血だまりに私は身を浮かべている。
自分から溢れた血は思ったよりも多くて。
膝をつき、いつもは隠しているフードを取ったシャドウ様―――シド・カゲノー君は、こんな私を助けようとしてくれている。
「―――シャドウ様、ううん……シド君。私は君に逢えて、少しの時間でも君という人と平和を過ごせたことは、一生の宝物だよ」
身体中に傷など無いというほど傷がつき、欠損は一か所や二か所ではない。
真っ赤に染まった穴から私の内臓がこぼれ落ち、呼吸や鼓動に合わせて蠢いている。
自分の身体だけど、異常な体だと思う。
シャドウガーデンに入ったことで、魔剣士として手に入れた体以上に力を得た。
生きていることすらおかしいと思われるような重傷でも、愛しいあの人と会話することが出来ている。
シド君が私のことを治そうとしてくれてはいるけれど、失った肉体は多い。
自分でもどうやって生きているのか不思議なくらいになにもかも失ってしまって、喋るためだけの器官くらいしかまともに動かすことすら出来ない状態だ。
七陰と呼ばれるシャドウガーデンのトップの方々もどうにかして助けてくれようとはしてくれているのに。
自分に迫る死が、終点が、少しずつ迫ってくるのを静かに感じている。
シャドウガーデンの本拠地アレクサンドリアで、全てを捨てた。
ローズという名を捨て、心の拠り所であったシド君との思い出の品を捨てた。
捨てさせられた。
けれど、それで良かった。
こうしてまた、シド君と逢うことが出来て、シド君の秘密を知り、シド君と少しでも肩を並べることが出来たのだから。
ただ―――、ただ後悔があるとするなら。
目の前で、いつもはほとんど本当の感情を見せないシド君の。
シド君の悲しい表情を、私のせいで作らせてしまっていること。
それだけが私の後悔だった。
もし―――もしも――――――
もしも、叶うなら。
君と添い遂げる夢が見たかった。
「あり―――が、とう、シャドウさま。わたしのだい――――す――きな―――シド――――――k――――――」
彼の声も、七陰の方々の声も、全てが、全てが遠い世界のことのように
体は闇に、溶けていく――――――。
痛み、苦しみ、体の中と外が反転するような強い、痛み。傷み。
ドエムとその部下たち、ディアボロス教団から逃げる時に胸に感じていたあの痛み。
暗闇の中で、強く、強くそれを感じる。
少しずつ、少しずつ浮き上がっていく。
そして―――今開かれる、再会と―――再開の門。
「―――なんなんだ―――お前ェ―――ァぁあああぁ!!!!あああああぁあああああぁああああッ―――!!!!」
怒号、断末魔、様々な音が聞こえる。
最初の、彼との出逢いを果たした、強烈な記憶。
スタイリッシュ盗賊スレイヤーとの出逢い、全てのハジマリに。
戻ってきたッ―――!