ガンダムビルドダイバーズRe:BIRTH   作:ラグナ397

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《第2話 運命と出会う物語》

─── 第七サーバー・インダストリアル7───

 

 ログイン地点に設置されているロビーのモニターに、周年イベント開催の映像が流れる。

 

『GBN五周年記念開催中!第一弾はアムロ・レイ討伐レイドイベント!最大三十人まで参加可能!君は伝説のニュータイプ、アムロ・レイが乗るガンダムを超えることが出来るか?全サーバーミッションカウンターで絶賛受付中!』

 

 画面の中では一年戦争のモビルスーツを次々と撃墜するガンダムの姿があった。宇宙空間を悠々と飛び回り、最後にポーズをとるとGBN五周年のロゴが現れる。

 この宣伝映像の影響もあってか、GBNは普段以上に活気付いていた。サプライズ配信のアムロ・レイ討伐イベントから始まり、毎週追加される新要素や新ミッションの数々。追加コンテンツは全部で四回配信される予定で、本日から二回目である新マップと新ミッションが追加された。

 人混みの間を通り抜けながらミッションカウンターの前に立ち、クエストの受注を始める。

 

《ジャブロー攻略戦B√》、《復活のモビルスーツ・ボルジャーノン戦線》、《自由と正義と伝説の幕開け》。

 

 初心者向けの低難易度から上級者向けの高難易度まで様々なミッションが追加されているが、その中の一つに目が止まった。

 

─── 《繧キ繧ケ繝?Β繧定オキ蜍》───

 

 全く読むことが出来ない謎のクエスト。概要を調べようにも映像が流れている部分は砂嵐が流れ、説明文すら同じような文字で埋め尽くされていた。

 はたしてこういった仕様なのか。それともバグなのか。珍しいとは思いつつも、あまり深く考えずにミッションを閉じようとした瞬間、視界が暗転し周囲の景色が一瞬にして変化した。

 見知った計器が密集する箱の中。目の前のモニターにはクエストが受注された知らせによる完了の文字が表示される。どうやら強制的にコックピットの中へ転移させられたらしい。

 外の景色が表示されないが、スピーカーから鳴る音と体に伝わる感覚で、機体が落下していることが分かる。手元のレバーを動かしボタンを押すも何も反応がない。やっとモニターに景色が映ったと思いきや、眼前に森が広がっていた。

 反射的にレバーを目一杯引き、アクセルペダルを踏み締めブースターで機体全体の姿勢制御を謀る。頭部が木に触れる寸前で上半身を起こし、両足を前に出す。バキバキと木を薙ぎ倒しながらゆっくりと地面に触れ、少しずつ勢いを弱めながら地面を滑り何とか無事に機体を着地させる事が出来た。

 機体が完全に止まると、思わず安堵のため息が漏れる。

 途端にコックピット内に警告音が鳴り響く。レーダーが捉えた反応は三つ。大きさ的にどれもHGサイズのモビルスーツだ。

 直ぐに兵装を確認して戦闘態勢へと入る。サイドモニターに映し出されるパラメーターにより、自分の機体がザク・アーマーを装備している事が分かった。武装はザク・マシンガンとヒート・ホークにクラッカーだけ。何故かはわからないが、全ての武器は読み込まれていないようだ。

 そうこうしている内に互いの交戦距離に入り、モニターが敵機を拡大表示する。ドーバーガンを装備した三機のリーオー。機体が紫だったり細部に違いはあるものの、クエストでよく見かけるリーオーNPDと殆ど同じだ。

 

「状況を把握する時間はくれないらしいな」

 

 三機はこちらに狙いを定めで、空中でドーバーガンを放った。

 高速で放たれた弾丸が周囲の木ごと地面を抉り、激しい爆発が辺りに土煙を巻き上げる。それに硝煙が混ざり更に視界が塞がれる。続けて二発、三発目と次々に集中砲火を食らうが、幸いにも直撃は免れている。狙っている、というよりは、辺りの地形ごとこちらを破壊しようとしているような感じだ。ならば。

 周囲の地形データのスキャンは完了しているため、ある程度であれば視界が悪くても動ける。

 クラッカー六発全てを両手の指の間に挟んで持ち、後方のなるべく遠くへと投げる。時限式の爆弾は手から離れ数秒後に爆発を起こした。それに合わせてこちらに向けての砲撃が止み、クラッカーを投げつけた付近から爆発音が響く。単純な誘導だったが、どうやら効果覿面だったようだ。

 機体全身のブースターを起動させ前方へと移動する。

 

「3…2…1…0」

 

 ドーバーガンのリロードを挟むタイミングとほぼ同時に、機体は煙の中から抜け出した。

 再び視界にリーオーの姿を捉え、敵がこちらを認識するよりも早くザク・マシンガンを構え引き金を引く。縦に細かく揺れる銃の振動を両手で制御しながら反動を抑え、銃口から発射された弾丸はバラけながらもリーオーを撃ち抜き撃破した。

 

「まずは一機」

 

 こちらに気が付いた残りのリーオーがビーム・サーベルとビーム・マシンガンに武器を取り替える。背後からの支援射撃を受けながら接近戦を挑んでくるリーオーに対してリロードが終わったクラッカーを投げつけ、空中を舞うクラッカーをザク・マシンガンで撃ち抜く。激しい爆発により無数の金属片が辺りに飛び散り、被弾したリーオーの目から光が失われる。

 二機目。

 後方からの射撃を交わすためにリーオーを盾にしながら前進し距離を詰める。ビーム・マシンガンの弾丸は盾にしているリーオーの装甲を撃ち抜くが、貫通するまでには至らない。リーオーはビーム・マシンガンからビーム・サーベルへと握り変えようとするが、それよりも早く相手の体の真横へ回り込み、懐に向けてヒート・ホークを叩き込む。激しい金属音が辺りに鳴り響き、装甲に阻まれ刃が止まる。だが、高熱を発するヒート・ホークの刃はリーオーの装甲を一瞬にして融解し、そのままの勢いで胴体を切断した。真っ二つになった胴体から炎が溢れ、空中で激しく爆発する。

 全機撃破。

 周囲をスキャンして敵影が無いことを確認し、空中に浮くパネルを操作して改めてミッションの内容を表示させる。相変わらずよく分からない文字のままで読めない。

 場所は見渡す限り何処までも平坦な森。しかし木の高さはモビルスーツが屈めば隠れるほど大きく、見えないだけで広い川などもあるようだ。建物などの人工物の痕跡はなし。フィールドの大きさもミッションの目的も分からない。そもそも勝手にこの場所に転送されたのだ。留まっている理由もない。

 概要欄からミッションのリタイアを選択しようとするが。

 

「押せない…?」

 

 そこにボタンがあるのに、いくら押しても反応がなかった。というより、ボックスは反応しているがシステムが認識していないようだ。

 デバイスを強制的に落とそうとすると外部からの手助けが必要になる。仕事が終わった後にログインしたので、強制的に外されるとしたら何時間後だろうか。もしかしたら明日になるかもしれない。

 運営に連絡をしようともしたが、ここのテキストボックスも反応なし。メッセージを送れない以上、他人にすら助けは呼べない。

 しばらく色々と試したが成すすべなく、その内『この場所にいてもしょうがない』と思い機体を動かし宛もなく移動しようとした瞬間、頭上に影が降りた。見上げた先にあったのは、空から落ちてくる一機のモビルスーツ。全身がボロボロのその機体は、灰色の鎧の様なパーツを落としながら粒子となって消えさり、そのまま逆さまにダイバーだけが落ちてきた。

 考えるよりも先に体が動く。受け止めようと反射的にダイバーに手を伸ばし、それと同時に何かが大きな音を立てて真後ろに墜落した。再びコックピット内に警告音が鳴り、センサーが後ろにいる物体の大きな反応を示す。ダイバーを受け止め振り返ったその場にいたのは、巨大な鳥。

 紫色の体に大きな嘴。細い胴体を支える二本の特徴的な脚に、背部から伸びるワイヤーと連結されたブレード。口の中から除く赤い虹彩を放つ部位…。

 姿かたちは少し違うが間違いない。モビルアーマー、ハシュマルだ───。

 顔に刻まれたガンダムのバイザーの様な筋が目のように光、こちらを見据える。狙いは確実に俺だ。

 大きく空いた口の中にエネルギーが集まり、ビームとなって放たれた。それとほぼ同時に回避行動を取り、バランスを崩し転がりながらもビームをかわす。

 ビームが掠った脚部の装甲が外れ、ドロドロに融解し爆発する。

フレームにダメージはないが、左脚のスラスターはもう使い物にならない。

 ビームは地面を侵食し、やがて周囲から噴水のように溢れ出て空へと打ち上がる。勢いによる力が強いのか大地が隆起し初め、反撃をするにも逃げるにも下手に動くことが出来ない状況となった。

 ダイバーをコックピットの中へと入れて、機体の手の自由を確保する。

 ガチャリと金属が鳴る音を立てながら、座席の後ろにダイバーが現れる。全身を銀の鎧で包んだ人物。ピクリとも動かない状態に違和感を覚えるが、気にしている余裕はない。

 目を離している内に状況は悪化していく。

 地面から空へと上がったビームはGBNの空間を破り、そこからヒビが周囲に侵食して紫色の空を作り出す。周囲の天候も変わり、激しい風と雷がこのマップ全体に降り注いだ。

 俺はこの現象を知っている。この景色を知っている。

 

「ブレイクデカール現象と同じだ…」

 

 地盤が緩み、周囲の大地が砕け始める。その場から離れようと何とか機体を動かすが、ハシュマルはそれを許さなかった。

 鋭い三本の指で背後から押し潰され拘束される。

 コックピット内に警告音が鳴り響き、各部位のステータスがcautionへと置き換わる。

 ログアウトも出来ない。この場から逃げることも不可能。

 状況は刻一刻と悪化していく。

 脚で押さえ付けたまま、ハシュマルは背部のワイヤーを動かし尾の切っ先をこちらに向ける。真っ直ぐに放たれた刃が機体に当たろうとした瞬間、ハシュマルの動きがピタリと止まり、ブレードは不自然に軌道を変えて地面へと突き刺さった。

 その攻撃を切っ掛けに不安定だった大地が大きく割れ、周囲が次々と飲み込まれていく。

 異変を察したハシュマルはその場から離れ、拘束されていた機体は脚から解放されたが、逃げる事が間に合わない。

 周囲の地面ごと機体は亀裂の中に飲まれ、そのまま落下する感覚を味わいながら、俺の記憶はそこで途切れた。

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