陰の実力者にIFルート!   作:壱知

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血染めのシェリー

シャドウガーデンとディアボロス教団、そして魔剣士学園の生徒が入り乱れる講堂。

人数だけで言えば、ディアボロス教団はかなりの人数をここに連れてきているのだろう。

気が緩んだ者が先走って、魔剣士学園の人間に発砲したため、何人か怪我をしているようだけど、そこはどうにか出来るので一度放っておく。

 

ただ、人数がいくらいようとも邪魔なので、一気に狩りとる。

 

―――魔力の糸が、走る。

 

天井に

床に

壁に

 

張り付いた糸が、動き出して敵を切断していく。

 

意識していなかった場所から飛んでくる糸に、絡め取られ、切られていく。

講堂の扉を破壊したアレクシア王女とは比べものにならないスピードで命が消えた。

 

綺麗に切断された断面から、血しぶきが私に飛ぶ。

 

糸を使いながら歩いて、切る。

ディアボロス教団だけを切るように調整しながら、切る。

 

魔剣士学園の生徒が相手していようが関係なく、切る。切る。切る。

 

ラウンズでない限り、この糸に対抗出来る者はいない。

だから、狩りきってしまい、今ここにいるラウンズを。潰す。

 

私の知らないラウンズ。

過去の世界では出会うことがなかったラウンズ第十二席。

私と同じ末席。

 

ラウンズ第十二席『ハデナ』

 

どんな人間かは知らない。

ただ、モードレッドやフェンリルといった戦闘も出来る幹部は幹部を名乗るだけの強さはあった。

だから、今ここでその席から退いてもらう。

 

変えの利く十二席であろうとも、ディアボロス教団の時点で、もう許す事は無い。

 


 

―――シェリー視点―――

私にとって、魔力というのは上手く扱うことが出来ないもので。

生来の私の性質上、魔剣士になるには難しかった。

だから、お母さま―――母と同じように研究者となることを志した。

今はお父さまを補佐する立場になっているとはいえ、研究者としてのアドバイスは母がしてくれる。

今回のアーティファクトの解析だって、母に助けてもらいつつ、やっと達成出来たもの。

 

「お母さまッ!お母さまッ!」

 

ボロボロと涙が溢れて、止まらない。

テロリストに撃たれた母の元に駆け寄ると、近くにいた生徒が止血を試みてくれている。

母の手を持ち、必死に話かける。

流れる血が多く、どんどんと顔が青白くなっていく。

撃たれた場所が悪くて、中々血が止まらない。

 

「シェリー。あなたが無事で良かった。講堂にいなくて心配したんだから」

 

頷いて、少しでも笑う。

 

「うん。ごめんなさいお母さま。魔力封じを解除出来るのが私しかいなかったから、解析してお父さまの教えてくれた抜け道を使って動いてたの。だから、見つからなかったんだ」

 

どうにかして助けたいと、願う。

願って、お母さまを安心させるために、笑う。

 

「魔力封じも解除出来たし、助けも来たみたい。だからお母さまもすぐ助かるよ」

 

血が止まらない。私の膝まで血だまりが広がっている。

出血量が多すぎる。

 

「お願いだからッ!誰かお母さまを助けてくださいッ!お母さまッ!」

 

願う。

どんなものを犠牲にしてでも、母を助けたいと願う。

何かを犠牲にしてでも、生きてほしいと、願う。

 

「――――――どきなさい」

 

怒声が響いていた講堂が、スッと静かになった。

と思っていたけれど、無数の糸が、絡み合っているのが見えて、それが私たちの周りを覆っているのだと知る。

 

「あなたのおかげで助かった人が大勢いる。だから、そんなあなたのお母様もその命を失わせるわけにはいかない」

 

声から判断するに、女性なのだろう。

黒ずくめのその人が、母に手を当てる。

濃密な魔力。発せられる魔力が彼女の体を駆け巡っているのが、線として目に見える。

魔力が駆け巡って、母にも同じように――――――。

 

視える。

 

母に駆け巡る魔力が、撃たれて穴が開いた場所を修復しようと蠢いているのが。

私にも、わかる。

どこを治せば、どうすればその結果が得られるのかが。

 

目の前で行われる治療が、理解できる。

 

「私も……私もお母さまを助けますッ!」

 

視える魔力を。自分から放出される魔力を。母へと動かす。

急速に魔力が収束し、蠢く魔力が魔力を食い合って、凄まじい速度で患部を治療していく。

自分の魔力が凄まじく消費されるのが、わかる。

命が燃えていく、意識を失いそうになりながらも、母の治療が終わるまでは、終わりたくない。

 

「まさか、あなた……!」

 

隣で同じことをしている女性が目を見張る。

そんなことを気にしている場合じゃないから、と気づく。

 

魔力ならそこに―――ある。

 

「ごめんなさい。少し借ります」

 

一度、目を閉じて深呼吸する。

涙はもう流れていない。

心を落ち着けて、心臓の鼓動もコントロール出来ている。

 

―――お願い。力を貸して。

 

魔力に願い、奪う。

女性の持つ、眩しいほどの魔力を。

 

「あなたは―――そう。そうなんですね。あなたがそうなってくれて、良かった」

 

彼女は笑う。その意図がわからないけれど。

奪われた魔力は多いけれど、問題なさそうに笑っている。

 

その魔力が、治療の速度を速めていく。

先ほどよりも早く、速く。

 

時間を巻き戻すかのように、傷口が塞がり、血だまりからも魔力を奪い。食い尽くし、母の血色がみるみる戻っていく。

 

魔力が上手く扱えなかったはずなのに、どうしてこんな奇跡が起こせたのだろう。

安心してしまったのか強い眠気に襲われて、暗く深い闇の中に私は沈んでいく。

 


 

―――アイリス視点―――

奇跡の力。

シェリー・バーネット嬢の力を目撃した人々はそう言った。

魔力を制御し、体の傷を塞ぐ。

私が求めて、叶わなかった力の一つ。

 

魔力を制御し、自分の肉体を強化できるのならば傷を癒すためにも使えるのではないか。と。

筋肉を動かしたり、そういったことは出来てはいる。

ただ、治癒と呼ばれるようなことまでは、まだ出来ていなかった。

 

だけど、彼女は成功した。

今まで誰も出来なかったであろう、魔力制御の一つの深淵へ、彼女は至ったのだ。

 

自分に出来ないことを誰かがやった。悔しいけれど、私にとってはまた一つの目標が出来た。

 

自分もその力を手に入れる。と。

私は、まだ、まだ、努力出来るんだと。

立ち向かえるのだと。




ラウンズ第十二席『ハデナ』
オリジナルの捏造キャラです。
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