陰の実力者にIFルート!   作:壱知

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二人の妹

ヌルが戦っている。

 

ヌルが面白そうな相手と戦っている。

 

目の前で戦っている相手を無視して、ヌルとの戦いを視る。

といっても、魔力の動きを見ているだけだから、視覚的に見ているわけではない。

 

忍者のような素早さで、忍者のように立ち回る。

目の前の名前も知らない退屈な騎士と戦うより、そいつと戦いたかった。

この世界の剣術は僕には退屈だから、それ以外の戦い方が出来る人と戦えるなんて、とても嬉しいことだから。

 

ホント、貧乏くじ引かされちゃったな。

 

―――ヌル視点―――

小刀を使う忍者だろうか、シャドウ様に教えてもらった戦い方の一つ。

 

忍術。

 

目の前の男の戦い方が、何かに似ているとすれば、見た目を含めてそれだろう。

『処刑人』ヴェノム

本来ここにいるはずが無い男。

過去の世界では、聖地リンドブルムでイプシロンに倒された男。

また、未来が変わっている。

 

私以外に、この世界に戻ってきた者がいるのだろうか。

未来の世界を体験し、このやり直しの世界で何かをしようとする者が―――私以外に。

 

歯牙にもかけないような相手を、糸で弄ぶように戦い方を分析しながら、思う。

思っていたような忍術ではない、ただ、隠密性が高いからと、小刀を使っているだけ。

剣術はこの世界でよくある剣術を小刀用にアレンジしただけの、何のオリジナル性もないもの。

 

つまらない。

 

これなら、シャドウ様が今戦っている男と戦った方がマシだったかもしれない。

貧乏くじだ。

 

―――クレア視点―――

謎の魔力の爆発や、地下の崩壊などの事件が全部が終わった後。

義妹が帰ってきた。

思っていた通り、誘拐事件に巻き込まれ、アレクシア王女とは別の場所で捕まっていたらしい。

 

「ローズ。本当に良かった……良かったぁ……」

 

義妹を抱きしめると、少しだけビクリとしていたけど、抱きしめ返してくれた。

姉としてはこんな姿見せたくないけど、涙が後から後から溢れてきて。

 

「……心配したんだから……もう……怪我が無くて良かった……」

 

アイリス王女に無理を言ってついて行かせてもらって。

そこで、魔獣のような巨人と出会い。

シャドウガーデンを名乗る女性と出会い。

どういうことなのかと見守っていたら、魔力による爆発が起きた。

 

私たちは完全に蚊帳の外だったけど、義妹とアレクシア王女は、被害者としてその事件に関わっていて。

事情聴取などが終わってようやく……というのが今だ。

 

私の側では、私と同じようにアイリス王女がアレクシア王女に抱き着いている。

ミドガル最強の魔剣士。なんて持て囃されてはいても、妹を一途に想う姉。

私と一緒なのだから。

 

姉妹(と弟)の感動の再会を喜び合いながら、ふと思う。

 

『こんな話だっただろうか』と。

 

―――アイリス視点―――

妹が帰ってきた。

何も出来ないまま、何もすることが出来ないまま、無力なまま、全ては終わった。

悔しいけれど、自分に力が足りなかったのが原因だ。

もっと頼ってもらえる人だったら、もっと騎士団を動かせる力があれば、何かが出来たかもしれない。なんて思う。

 

強いだけでは、ダメだった。

 

今回は無事だったけれど、次は……。

 

もっと、誰かを助けられる強さがあれば。

もっと、もっと。

 

妹を抱きしめると、少しくすぐったそうに、アレクシアは笑う。

 

「アイリス姉さま。私、ゼノン先……ゼノンに勝ったわ」

 

ゼノン・グリフィ

この事件の誘拐犯で、アレクシア誘拐事件の犯人。

魔力爆発に巻き込まれて消滅した。とはアレクシアが言っていたけど、剣の腕自体は指南役になる程度には強かったはず。

 

そんな男に、勝ってしまうなんて……やはり妹は強かったんだ。

一度心が折れた私には、到底たどり着けない向こう側。

 

努力を詰んで、積んで、摘んで。

その先に得た剣の力。

 

何かの薬を飲んでからのゼノンには負けたとはいえ、そこまでは勝ててしまう。

やっぱり、私なんか目じゃないくらい強くなる可能性がある。

そう思うと、私が今ここにいるのも、間違いじゃないんだと、妹のために力をつけるのも、間違ってないんだなって。

 

そう、思った。




アイリスとクレア書くの難しい
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