それから、みんなで連れ立って学食に向かった。
「ねーねー、おりむー?」
布仏さんが話しかけてくる。
「……その『おりむー』っていうの、俺の事か?」
まさかとは思うが。
「んー、そだよー。織斑だから、おりむー。どう、どう〜?」
何とも珍妙なあだ名が付いてしまった。しかも感想を求めて来やがりましたよ、このお嬢さんは。俺にどうしろと。
「……あー、まあ、君が良いならそれで良いや」
や、決してコメントが面倒になったとかではない。断じて。
「んー、じゃあじゃあ、おりむーも私にあだ名付けていいよ〜?」
なんか、交換条件っぽい何かを提示された。
「……あだ名、ねぇ?」
さて困った。
「……わくわく」
口で言うなよ。
「……そうだな、『のほほん』とかどうだ? キムタク的にも、雰囲気的にも」
因みにキムタク的と言ったのは、キムタクというあだ名の由来(木村拓哉→
「おー」
そう言って、布仏さん改めのほほんさんは嬉しそうに両手を挙げた。気に入ってもらえたようで何よりだ。彼女は全体的にだぼっとした改造制服(例:明らかに長すぎる袖、ブラウス→ハイネック、等)を着けているため、腕につられて袖がばさりと動いた。何だこの娘、ものすごい癒される。行動のひとつひとつが可愛い。衝動的に頭を撫でてしまっていた……。……のほほんさん、恐ろしい子……!
箒達は箒達で、少々ぎこちないながらも会話をしているらしかった。鷹月さんも清香も、箒に少し気を使いつつも、普通に自然に会話をしている。うん。あの娘達からの誘いを受けて良かった。この分なら、少なくともクラスで孤立することはなさそうだ。
そうこうしている内に学食に着いた。
「さてみんな、何食べる?」
券売機の前に並びつつ問いかける。
「んー、私は日替わり、かな……?」
「私もそれで〜」
「私も〜」
「ん、了解。箒、お前もそれでいいよな。何でも食うよなお前」
「ひ、人を犬や猫のように言わないで下さい! 私にだって好みがあります!」
「あ、今日の日替わり、鯖の塩焼きだってさ。和食好きだったよな?」
「あ、はい」
「そりゃ良かった。あ、誰か席取っといてくれないか? 五人分」
そう言うと、
「あ、はいはい! あたし取ってくる!」
清香が言い、たたたっと駆けて行った。
「……元気だな、あいつ」
「…あはは……」
鷹月さんは、苦笑いを返した。
「んじゃ、いただきます」
『いただきます!』
もぐもぐ、むしゃむしゃ。食べる、食べる、食べる。
「あ、そうだ。箒、」
「な、何ですか?」
「去年、剣道の全国大会で優勝したって? すごいじゃないか。おめでとう」
「…な、な……」
「お? どうしたよ?」
「なんで! あなたがその事を知ってるんですか!?」
「いやぁ、偶然新聞で見つけてな?」
「……何で新聞なんか読んでるんですか……」
「そいつは俺の勝手だろう?」
「……まあそうですが」
むすぅっ、と涙目で頬を膨らませる箒。心なしか、その頬が紅い。……これは中々、可愛いらしい。流石幼なじみ、俺の好みを分かってらっしゃる。まあ、恐らく天然でこうなのだが。
「……ねえねえ、そういえば織斑くん?」
「何だい、鷹月さん? ああ、あと俺の事は一夏でいいぞ」
「そ、そう? …じゃあ、私も静寐って呼んで欲しいな。い、一夏くん?」
「おう。分かったよ……静寐。何かな?」
「えっと。質問いいかな?」
「答えられる範囲なら何でも答えるぞ。自己紹介の時も『質問があれば後で個人的に質問してくれ』って言ったしな」
「それじゃあズバリ、聞きましょう」
「応、かかって来い」
「篠ノ之さんとの関係は?」
ずずい、と心持ち身を乗り出して静寐が問うた。期待してくれているところ悪いけど、そう面白いもんでもないんだよな。少なくとも表面上は。感情云々を抜きにすると兄弟子妹弟子といった関係もあったりするけど、まあ今はいいだろう。
「数年ぶりに再開した幼なじみ、かな?」
「成る程、成る程。それだけ?」
「取り敢えずはそれだけさ」
うん。こんなもんだろう。
「そういえばおりむー」
「何かな? のほほんさん」
「せっしーとの決闘、だいじょーぶ?」
大丈夫か、と言われても……なぁ。
「あー、……まぁ多分、何とかなるだろう。予測だけど、多分俺も専用機貰えるだろうし、最悪の場合は訓練機で頑張るさ」
予想を言うと、羨ましそうな声を出したのは清香。
「え? 一夏くん、専用機貰えるの? 良いなぁ〜」
それに対して、苦笑いしながら答えを返す。
「いやいやいや、飽くまで予想の話だよ。そうと決まってるわけじゃない。それに、そんな親切な気持ちだけで専用機を用意してくれるわけじゃあないだろうさ」
そう返すと、みんな一様に不思議そうな顔をした。あ、静寐だけは何かに気が付いたような表情。中々に頭の回転は速いみたいだ。
まあしょうがない。基本的にここに来れるのはIS適正が高く、更に超が付くほどの優等生だけだ。そして、基本的に公立校に比べ、私立校、それも所謂お嬢様学校と呼ばれるような女子校になるほど、その傾向は顕著になる。
────つまり、この学校にいる多くの女子生徒は、そんな環境で育って来た温室育ちの箱入り娘。こうしたことに疎くても仕方があるまい。
「うん、多分だけど静寐が考えている内容で正解なんじゃないのかな」
みんな、キョトンとなっている。しかしみんな可愛いねぇ。弾の奴に、嫉妬で殺されそうだ。
それは兎も角、と声のボリュームを落として言う。
「これはまた例の如く想像だが、多分データ採集の為っていう理由と、俺に自衛手段を持たせるっていう理由があると思うんだよな」
そこで一旦区切り、一息付いてから再び口を開く。
「まず、データ採集の為っていう方だが、まあ俺は今更ながらといった感じだが、世界で最初にして唯一、ISを動かせる男だ。その俺の存在っていうのは、まあ自惚れているわけじゃないが大きい。それこそ、研究如何ではこの歪んだ女尊男卑の世界を作り変えることが出来る程度には」
また言葉を区切り、俺の言葉が清香達に浸透するのを待つ。数秒ほど間を開けて、話を再開する。
「そんな俺のデータを取るには、毎回毎回訓練機を使用するよりは、最初から専用機を与えてしまった方が効率が良い。とまあ、こんなものだろうな。二つ目の自衛手段として、っていう奴に関しては……まあさっきも言ったように、俺の希少性と特殊性が原因だろうな。要するに、最低限自分の身ぐらいは自分で守ってねっていう事なんだろうよ」
言い終えると、
「ふわ〜。何か、大変なんだね〜」
しみじみとのほほんさんが言った。その言葉が、今までの堅苦しい感じの空気と対象的で。
「……ぷっ」
思わず笑ってしまう。
「むぅ、何で笑うのーっ!」
と、のほほんさんがだぼだぼの袖を振り上げつつ、いかにも『私、怒ってますよ』といった仕草で抗議してくる。でも、そんな仕草さえ可愛いらしくて、俺の左手が隣に座るのほほんさんの頭を勝手に優しく撫でた。
「…ふにゅぅ……」
すると、膨らんでいた頬も次第に元に戻り、更にはとろけそうな“ゆるっ”とした微笑みを向けて来た。
……うわぁ、完全にリラックスしてやがる。その様子を見て、他のみんなもくすくすと笑い出した。
こうして、昼休みは穏やかに過ぎていった。
今回のサブタイの元ネタは、魔法少女リリカルなのはの主人公、高町なのはの台詞↓から引っ張ってきました。
「簡単だよ。友達になるのは、すごく簡単。名前を呼んで。始めはそれだけで良いの。きみとかあなたとか、そういうのじゃなくて、相手の目を見てはっきり相手の名前を呼ぶの。」
こんばんは、『イツキ』と入力しても『一樹』と変換してくれない事が悩みの斎藤一樹です。大体の場合においては『カズキ』と入力してから変換するようにしています。今度パソコンのユーザー辞書に登録しておこうかな…… ←やらないフラグ
織斑一夏という、この世界にとってのイレギュラー。その立場は、その価値は良くも悪くも非常に高いです。男性でありながら、女性にしか運用が出来ない筈のISを使用する事が出来る。それが体質によるものなのか、それとも全く別の他の原因によるものなのか。この時点でその理由を知っている者は篠ノ之束と織斑千冬、そして織斑一夏の3人のみ。
宇宙開発用のパワードスーツとしてのIS、軍事兵器として…またそこから派生した競技用としてのIS。この違いが、一体何を意味するのか。
思わせぶりな感じで倩倩と書き連ねてみましたが、こういった観点から考察してみていただくのもこの作品を楽しんでいただく一つの方法なのではないかと思います。結構原作から変えていっているつもりなので、あれこれ推理・推測をしてみるのも一興かと思います。……なんか自分からものすごくハードルを上げに行ってしまったような気がする。
兎も角、これからもこの作品をよろしくお願いします! それでは今回はこの辺りで。ではでは。