さくらを見守っていたふくろうは一度、ホーと一鳴きすると、翼を大きく広げドアの方に向かって飛び、ドアノブに止まると今度はドアをコンコンとつついた。
「ドアを開けてほしいの?」
さくらがそう尋ねると、ふくろうは首を縦に振りはっきりと頷いた。
「あなた、私の言葉が分かるのね?」
ふくろうは部屋から廊下へ大きな白い羽を広げ飛び、更に一階へと低空飛行していった。
さくらは、その後をそろりそろりと忍び足でついて行く。
階段に差し掛かると、先程よりもっと細心の注意を払いゆっくりと足を出した。
ギシッという階段の音にさくらは慌てて2階を振り返る。
だが、未だ家全体シーンとしており誰も起きてくる気配が無かったので、さくらはホッとして階段を降りて行った。
1階に着くと、ふくろうは玄関前の靴箱の上に置き物のように微動だにせずさくらを待っていた。
さくらはもうふくろうに尋ねなくても、次に何をするべきか分かった。
玄関の扉を開けるとそこは……いつも通りの何ら変わらぬ風景だった。
さくらはがっくりと肩を落とした。
すると、ふくろうはさくらの目の前を横切ると目線のはるか下へ急降下し着地した。
ふくろうを目で追ったさくらは、はっと息を飲んだ。
なんとそこには実に様々な形の荷物が山のようにどっさりと置かれていたのだ。
さくらは心の中で、数えきれない程のクリスマスプレゼントを貰ったばかりの小さい子のように驚きはしゃぎながら、荷物を一つずつ手に取った。
真っ黒なローブ、真っ黒なマント、大きな鍋、望遠鏡、沢山の分厚い本……はペラペラと数ページめくったが全て英語で書かれていて、秒で本を閉じた。
どの本もそんな感じで少しつまらなかった。
そして、何より大きな茶色の木製のトランクをさくらはとても気に入っていた。
デザインも色も派手じゃなく、落ち着いていて好みだった。
トランクの上部には、手紙の封筒に描かれていた4匹の動物の紋章が刻み込まれていた。
さくらは、荷物を詰め込んで運ぼうとトランクを開けた。
トランクの中には、何と更に一冊の本とキャンディーのようなものが詰まった小さな小瓶が一本入っていた。
さくらは、一体誰が自分にこれ程沢山の物をくれたのか疑問に思い始めた。
もしかして、手紙に名前が書いてあった先生がくれたのかな? 魔法使いの学校はみんなに色々支給してくれるのかな?
そんな事を考えながらさくらは、トランクの中にあった本を手に取って眺めてみた。
本の表紙にはこう書かれていた。
" The Tales of Beedle the Bard "
やはり英語で書かれていて読めない。
……でも何か――ううん、何でもない。
さくらは優しく本の表紙を撫でると、トランクの中に戻した。