果たして彼らは兄妹なのか、兄妹ではないのか……。
さくらは急いで今年の誕生日に貰った大きい白いフリルの襟が付いたワンピースに着替え7枚の金貨が入った小さな袋を持ち、軽く朝食を済ませ、スノウが待つホテルの外へと母と一緒に向かった。
スノウの飛んでいった最初の場所は、地下鉄だったので母はスノウを自身のショルダーバッグに押し込んで電車に乗った。
バッグが小さかったので半分以上スノウの体が出ていた。
母の隣に座った人は母の鞄の中から出ているのが大きいマスコットでは無く、本物のふくろうだと分かると一瞬驚いて、席を変えていた。
しばらく乗っていると、スノウはある駅にとまりかけるちょっと前にパタパタと羽を動かした。
地下鉄から外へ出ると、余程窮屈だったのかスノウは勢いよくバッグから飛び出した。
さくら達はスノウを追いかけながら、様々な店が立ち並ぶ賑やかな通りを駆け抜けた。
スノウは、ある薄汚れた店の上を旋回した。
「漏れ鍋」と書かれたその店は、他の店の外装とは違い異質な雰囲気を醸し出していた。
何故なら、その店を母は認識できなかったのだ。
母が言うには、そこには本屋とレコード屋があるだけで漏れ鍋という名前の店はどこにも見当たらないらしい。
さくらはどうやら自分とスノウしかこの店に入れそうにないと悟り、母と1時間後ここで待ち合わせる事にした。
スノウと共に中に入ったさくらは、店の外観の倍以上に中の方が異質だと思った。
緑色の三角の帽子を被った人、紫色のマントを羽織った人……まさに想像していた魔法使いや魔女の服装そのものの人々が店内でお酒を嗜んでいた。
さくらはもっとこの不思議な光景を眺めておきたかったが、先を急ぐスノウの後について行った。
パブを通り抜け壁に囲まれた小さな中庭にスノウはさくらを連れて行った。
スノウはくちばしで壁を3回コンコンコンとつっついた。
すると、突然つっついたレンガが震え出し、次の瞬間には目の前にアーチ型の入り口が出来ていた。
入口の向こうは先が見えず、さくらは少し通るのを躊躇った。
スノウはお構いなしにその先へと飛んでいく。
さくらはそれに続き、恐る恐る入り口を一歩ずつ進んでいった。
壁の中の道を通り抜けた先に広がる視界にさくらは思わず息をのんだ。
そこにはさっきの店とは比べ物にならない程沢山の魔女や魔法使い達が、行きかっていた。
初めて触れる自分以外の普通の人達とは変わった人達が存在する空間に、さくらは安心感を覚えた。
キョロキョロと辺りを見渡しながらゆっくりと商店街を歩いていたさくらはふと大変な事に気付いた。
スノウがいない。
変てこな店や魔法使い達に夢中になって、さくらはスノウとはぐれてしまった事に今更ながら気が付いたのだ。
さくらは慌ててスノウを探した。
おそらくさっきのようにどこかの店の上を旋回しているのだろうと思い、上の方を見上げながらスノウを探した。
それが良くなかった。
さくらは勢いよく前を歩いていた人とぶつかった。
更に最悪な事に、ぶつかったのと同時に袋を落としてしまい袋の中の7枚の金貨はバラバラに散らばってしまった。
金貨は一瞬で人の波へと飲み込まれていった。
必至でさくらは金貨をかき集めたが、あと2枚が見つからない。
途方に暮れそうになったさくらの頭上に、暗い影が差した。
見上げると、シルバーの髪にエメラルドの瞳のさくらと同い年ぐらいの少年が無言で立っていた。
少年の後ろには、少年よりも少し幼い、肩より少し下まで伸びた少年と同じ色の髪に黒い瞳の少女が隠れていた。
少年は、無言でさくらの方に右手を差し出した。
その右手には、2枚の金貨がのっていた。
「……拾ってくれたの?」
少年は半ば強引に金貨をさくらに押し付けた。
急に返されたのでさくらはまた落としそうになるがギリギリでキャッチした。
金貨を返し終わると少年は少女の手を引き、さっさとその場から立ち去ろうとした。
が、少女はさくらの方をジッと見つめて中々歩き出そうとしなかった。
「行くぞ、デルフィー」
少女は、少年の呼びかけに渋々ついて行った。