「リータ・スキーターは、でっち上げのゴシップを作り上げるような女です。以前も僕と友人は、その被害にあいました。この本に書いてある事も全てでたらめの作り話だ」
ハリーは出来るだけ取り乱している事がバレないよう、冷静な対応をしたつもりだった。
だが、シルフィ―ヌの尚も崩さない機械的な笑みを見ていると、そんな対応が出来たのか段々と不安になってきた。
「やっぱり、そうでしたのね! わたくし、てっきりあの本を丸々信じ込みそうになっていましたの! でも、娘が『ハリーポッターが死の秘宝をもし手にしていて、それでもし死の秘宝なんてものがあったら、杖でもっと早くヴォルデモートを倒していただろうしマントで私達を守ってくれただろうし、それに罪無き人達を石で生き返らせてくれた筈だもん』って言って我にかえりましたわ。だってその通りですもの!」
ブレンダ夫人の悪気ないその言葉が、ハリーの胸を締め付けた。
ヴォルデモートを遂に倒しホグワーツの戦いが終わったあの日から、額の傷が疼くこともヴォルデモートの支配に怯える事も無くなったが、未だに後悔が絶えなかった。
もっと早くにああしておけば、あの時こうしておけば……そうすればあの人は死ななかったのではないか、もっと助けられる命があったのではないか。
そんな最早どうする事も出来ない過去に囚われ眠れない夜もあった。
目を閉じれば、目の前で死んでいった仲間達の動かなくなった亡骸が映った。
「私には、この話が到底嘘だとは思えません。ミスターポッター、貴方なら死に抗えず友や家族を無くした私達の心の痛みが分かる筈です。死の秘宝を、特に蘇りの石があれば私達は再び愛する者達と巡り合え、全ての心が救われるのです。誰も二度と悲しむ事の無い世が訪れるのです!」
「たとえ本当にビードルの物語のような蘇りの石がこの世界にあったとしても、あの話の通りなら死者はこの世に馴染めない。死んだ人はもう二度と戻らないんだ。見るべきは死者じゃない。今生きている人達だ」
ハリーは自分にも言い聞かせるかのように、静かに話した。
その場にいた誰もが、ハリーの事実である重い言葉に心が沈んだ。
それでも、シルフィ―ヌは引き下がらなかった。
それどころか、少し余裕そうだった。
「そうですか、残念です。では、少し周り道をするとしましょう。ですが、貴方の最後の言葉は概ね私も同意見です。人はたとえその人に非が無くとも生きている人間に矛先を向けるものです。だって死者を憎んだって恨みは晴らせませんもの」
ハリーの脳内に「ハリーポッターは、英雄か憎むべきか」のタイトルがよぎった。
「貴方が救えなかった『死の教徒』の信者も救えたのですけれど。そう例えば……ディゴリー夫妻、アンドロメダ・トンクス、後貴方が知っている名前は……あぁ、ハンナ・アボット。貴方が死者を捨て前を向いて生きようとしても、貴方の周りの人間はどうでしょう? 皆が皆、貴方のように死者を捨て去れないのですよ」