造だったり成り立ちだったり。例を挙げるならば、この世界のISに非固定浮遊部位(アンロックユニット)は存在しません。他にも様々な事が、少しずつ…或いは大幅に異なっています。その辺りの違いも、楽しみながら考察しながら読んでいただければいいな、と思っています。もしよろしければ、どうかこの物語にもうしばらくのお付き合いを。