クレア・カゲノー編です。
弟は、とても強くて、とても凶悪な犯罪者だった。
ミドガル王国の第一王女、アイリス・ミドガルは私に言った。
あなたの弟さんは、様々な国で暴れて、詐欺や暗殺、国家転覆など、様々な犯罪に手を染める凶悪犯だと。
位が低いとはいえ、貴族である私の家も取り潰しになり、両親は行方不明になった。
私といえば、アイリス王女に捕まり、人質として様々な場所に連れて行かれた。
そこでは、私を助けに来てくれた黒ずくめのエルフや獣人が何人も殺されるのを何度も見た。
名はシャドウガーデンと言ったか。アイリス王女でなければ相手にならなかったはずなのに、アイリス王女だったからこそ、逝ってしまった。
そこでは、私がアレクシア王女誘拐事件の際に弟のために動こうとした時に、体を張って止めてくれたローズ女王が犠牲になるのを見た。
知らぬ間にシャドウガーデンに入り、いつの間にか女王となり、アイリス王女の虜囚となった彼女の、絶望と希望の最期を。
そこでは、様々な人間の破滅を見た。
弟を恨む者、弟の全てを奪おうとする者、挙げればキリがないほどに。
全てが終わった時、そこには少しの人しか残らなかった。
アレクシア王女と、彼女と雰囲気の似たアカネと呼ばれる異邦人と、弟。
あとは七陰と言ったか、彼女たちは二度とアイリス王女のような者に捕らわれることのないように、私に付き従い。いつでも側にいてくれるようになった。
両親は、古都アレキサンドリアというところで保護され、いずれは私もそこで住むことになるだろうと、七陰の一人、ミツゴシ商会の会長は言った。
私は、少ない傍観者として終わりを見届けた。
世界が終わるまで、もう少しというところだろうか。
世界が傷つき、治すことも出来なくなるほど崩壊してしまうなんて。
魔界を目指さねば人という種が終わってしまうと、あの時誰が予想しただろうか。
弟は、そんな中でも明るくて。
弟は、そんな時でも優しくて。
弟は、そんな所でも実力者で。
もしも、こんなにも壊れることがなかったら。
もしも、こんなにも弟たちの力が知られることがなければ。
もしも、こんなにも世界を脅かす者たちが現れなければ。
弟を邪険にしながらも、幸せに愛せたのだろうか。と今でも思う。
もしも、時が巻き戻るのなら。
どこまでも無力だった自分が、自分の手の届く範囲で、不幸となる未来を持つ人を、助けてあげれたら。
世界とは言わない。周りだけでも変えれないだろうか。
無力でも、それくらいは望んでもバチは当たらないと―――私は思う。