あと主人公のイラストのリメイクにとまどり……そんなこんなで遂にハリーポッター登場です。勿論、闇祓いハリー。
24 変えられた9と4分の3番線
さくらが杖を選び終えた一方その頃、キングスクロス駅では9と4分の3番線に面するホーム一帯に厳戒態勢が敷かれ、関係者以外立ち入り禁止となっていた。
魔法法執行部闇祓い局局員と魔法不適正使用取締局の一部の局員達は、各部長によりその場所に呼び出された。
呼び出しは、久しぶりに休暇が取れ家で家族とゆっくり過ごそうと計画していたハリーポッターも例外ではなかった。
ホグワーツの戦い後、闇祓い局局員達はヴォルデモートに加勢した死喰い人の残党を探し出し捕まえる為に寝る間も惜しんだ。
何しろヴォルデモートという最大の脅威が去ったとは言え、多くの魔法使いを殺しながらも未だ身を隠し捕まっていない死喰い人達がまだ多数いるからだ。
同僚だったロンは、この過酷な現場についていけず早々に引退。ネビルは、兼ねてから得意としていた念願の薬草学の教授になり、今はホグワーツに勤めている。
ただでもヴォルデモートとの戦いにより局員が犠牲になったり、優秀な闇祓い達が違う職に就いたりと、闇祓い局は人手不足だった。
現闇祓い局局長であるアーロン・オズマルゴは、この闇祓いの人員不足問題に頭を抱えていた。
白髪に数本金髪が混じっており、顔や手に刻まれた皺は彼がかなり苦労した人生を送ってきた事が伺える。
彼は長年、闇祓い局員としてせっせと働き、にも関わらず目立たずにひっそりと成果をあげる上に自分よりも若い者達をたてる謙虚で慎み深い人物だった。
それに加え、誰よりも歳を取っていたが誰よりも働き者でもある。
ずっと周りから執行部部長になって欲しいと懇願されていたが彼はこの性格故に断り続け、前局長ルーファス・スクリムジョールが魔法大臣に就任後、ようやくその押しに負け局長に就任した。
だが、ヴォルデモートが魔法省を掌握して以降、段々と腐っていく魔法省の内部に彼は反感を覚えた。
長年、闇祓いとして共に働いていた妻や娘を連れ、一度闇祓い局から逃げ出しヴォルデモートに対抗する不死鳥の騎士団に家族総出で力を貸していた。
オズマルゴにとってそれが人生で一番の後悔だった。
逃亡した挙句騎士団に手を貸していた事がバレると、死喰い人達は容赦なく一家を襲った。
家を燃やされ飛び交う呪いの中必至で姿くらましをして逃げたが、安全な場所に着いた頃には娘は既に冷たくなっていた。
自分の浅はかな正義感が招いた悲劇に立ち直れず、その後騎士団には一切関わらず妻共々生きる希望を見失い隠れ家に籠っていた。
転機が訪れたのは、ホグワーツの戦いにあのハリーポッターが勝利したという報せが入ったあの日だった。
ようやく訪れた、少し遅すぎた安静な世に夫婦は涙を流し複雑な想いでお互いを慰め合い、歓喜した。
あのような悲劇が二度と起きない世界を一人の少年が取り戻してくれたというのに、自分はここに籠って何をしてたのだろう。
自分の行動を今、冷静に振り返ると、恥ずかしくてたまらない。
命を懸けて共に生き、闘った娘がこれでは浮かばれないと思ったオズマルゴは局長へと戻り、妻も一度は戻ったが旧友からの誘いにより今ではホグワーツに勤めている。
オズマルゴ局長は、だからこそハリーポッターや彼の仲間達にかなりの信頼を置き尊敬していた。
今日、休暇だった彼を呼んだのは非常に申し訳なく思っていたが、自分一人の意見より信頼する彼の意見を聞きたかったのだ。
「それで、結構大ごとみたいですけど一体何があったんですかオズマルゴ局長」
ハリーはついさっきまで寝ていたのか、寝癖がまだ残っていたし服のボタンをまだ全部きちんと留めれていなかった。
「先程、9と4分の3番線に繋がる壁に触れた子供が9と4分の3番線では無く、ホグワーツの真ん前へと移動する事件が発生した。壁自体に魔法を上書きしポートキー化させたのだろう。それで魔法不適正取締局から派遣された局員は、『どうせ一日でも早く学校に戻りたかった生徒の仕業だろう』と言っていたが……」
「ホグワーツの生徒がそんな強力な魔法を使えるとは思えない、ということですよね」
ハリーはすかさず言う。
「ご名答。かなり腕のたつ魔法使いでも中々出来まい。それにそんな単純な思惑でここまで根気のいる所業をするとは思えぬ」
オズマルゴ局長は、やはり見込み通り優秀な局員だと言わんばかりにハリーに何度も頷いた。
「ですが、今回の件で何故オズマルゴ局長や僕が駆り出されたのですか? 聞いている限り、魔法不適正取締局の仕事かと……」
ハリーがそうオズマルゴ局長に尋ねていると、赤毛の巻き毛の女性が勢いよく二人の間を割って入ってきた。
「あら、それはその件とは別ですわ! この件を担当している時に丁度、近くに死喰い人が通りかかったので私がオズマルゴ局長を呼びましたの! ああ、私、ソフィー・ブレンダって言いますの。今回のこっちの件は、娘のミンティアが発見しましたの素晴らしい子でしょう? でもあの子もしかしたら貴方に会えるかもって言ったら恥ずかしがって家に帰っちゃいましたの。まだ言ってませんでしたっけ? 私達一家は、貴方の大ファンなのですよハリーポッター!」
ブレンダ夫人はかなり早口で興奮しながら、そう述べた。
「さっきはそんな事、一言も言っていなかったじゃないか。壁を元に戻す方法が分からないから闇の魔術に対する防衛術に詳しい我々が必要だと……」
温厚なオズマルゴ局長だったが、こればかりはムッとした。
ホグワーツの戦い以降、ブレンダ夫人のようなハリーをまるで神のように必要以上に称える人物が続出した。
どこへ行ってもこういう熱烈なファンやスクープをとりたい記者達に握手やらインタビューやら何やら求められ、彼らに悪気はなく純粋に好いてくれていると分かっているもののハリーは少々ウンザリしていた。
だが今回はウンザリどころか怒りを覚えた。
つまりは、ブレンダ夫人はハリーに会いたいが為に何やら大変な事件が起きたように見せかけ(実際大変な事件なのだが彼女はそう思っていなかった)、他の局員でも出来る死喰い人の逮捕という本当の任務を隠し、ハリーを信頼し必ず呼ぶであろうオズマルゴ局長を利用したというわけだ。
ブレンダ夫人は二人の静かな怒りに全く気付かないまま、捕まえたという死喰い人を連れてきた。
くすんだ茶髪の長身の死喰い人と言われた男性は、冷たい瞳でハリーをジッと見つめていた。