その後、父が帰宅して家族揃って夕食をとったが、食卓にはカチャカチャという食器と箸がこすれる音が響くだけで他の物音は一切しなかった。
唯一、父は事態が呑み込めずチラッチラそれぞれの顔を眺めたが、母はそんな父に対して首を横にふり今はそっとしておこうと念を送った。
総はやりこみまくっていたゲーム機がダメになったせいか少し不機嫌そうだったし、さくらはいつも通り笑顔だったがいつもと違い何も話さないし目は笑っていなかった。
2人はさっさと食べ終わると、「ごちそうさま」とだけ言って食器を片し自分の部屋に籠ってしまった。
「あれは一体何があったんだい?」と父は、ご飯をゆっくりと食べていた母に尋ねた。
母は箸をそっと茶碗の上に置いた。
「総のゲーム機が壊れたらしいの。さくらは、それを自分のせいだと思い込んでて……大体そんな感じよ」
母は、2人から聞いたポルターガイストのような現象の話は伏せた。
「さくらが? あの子がまた……」
「さくらは一度も何もしていないわ」
母はムッとして強い口調でそう言い返した。
テーブルの上に置いた母の片手を父は握りしめた。
「君の気持ちも分かる。僕よりもずっと長くあの子と一緒に暮らしてたんだ。でも、時には受け入れないことこそがあの子自身を否定する事にもなるんだよ」
その言葉に母は、何も言い返せなくなった。
母は父に向けた力強い眼差しを少しずつ緩め、父の手を握り返した。
「……あの子に話さなくちゃいけない時が来たかもしれないのね」
父は何の事か分からず首を傾げたが、母はもう心に決めたかのような顔をしていたので何も言わなかった。
それは母にとって、さくらを育てると決めた日以来の強い覚悟だった。
「明日、さくらと話すわ」
そう言うと母は、食事の最中にも関わらず席を立ち、2階の自室へと向かった。
部屋の隅に置かれた小さな棚の引き出しを開けると、その中から一通の手紙を取り出し、その手紙をしばらく見つめていた。
いつかはさくらに渡さなくてはいけないと分かっていたが、さくらを育て年月が経つにつれ渡しづらくなってしまった。
さくらには、幼い頃から自分は本当の母親ではないと教えていた。
教えていたし、さくらはその事実を理解し受け入れている。
そうだというのに、本当の両親がさくらを想って書いたこの手紙を渡すのは、さくらを実の娘として愛し育ててきた母にとってどうしようもなく複雑な気持ちだった。
それでも、と母は決心したのだった。
神白 さくらは両親からの手紙を読む事が?
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出来る
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出来ない
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渡されたけど読めなかった
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そもそも渡されなかった