まっくらからまっしろ、まっしろからまっくろ。
しゃどう、すたいりっしゅとうぞくすれいやー、しゃどうがーでん
しどかげのー
これは―――痛みが、無い。
痛苦から逃れるために、切り離していた心と体が戻ってくる。
目に見えるほどに満ち溢れる、強固な魔力。
目を開けると、幼さの残るシド君が見える。
あぁ―――叶ったんだ。
涙が溢れてくる。
勝手に別れて、勝手に死んでしまったのに、また逢えた。
目の前の彼にその記憶は無い、まだ私とすら出逢っていないのだから。
でも、それでもまた、逢えた。
崩れた体は再構成され、元の体―――666の頃のように魔力にも気力にも満ち溢れていた。
これが―――シャドウ、シド・カゲノーの力。
努力して、努力して、血の滲むような努力など努力とは言わないとでも言わんばかりに、ただ『努力』し続けた結晶。
人の力など遙かに凌駕し、魔人を超えた存在。
過去の私の主で、今の私の救い主。
「嗚呼。地獄の底から私を救い出してくれてありがとうございます。シャドウ様」
過去に見た演劇のように、彼の足に口づけをする。
それだけじゃない。
手に。
胸に。
首に。
鼻に。
彼が足を舐めろと言えばいくらでも舐めよう。
過去に愛した。添い遂げたいと願って、叶わなかった彼のものなら。どんなものだって愛せるのだから。
「君の名前は―――ヌルだ」
今までのことなど何もなかったかのように、彼は私の名前を決める。
ローズという懐かしい名前ではあったこの体だけど、今は666でもローズでもない。
ヌル。
愛しい彼のつけてくれた私の名称。
それが私の新しい名前なのだから。
「わかりました。私はヌル。あなたの陰にも、あなたの人形にもなんにでもなりましょう。お任せください」
跪き、頭を垂れる。
誓う。二度とあんな思いはしないと。
あんな思いをしないために、強くなると。
―――シド視点―――
おっと……これは、大丈夫なのか?
実験とはいえこれはやりすぎたかも。
脳を弄る実験。記憶を消したり、誰かの感情をコントロールしたり、記憶を覗く実験なんてのもしてみたけど。
異常だ。
ぼんやりとだけどわかったのはどこかの貴族のお嬢様みたいで、捨てられた。とか壊されたとか。そういう外から見れば可哀想な出来事。
初めての実験だったから、ものすご~~~~~~くノイズ混じりで雑にしかわからなかったけど悲惨な出来事にあってたみたい。
だから記憶を消して、僕に対する感情がプラスになるように働きかけてみたんだけど、大丈夫なの?これって。
アルファも僕の演技に対して大概だったけど、これはちょっと……まあ、いっか。乗ってくれてるならそれで良い。自分に起きたことを忘れてるみたいだし。
今の状況を説明してあげて、記憶があるかとか聞いてみたけど全部忘れてるみたい。
一部だけ消したつもりだったけど、これは……やっちゃったな~。
成功したと思ったんだけど、失敗かぁ。
どうしたものか。このままこの子をアルファに任せても良いんだけど、そうすると僕の適当な設定の茶番に本当にヤバい設定の子を組み込んでしまうことになる……けど。
「ねぇ、ヌル。君って―――」