前世において、私が空回りしていた時期が来た。
シド様に助けられ、その体験で惚れた私が何度もアタックをしていた頃。
思い出すだけで恥ずかしく、思い出すだけであの時にもし悪魔憑きが起きていれば、もう少し違ったかもしれないなんて。
そう、思うこともある。
今回も道中は同じ。
私とシド様なら、本気で走ってしまえば鉄道など使うことはないのだけれど。
ではなぜ今回も道中同じになってしまったのか。
それは、義姉が今回一緒にいるから。
「ローズ。はい、あ~ん」
義姉は甘やかしモードだ。
先日のテロ事件においてたまたま学園外にいたことで、被害者にならずに済んだ義姉は、私とシド様が被害者……それもシド様が大怪我をした(ということになっている)こと聞いて、深く悲しみ、自分がいれば何か出来たかもと、しばらく塞ぎこんでしまった。
さすがのシド様も、自分の姉に対しては無感情のままではいられず、私も大事な人の姉であることからどうにかしたかった。
だから今回、アルファの要請で聖地リンドブルムに向かうことになったのを利用し、鉄道旅行と聖地観光となったのだった。
「お姉ちゃん……さすがに恥ずかしいです」
このお姉ちゃん呼びも、甘やかしモードに入ってしまった義姉を少しでも喜ばせるための呼び方だ。
私はあくまでもメイドなので、人の目があるところではクレア様と呼んでいるのだけれど、プライベートであれば、姉様と呼ぶようにしている。
この世界に来てからすぐのこと、カゲノー男爵領のメイドとなった時からクレア様は私のことを可愛がってくれた。
最初は弟がよくわからない異物を連れてきたみたいな扱いをされていたけれど、私が少しずつ仕事を覚える姿を見て、シド様のお世話以外でクレア様の指名を受け、お世話を仰せつかった。
そこから、深く交流がはじまって、今では義理の姉妹と言う関係になっている。
シド様には少しきつく当たる部分はあるけれど、弟であるシド様のことを想っているのはよく理解できる。
私に対しては、程度は違えど甘々だ。
妹が欲しかった。なんてシド様に向かっては言われるけれど、弟に対しての態度を直せないから、その反動で私に甘いのだろう。
「なによローズ。あなた昨日はシドと一緒に寝てたんだからこれくらいはしても良いでしょ」
事実なので何も言い返せない。
久しぶりにシド様と一緒に眠れる、なんて思って、無意識にシド様と一緒に眠ってしまった。
朝になって、それを見つかってしまって、甘やかしモードに入ったというわけだった。
「今日は私もローズとシドと一緒に寝るんだから、準備しといてよね」
やれやれ、と言いたそうなシド様。
そういったことから逃げようとするシド様を捕まえるのは大変だと思いながらも、この関係を築けたことに心では感謝するのだった。
オリアナであった頃には、こんな平和な関係、築けなかったから。