シド君に助けてもらいながら、魔力封じが行われたアーティファクトを解析して、私は講堂へと辿り着いた。
お父さまから教えてもらっていた隠し通路を進み、辿り着いた講堂の屋根裏から下を見ると、学園の人たちとお母さまが見えて一先ずは安心出来た。
ただ、いくら探してもお父さまが見えなくて、不安で恐怖で、涙がスッとこぼれてくる。
一度怖いと思ってしまうと、涙が止められなくて。
袖で涙を拭い。小さく深呼吸をする。
私が、私がやらないと。
私が、皆を助けるんだ。
瞬間―――。
銃声と共に、誰かが倒れる。
あれは―――。
「おかあさまッ!」
先ほど無事を確認したお母さまが、お腹の辺りを撃たれて出血しているのが見えた。
心臓の鼓動が速くなって、目の前が狭くなっていく。
いや、イヤ、嫌だよ。お母さま。
呼吸も速くなってきて。手の震えも止まらない。
誰か、誰か、お母さまを助けて。
解析したアーティファクトを使う、使わなければ、お母さまが死んでしまう。
今使えば、助けられるかもしれないから。
だから、お願い。
シド君。ううん、シド君じゃなくても良いから。
誰か―――助けて―――!
アーティファクトが発動した。
と同時に、誰かの大きな声が聞こえて、魔力封じは解除された。
お願い。お母さまを―――!
―――アレクシア視点―――
銃声。
講堂の方から聞こえたそれと同時。
外にいたテロリストを斬る。
私たちは魔力を上手く使えないから戦えない。
相手は魔力を使えなくても戦える手段がある。
はずだけど、私には、魔力を使えなくても戦える手段がある。
だからその前提はもう崩れてしまっている。
凡人の剣をどこまでも、どこまでも研ぎ澄ませた先に見えたもの。
魔力があれば必要のないと言われたそれは、今の私にとっては必要なもので。
一刀で、終わる。
二刀目は、いらない。
斬る。切る、きる。
どこまでも簡単。
先手必勝で、相手と切り結ぶことなく一太刀で。
魔力を使うことで人間離れした身体能力は、それが無くてもそこに辿り着ける人間に恩恵を与えた。
人としての限界を超えた先を知っているから、そこに辿り着く過程を知っているから、魔力など無くても過程から生みだされる結果を出せる。
相手の剣を断ち切って、その体ごと斬る。
銃を向けられれば、その道を読み切って、切る。
結果を知っている以上、過程を再現するだけ。
自分がやってきたことは裏切らないんだから、当たり前のこと。
「つまらないわね」
溜息を吐くと、気を取り直して大きく深呼吸をする。
魔力を練るように、魔力を制御するように、ゆっくりと。
――――――あら?もしかして、魔力が使えないんじゃなくて、一定の魔力を封じているだけなのかしら。
でも、まあ良いかな。魔力が使えない方が、愉しい。
「行くわよ」
深呼吸。
一点を見つめて、そこを切るという結果を視る。
講堂の扉。
その先は見えないけど、誰かがいるのは視える。
武器を持って、自分が有利なポジションであると、思いあがっている者が。
だから、それごと。
斬るッ!!!!!!!
「――――――あぁぁああぁぁぁァァァッ!!!」
猿の叫びのような、王女としての私には許されないような大きな声は、威嚇にもなり、屋根にいる者たちへの合図にもなる。
断ち切るッ!
視えていた通り、軽く触れただけで扉は切断され、その勢いのまま扉を蹴り飛ばして、テロリストを一人断ち切った。
鮮血が舞うと同時。上から人が、降ってくる。
「我ら……シャドウガーデン―――」
まあ、どうでも良いけど。