シャドウズルーラー~蘇りの石~   作:聖せろり

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始まりと言えば勿論あの方々……。
この後もですが、原作の日本語翻訳版を元にしております。
ぼちぼち更新です。


蘇りの石
1 都会に降り立った猫&2 眠る赤ん坊


人々が寝静まるであろう頃、その町の交通量は未だに衰えを見せなかった。

プップッパーパーと鳴り響くクラクション、唸り声をあげるエンジン音、電車は未だに走り続け、明かりを絶やさない店まである。足早に歩く人々は皆疲れた顔をしており、雑踏をしなやかに駆け抜けるトラ猫には誰も気付きはしない。

騒がしい人混みを抜けると、段々と街灯が減り住宅街に入った。

そんな住宅街に不釣り合いな男が一人、白い壁に黒い屋根の家の前にポツンと立っていた。

住宅街に……というよりはこの日本という国でこのような服装といったら、まぁ珍しい。

これこそこの国の人達に馴染みのある、コスプレと言われるのだろうか。

猫は立ち止まり、そんな彼をジッと見つめていた。

ヒョロリと背が高く、髪やひげの白さから見て相当の年寄りだ。

髪もひげもあまりに長いので、ベルトに挟み込んでいる。

ゆったりと長いローブの上に、地面を引きずる程の長い紫のマントを羽織り、踵の高い留め金飾りのついたブーツを履いている。淡いブルーの眼が、半月形のメガネの奥で微かに曇り、高い鼻が途中で少なくとも二回は折れたように曲がっている。

そう。魔法界では知らぬ者はいない、あのアルバス・ダンブルドアだ。

 

 

ダンブルドアの腕の中には、白い毛布にくるまった何かがあった。

「よく眠っておるわい」と彼は小声で呟いた。

ダンブルドアは毛布の中身をソッと、先程からピクリとも動かないトラ猫に見せた。

そこには黒い髪の女の赤ん坊がスヤスヤと気持ちよさそうに眠っていた。

「懐かしいのう。まるであの時と同じじゃ。違うと言えば、この場にハグリットがいない事ぐらいかのう」

赤ん坊はその言葉に反応しているかのように僅かに動く。

それはまるで自分の運命を本能的に理解しているようだった。

「のう? マクゴナガル先生」

様子を見守っていた猫はそう呼ばれ、尻尾をシャンと一振りすると、そこにもう猫の姿は無かった。

猫のいた場所には、厳格そうな一人の女性の姿があった。

縞模様の四角いメガネをかけ、黒い髪をひっつめて小さな髷にしており、彼女もまたエメラルド色のマントを着ていた。

「もっと大きな違いがあるでしょう? お祝いムードとはまったくの真逆ですよ。あの日は誰もが浮かれて出かけていたのに、今は皆怯えながら家に籠っています」

ダンブルドアは、悲し気な表情を浮かべた。

「あの子の時は誰もがあの子の事を知っていて、誰もがあの子をもてはやした。じゃが、この子は……」

とまで言うとギュッと唇を結び、口をつぐんだ。

「アルバス、この子は一体何者なんですか? ハリーのように『例のあの人』と何か関係でも?」

「マクゴナガル先生や、『例のあの人』では無く……」

マクゴナガル先生は瞬時に続く言葉を言わせまいと、話を遮った。

「とんでもありません! あの時と今は状況が違うのですよ! 『例のあの人』が戻ってきたというのに名前を出すなど私には出来ません!」

ダンブルドアは、うぅ……と少し唸っている赤ん坊をよしよしとあやした。

「まぁ、強制はせんよ。今はあの時と状況が違うからのう。それにこの子も聞きたくないじゃろうしな」

赤ん坊の唸り声が収まり、元通りの気持ちよさそうな眠りに戻った。

マクゴナガル先生は首を傾げた。

「まだ赤ん坊でしょう?」

しかも唸っていたとは言え、ずっと眠っているのには変わりないのだからマクゴナガル先生の疑問は至極真っ当であった。

「純粋無垢な魂を侮ってはいかんよ」

とだけダンブルドアは呟き、赤ん坊から話を逸らすかのように別の話題をふった。

「それはそうとマクゴナガル先生や、まだ周りに僅かじゃが人が通っておる。猫が人になる姿を見られでもしたら大変じゃ」

マクゴナガル先生は、怪訝そうな顔をした。

「分かっておりますよ、アルバス。ただ一日この国を、この町を見て回りましたけどね、ここの人間はとりたてて他人の事など見ていませんよ。夜は特に皆、疲れ切って俯いて、私達が何していようが気付く筈ありませんよ」

「それもそうじゃのう。わしが思うに、この国の人達はもうちとゆっくりすればいいのにのう」

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