―――とあるナニカの視点―――
勇者/シェリー・バーネット
彼女は最初そう呼ばれていた。
最初は研究者として世界に出た彼女は、あるアーティファクトの解析から発展し、制作をするという偉業を達成した。
彼女が制作したアーティファクトは一つや二つではない。
どれも偉業と呼ばれるほどのもので、人類の発展のためには必要なものであったとは思う。
ただ、その偉業の裏にあるものは、
『シャドウへの復讐』
それだけだった。
人類を進化させるアーティファクト。
彼女の最大の功績にして最大の罪。
人類を進化させたその先、人が人でなくなった。
後遺症と呼ぶべきか、反作用と呼ぶべきか。
ある者は、ゾンビと化した。
ある者は、小さき鬼人と化した。
ある者は、毛むくじゃらの獣人と化した。
あまりにも強い光であったそのアーティファクトは、エルフも、獣人も、人間も、全てを飲み込んでいった。
それは、確かに人類の進化には貢献した。
それは、確かに人類を進化させてはくれた。
最初の使用者たちは、確かに望む進化を遂げられたのだろう。
それは、あくまでも望む進化に適応できる人間だったから。
しかし、進化に適応できないものが、少しずつ、少しずつ増えていった。
進化への拒絶反応。進化に置いて行かれる者。
ポツリ、ポツリと増えたそれは、いつの間にか大きく広がった。拡がった。
気づいた頃には、世界の9割の人間が進化していて、その進化の中の6割は、進化に捨てられた者であり、日を追うごとに心を失っていった。
魔獣と化した者は、それまで家族だった者、恋人だった者。そんなもの関係なく、人々を襲った。
この頃になると、シェリー・バーネットは勇者ではなく人類の敵になっていた。
魔王/シェリー・バーネット。
古くからある王国の王族を洗脳し、他国の王を暗殺する。
人間を利用したアーティファクトの人体実験を行う。
無限のエネルギーとして期待されていた力を使い、数万人の人間を一瞬で焼き尽くす。
全てが、シャドウへの復讐のために行われたことだった。
最初はアイリス・ミドガルとローズ・オリアナを。
次はシャドウガーデンのナンバーズを。
そして七陰を。
復讐のためだけに、彼女は生きて、生きて、走り尽くした。
自分から家族を奪ったシャドウへの復讐のために、シャドウ以外の人間をころして、コロシテ、殺しまくっていた。
しかして、その自己満足の復讐が終わる頃には、元いた人類で生き残ったのは1割にも満たなかったと、ここに付け加えておく。