監禁されて、実験動物のように血を抜かれて、満足に食べ物も与えられなかった。
そのせいか、頭も体もフラフラで。
それでも、感情が目の前のアイツを倒さなきゃと訴えている。
『ゼノン・グリフィ』
私の婚約者候補で、学園の剣術指南役で、ディアボロス教団と名乗る組織の一員。
元々おかしいとは思っていた。
欠点が無さ過ぎる。それなのに姉さまと戦っても負けている。
遠慮しているとかそういったものではない。
わざと負けている―――そうった類のもの。
姉さまも、それに気づいて私から遠ざけようとしているほどに、おかしい。
そんな奴だったから、今目の前にいるのは納得だった。
「やっぱりアンタって、そういう奴だったのね。誘拐犯」
ベラベラと何かよくわからないことを喋っているけれど、遮って剣を向ける。
打ち合い。
姉さまの剣を真似た剣。
憧れた姉さまの。大好きな姉さまの。
でも、こんなのじゃない。
私には姉さまみたいな剣は、出来ない。
あの日見た美しい剣も、違う。
剣の才能が無くても、努力なんて無駄なんて言われようが、嗤われようが、捨てなかった。捨てられなかった―――凡人の剣。
私には―――それしかないから。
姉さまの好きだと言ってくれた―――凡人の剣。
目の前のいけ好かない男に、届かせて見せる―――ッ!
―――ゼノン視点―――
まさか、まさかだった。
アイリス王女は強いと思っていた、それに比較され、ディアボロス教団の者によって、貶されて生きてきたアレクシア王女は、弱いと思っていた。
なのに、目の前の王女は、強い―――ッ!?
型通りの剣でしかない、アイリス王女に比べれば、その剣に強さなんてあるはずがない。
なのに、辿り着いている。
昔見た、ルスラン・バーネットの剣のような。
自分が勝てないと確信するような剣にッ!
ふざけるなッ!私はラウンズの十二席になる男だぞッ!?
この私がッ!
この私が!血を捧げることでしか私の役に立たないような女に、負けるッ!?
ふざけるな!ふざけるな!
奥の手。これは奥の手だったが仕方ない。
この女も未完成品とはいえ、ディアボロスの雫の力には勝てないだろう、それでどうにかすれば良いだけだ。
手足を引きちぎってしまえば良いだろうか、強制的に大人しくさせてしまえば、あとは血を利用するために生かし続ければ良いのだから。
拷問しながら罵ってやってもいい。
この力さえあれば、私はラウンズの高みへと昇れるのだから。
今からそれが、愉しみだ―――。
―――あるラウンズの視点―――
『ゼノン・グリフィ』
自惚れはあるものの、あいつは使える男だった。
ラウンズの十二席になれる可能性のある男、だった。
しかし、あいつは死んだ。
ルスラン・バーネットがいれば、ラウンズの十二席になどさせはしなかった。
使える男だというだけで、戦闘能力はルスラン以下。
だからこそ、あいつは破滅した。
シャドウガーデンのシャドウ、そしてヌル。そう名乗る者によって、破滅させられた。
蜘蛛の糸でラウンズになろうとした男は、蜘蛛の糸に絡めとられ、そして、喰われてしまった。