陰の実力者にIFルート!   作:壱知

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番外編です
時系列的にはアレクシア王女行方不明事件後に同時進行でローズも行方不明になったという感じです。


計算外の切り札

私は、無力だ。

 

どれだけ皆の前で喚いても、弟も義妹も帰ってこない。

弟はアレクシア王女誘拐事件の容疑者として騎士団に連れて行かれ、妹は熱を出して寮で休んでいたはずなのに、忽然と消えた。

弟の方はそんなことするはずがないと思っているから、冤罪であるのは間違いない。

義妹は、もしかしたら誘拐事件の被害者になった可能性がある。

 

アレクシア王女は、将来は姉にも匹敵するだろうと言われる努力の人。

彼女と何度か会ったことがあるのだけど、細腕に見えて、その下の筋肉は異常発達していた。

まるで脂肪の無さそうな筋肉で体を構成しているかのような、硬く、強靭な筋肉。

なのにそれが体に出ないので、彼女を見た目通りの人間だと侮ると痛い目を見るだろう。

そもそも魔剣士という存在自体が、見た目以上に力があるのに、その上で鍛えられたものがあるのだ。

彼女が放出する質の良い魔力を見れば、並の魔剣士が彼女に太刀打ち出来るとはまるで思えない。

 

義妹なら彼女と対等に戦うことも出来るし、倒すことも可能だろう。

でも、私はどうだろうというところである。

義妹と私では、私に勝ち目はないだろう。

弟との力量差も、もう私は察してしまっているのだから。

悔しいけれど、私の魔剣士としての実力は、世間が認めるほど高くない。

 

だからといって、こんな時に何も二人の力になってやれないなんて。

 

悔しくて、どうにかしようと外へ出てみたけれど、外出禁止になってしまっていて、喚いても暴れても、どうにもならなかった。

 

私はなんて、無力なんだ。

 


 

―――アイリス視点―――

最愛の弟が容疑者にされ、妹は誘拐事件に巻き込まれた可能性がある……そう聞いて、取り乱して暴れる彼女―――クレア・カゲノーを取り押さえた。

取り押さえたといっても、暴れるの止めるために少しだけ実力行使しただけだ。

そうでもしないと、誰かしら怪我をすることになっていただろうし。

 

「クレア・カゲノーさん。落ち着きましたか?」

 

私の執務室。私は彼女にコーヒーを渡し、自分のも入れる。

最近流行っているようで、私も飲もうとしてはいるのだけど、幾分味の問題があり、中々全てを飲むことはまだ出来ていない。

ただ、気に入って飲む人もいるので、今回はこれを出した。

 

―――苦い。

 

少しだけ飲んで、苦さに辟易とする。

だけど、慣れてみると頭がすっきりとして、落ち着く味ではある。

 

数年前の敗北以来、私の騎士としての時間はとても少なくなった。

どちらかと言えば、後方で援護をするための力付けたい。

そう思うようになったのが理由だ。

 

もちろん、剣の鍛錬は欠かすことは無いけれど、それ以上に、妹を後ろから支えられるような姉になりたいと思うようになったのだ。

 

私は、ローズ・カゲノーとの試合で、一度心を折られてしまった。

 

弱さを知った。自分よりも、上がいると。

うぬぼれを知った。自分よりも、努力している者がいると。

強さを知った。自分よりも、強くなろうとしている者がいると。

 

そんな時、周りを見渡した時、いつまでも私を追いかけようとするアレクシアの努力を知った。

私と比較され、言外に貶されるアレクシアを知った。

 

努力が実を結ばないかもしれないと、私のように負けて心が折れるかもしれないと、恐怖を覚えた。

 

それでも、強くなろうとする、アレクシアの強さを知った。

何度負けても、何度貶されても、毎日鍛錬を欠かさず、強くあろうとするアレクシアを―――知った。

 

私には無い、強さ。

獅子のように凛々しいアレクシアを見ていると、私に足りなかったものを知った。

 

素直であること、私は褒められてきたけれど、良いことばかりではなかった。

王族として、もっと相手を見抜けるような人間でなければいけないと知った。

周りにいる人間が、良い人達ばかりでなく、隙あらば妹に何か悪いことを吹き込むような者がいると、知った。

 

今回だって私がもっと人として強ければ……もっと、妹を守れるような視野の広さを持っていれば。と痛感した。

 

「私も妹が事件に巻き込まれたようで。探しているんです」

 

もう一度、コーヒーを飲み。頭を落ち着かせる。

たぶん私の声は震えているのだろう。クレアさんが私を見る。

 

「あなたも大切な弟が騎士団に連れて行かれて、義妹は行方不明。誘拐事件に巻き込まれている可能性がある―――なんて考えると、心配ですよね」

 

お互い同じ立場の者同士、妹(と弟)を心配する者同士。

ゆっくりと語り合う。

 

「大好きな妹なんです、強くて可愛い。自慢の妹―――」

 

シスコンだなんてよく言われるけれど、可愛いのだから仕方ない。

少しだけでも心を開いてくれたのか、喋りだしたクレアさんと、妹と弟の話で盛り上がる。

あの子のこんな一面が好きとか、可愛いだとか。

色んなことを喋って、確認する。

 

私たちは、同じ立場なだけじゃなくて、似た者同士で、強い妹たちに憧れているんだって。




唐突にはじまるシスコン
アイリス書いてなかったので。
アイリスクレアシスコン編でした。
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