笑顔で近付いてくるその若い女性は、オズマルゴ局長とエイブリー氏の間にゆっくりと割って入った。
「いけません局長でもあろうお方が、痛みに苦しむ罪無き憐れな子羊を死喰い人というだけで偏見の目を向けるだなんて。貴方だって同じ痛みに苦しむ同士なのに」
オズマルゴ局長は、怪訝そうな顔をした。
「失礼だが、君は誰かね?」
女性はその言葉を待っていたかのように更に満面の笑みを浮かべたが、ハリーはその顔がどことなく機械的で不気味に思えた。
「申し遅れました、私、シルフィ―ヌ・デ・モントと申します。『死の教徒』のただの熱心な信者です」
ハリーは、「死の教徒」という言葉にドキッとした。死喰い人に語感が似ていた為、一瞬勘違いをしたのだ。
シルフィ―ヌは自己紹介を終えると、その場にいたそれぞれに握手を求めた。
局長とブレンダ夫人は戸惑いながらも握手に答えたが、エイブリー氏はその手を冷たく振り払った。
最後にハリーの元へもシルフィ―ヌは手を差し出したので、ハリーもまた握り返した。
すると、シルフィ―ヌは機械的な笑顔を崩さずハリーの手を段々と強く握りしめてきた。
ハリーは彼女の異様な行動に思わず顔を見たが、彼女の青い瞳は何故そうなのかとははっきり言えなかったがまるで死人のように何も映していないようで気味が悪かった。
「ミスターポッター、私達はずっとあなたにお会いしたかったんです! もし貴方のような英雄が痛みを分かち合う同士として、私達に力を貸してくれるのならどれ程心強いか……」
「すみません、シルフィ―ヌさん。おっしゃってる意味が全く分からないんですが……そもそも『死の教徒』って?」
ハリーが尋ねると、シルフィ―ヌはこう答えた。
「死を制する者」
ハリーは、目を見開き石のように固まってしまった。その様子を見たシルフィ―ヌが、一瞬ニヤッと笑った気がした。
「やはりご存じなのですね? それこそ私達が目指すべきものであり、求めている者。不平等で理不尽な『死』を嘆き悲しむ同士達の心を癒す憩いの場こそ、『死の教徒』なのです。私達は、魔法使いや魔女、スクイブでもマグルでも死喰い人でも人ならざる者でも、死を悼む者であるのなら全て受け入れるのです」
「死を制する者って何ですか」
ハリーは、動揺を隠しながらすっとぼけた。
ハリーの嘘を見抜いたのか見抜いていないかは分からないが、シルフィ―ヌは一冊の本をどこからともなく出してきてハリーに差し出した。
その本のタイトルはこうだった。
「ハリーポッターは、英雄か憎むべきか」